KORGの格安88鍵電子ピアノLianoレビュー

88鍵のフルサイズで、スタンド付き3万円台」という破格の電子ピアノKORG Lianoを買ってみました。

音色は8つだけで余計な機能もないため、練習に集中できます。
サイズはコンパクトで重量も6kgと控えめ、鍵盤はキーボードやシンセサイザー並みに軽いのが特徴です。

Korg Liano

88鍵にしては、とにかく価格が安いので、「電子ピアノに興味があるけど、長続きするかわからない…」という自信のないかたに向いていると思います。

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ヤマハMX49の反省

Lianoを買う前は、ヤマハのMX49というシンセサイザーを使っていました。

ヤマハのMX49

機能満載で音色やエフェクトも多いうえ、コンパクトで軽いところが気に入って購入したものです。
購入したのは今から8年ほど前ですが、中古で3万円くらいと安く手に入りました。

当時は都心の狭い賃貸住宅に住んでいたので、サイズが小さいキーボードは重宝しました。
普段は押入れにしまっておいて、使うときだけ机のうえに出すという感じで利用していました。

49鍵は少なすぎる

省スペースなのはよかったのですが、いかんせん鍵盤数が49というは少なすぎました。
ちょっとした曲を弾こうとすると、すぐに鍵盤が足りなくなってストレスがたまります。

ヤマハのMX49

MX49はピアノの練習用というよりは、コンパクトな音づくりの道具…
せいぜい片手で弾く、ライブ用のサブキーボードという位置づけだったのかもしれません。

多機能は使いこなせない

MX49には本格的なシンセサイザーらしく、音色やエフェクトがたくさん用意されていました。
つまみやボタンはたくさんあるのですが、そもそも音づくりの原理がわかっていないので、適当にいじっても狙った効果を出せなかったのが残念です。

高級シンセを使いこなすには、それなりに勉強が必要そうです。

ヤマハのMX49

自分は別にライブで演奏するとか、作曲に興味があるわけでもありません。
単に趣味でピアノを弾きたいだけなら、高機能のMX49はオーバースペックなうえ、鍵盤が足りず中途半端でした。

自転車やロードバイクも趣味のひとつですが、パーツの改造にこだわるより、早く外に漕ぎに行きたいという性格…
キーボードも同様に、DTMではなくあくまで演奏を楽しみたいなら、複雑な機能は必要ない気がしました。

音色は少なくてよい

ふだん弾くのはピアノやオルガンが中心です。
練習に専念するならエフェクトもリバーブも必要なく、シンプルで聞き取りやすい音色がいちばんと思います。

安いカシオトーンでも100以上の音色があったりしますが、ギターやバイオリン、木管・金管楽器など使う機会はまれです。
ましてやパーカッションやドラムキットなど、何に使ったらいいのかわからないくらいです。

下手に音色が多すぎると、いろんな音を出すので遊んでしまい、演奏に集中できなくなります。
レイヤーやスプリット機能までいじりはじめると、泥沼にはまります。

ヤマハのMX49

あくまで練習目的でピアノを選ぶなら、音色の数は最低限でいいと思います。
基本のピアノ、それからエレクトリックピアノとオルガンがそれぞれ数種類選べたら十分です。

高度な機能を使いこなせなかったMX49は、あきらかに宝の持ち腐れでした…
そのうちほとんど使わなくなってしまったので、引っ越しを機に中古で売ってしまいました。

ヤマハのMX49

とりあえずコンパクトな49鍵を試してみるだけなら、1万円以下で買える通常サイズ鍵盤の最安製品、CTK-240あたりで十分だった気がします。

Lianoを買った理由

MX49の前はヤマハのPSRシリーズや、鈴木楽器のハモンドオルガンを使っていました。
いずれも鍵盤の数は61でしたが、さほど困ることはなかった記憶があります。

ただ49鍵で苦労した反動か、次は88鍵を試してみたくなりました。
地方に引っ越して家が広くなり、「フルサイズの鍵盤でも置ける余裕ができた」という事情もあります。

ピアノは鍵盤が重い

88鍵のキーボードは「電子ピアノ」というカテゴリーが中心になります。

Korg Liano

ピアノは子どものレッスン向けに手堅い需要があるのか、入門用からハイエンドまで、各メーカーからさまざまな製品が販売されています。
キーボードやシンセサイザーより種類も機能も豊富で、鍵盤や音源のグレードもまちまちです。

楽器店で実機を触らせてもらうと、5万円以上の製品からは鍵盤のタッチがピアノに似ているとわかりました。
価格が高くなるほど鍵盤の構造が複雑かつ大型になって、よりリアルなピアノの感触に近づくようです。

Korg Liano

エスケープメントのクリック感などもおもしろいですが、重すぎる鍵盤は指が疲れそうに感じました。
昔は鍵盤の軽いエレクトーンを弾いていたので、ピアノの重い鍵盤やタッチレスポンスに抵抗感があります。

MX49の反省もふまえて「88鍵、単純機能、軽い鍵盤」…と条件を絞っていったら、候補の製品が見えてきました。

予算3万円のピアノ選び

せっかく高いのを買ってもまたすぐ飽きるかもしれないので、予算は3万円程度とかなり控えめに設定してみました。
この価格帯で88鍵となると、候補はローランドのGO:PIANO88か、コルグのLianoあたりに絞られます。

Korg Liano

さらに4万円台まで出せるなら、カシオのCDP-S110やS160といったピアノタッチの廉価機種も選択肢に入ります。
CDPシリーズはハンマーアクション機構搭載の最安価格帯ですが、音源など他のスペックはかなり削られています。

重い鍵盤も興味はあるのですが、違和感なく弾けそうな軽めの打鍵感を優先してCDPは候補から外しました。

ローランドは鍵盤が重い

GO:PIANO88は重量7kgとフルサイズにしては軽めの部類で、Bluetooth機能が付いているのが特徴です。
ただし音色数は4種類と本当に最低限で、「ピアノ、Eピアノ、オルガン、ストリングス」の各1音色ずつしかありません。

かなり尖った設計でおもしろいですが、GO:PIANOは鍵盤のバネが重く感じました。
ヤマハのピアジェーロも個人的には鍵盤がヘビーに感じるのですが、ローランドはそれ以上です。

GO:PIANOとLianoと比べれば、パソコン用キーボードの黒軸と赤軸(チェリーMXスイッチ)くらいの違いがあるように思います。

最低限の音色数

コルグのLianoも88鍵あり、重量はGO:PIANO88よりさらに軽く6kgです。
Bluetooth機能は省略されていますが、USB端子は付いています。

音色は決して多くはないものの、GO:PIANOの2倍となる8種類内蔵されています。
ピアノ、エレピ、オルガンがそれぞれ2種類ずつ用意されていて、特にパイプオルガンと電子オルガンの音色が両方入っているのはうれしいです。

Korg Liano

「音色は少なくてよい」と思っていたのですが、さすがにGO:PIANOの4種類は少なすぎました。
Lianoの8音色はメリハリの効いたセレクションで、せめてこのくらいは欲しかったという理想形です。

スタンド込みが決め手

またLiano購入の決め手となったのは、3万円台の実売価格でスタンドも含まれているという点です。

Korg Liano

Lianoは型番L1が本体のみ、L1SPがスタンド込みという設定になっています。

Korg Liano

MX49は軽くコンパクトだったので専用スタンドを買わず、使うときだけ机のうえに乗せて弾いていました。
しかし88鍵の特大サイズだと、それほど重くないLianoとはいえ、毎回テーブルに上げ下げするのは大変そうです。

どのみちスタンドを買い足すならピアノとセットのほうが手間も省けて、「他社製品だと相性が悪いかも…」といった懸念も回避できそうです。

JamStands

Bluetoothがないのは妥協しましたが、「適度な音色数、スタンド付き」といった魅力にひかれてLianoを選びました。
最大同時発音数も120(※音色によって異なります)とそこそこ多いので、演奏中に困ることはなさそうです。

2023年に楽天市場の最安店舗で注文した際は、3.6万円くらいの価格でした。
ポイント10倍キャンペーンなどのタイミングで買うと、ポイント還元も含めて実質的には2万円台で手に入った感じです。

Lianoのサイズと鍵盤

通販サイトから届いたLianoの外箱を見ると、製造元はベトナムになっています。
コルグのRH3鍵盤搭載モデルは日本製なのが売りですが、廉価なLianoはさすがに海外製だったようです。

Korg Liano

軽いが大きい

はじめて所有した88鍵盤の電子ピアノは、想像以上に横幅が大きかったです。

Lianoは幅1,282mmとコンパクトなほうらしいですが、賃貸マンションのリビングに置くとかなり圧迫感があります。
やはりピアノというのは広い戸建て住宅に住む、富裕層向けのレジャーなのだと思い知りました。

Korg Liano

一方でLianoの重量自体は6kgと、そこまでヘビーではありません(スタンド込みだと8.4kg)。
MX49の3.8kgよりはさすがに重いですが、過去に持っていた鈴木楽器のハモンドオルガンXK-2(61鍵なのに18.5kgもあった…)に比べると余裕の軽さです。

ペダル・脚付きの高級電子ピアノになると、重さはたいてい30kg以上あります。
「ひとりでも運べるように…」といったニーズに合わせて、こうしたスタンド分離式のポータブル電子ピアノが販売されているのでしょう。

Lianoも軽いほうとはいえ、横幅1m以上あるので、ひんぱんに上げ下げするのは危険です。
「使うときだけ机のうえに出す」といった利用法は難しく、基本的にはスタンド上に固定設置することになります。

Korg Liano

Liano付属のX型スタンドはUltimate SuportのJamStands、JS-XS300という製品です。
値段相応に簡素なスタンドでよく揺れますが、Lianoを載せるうえではそれほど問題ありません。

このスタンドは高さの調整方法にくせがあります。
試行錯誤したプロセスを別の記事にまとめました。

Liano付属のX型スタンド高さ調整方法

88鍵の使用感

購入前の期待どおり、どんな曲を弾いても鍵盤が足りなくなることはなく、ストレスが減りました。

低音域が拡張されるので、バンド用のスコアを見ながら、ベースのパートを左手で担当できたりします。
特にE.ORGANは低音の「ボスッ」という音がベースそっくりです。

Korg Liano

少ない鍵盤数でもスプリット機能を使えば同じことができますが、曲ごとに設定を切り替えるのが面倒です。
88鍵なら、わずらわしい小細工なしに、いきなり極低音を出せるのが魅力といえます。

最低音~最高音のオクターブまで使う曲にはまだ出会っていないものの、ピアノやパイプオルガンの重低音と、高音のキラキラした音は気持ちいいです。
ただ選ぶ音色によっては、両端の鍵盤がほとんど判別不能なノイズにしか聞こえないものもあります。

ライトなLS鍵盤

LianoのLS鍵盤は、KORGのKRONOS LSというキーボード(価格25万円くらい)から引き継がれています。
KRONOS LS自体が従来機種より軽い鍵盤を採用していたらしく、Lianoも電子ピアノの分野では最軽量といえる打鍵感です。

Korg Liano

ハンマーアクションではないものの、価格差10倍くらいある高級シンセKRONOSと鍵盤が共通なのは、なんとなくお得感があります。
バネ式鍵盤は製造コストがたいしてかからないのかもしれませんが…

Korg Liano

鍵盤の見た目は箱型でピアノっぽく、タッチ・コントロールで強弱もつけられます。
指で押さえた感触はフワフワなので、オルガンのグリッサンドも楽にこなせるほどです。

Korg Liano

エレクトーンやキーボードに慣れた人なら、違和感なく使えそうです。
フルサイズの極軽鍵盤というのも、案外めずらしい気がします。

逆にピアノの練習用としては感触が違いすぎるので、まったくおすすめしません。
廉価帯でも鍵盤にリアルな重みがある、ヤマハPシリーズ、ローランドFPシリーズなどを選んだほうが後悔しないと思います。

ストイックな練習機材

Lianoは機能や音色が少なく、人によっては物足りなく感じられそうです。
しかし個人的には余計なオプションがないことで、「練習に集中できる」という積極的なメリットを感じました。

音色選択もダイヤル式なので、前回の設定を見た目そのままに保持できます。
電源をオンオフして演奏を再開しても、すぐに弾きはじめられるのが便利です。

簡素な操作パネル

Lianoの操作パネルは値段相応に素っ気ないです。

Korg Liano

LEDランプが点くのは電源ボタンのみで、液晶パネルもありません。
スイッチやダイヤルも安っぽいプラスチックで、明らかにコストを削った感があります。

見た目は貧相ですが、実際に触ってみると耐久性は問題なさそうです。
余計なボタンがなくパネル上の凹凸が少ないので、ほこりがたまりにくく掃除も楽です。

鍵盤メニューがない

Lianoでは「REVERBとMETRONOMEボタンの同時押し」がファンクションキーに相当します。
しかし物理ボタンを組み合わせて使う、鍵盤上部の機能表示が大胆に省略されています。

Korg Liano

そのため2つのボタンを押したあと、次にどの鍵盤を押せば目的の設定が変更できるのかは、説明書を見なければわかりません。
あまりに不親切すぎて、ユーザーインタフェースとしてはかなり割り切った設計です。

Korg Liano

パソコン用キーボードのHHKBでも、キートップに印字がない「無刻印」もモデルが販売されています。
こちらは「ブラインドタッチを完璧にこなせるプロ用製品」という位置づけですが、Lianoも初心者向けといいつつ、玄人好みの無記名仕様になっています。

とはいえ実際はタッチ強度やピッチ調整など、初期設定で満足ならわざわざいじる必要はありません。
トランスポーズやメトロノームも自分は使わないですし、デモソングも一度聴けば十分です。

「余計な機能は使わず、とにかく演奏に集中したい」というユーザーのために、あえてメニューの印字まで省いたように思われます。
見た目がすっきりしてパネルへの印刷費用もかからず、一石二鳥といえます。

Korg Liano

音色選択がダイヤル式

ボリュームだけでなく、音色選択もダイヤル式のキーボードは初めて見ました。
見た目は武骨ですが、ダイヤルが大きくてつかみやすく、非常に実用的だと感じます。

HHKB

音色が無数にあるキーボードは、ボタンをいくつか組み合わせて選ぶタイプが主流です。
目的の音色にたどりつくまえ上下ボタンを押し続ける必要があったりして、必ずしも便利とはいえません。

ヤマハのP-145、カワイのES60といったシンプルな電子ピアノは、FUNCTIONやSOUNDボタンを押しながら鍵盤で音色を選ぶ方式です。
これも両手で操作する必要があり、ダイヤル式の簡便さにはかないません。

Korg Liano

Lianoのダイヤルは「音色が8つしかない」という制約を逆手に取った、すばらしいデザインだと思います。

音色の名前もパネルに直接プリントされているので、迷うことなく操作できます。
ほかの家族やゲストに演奏してもらう場合も、説明なしで選んでもらえるメリットがあります。

Korg Liano

強いて欠点を挙げるとしたら、ピアノからストリングスに切り替える場合などは、ダイヤルを端から端まで思い切り回さなければなりません。
あまりぐりぐりと負荷をかけると壊れないか心配ですが、今のところ不具合は出ていません。

厳選された8音色

Lianoに搭載された音源は、ピアノとエレピが2種類、オルガンもチャーチとハモンドっぽい音色の2種類、そしてハープシコードとストリングスという厳選された8種類です。

Korg Liano

ピアノ系は派手めとおとなしめの2種類が対になっているので、曲に合わせて雰囲気を変えられます。
エレピもオルガンもよく聴く代表的な音色が選ばれていて、数は少なくても融通が効きそうです。

個人的にはハープシコードとストリングスを省いて、オルガンの音色を増やしてほしかったです。
スマホのアプリから自由に音色を選択したうえ、物理ダイヤルにプリセットできたりすれば、さらによかったと思います。

リバーブとコーラス

リバーブとコーラスは細かいパラメーターや段階調整ができず、オン/オフの切り替えしかありません。

デフォルトでは全音色のリバーブが有効化されているようです。
残響を消したければ、明示的にREVERBボタンを押す必要があります。
パイプオルガンなどは、リバーブを切ると劇的に地味な雰囲気に変わります。

Korg Liano

唯一搭載されたエフェクトのコーラスは、「リバーブ・メトロノーム同時押し→鍵盤押下」の二段階操作で切り替えできます。

コーラスのオンオフは面倒ですが、もともと各音色の最適な設定にプリセットされているそうです。
よほど音質にこだわりがなければ、わざわざ変更しなくてよいかと思います。

いろいろ試してみたところ、ピアノの2音色はデフォルトでコーラスが無効化されているようです。
有効化するとビブラートが効いて、若干エレピのような音に変わります。

ピアノについてはたまの気分転換に、コーラスをかけて音色をアレンジしてみるのもよさそうです。

音源はステレオPCM

コルグは他のメーカーと違って、価格による音源の差がほとんどありません。
Lianoにはコルグ製品共通の「ステレオPCM音源」が搭載されています。

電子ピアノで最上級(といっても10万円台)のG1B AIRですら、Lianoと同じステレオPCMになっています。
20万以上のステージピアノSV-2になると、ようやくEDS-Xなど高度なサウンドエンジンが搭載されます。

音源は好みの問題?

自分はそんなに高い電子ピアノを使い比べたことがなく、音源の違いがいまいちわかりません。
ヤマハやローランドの最上位「ベーゼンドルファーインペリアルサンプリング」や「ピアノ・リアリティ・モデリング音源」などは名前がすごそうですが、安い音源とどれほど差があるのか不明です。

Lianoの価格帯からすれば、ヤマハの「AWMステレオサンプリング」やローランドの「スーパーナチュラル・ピアノ音源」と同等品質に思われます。

Korg Liano

いずれもサンプリングの原理は同じだと思いますが、モデルになっている楽器や収録・加工方法に違いがあるのでしょう。
その点では品質上の優劣がつけられず、「このメーカーの音が好き」という好みの問題に帰着しそうです。

Korg Liano

とりあえずLianoの音を聞いていて、著しく不快だとか耐えられないといった不満はありません。
特にオルガン系の2音色は、実機の雰囲気をよく再現していると思います。

音源の間接的な影響

音源やスピーカーの性能がよかったとしても、一般ユーザーには「練習を楽しめて上達が早くなる(かも?)」という間接的な影響しかないはずです。
また「高級品を使っていて所有欲が満たされる」といった、気分的なメリットもあるでしょう。

表現の微妙なニュアンスまで追求したい上級者ならともかく、初心者は安価なステレオPCMで十分な気がします。
むしろ音源にこだわり始めると、ほかのピアノを買いたくなったり、機材のことばかり考えて練習に集中できなくなりそうです。

Korg Liano

楽器メーカーや販売店は、利益率の高いハイスペック商品を売りたいのだろうと思います。
あるいは「松竹梅」の商品ラインナップで心理的に少しでも高い商品を選んでもらうため、すさまじく高価な最上級モデルを用意しているのかもしれません。

自分の目的と身の丈にあった機能性を謙虚に選ぶか、ちょっと背伸びした上級機種に投資してモチベーションを上げるか…
というのは、趣味の買い物でいつも迷うポイントです。

やはり「練習要素のある趣味の道具」という意味で、電子ピアノはロードバイクに似ている気がします。

音色が不連続かも

Liano音源の不満を強いて挙げれば、ピアノやオルガンで並んだキーの音が不連続というか、急に飛ぶように聞こえるところがあります。
自分の耳に自信がないので確かなことは言えないのですが、上位製品の音源だとこうした不具合もなく、音のつながりが滑らかになるのかもしれません。

Korg Liano

あるいはサンプリング元の楽器によって、音源とは「もともとそういうもの」という可能性もあります。

楽器の個体差や構造上の制約で、階調が不連続になっていることもありえます。
逆にそういうアナログなゆらぎが、人間の耳にはかえって好ましく感じられたりしそうです。

音色の不連続性はピアノ本来の性質なのか、音源の収録・編集方法によるものなのか、それとも自分の耳や脳がおかしいだけなのか…

原因がいくつも想定されるので、音色のスムーズさを評価するのは難しいです。

イタリアンピアノの感想

Lianoはイタリアンピアノの音源を採用しているのが特徴らしいです。
自分はピアノの種類に詳しくないですが、「PIANO 1」の音は、普通のピアノよりちょっとキラキラした華やかな音に聞こえます。

ちなみに昨年コルグから発売されたPOETRYという電子ピアノは、ショパンにゆかりのあるPLEYELというピアノの音を搭載しているそうです。

オリジナルのピアノ個体は希少らしく、好きな人には価値あるサンプリングかもしれません。
筐体もウォールナットっぽい木目調で、ショパンのデモソングが50曲も収録されていたりして、個性的な製品に見えます。

「格安軽量鍵盤のLiano」「ショパン愛好家のためのPoetry」…

大手メーカーとの差別化を図るためか、次々とエッジの効いた企画を打ち出してくれるコルグはユニークな存在です。
オルガンのVOX Continentalもずっと気になっています。

バスレフ付きスピーカー

Lianoは筐体の上面にスピーカーがついています。
見た目はカシオトーンやポータートーンのようで、安っぽく感じられるかもしれません。

Korg Liano

しかしピアノの背面や下側にスピーカーがついているよりは、弾いている人にダイレクトに音が届いて合理的な構造といえます。

また背面にも穴が開いていて、内部がバスレフ構造になっています。
コンパクトなサイズのわりに低音がよく響くと、カタログではうたわれています。

Korg Liano

マンションでは使えない

スピーカー付きのキーボードや電子ピアノは、人前で演奏するときに便利です。
ただ個人的に練習する場合、自分はヘッドフォンしか使いません。

Korg Liano

やはり楽器不可の賃貸マンションで、堂々とスピーカーで音を鳴らすのは気が引けます。
臆病な性格なので、夜間の演奏時は鍵盤のカタカタ鳴る音ですら、隣室に響かないかと不安になります。

高級機種に搭載される豪華なスピーカーも、防音性の低い集合住宅では役に立たない可能性が高いです。

やはりピアノは富裕層のレジャー…
Lianoの売りであるバスレフ方式の低音も、自宅では真価を発揮できないのが残念でした。

音量が大きい問題

またLianoは本体のボリュームを最低限まで絞っても、そこそこ大きな音が出るのでやっかいです。
演奏者にだけ聞こえるような、静音モードが用意されていればよかったと思います。

HHKB

そう考えると同じコルグ製品でも、D1のようなスピーカーレスで奥行きの浅い、スリムな電子ピアノがよかったかもしれません。
D1は家庭用というよりステージ向けの機種ですが、うっかり外に音を出してひんしゅくを買うアクシデントも防げます。

賃貸居住者をターゲットにするなら、LianoはD1のようにスピーカーすら省略して、さらにコストダウンを図ってもよかった気がします。

USBの外部入力可

LianoにLINE-INはなく、代わりにUSBの入力端子が付いています。

Korg Liano

最近あまり見なくなったType-Bの四角い端子で、USBの変換ケーブルは付いてこないため、別途用意する必要があります。

Korg Liano

試しにパソコンとつないでみたところ、外部スピーカーとして問題なく使用することができました。
出力デバイスに「Liano」と表示され、PC側での音量調整も可能です。

LianoのUSB接続

ピアノ本体ではそこまで音を絞れませんが、PCの出力レベルを下げればかなり音量を下げられます。

LianoのUSB接続

ちなみに音楽鑑賞用のスピーカーとして使う場合は、デフォルトで設定されている30分の「オート・パワー・オフ」を無効化しておくと便利です。
この操作には先述の「リバーブ、メトロノームボタン同時押し+鍵盤押下」が必要になります。

Korg Liano

控えめにBGMを流してみると、ノートPCやモニターに搭載されているスピーカーよりもずっといい音に聞こえました。
廉価版の電子ピアノながら、搭載スピーカーやバスレフの良さを実感できて感激しました。

音源同時出力可

USB-Audioの再生時に鍵盤を弾くと、外部入力とピアノの音が重なって出力されます。
この機能はスピーカーだけでなく、ヘッドフォンでも有効です。

Korg Liano

練習曲を聴きながら同時に弾いたり、楽曲を耳コピーする際に便利な使い方です。
昔は2つのヘッドフォンを重ねて頭に乗せ、キーボードとテープレコーダーを同時に聴いて練習していたのがなつかしいです。

とはいえピアノを弾きつつ、パソコンをマウスで操作するとのもわずらわしいです。
Microsoft Surfaceのように、タブレットにもなる2 in 1パソコンでなければ、譜面台にも乗りません。

もしBluetooth対応の電子ピアノなら余計なケーブルもいらず、スマホから簡単に課題曲を再生できたはずです。
音楽鑑賞用だけでなく、練習や耳コピー時の聞き取り用としても、Bluetoothがあれば便利だと実感しました。

Bluetooth機能はなし

残念ながらLianoにBluetoothは搭載されていません。

Korg Liano

ほかにもヤマハのP-145B、ローランドのFP-10、カシオのCDP-S160など、5万円以下の格安ピアノはBluetooth非搭載のものが多いです。
KORGの上位機種B2もダメで、C1 AIRからようやくBluetoothに対応しています。

Bluetoothでスマホとペアリングすれば、練習用だけではなく普通のスピーカーとしても使えます。
電子ピアノのスピーカーはそこそこ大きいので、安物のBluetoothスピーカーより性能がよいかもしれません。

ただこれもマンションでは音漏れが気になり、あまり大きなボリュームでは再生するのは気が引けます。

以前はミニコンポやBluetoothスピーカーを使っていましたが、隣室に配慮してやめてしまいました。
最近はスマホ本体のスピーカーもそこそこ音質がよくなってきたので、直接鳴らせばまあいいか、という感じです。

Korg Liano

Lianoを外部スピーカーとして使うつもりはなかったので、Bluetooth機能については妥協しました。
しかし練習用に曲を聴くことを考えたら、スマホと無線で接続できたほうが便利だったと後悔しています。

ヘッドフォンに投資

音にこだわるとしても、マンション住まいならスピーカーよりヘッドフォンに投資した方がリーズナブルといえます。

自宅で作業用のBGMを聴いたりする際は、オーディオテクニカのちょっといいBluetoothヘッドフォン(ATH-HL7BT)を使っています。

付属の有線ケーブルで接続すると、Lianoとも問題なく接続できました。
ヘッドフォン本体の電源を入れなくても音は聞こえるので、演奏中にバッテリーを消耗することもありません。

ATH-HL7BT

ATH-HL7BTは比較的安価ながら開放型なので、長時間つけても負担が少ないのがメリットです。
ただし周囲に音が少し漏れるため、ピアノの練習中、ヘタな演奏を家族や同居人に聞かれるのは気になるかもしれません。

BTヘッドフォンで両立?

ちなみにATH-HL7BTでBluetoothの無線入力と、オーディオケーブルの有線入力を両立できるか試してみましたが、ダメでした…

スマホとBluetooth接続中に、ケーブルをヘッドフォンに差し込むと、無線接続のほうが切れてしまいます。
逆に有線でピアノとつないだ状態では、ヘッドフォンの電源スイッチが入りませんでした。

ATH-HL7BT

スマホの楽曲を無線で流しつつ、ピアノの音声も同時に聞けたら便利と思ったのですが、さすがに無理でした。
やはり音声を外部入力して演奏音と重ねるには、ピアノ本体にBluetooth機能がいるようです。

楽器用の無線ヘッドフォン

Bluetoothの遅延時間は最大0.2秒程度といわれています。
この遅延を独自の無線技術で0.004秒まで短縮した、ヤマハの楽器用ワイヤレスヘッドフォン(YH-WL500)が登場しました。

無線通信には2.4GHz帯の周波数を利用していて、付属のトランスミッターと楽器のヘッドフォン端子を有線接続して使用します。
いちおう普通のBluetooth接続もできるので、スマホやPCでの音楽鑑賞にも活用できます。
(信号が遅れるので演奏時にBluetoothは使わない前提だと思います)

YH-WL500はハウジングがセミオープン型で、長時間着けても疲れにくいのが特徴です。
いまLianoと有線接続しているオーディオテクニカのATH-HL7BTも開放型で、メリットは実感しています。

ただ密閉型と違って外の音が聞こえるうえ、楽器の音が漏れるという懸念はあります。
このヘッドフォンもATH-HL7BTと同じく、練習中の音をまわりに聞かれたくない人には向いていないかもしれません。

ATH-HL7BT

楽器演奏の分野でヘッドフォンの無線化は長年の課題でしたが、ついに技術の進歩で解決しそうな気配です。
4万円以上する高級品とはいえ、どのみちマンション住まいでスピーカーが使えないなら、ピアノ本体よりヘッドフォンにお金をかけるのもありだと思います。

ヤマハの楽器用ヘッドフォンで問題解決できないかと思ったのですが、よく考えるとこれは「ピアノ本体の音声出力を無線化する」だけの特殊なデバイスでした。
ややこしいですが、ピアノ本体にBluetoothの受信機能を後付けできるわけではありません。

外付けのBTアダプタ

LianoをBluetoothに対応させる手段として、外付けのアダプタが使えないか調べて見ました。

ヤマハからUD-BT01という電子ピアノ向けのワイヤレスアダプタが販売されています。
USBタイプBのケーブルも同梱されているようです。

LianoのUSB端子につなげば使えそうなのですが、よく見るとこれはMIDI用のアダプタでした。
公式サイトに「iOSデバイス/Mac,Bluetoothイヤホン等への音声送受信には対応しておりません」と書かれており、スマホの音声を入力することはできないようです。

また端子の形状がUSBタイプAになりますが、カシオのWU-BT10というワイヤレスアダプタもLianoで使える可能性はありそうです。

こちらはMIDIとAUDIOに両対応しているので、スマホやタブレットから音声を飛ばすこともできます。
ただLianoに差すには別途端子の形状変換が必要になり、そもそもカシオ製品以外で動くかどうかは不明です。

そのほかた市販のUSBオーディオトランスミッターも、端子を変換すればLianoで使えるかもしれません。

汎用のBluetoothアダプタは、PCやゲーム機から音声を飛ばすのが目的です。
逆にスマホの楽曲をワイヤレス入力して、楽器で再生できるかは未知数といえます。

いずれにしてもアダプタ本体に加えて、USBタイプA(メス)⇔タイプB(オス)への変換ケーブルが必要になります。

いろいろ合わせて5,000円くらいはかかるうえ、期待どおりに動くかわかりません。
Bluetooth接続にこだわるならガジェットに頼るよりも、素直にピアノ本体を対応機種に買い替えたほうが早そうに感じました。

譜面立ても付属

Lianoにはスタンドと一緒に、シンプルな譜面立ても付いてきます。

ワイヤーを曲げただけの簡素な構造で、あくまで軽さを追求したミニマムな形状が好ましく感じます。
上面パネルの穴に抜き差しすることで、簡単に着脱できます。

Korg Liano

ただワイヤーが細く隙間も多いので、譜面台として安定感抜群とは言いがたいです。
小さい楽譜を中央からずらして置いたら、穴からすり抜けて落ちてしまうかもしれません。

A4サイズの楽譜やプリントした紙を立てかけて使っていますが、今のところ不具合はありません。
大きめのiPadを置いても問題はなさそうです。

Korg Liano

楽譜表示にiPad

Lianoのパネル上には溝が彫ってあり、ここに楽譜を差し込んで立てると、ずれずに安定します。
スリットの幅はそこそこ大きいので、カバーを装着したiPad Proでも難なく収まりました。

Korg Liano

自宅ではピアノを壁際に置いているので、楽譜やタブレットを壁に直接立てかけることができます。

譜面立てを使わないと、演奏中に揺れて脱落するおそれはあります。
ただ溝にしっかり差し込めばわりと安定して、手前にずり落ちてくることもありません。

Korg Liano

12.9インチ版のiPad ProだとA4ノートに近いくらいのサイズなので、画面が見やすく便利です。
自分はネット購入したりスキャンしたPDFの楽譜を、DropboxでiPadに転送して表示させています。

ほかにピアノ練習用のアプリを入れて使うのもよさそうです。
iPadから練習曲を再生してヘッドフォンで同時に聞くため、やはりピアノにBluetooth機能があればよかったと、つくづく思います。

その他の特徴

簡易仕様のLianoですが、個人的にまったく使わない機能もいくつかありました。

電池は必要ない

Lianoは単3電池6本で、8時間動くことになっています。

Korg Liano

昔は電池駆動のキーボードといえば、すぐバッテリーを消耗して使い物にならなかった記憶があります。
最近の製品は消費電力が削減され、電池の性能もアップして稼働時間が増えたのかもしれません。

ただ家のなかで普通に練習するだけなら、電池を入れて動かす場面はなさそうです。
スタジオで練習する際も外部電源はあると思いますし、強いて電池で動かすとしたら、屋外でライブ演奏する場合でしょうか…

個人的にいまいち電池を利用するシーンが思い浮かびません。
電池駆動は省略して、そのぶんさらに軽量化・コスト削減してもよかった気がします。

Korg Liano

ペダルも使わない

Lianoには軽くてコンパクトなダンパーペダルも付いてきます。
ペダルを踏むと音が伸びて、サスティンの効果が得られます。

Korg Liano

普段ほとんどペダルを使わず、そのわりに場所をとるので外してしまいました。
床に置くと掃除の際、邪魔になり、本体から伸びるケーブルもわずらわしいです。

Korg Liano

無線で通信できるペダルがあれば、もっとよかったかもしれません。

バンドルソフト

Lianoを購入すると、無料アプリをダウンロードするためのURL(QRコード)とシリアル番号がついてきます。

Korg Liano

KORG Software Bundleというサイトにアクセスして、カードに記載の認証コードを入れるとアプリのダウンロード画面に進めます。

Korg Liano

Lianoのコードで手に入るソフトは以下の4種類でした。

  • KORG Gadget 2 Le
  • KORG Module
  • Skoove – Premiumプラン 3か月トライアル
  • TuneCore Japan(ディスカウントクーポン)

このうち上の2つは普通に公開されているアプリで、iOSならApp Storeから無料で落とせます。

Korg Liano

音源モジュールなど試したみたい気もしますが、LianoのUSB端子からスマホやタブレットに接続する必要があります。
手持ちのiPhoneはLightning、iPadはUSB-Type Cですが、どちらも変換ケーブルを持っていないのであきらめました。

バンドルソフトのなかには「Skoove(スクーブ)」というピアノ練習アプリもあります。
ただしこちらは3か月だけのトライアル利用権という、渋い内容でした。

Korg Liano

いちおうリンクをたどって公式サイトにアクセスしてみると、そもそも「3か月無料」と書いてあります。

Korg Liano

KORGのクーポンコードを入れれば、SkooveのPremiumプランというのを試せるようです。
ただ各プランの内容や違いに関する説明が見当たらなかったので、どのくらいお得な特典なのかはわかりません。

Liano自体が安すぎるので、おそらくバンドルソフトもたいしたものではないだろうと推測できます。
いずれ興味が出てきたらiPadとの接続ケーブルを買って、アプリを試してみるかもしれません。

まとめ

安さが魅力のLianoは音色も機能も最小限なので、「気が散らず練習に専念できる」という意味では期待どおりでした。
上級者には物足りないと思いますが、とりあえず88鍵を試してみたかっただけなのでLianoで満足しています。

Korg Liano

ライトユーザーに最適

ピアノを弾くのは純粋に趣味で、特にレッスンを受けるとか、外で発表する機会もありません。
過去にはもっといいキーボードを持っていましたが、仕事が忙しかったりして練習できず、長続きしないのが悩みでした。

実はLianoも買ってからしばらく、押入れにしまい込んでいた時期がありました。
久々に出して弾いてみると楽しいですが、またいつまで続けられるかわかりません。

Korg Liano

「たまに思いついてピアノが弾きたくなる…」といった生半可なユーザーには、Lianoくらいの入門用製品で十分でした。
安いので飽きても後悔が少ないというのは安心材料です。

いずれは買い替えたい

もし練習を続けて演奏がうまくなったら、いつかは本格的なピアノ鍵盤を試してみたいと思う気持ちもあります。

発売から数年経つと、人気のない機種は価格が下がってくることもあるようです。
コルグのB2シリーズなど、ハンマーアクション仕様の本格的な電子ピアノでも、今ならLianoと同じかそれより安く買えたりします。

新製品と価格相場を見比べながら、いずれはピアノを買い替えるかもしれません。
それまではシンプル機能のLianoで練習にはげんでみようと思います。

電子ピアノを弾く犬