YAMAHA、KAWAI、ROLANDの安いピアノ

コルグLianoの次に買ってみたい、電子ピアノを調べてみました。

ヤマハやローランドといった国内大手の楽器メーカーには、数十万もする高級モデルが多くラインナップされています。
上を目指せばきりがなく、鍵盤や音源などの繊細な違いを体感できるか自信もありません。

ひとまず身の丈にあったレベルとして、予算5~10万円くらいのミドルレンジを中心に検討してみました。
Lianoを買うときに迷った廉価モデルもご紹介します。

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楽器界の王者ヤマハ

ヤマハはコンサート用のグランドピアノからコンパクトなアップライトピアノまで、アコースティックピアノの製品ラインナップが豊富です。

またデジタル技術を組み合わせたサイレントピアノやトランスアコースティックピアノなど、ハイブリッドな構造のピアノも手がけています。
さらにディスクラビアという自動演奏ができるタイプもあります。

本物志向の高級製品から、入門用のキーボードまで幅広く取り揃えているのがヤマハの特徴です。
「10万以下のピアノタッチ鍵盤」としてはPシリーズが候補になります。

持ち運べるPシリーズ

ヤマハのClavinova、ARIUSは据置型の電子ピアノで、ポータブル型はPシリーズもしくはステージピアノが該当します。

シリーズ名の「P」はPortableの略かと思います。
型番が上がるほど高機能になるラインナップで、ローランドのFPシリーズやカシオのPriviaと同ランクの製品群です。

PシリーズはすべてGHC鍵盤以上のハンマーアクションを搭載しています。
鍵盤・音源スペックは価格相応で、P-525までいくと「グランドタッチ-エス鍵盤」に加えヤマハCFX/ベーゼンドルファーインペリアルサンプリングの音源が付く豪華版となります。

最上級のP-525でも10万円台で手に入るのは、案外リーズナブルといえそうです。
ヤマハの据置型でいえば、アリウスを超えてクラビノーバのミドルレンジに相当します。

最安のP-145および鍵盤上部が光るナビゲーション機能の付いたP-S500は、Bluetoothが付いていないのでご注意ください。
それ以上の機種はすべて搭載しています。

やはり鍵盤・音源にこだわってヤマハのPシリーズを選ぶなら、中間クラスのP-225以上で検討したいところです。
バランスのよいP-225は5万円台から購入できるので、7万円以上するローランドFP-30Xよりお買い得といえます。

バイノーラル録音

ヤマハの電子ピアノにもヘッドフォン使用時の臨場感を向上させる「ステレオフォニックオプティマイザー」という機能がそなわっています。
カシオの「ヘッドホンモード」や、ローランドの「ヘッドホン・3D・アンビエンス」に相当する音場表現技術のようです。

カシオの場合はPriviaのPX-S6000以上とCelviano、ローランドはFP-60X以上の高級モデルにしか搭載されていない機能です。
ヤマハの場合はP-145も含めたPシリーズ、アリウス全機種にデフォルトでそなわっていて良心的に感じます。

P-525になるとさらに上位の「CFXバイノーラルサンプリング」が搭載されています。
CFXグランド音源のみの対応ですが、演奏者の耳の位置でマイク収録しているので臨場感は高そうです。

「ステレオフォニックオプティマイザー」のほうは「バイノーラルサンプリングに近い…」と説明されているので、疑似的な再現技術と思われます。
どちらもカタログ上は「おまけ機能」といった扱いですが、ヘッドフォンで練習する時間が長いかたには、有利かもしれません。

ポータトーンの再評価

カシオトーンと双璧を成す低価格キーボードのポータトーン(PSRシリーズ)は、30年くらい前に所有していました。
マイナーチェンジを重ねながら今でも販売され続けているのは、最安キーボードの手堅い需要があるからでしょう。

あらためて調べると、ポータトーンも1~2万円の格安品とはいえ、各種機能が充実しています。

最安のPSR-E283でもAUX IN端子が付いていたりします。
音色数は410以上あり録音機能もついていて、乾電池での駆動も可能です。

ただしカシオCT-S1-76のように鍵盤数が多いバージョンはなく、PSRはすべて61鍵のみです(ミニ鍵盤のPSSシリーズは37鍵)。
後述のピアジェーロであれば、76鍵のNP-35が存在します。

ポータトーンとカシオトーンに共通する地味なデメリットは、「低価格モデルのパネル表記が日本語という点」です。
PSR-473以上は英語表記の上に和文シートがつくので外せますが、PSR-E283とE383は本体にがっつり日本語がプリントしてあります。

各ボタンの説明が日本語なのは、親切でわかりやすいとはいえ「見た目的にダサい」と考える人も多いでしょう。
私もそのクチです。

パソコンのキーボードに使わない日本語が書いてあるのは嫌なので、わざわざFILCOの「かな印字なし」モデルを選んでいました。
最近は英語配列に変えて、アルファベットがキー前面に印字された、さらにシンプルなMajestouchのNINJAモデルを使っています。

FILCO

見た目がいいPiaggero

ピアジェーロは見た目が電子ピアノですが、中身はポータトーンの機能限定版、鍵盤もバネ式という安価なシリーズです。
ただし操作パネルがシンプルで、説明も英語表記のおかげか、あまり安っぽさを感じさせないデザインといえます。

61鍵のNP-15と、76鍵のNP-35の2種類あり、ローランドGO:PIANOのような88鍵モデルはありません。
ピアジェーロはあくまでお試し・入門用という感じで、88鍵が欲しいなら上位のPシリーズをどうぞ、という住み分けのようです。

NP-35のほうのみ「グレードソフトタッチ鍵盤」という機能が搭載されています。
これは「低音部ほど鍵盤が重い」というだけの意味で、ハンマーアクションではありません。

ピアジェーロも昔からあるロングセラー商品で、ちょうどLianoを購入した2023年に新バージョンが発表されました。
店頭で試してみたところ、「グレードソフトタッチ」のせいか、Lianoに比べると鍵盤は重く感じました。

新型ではスピーカーの性能が強化され、音色も前モデルの10種類から15種類に増えています。
細かいところではLEDが3色になったり、外観のデザインも微調整されたようです。

  • とりあえずピアノを弾いてみたいけど、続くかわからない
  • ポータトーンのガジェット的な見た目は苦手、シンプルなピアノがいい
  • 複雑な機能や拡張性は必要ない、音色も少なめでOK

こういうかたにマッチするのがピアジェーロといえます。
76鍵ならカシオトーンにもありますが、価格の安さではNP-35が勝ります。

高価なハイブリッドピアノ

据置型で予算オーバーですが、ヤマハが出している特殊構造のピアノも調べて見ました。

「サイレントピアノ」というのはその名のとおり、ヘッドフォンを使った消音演奏が可能なピアノです。
既存のアップライトピアノに後付けできる消音ユニットという、アイデア商品も販売されています。

「トランスアコースティック」はさらに進んで、音量調整ができるアコースティックピアノです。
音源はデジタルながらスピーカーがなく、ピアノ本体の響板を振動させるという離れ業を実現しています。

「アバングランド」シリーズは鍵盤機構だけ生ピアノと同じで、ゴージャスなスピーカーがついた「ほぼ電子ピアノ」です。
構造的にシンプルなため上の2つより価格が安く、サイズもコンパクトになります。

いずれの機種もヘッドフォン接続を可能にしただけでなく、USB録音やBluetooth接続の便利機能も搭載されています。
音色もエレピやオルガンなどいろいろ選べて、「構造はアコースティックでも機能はデジタル」という、いいとこどりの製品といえます。

消音機能の必要性

田舎の一軒家といえども、夜間はピアノの音がはばかれるかもしれません。
消音・ヘッドフォン機能は時代のニーズと日本の住宅事情にあわせた、国内メーカーならではの工夫といえそうです。

ハイブリッドピアノは、あくまで本物の感触を追求するプロ向け、もしくは富裕層向け趣味のアイテムと考えられます。
200万を超えるSH3やTA3が買える余裕があり、さらに大型ピアノを置ける広い家に住んでいるなら、普通の生ピアノでよさそうな気もするのですが…

都市部のタワーマンションなど、豪邸だが集合住宅で音漏れが気になるとか、ニッチな需要に対応した製品群なのかもしれません。

ピアノに強いカワイ

河合楽器はピアノ専門というイメージなので、あまりなじみがありませんでした。
オルガンを弾かない人が、鈴木楽器に興味がないのと同じかと思います。

シンプルなESシリーズ

カワイの電子ピアノでポータブルなのはESシリーズ、ES60、ES120 Filo、ES920の3つだけです。
ほかにステージピアノやMIDIキーボードといったコンパクトモデルもあります。

ES60にはBluetoothやLINE INの外部入力端子がないかわりに、同時発音数は192と多めです。
機能がシンプルなわりには重さも11kgあり、「レスポンシブ・ハンマー・アクション・ベーシック(RHB)」という鍵盤の構造が本格的なのかもしれません。

パネルの操作部はボタンが3つとボリューム用のスライドしかなく、極めてミニマムな外観です。
ES60とES120で音色を選ぶには、ボタンを押しながら対応する鍵盤を押さえる必要があります。

カワイの電子ピアノや消音ピアノは演奏に集中するため、ボタンや液晶画面をなるべく目立たなくしているようです。
デジタルなガジェット感をなくそうという、本物のピアノメーカーらしいこだわりといえます。

鍵盤も音源も品質はよさそうですが、最安のES60でも6万円近くするのがネックです。
同等スペックの他社製品と比べても、カワイはやや割高に感じられます。

ESシリーズのES120だけ「フィーロ」という愛称がついていて、特設サイトも公開されています。
実売価格は8万円以上しますが、Bluetoothも搭載していて値段とスペックのバランスがよさそうです。

他社に比べて際立った特徴はないですが、ESシリーズはデザインのシンプルさに好感を持てます。
多少価格が高くても、「カワイの音や鍵盤タッチが好き」というコアなファン層がいて、別室・別荘向けのサブ用途で買うのでは…と想像しています。

ヘッドフォン関連機能

カワイの電子ピアノにもヘッドフォン向けのエフェクトが2つ提供されています。

「ヘッドホンタイプ」というのはオープン、セミオープン、クローズ、インナーイヤー、カナルといった形状に応じて、音質を調整してくれる機能です。
ESシリーズではES120以上に搭載されています。

「スペイシャル・ヘッドホン・サウンド」はノーマル以外にワイド、フォワードのモードがあり、左右の音の広がりか前方への定位を強調してくれるそうです。
こちらはES920と、据置型のCA/CNシリーズに搭載されています。

他社の同等機能に比べて、カワイのヘッドフォン技術は説明が具体的でわかりやすいです。
特にヘッドフォンの種類で最適化してくれる機能はユニークといえます。

高価な電子ピアノにインナーイヤーやカナル型ヘッドフォンを合わせる人がいるのかわかりませんが、軽いので耳に着けても疲れにくいのはメリットです。
大型のヘッドフォンより場所もとらないので、カワイの「ヘッドホンタイプ」で音質改善できるならありかもしれません。

消音・静音ユニットの違い

カワイは電子ピアノよりも、グランドピアノやアップライトピアノの製品が豊富にそろっています。
響板スピーカーや音源と組み合わせた消音ユニットを販売しているところは、ヤマハと似ています。

カワイの場合は「ピアノマスク」という、物理的なパーツの開閉で音量を制御する静音・減音装置も開発していたりもします。
ヘッドフォンは使えませんが、本物のピアノをなんとか一般家庭にも普及させようというアイデア商品に思われます。

カワイのチャーチオルガン

生ピアノのイメージが強いカワイですが、実は家庭向けのコンパクトなチャーチオルガンも販売しています。

カワイが扱っているのはオランダのヨハネス、アメリカのロジャースという海外メーカーの製品です。
高級モデルでは3段鍵盤のものもあり、JOHANNUS ONEというポータブルタイプまでそろっています。

デモ映像が教会の映像や讃美歌の伴奏シーンだったりするので、明らかに宗教行事での利用をイメージしているようです。
操作部もハモンドオルガンのドローバーではなく、パイプオルガンらしいボタンやドローノブタイプのストップが中心です。

クラシックのなかでもバッハが好きで、フーガやコラールばかり弾きたい人には向いているかもしれません。
あえてピアノでなくパイプオルガンを使いこなすおじさんというのも、ネモ船長のように渋くてかっこいいと思います。

ローランドか、それ以外か

グランドピアノやアップライトピアノは作っていないものの、3万円から200万円まで幅広い機能と価格帯の電子ピアノを手がけているのがローランドです。

ピアノだけでなくシンセやオルガンの鍵盤楽器もそろえ、DJ用の機材も販売しているローランドは、ヤマハに並ぶ巨大楽器メーカーといえます。

基本のFPシリーズ

ポータブルタイプのFPシリーズは4種類あり、鍵盤はすべてハンマーアクションになります。
FP-10、30X、60Xの鍵盤は「PHA-4スタンダード」という最低ランクで、価格20万円超のFP-90Xだけ「PHA-50」と2段階グレードアップします。

ローランドもスペックの細分化が激しく、鍵盤グレードは6種類、音源は7種類くらいあります。
自分はPHA-4の鍵盤でも十分だと感じましたが、本気でピアノを練習している人には物足りないのかもしれません。

価格に比例した6~7段階グレードという製品構成は、ロードバイクのコンポーネントと似ています。
デュラエースやスーパーコーラスの最上位グレードは性能差以上に価格が大幅アップするので、アマチュアならせいぜい中間レベルで十分と思います。

ローランドのFPシリーズはポータブルタイプながら、板型の専用のスタンドとペダルユニットが別売りされています。
FP-10からFP-90Xまで、スタンドも各モデル専用に4種類販売されているのは芸が細かいです。

スタンドに乗せれば見た目は据置型のようになって、汎用のX型スタンドなどより格段に安定しそうです。
ペダルも後付け・別売りなので、めったに使わないとか掃除の邪魔になるという人にはうれしい設計です。

最安はBluetoothなし

FPシリーズは最安のFP-10を除き、新発売のFP-E50を含むすべてがBluetoothオーディオに対応しています。
30X、60X、90Xという製品名の末尾にXが付くのはBluetoothレディという意味のようです。

FP-10だけBluetoothで音声入力できない点にだけ注意すれば、ローランドは「型番・価格が上がるほど音色数やスピーカー出力が増えると」いう、わかりやすい製品構成になっています。

ポータブルタイプの同等品、ヤマハのPシリーズ、カワイのESシリーズも、最安のP-125、ES60だけBluetoothが省略されているのは同じです。
Bluetoothなしの廉価製品をさらに細分化したのが、カシオのCDPシリーズ、コルグのB2シリーズと思われます。

電子ピアノのラインナップは、鍵盤・音源に加えてBluetoothの有無で判断すると、価格とスペックの相関関係がわかりやすいです。
カタログをじっくり見比べると、ライバル会社がお互いを意識しているのか、製品構成がかなり似通っていることに気づきます。

音場再現技術

FP-60Xには「ヘッドホン・3D・アンビエンス」という特殊機能が搭載されてます。
「ヘッドフォン着用時にもピアノ本体から音が出ているように聞こえる」という音場再現技術です。

結局のところ電子ピアノの国内5大メーカーのうち、コルグ以外はなんらかのヘッドフォン音質向上機能を上位機種にそなえていることになります。
音場再現や定位に関するものから、ヘッドフォンのタイプに合わせたものまで、さまざまです。

アコースティックピアノの消音機能と同じで、搭載スピーカーの良さよりヘッドフォン向けのオプションを重視する顧客層もいるように思われます。
音源自体の品質にこだわるよりも、出力時にエフェクトを加えて、高性能なヘッドフォンで聴いたほうが、体感的なクオリティーは増すかもしれません。

ただしローランドの3Dアンビエンスについては、「ピアノ音色以外には効きません」とネット上のナレッジベースに書かれていました。
ピアノ以外の音色も多用する人には、あまり意味がないのは残念です。


参考
ヘッドホン3Dアンビエンスはどのような効果がありますか?Roland

FP-90Xにはさらに上位の「ヘッドホン・アコースティック・プロジェクション」という技術が採用されています。
これは据置型ピアノでも、最上位のLXシリーズにしか搭載されていないテクノロジーです。

LXのスピーカー・システムには同じ名前の「アコースティック・プロジェクション」と設計手法が適用されています。
FP-90Xはコンパクトなポータブル型なので、さすがにスピーカーまわりの技術は簡略化されています。

「リアルな響きや奥行き感」「ピアノの胴鳴りも再現」…という説明からすると、「ヘッドホン・3D・アンビエンス」の上位互換と推測されます。
ただこれもピアノに特化した音場再現かもしれず、ほかの音色に適用されるのかは不明です。

ポータブル最上位対決

やはりFPシリーズのなかでもFP-90Xだけは別格です。
鍵盤、音源が上位製品のHP~LXと同じだけでなく、ヘッドフォンまわりの技術も最高級のものが搭載されたモンスターマシンです。

20万円近くする卓上型の最高峰として、ローランドのFP-90Xは、ヤマハのP-525、カシオのPX-S7000に匹敵します。
カワイの最上級ES920は15万程度で買えて、ほかよりちょっと安めです。

スピーカーの性能にこだわらず、可搬性重視でポータブル電子ピアノを究めるなら、この3台が最終目標になりそうです。
いずれも小型ながら、各社シリーズのなかで鍵盤・音源・付帯機能が別格のハイエンドに位置づけられます。

見た目で選ぶなら、カシオのPX-S7000がカラバリ豊富でデザイン性も高いです。
とはいえFP-90XとP-525も昔ながらの黒いキーボードという感じで、質実剛健な渋さを感じます。

GO:PIANO88の謎

ローランドの電子ピアノでもっとも安いのはGO:PIANOシリーズです。
公式サイト上では「キーボード」に分類されていますが、鍵盤がバネ式である以外は電子ピアノといえそうな構成です。

最安価格帯なのに同時発音数128はあり、しかもBluetoothにも対応しているという、隠れた名機です。
Amazonのクラウド音声サービス、Alexaを搭載した実験的なバージョンも存在します。

GO:PIANOは61鍵、88鍵というメリハリの効いたラインナップで、なぜか88鍵のほうは音色数がたったの4つと、極端に絞られています。
同じ製品の鍵盤数違いで、基本スペックがなぜ違うのか謎ですが、そのせいか88鍵のほうが61鍵より安く売られる逆転現象が生じています。

コルグのLianoを買う際、GO:PIANO88と迷いましたが、鍵盤の軽さ、音色の多さで前者を選びました。
GO:PIANOのBluetoothは魅力的でしたが、やはり音色が少なくオルガンも1つしかないというのが不満でした。

とはいえ「基本的にピアノしか弾かない」という人なら、エレピもオルガンも余計な音色は不要かもしれません。
GO:PIANO88は演奏・練習に特化したストイックな電子ピアノといえます。

GO:KEYSが進化

2024年にGO:PIANOの姉妹品、GO:KEYS 3/5が発売されました。
GO:PIANO(GO-61P)と同形状だった旧GO:KEYS(GO-61K)から、見た目も機能も大幅にアップデートされています。

旧型は赤色一色でおもちゃっぽい外見でしたが(これはこれでよい)、新型は流行のニュアンスカラーが取り入れられています。
GO:KEYS 3はターコイズ、ダークレッド、ミッドナイトブルーで定番のブラックがなく、GO:KEYS 5はグラファイト、ホワイトのモノトーン系統です。

いずれもBluetooth搭載で、ZEN-Core音源の1,154音色、自動伴奏や録音機能などもひととおり付いています。
ZEN-Coreは高級シンセのFANTOMシリーズと同じなので、この価格帯にしてはうれしいオプションといえそうです。

GO:KEYS 3も5も61鍵で、本体の色が違う以外、見た目はほとんど同じです。
強いていえばスピーカーのカバーのパターンが違います。

5のほうはステレオ、マイクの入力端子が増え、スピーカーにパッシブラジエータが付いて機能強化されているようです。
3と同サイズながら、スピーカー出力時の音質向上には期待できそうです。

ただ鍵盤の数や構造、音源はまったく同じなので、実売2万円の価格差を考えると、たいていの人にはGO:KEYS 3で十分かもしれません。
ヘッドフォンを中心に使う人には、5の売りであるパッシブラジエータも関係ないです。

コルグやカシオのビビッドな色彩に比べて、新型GO:KEYSの微妙なカラーは今っぽく見えます。
このおしゃれな外観で、88鍵バージョンの新しいGO:PIANOも発売してくれるとうれしいです。

ローランドのオルガン

ローランドはピアノやシンセだけでなく、多段鍵盤の電子オルガンも製造しています。

ミュージック・アトリエシリーズのうち、今でも販売されているのがATELIER Combo AT-350Cです。
2段鍵盤の大型モデルですがスタンドは別売りで、黒ベースのモダンな外観をしています。

ステージ・キーボードのV-Combo VR-09-Bも、オルガン関連の機能が強化された機種です。
ドローバーのようなハーモニック・バーという操作部があり、トーンホイールをデジタル再現した音源も搭載しています。

ローランドのオルガン製品はいずれもカラーがモノトーンで、重厚感のある木調パネルを使っていないのが特徴といえます。

鈴木楽器のハモンドオルガンや、カワイのチャーチオルガンのように「いかにもオルガン」という外見でなく、かえって使いまわしやすいかもしれません。
オルガン以外のピアノやシンセ音源を鳴らしても、見た目的に違和感のない機材です。

シンセと映像機材も

ローランドは鍵盤楽器以外にも、シンセサイザーやリズムマシンなど幅広いジャンルの楽器を販売しています。

個人的に思い入れがあるのはTB-303というシンセで、これを多用したアシッド・ハウスの音色が出てくるとノスタルジーにひたれます。

機材を直接触ったことはないですが、Hardfloorの”TB Resusitation”や”Respect”といったアルバムを昔よく聴いていました。
TB-303は製品名と、これを使用した楽曲などが、アニメの『交響詩篇エウレカセブン』でさかんに引用されています。

現行モデルではTB-03という、TB-303を小型化したベースシンセサイザーが販売されています。

動画のなかで、TB-03を操作している人がJoy Division “Unknown Pleasures”のTシャツを着ているのが一瞬見えます。
ピーター・サヴィルの名デザインが、アナログシンセの雰囲気づくりにも役立っているようです。

映像用の機材としてはローランドのV-5というビデオミキサーにあこがれていました。
20年以上前ですがノンリニア編集をしていた頃、リアルタイムで映像をミックスできるV-5は革新的でした。

現在も映像用のミキサーやスイッチャーは継続販売されていて、4K解像度やHDMI入力に対応した新機種が登場しています。
もっともコンパクトなV-1HDでさえHDMI入力が4系統もあり、BPM SYNCや各種エフェクトまでそなえていて、技術の進化におどろきます。

名前の由来

いまや「ローランド」といえば、世間の人は楽器メーカーより元ホストの有名人を思い出すのではないでしょうか。

Google検索でもトップはかろうじてローランド株式会社ですが、2位以降はROLAND GROUP HDのWikipediaやYouTubeが拮抗しています。
良くも悪くもメーカーの知名度向上に役立っているとは思います。

ROLANDの本

いちおう参考のためROLANDさんの著作を読んでみたのですが、名前の由来や楽器メーカーとの関係については記載されていませんでした。
YouTubeを見ると自邸ではBGMが流れていたり、クラシックやジャズにも詳しそうですが、特にピアノを弾いているシーンは出てきません。

マンガ版『ローランド・ゼロ』には、「シャルルマーニュの聖騎士ローラン」にちなんでローランドという源氏名を授けられるシーンが出てきます。
ただこれもホスト漫画『夜王』の上条聖也をもとにした、道明寺セイヤという架空のキャラのセリフなので、事実かどうかはあやふやです。

Wikipediaによると、ローランド株式会社の社名もやはり中世ヨーロッパ叙事詩のローランから取られているそうです。
騎士道精神における勇敢さや忠誠心など、ポジティブなイメージを連想させるローランドという名前は、社名としても源氏名としても都合がよかったのでしょう。

数々の名言で有名なROLAND氏…
楽器メーカーとしてのローランドも、他社とは異なる独自路線をつらぬき、多くの名機を輩出しています。

特に2015年に発売された据置型ピアノのKIYOLA(きよら)は、家具メーカーのカリモクとコラボした至高のインテリアピアノです。
KIYOLAに関する情報は、別途こちらの記事にまとめました。

ローランドのKIYOLAとインテリアピアノ

まとめ

カシオとコルグに続いて、ヤマハ、カワイ、ローランドの電子ピアノ(おもに10万円以下のポータブルタイプ)を調査してみました。

おおよそ5万円以上するハンマ―アクション鍵盤のピアノは、どのメーカーも似たり寄ったりという感じです。
鍵盤構造や音源は各社のオリジナルですが、名前と説明だけでは良し悪しがわかりません。

ヤマハが案外安い

各社のカタログとスペックをじっくり見比べると、おおむね性能と金額は比例しているようです。
際立った掘り出し物というのはなさそうですが、カシオとコルグに続いてヤマハのPシリーズが意外とリーズナブルに感じました。

購入に際してBluetooth接続機能や専用スタンドの有無というのも、ひとつの判断基準になると思います。
またポータブル型としては、スピーカーの性能よりヘッドフォンの音場再現機能を重視するのもありだと思います。

その点ではヤマハのPシリーズ全機種に「ステレオフォニックオプティマイザー」が搭載されているのは魅力的です。
カシオ、カワイ、ローランドのヘッドフォンに関する同等機能は、中間~上位グレードにしか備わっていません。

鍵盤構造は大差ない?

鍵盤の弾き心地は大型楽器店でまとめて試せるとよいのですが、地方ではモールにある島村楽器くらいしか思いつきません。

いくつか触ってみた印象としては、素人レベルなら各社最安のピアノタッチ鍵盤で十分な気がしました。
それ以上の鍵盤・音源の違いについて語れるのは、よほどのマニアか業界人だけだと思います。

電子ピアノの世界でも、ロードバイクのように何台も所有して弾き比べている人がいるのでしょう。
文具沼やインク沼と同じく、楽器沼やピアノ沼も存在するようです。

6~7万円がおすすめ

Piaggero、GO:PIANOといった最安クラスと、P・ES・FPシリーズのような本格鍵盤の廉価クラスは、せいぜい価格差2万円程度という感じです。
スタンド付きというメリットに惹かれてコルグのLianoを買いましたが、もう少し上乗せしてピアノタッチのモデルにしてもよかったかと考えています。

KORGの格安88鍵電子ピアノLianoレビュー

88鍵を検討する時点である程度の中級者か、ピアノを続ける覚悟がある人だと思うので、せっかくなら後者を選んだほうが後悔は少ないでしょう。
さらにBluetooth搭載の6~7万円レベル(ヤマハP-225やカシオPX-S1100)を買えば、最悪、弾かなくなってもスマホ用の高品質なワイヤレススピーカーとして流用できます。

電子ピアノは多種多様ですが、ご自身の演奏経験と意気込みによって適正モデルが決まってきます。
万が一まったく使わなくなっても棚や物置として転用できるよう、蓋つきの据置モデルにするのも賢い選択と思います。

サングラスをかけた犬