KORG、CASIOほか10万以下の電子ピアノ

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種類豊富なCASIO

カシオのキーボードといえば、「家電屋に並んでいる安いカシオトーン」というイメージでした。
しかし電子ピアノの製品ラインナップを調べてみると、実は50万円近くする木製鍵盤の本格モデルも販売していたりします。

腕時計もカシオといえば、定価2,200円のチープカシオやG-SHOCKを連想します。
しかしG-SHOCKも最近はMR-Gの登場で高価格化が進み、特別仕様の限定モデルでは100万円以上するものまであります。

なんとなく安っぽい印象だが、実は中身がすごい…
高級電子ピアノでも老舗の楽器メーカーではなく、あえてカシオを選ぶというのは通好みのチョイスといえそうです。

カシオは鍵盤も多様

カシオの電子ピアノ用鍵盤は、最安のCDPシリーズから最高級のCELVIANO Grand Hybridまで6種類に細分化されています。
ヤマハ、カワイ、ローランドといった大手楽器メーカーに匹敵するバリエーションです。

上から安い順に並べると、

  • スケーリングハンマーアクション鍵盤II
  • スマートスケーリングハンマーアクション鍵盤
  • 3センサースケーリングハンマーアクション鍵盤II
  • スマートハイブリッドハンマーアクション鍵盤
  • スケーリングハンマーアクション鍵盤 CELVIANO Edition
  • ナチュラルグランドハンマーアクション

おおむね名前が長いほど高級で、本体価格も鍵盤スペックに応じて上がっていきます。
「スケーリングハンマーアクション」はバージョン2のものもあり、上位の鍵盤よりすごそうに見えたりして、まぎらわしいです。

「スマートハイブリッドハンマーアクション」から上は、鍵盤の一部に木材(スプルース材と樹脂のハイブリッド)が使われています。
最高級のGP-510BPに搭載される「ナチュラルグランドハンマーアクション」になると、白鍵・黒鍵・土台がすべて木材で、さらにグランドピアノと同じアクリル、フェノールでコーティングされています。

カワイのCAシリーズは「白鍵・黒鍵とも100%木製」を売りにしていますが、カシオはそれ以上かもしれません。
ヤマハやカワイのように生ピアノを製造していないぶん、カシオとローランドは電子ピアノの分野で、とてつもないハイエンドの製品をリリースしています。

他社より軽く、凹凸のある鍵盤

鍵盤素材の違いやセンサー数という指標はわかりやすいものの、体感的な弾き心地がどこまで違うのかは実際に触ってみないとわかりません。

店頭で弾いてみたカシオの電子ピアノは、CDPもPriviaもCelvianoも他社製品より鍵盤が軽く感じられました。
価格帯により鍵盤構造はまちまちですが、総じてローランドが一番重く、ヤマハとカワイは同じくらい…カシオだけやけに軽めのタッチに感じられました。

生ピアノの鍵盤を使ったヤマハAvantGrandもローランド並みに重かったので、本物に近づけるならこのくらいの抵抗感が必要なのかもしれません。
本格的にピアノを習った経験がないと、強弱の表現もふくめて使いこなすのは難しそうです。

カシオの鍵盤が軽いのは、カシオトーンの安価なバネ式キーボードから買い替える顧客層をターゲットにしているためと思われます。
ピアノらしくないという批判もありそうですが、「鍵盤の軽さ」でコルグLianoを選んだ身としては共感できるポイントです。

またカシオの鍵盤は表面に滑り止め用の立体的な模様が刻まれているのも、他社にはない特徴です。
メーカー側が「微細なシボ加工」と表現しているとおり、素材はプラスチックながら革製品のような凹凸があります。

ザラザラした質感で指先に汗をかいても滑りにくく、案外効果的な加工だと思いました。
「ピアノかくあるべし」という規制の概念にとらわれないカシオの開発アイデアは、個人的に評価したいです。

音源不明なCDP

カシオの電子ピアノはわかりやすい松竹梅のラインナップになっていて、「竹」ランクのPriviaが売れ筋と思われます。

「梅」に相当するCDPはピアノタッチでの88鍵あるものの、ほかの部分はかなりコストを削っている感があります。
価格のみで選ぶ顧客層をターゲットにした戦略的製品という印象です。

CDPシリーズで気になるのは音源の品質で、スペック表に具体的な記載がありません。
カシオトーンのCT-S1以上に搭載されているAiX音源でもないようです。

「カタログに説明がない」という共通点から察すると、1万円前後の最安キーボードに搭載されている謎音源と同等に思われます。
CDPは88鍵でハンマーアクションなのに、音源がカシオトーン以下?の可能性もある、ずいぶん割り切った設計です。

もっとも安いCDP-S110は3万円台から購入できて、ピアノ鍵盤としては最安ランクのコルグB2と競合します。
ただ最大同時発音数が電子ピアノにしては64と低く、コルグのLiano(発音数120)にすら劣ります。

CDP-S100、CDP-S105という亜種があって迷いますが、S100は旧製品、S105はAmazon限定品で中身は大差ないようです。
販売価格に違いがなければ、最新のS110を選べば間違いないと思われます。

CDP-S160は3本ペダルの接続端子やデュエット機能が追加されただけで、基本性能はS110と同じです。

上位モデルのCDP-S300は島村楽器の限定モデルなので、カシオの公式サイトには商品説明がありません。
ただしメーカーのサポートページから説明書はダウンロードできます。

CDP-S300は価格相応に、音色の数がS110の10から700へと大幅にアップしています。同時発音数も64から128に倍増していて、WU-BT10のBluetoothアダプタが付いてくるのも特徴です。
WU-BT10単体でも5,000円以上することを考えると、S110/160より数千円アップで手に入るS300はお買い得です。

CDPは音源に不安を感じるものの、「まともに音が出れば十分」という人には十分かと思います。
とにかく88鍵のピアノ鍵盤を壊れるまでがんがん使い倒したいという、ヘビーデューティーな練習マシンのようです。

バランスのよいPrivia

コスパ重視のCDPに比べ、プリヴィアはポータブルタイプの優等生です。
モデルによっては予算10万円以内から買えて、スペックも手頃でデザイン性もよく、専用スタンドも後付け可能と、バランスのよい設定になっています。

音源は「マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR」で、特にピアノの音質がよさそうです。
PX-S1100から上の機種は、CDP-S300と同じくUSB端子のBluetoothアダプタが付いてきます。

PX-S3100は音色数がS1100の12から700へと格段にアップします。
CDP-S300と同じく、カシオの電子ピアノは機種による音色の増減が極端です。

PX-S5000以上は鍵盤が木製になるので、さすがに10万円を超えます。

最上位のPX-S7000はスタンド・ペダル一体型で、ほかにはないユニークな形状とカラーリングが特徴です。
海外のデザイン賞なども受賞しており、見た目に惹かれてPX-S7000を指名買いする人も多そうです。

外観重視のPX-S7000については、専用のスツールも別途販売されています。
インテリアピアノの一種と考えられ、こちらの記事で情報をまとめてみました。

ローランドのKIYOLAとインテリアピアノ

予算5万円~でそこそこよさげな電子ピアノを選ぶなら、PX-S1100で十分かと思います。
Bluetooth搭載で別売りスタンドもあり、今どきのスペックは網羅されているので、買ってから後悔することもなさそうです。

ヘッドホンモードとは

プリヴィアのPX-S6000、S7000、据置型の上位PX-870とセルヴィアーノ全機種には「ヘッドホンモード」という特殊機能が搭載されています。
設置場所によって内蔵スピーカーの音響設定を変更できる、「ピアノポジション」機能のヘッドフォン版と考えられます。

カタログによると、ヘッドフォン使用時に音質を補正し、「グランドピアノを弾いているかのような自然な音の広がり方を再現」と説明されています。
具体的なテクノロジーは不明ですが、ヤマハの「ステレオフォニックオプティマイザー」と似たバイノーラル録音の再現機能かと思われます。

ピアノ以外の音にも有効なのか不明ですが、長時間ヘッドフォンを着けて練習する際に、疲れにくくなるメリットが期待できるかもしれません。

カシオトーンを見直す

カシオトーンはピアノ鍵盤でなく、88鍵のバージョンもありません(CT-S1-76の76鍵が最大)。
しかし他シリーズとスペックを比べると、案外捨てたものではないと再発見しました。

ミニ鍵盤ではない通常サイズで61鍵の最安CT-S200は、実売価格1万円ちょっと買えます。
しかし音色は400もあり、さらにステレオミニジャックのAUDIO IN端子を備えています。

最安価格帯のキーボードでも、音色数や拡張性がコルグLianoより上なのは驚きです。
鍵盤の数にさえこだわらなければ、初心者には1万円のカシオトーンで十分だったかもしれません。

上位のCT-S1になると、別売りのワイヤレスMIDI & AUDIOアダプタを付けてBluetoothにも対応できます。
CT-S500以上の高級カシオトーンになると、プリヴィアと同じくBluetoothアダプタが同梱されます。

CT-S1はデザイン性やカラーリングのセンスが秀逸です。
2025年1月16日にはFRAGMENTのコラボモデルも登場しました。


参考
カシオの電子キーボードとFRAGMENTによるコラボモデル「Casiotone CT-S1 × FRAGMENT」を「V.A.」にて1/16(木)に発売PR TIMES

価格71,500円と強気の設定ですが、V.A.のオンラインストアでは早々に売り切れたようです。
希少なブランド品なので、転売目的で買い占められてしまったのかもしれません。
(2025年2月20日現在、在庫は復活しています)

昨年は76鍵モデルのCT-S1-76も追加され、廉価キーボードの選択肢が広がりました。
「キーボード以上、電子ピアノ未満」というニッチな需要に対応した製品と思われます。

予算的にCDPで妥協せざるをえないというかたは、思い切ってカシオトーンも検討してみてはいかがでしょうか。
鍵盤の数と構造を除けば、スペックも拡張性もカシオトーン(CT-S1以上)のほうがCDPを上まわっています。

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