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音源はステレオPCM
コルグは他のメーカーと違って、価格による音源の差がほとんどありません。
Lianoにはコルグ製品共通の「ステレオPCM音源」が搭載されています。
電子ピアノで最上級(といっても10万円台)のG1B AIRですら、Lianoと同じステレオPCMになっています。
20万以上のステージピアノSV-2になると、ようやくEDS-Xなど高度なサウンドエンジンが搭載されます。
音源は好みの問題?
自分はそんなに高い電子ピアノを使い比べたことがなく、音源の違いがいまいちわかりません。
ヤマハやローランドの最上位「ベーゼンドルファーインペリアルサンプリング」や「ピアノ・リアリティ・モデリング音源」などは名前がすごそうですが、安い音源とどれほど差があるのか不明です。
Lianoの価格帯からすれば、ヤマハの「AWMステレオサンプリング」やローランドの「スーパーナチュラル・ピアノ音源」と同等品質に思われます。
いずれもサンプリングの原理は同じだと思いますが、モデルになっている楽器や収録・加工方法に違いがあるのでしょう。
その点では品質上の優劣がつけられず、「このメーカーの音が好き」という好みの問題に帰着しそうです。
とりあえずLianoの音を聞いていて、著しく不快だとか耐えられないといった不満はありません。
特にオルガン系の2音色は、実機の雰囲気をよく再現していると思います。
音源の間接的な影響
音源やスピーカーの性能がよかったとしても、一般ユーザーには「練習を楽しめて上達が早くなる(かも?)」という間接的な影響しかないはずです。
また「高級品を使っていて所有欲が満たされる」といった、気分的なメリットもあるでしょう。
表現の微妙なニュアンスまで追求したい上級者ならともかく、初心者は安価なステレオPCMで十分な気がします。
むしろ音源にこだわり始めると、ほかのピアノを買いたくなったり、機材のことばかり考えて練習に集中できなくなりそうです。
楽器メーカーや販売店は、利益率の高いハイスペック商品を売りたいのだろうと思います。
あるいは「松竹梅」の商品ラインナップで心理的に少しでも高い商品を選んでもらうため、すさまじく高価な最上級モデルを用意しているのかもしれません。
自分の目的と身の丈にあった機能性を謙虚に選ぶか、ちょっと背伸びした上級機種に投資してモチベーションを上げるか…
というのは、趣味の買い物でいつも迷うポイントです。
やはり「練習要素のある趣味の道具」という意味で、電子ピアノはロードバイクに似ている気がします。
音色が不連続かも
Liano音源の不満を強いて挙げれば、ピアノやオルガンで並んだキーの音が不連続というか、急に飛ぶように聞こえるところがあります。
自分の耳に自信がないので確かなことは言えないのですが、上位製品の音源だとこうした不具合もなく、音のつながりが滑らかになるのかもしれません。
あるいはサンプリング元の楽器によって、音源とは「もともとそういうもの」という可能性もあります。
楽器の個体差や構造上の制約で、階調が不連続になっていることもありえます。
逆にそういうアナログなゆらぎが、人間の耳にはかえって好ましく感じられたりしそうです。
音色の不連続性はピアノ本来の性質なのか、音源の収録・編集方法によるものなのか、それとも自分の耳や脳がおかしいだけなのか…
原因がいくつも想定されるので、音色のスムーズさを評価するのは難しいです。
イタリアンピアノの感想
Lianoはイタリアンピアノの音源を採用しているのが特徴らしいです。
自分はピアノの種類に詳しくないですが、「PIANO 1」の音は、普通のピアノよりちょっとキラキラした華やかな音に聞こえます。
ちなみに昨年コルグから発売されたPOETRYという電子ピアノは、ショパンにゆかりのあるPLEYELというピアノの音を搭載しているそうです。
オリジナルのピアノ個体は希少らしく、好きな人には価値あるサンプリングかもしれません。
筐体もウォールナットっぽい木目調で、ショパンのデモソングが50曲も収録されていたりして、個性的な製品に見えます。
「格安軽量鍵盤のLiano」「ショパン愛好家のためのPoetry」…
大手メーカーとの差別化を図るためか、次々とエッジの効いた企画を打ち出してくれるコルグはユニークな存在です。
オルガンのVOX Continentalもずっと気になっています。
バスレフ付きスピーカー
Lianoは筐体の上面にスピーカーがついています。
見た目はカシオトーンやポータートーンのようで、安っぽく感じられるかもしれません。
しかしピアノの背面や下側にスピーカーがついているよりは、弾いている人にダイレクトに音が届いて合理的な構造といえます。
また背面にも穴が開いていて、内部がバスレフ構造になっています。
コンパクトなサイズのわりに低音がよく響くと、カタログではうたわれています。
マンションでは使えない
スピーカー付きのキーボードや電子ピアノは、人前で演奏するときに便利です。
ただ個人的に練習する場合、自分はヘッドフォンしか使いません。
やはり楽器不可の賃貸マンションで、堂々とスピーカーで音を鳴らすのは気が引けます。
臆病な性格なので、夜間の演奏時は鍵盤のカタカタ鳴る音ですら、隣室に響かないかと不安になります。
高級機種に搭載される豪華なスピーカーも、防音性の低い集合住宅では役に立たない可能性が高いです。
やはりピアノは富裕層のレジャー…
Lianoの売りであるバスレフ方式の低音も、自宅では真価を発揮できないのが残念でした。
音量が大きい問題
またLianoは本体のボリュームを最低限まで絞っても、そこそこ大きな音が出るのでやっかいです。
演奏者にだけ聞こえるような、静音モードが用意されていればよかったと思います。
そう考えると同じコルグ製品でも、D1のようなスピーカーレスで奥行きの浅い、スリムな電子ピアノがよかったかもしれません。
D1は家庭用というよりステージ向けの機種ですが、うっかり外に音を出してひんしゅくを買うアクシデントも防げます。
賃貸居住者をターゲットにするなら、LianoはD1のようにスピーカーすら省略して、さらにコストダウンを図ってもよかった気がします。
USBの外部入力可
LianoにLINE-INはなく、代わりにUSBの入力端子が付いています。
最近あまり見なくなったType-Bの四角い端子で、USBの変換ケーブルは付いてこないため、別途用意する必要があります。
試しにパソコンとつないでみたところ、外部スピーカーとして問題なく使用することができました。
出力デバイスに「Liano」と表示され、PC側での音量調整も可能です。
ピアノ本体ではそこまで音を絞れませんが、PCの出力レベルを下げればかなり音量を下げられます。
ちなみに音楽鑑賞用のスピーカーとして使う場合は、デフォルトで設定されている30分の「オート・パワー・オフ」を無効化しておくと便利です。
この操作には先述の「リバーブ、メトロノームボタン同時押し+鍵盤押下」が必要になります。
控えめにBGMを流してみると、ノートPCやモニターに搭載されているスピーカーよりもずっといい音に聞こえました。
廉価版の電子ピアノながら、搭載スピーカーやバスレフの良さを実感できて感激しました。
音源同時出力可
USB-Audioの再生時に鍵盤を弾くと、外部入力とピアノの音が重なって出力されます。
この機能はスピーカーだけでなく、ヘッドフォンでも有効です。
練習曲を聴きながら同時に弾いたり、楽曲を耳コピーする際に便利な使い方です。
昔は2つのヘッドフォンを重ねて頭に乗せ、キーボードとテープレコーダーを同時に聴いて練習していたのがなつかしいです。
とはいえピアノを弾きつつ、パソコンをマウスで操作するとのもわずらわしいです。
Microsoft Surfaceのように、タブレットにもなる2 in 1パソコンでなければ、譜面台にも乗りません。
もしBluetooth対応の電子ピアノなら余計なケーブルもいらず、スマホから簡単に課題曲を再生できたはずです。
音楽鑑賞用だけでなく、練習や耳コピー時の聞き取り用としても、Bluetoothがあれば便利だと実感しました。
Bluetooth機能はなし
残念ながらLianoにBluetoothは搭載されていません。
ほかにもヤマハのP-145B、ローランドのFP-10、カシオのCDP-S160など、5万円以下の格安ピアノはBluetooth非搭載のものが多いです。
KORGの上位機種B2もダメで、C1 AIRからようやくBluetoothに対応しています。
Bluetoothでスマホとペアリングすれば、練習用だけではなく普通のスピーカーとしても使えます。
電子ピアノのスピーカーはそこそこ大きいので、安物のBluetoothスピーカーより性能がよいかもしれません。
ただこれもマンションでは音漏れが気になり、あまり大きなボリュームでは再生するのは気が引けます。
以前はミニコンポやBluetoothスピーカーを使っていましたが、隣室に配慮してやめてしまいました。
最近はスマホ本体のスピーカーもそこそこ音質がよくなってきたので、直接鳴らせばまあいいか、という感じです。
Lianoを外部スピーカーとして使うつもりはなかったので、Bluetooth機能については妥協しました。
しかし練習用に曲を聴くことを考えたら、スマホと無線で接続できたほうが便利だったと後悔しています。
ヘッドフォンに投資
音にこだわるとしても、マンション住まいならスピーカーよりヘッドフォンに投資した方がリーズナブルといえます。
自宅で作業用のBGMを聴いたりする際は、オーディオテクニカのちょっといいBluetoothヘッドフォン(ATH-HL7BT)を使っています。
付属の有線ケーブルで接続すると、Lianoとも問題なく接続できました。
ヘッドフォン本体の電源を入れなくても音は聞こえるので、演奏中にバッテリーを消耗することもありません。
ATH-HL7BTは比較的安価ながら開放型なので、長時間つけても負担が少ないのがメリットです。
ただし周囲に音が少し漏れるため、ピアノの練習中、ヘタな演奏を家族や同居人に聞かれるのは気になるかもしれません。
BTヘッドフォンで両立?
ちなみにATH-HL7BTでBluetoothの無線入力と、オーディオケーブルの有線入力を両立できるか試してみましたが、ダメでした…
スマホとBluetooth接続中に、ケーブルをヘッドフォンに差し込むと、無線接続のほうが切れてしまいます。
逆に有線でピアノとつないだ状態では、ヘッドフォンの電源スイッチが入りませんでした。
スマホの楽曲を無線で流しつつ、ピアノの音声も同時に聞けたら便利と思ったのですが、さすがに無理でした。
やはり音声を外部入力して演奏音と重ねるには、ピアノ本体にBluetooth機能がいるようです。
楽器用の無線ヘッドフォン
Bluetoothの遅延時間は最大0.2秒程度といわれています。
この遅延を独自の無線技術で0.004秒まで短縮した、ヤマハの楽器用ワイヤレスヘッドフォン(YH-WL500)が登場しました。
無線通信には2.4GHz帯の周波数を利用していて、付属のトランスミッターと楽器のヘッドフォン端子を有線接続して使用します。
いちおう普通のBluetooth接続もできるので、スマホやPCでの音楽鑑賞にも活用できます。
(信号が遅れるので演奏時にBluetoothは使わない前提だと思います)
YH-WL500はハウジングがセミオープン型で、長時間着けても疲れにくいのが特徴です。
いまLianoと有線接続しているオーディオテクニカのATH-HL7BTも開放型で、メリットは実感しています。
ただ密閉型と違って外の音が聞こえるうえ、楽器の音が漏れるという懸念はあります。
このヘッドフォンもATH-HL7BTと同じく、練習中の音をまわりに聞かれたくない人には向いていないかもしれません。
楽器演奏の分野でヘッドフォンの無線化は長年の課題でしたが、ついに技術の進歩で解決しそうな気配です。
4万円以上する高級品とはいえ、どのみちマンション住まいでスピーカーが使えないなら、ピアノ本体よりヘッドフォンにお金をかけるのもありだと思います。
ヤマハの楽器用ヘッドフォンで問題解決できないかと思ったのですが、よく考えるとこれは「ピアノ本体の音声出力を無線化する」だけの特殊なデバイスでした。
ややこしいですが、ピアノ本体にBluetoothの受信機能を後付けできるわけではありません。
外付けのBTアダプタ
LianoをBluetoothに対応させる手段として、外付けのアダプタが使えないか調べて見ました。
ヤマハからUD-BT01という電子ピアノ向けのワイヤレスアダプタが販売されています。
USBタイプBのケーブルも同梱されているようです。
LianoのUSB端子につなげば使えそうなのですが、よく見るとこれはMIDI用のアダプタでした。
公式サイトに「iOSデバイス/Mac,Bluetoothイヤホン等への音声送受信には対応しておりません」と書かれており、スマホの音声を入力することはできないようです。
また端子の形状がUSBタイプAになりますが、カシオのWU-BT10というワイヤレスアダプタもLianoで使える可能性はありそうです。
こちらはMIDIとAUDIOに両対応しているので、スマホやタブレットから音声を飛ばすこともできます。
ただLianoに差すには別途端子の形状変換が必要になり、そもそもカシオ製品以外で動くかどうかは不明です。
そのほかた市販のUSBオーディオトランスミッターも、端子を変換すればLianoで使えるかもしれません。
汎用のBluetoothアダプタは、PCやゲーム機から音声を飛ばすのが目的です。
逆にスマホの楽曲をワイヤレス入力して、楽器で再生できるかは未知数といえます。
いずれにしてもアダプタ本体に加えて、USBタイプA(メス)⇔タイプB(オス)への変換ケーブルが必要になります。
いろいろ合わせて5,000円くらいはかかるうえ、期待どおりに動くかわかりません。
Bluetooth接続にこだわるならガジェットに頼るよりも、素直にピアノ本体を対応機種に買い替えたほうが早そうに感じました。