ローランドのKIYOLAとインテリアピアノ

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猫足のインテリアピアノ

ローランドとカシオが家具メーカーとのコラボに取り組んでいますが、「インテリアピアノ」というジャンルはヤマハとカワイの独壇場です。

両社ともアップライトピアノのバリエーションとして、定番・黒塗り以外に木目調で装飾の多いレトロなピアノを販売しています。
カワイの場合は、真っ白なピアノもまとめてインテリアピアノと称している節もあります。

両社とも天然木の化粧材を貼ってあったり、チッペンデール様式の猫足だったりして、古典的なデザインが主流です。
ピアノで弾く曲はたいていクラシックだと思うので、楽器の見た目も古めかしいほうが似合うのかもしれません。

ヤマハは縮小傾向

ヤマハはアップライトの小型bシリーズや、サイレントピアノYFシリーズの色違いとして木目調、猫足バージョンを用意しています。

今は製造中止ですが、直線脚でモールディングの装飾がほどこされたネオクラシック様式のM2SDWというピアノもありました。
こちらは譜面台も立体的に肉抜き加工されていて、芸が細かいです。

後述のカワイに比べるとヤマハのインテリアピアノは種類が少なく、2016年と最近の発売商品もすぐ廃番になってしまうようで残念です。
やはり消費者の嗜好が変化して、装飾過剰で高価なピアノは売れにくくなってきたのかもしれません。

本記事の執筆中、ヤマハからTORCH(トーチ)という斬新な木製ピアノが発表されました。
高額かつ限定生産のレアモデルですが、素材や外観へのこだわりから次世代のインテリアピアノとみなしてもよさそうです。

TORCHの仕様や見どころについて、こちらの記事にまとめてみました。

ヤマハの木製電子ピアノTORCHが気になる

カワイは種類豊富

カワイのインテリアピアノもアップライト型が中心で、直営店・特約店モデルも含めるとヤマハより種類が豊富です。
カワイはポータブルタイプのESシリーズも他社より高めの価格設定で、ブランドのイメージとしても富裕層をターゲットにしているように感じられます。

化粧板ではあるものの、バーチ材の半艶塗装で重厚感のあるKi-650やC-480F、C-880Fはピアノ本体も椅子も猫足仕様です。
このうちKi-650とC-880Fは譜面台まで彫刻がほどこされていて、見た目のクラシック感は最強レベルです。

マット仕上げも選べる

マホガニーかウォールナット艶出し/艶消し塗装仕上げの3種から選べるLD-200も同じ路線で、装飾はやや控えめになっています。

高価な輸入木材は木目を際立たせるためツヤあり塗装が多いですが、オンラインショップ限定でマット仕上げを選べるというのはマニアックなサービスです。

カワイのスペック表では構造体について記載はなく、「外装仕上げ」としか書かれていません。
もしかするとオークやアッシュをベースに、色味だけで高級材を再現したものかもしれません。

塗装のツヤが多いと、それだけでどんな樹種でも高級に見えたりします。
逆に時代遅れて嫌味に見える懸念もあるため、LD-200は家具のトレンドに合わせてマット塗装を用意したのでしょう。

サペリ材のピアノ

標準モデルのKシリーズにもマホガニーに加えて、柾目の模様を強調した「サペリ調マホガニー」という高級バリエーションがあります。
樹種としてはサペリ自体がマホガニーの代用材のはずなので、どういう意味のネーミングなのかは謎です。

マホガニーもサペリも今は希少な木材なので、さすがに無垢ではなく突板だと思われます。
もし据置型ピアノのサイズで杢目のすぐれた銘木を採用したら、材料費だけで100万以上アップしそうです。

以前、飛騨高山の高級家具メーカー、キタニのショールームでヤコブ・ケア設計のプリンセスデスクを拝見したことがあります。
カワイのK-500と同じく、サペリ材の完璧な柾目が天板にあしらわれていて、定価200万のまさに王室用という迫力でした。

そこまで高価なものではないですが、handwoodさんの作品で「サペリ変わり杢」のシャーペンを1本所有しています。
緻密な木目はまさにマホガニーと似た高級材の趣をたたえています。

サペリ材のシャーペン

サペリ材のシャーペン

Kシリーズでは上記に加えて、直営店限定のアンバーバーチ色も選べます。
見た目は直線的で装飾も少ない機種のため、ほかの家具とも合わせやすそうです。

松本民芸家具に期待

ヤマハ・カワイとも据置固定型のアップライトピアノは100万近くするため、圧倒的に予算オーバーです。
しかし豪邸に住む富裕層であれば、ステータスとして所有したくなるような代物かもしれません。

電子ピアノの基本性能が頭打ちとなっても、素材やデザインで差別化を図っていくというのは興味深い展開です。
ローランドやカシオのように、楽器メーカーと家具メーカーの協業もどんどん進めてほしいと思います。

ローランドがカリモクなら、ヤマハとカワイは松本民芸家具あたりと相性がよさそうな気がします。
伝統的なウィンザーチェアのディティールは、ピアノの外装にも似合うと思います。

松本民芸の定番、ミズメザクラのラッカー塗装だけでなく、最高級製品にだけ適用されるケヤキ拭き漆のピアノがあったらうれしいです。
予算100万どころか1000万から1億を越えてもおかしくない、究極のインテリアピアノとなることでしょう。

蒔絵のピアノ

漆塗りのピアノといえば、真和楽器がヤマハのピアノに蒔絵をほどこした特別なモデルを販売しています。

もはや工芸の域に達した作品ですが、1,000万円以上払えば京都市のふるさと納税で手に入るようです。
模様の好みはともかく、これだけ大型の漆塗り製品と考えれば、思ったより安い気もします。

蒔絵のピアノは自宅用というよりも、ホテルやレストラン、結婚式場の演出アイテムという位置づけなのかもしれません。
話題性やPR効果をそなえた、とんでもないクオリティーのピアノなら、法人向け・業務用のニーズも見込めそうです。

ネーミングの工夫がほしい

ヤマハもカワイも、ピアノの商品名がアルファベットと数字の組み合わせだけなのは、もったいない気がします。
覚えにくいうえに味気なく、機能より情緒性を重視したインテリアピアノの魅力を損なっているようで残念です。

せっかく見た目にこだわるのなら、ローランドのKIYOLAやコルグのPoetyのように、ブランドイメージを意識したペットネームをつけてはどうでしょうか?

たとえばヤマハとカワイの古典的デザインのピアノには、マルニ木工が1960年代に販売していた家具シリーズのヒット商品、「エジンバラ」や「ベルサイユ」といった名前が似つかわしい気がします。
ほかにも「エドワード」「アンドリュー」「ケントコート」「ブリタニア」…など、西欧の様式美をイメージさせるネーミングは、家具メーカーの製品群がネタの宝庫です。

まとめ

電子ピアノの購入検討にあたって、外観のデザイン性を重視した「インテリアピアノ」というジャンルを調べてみました。

国内のピアノメーカー各社は、なにかしら見た目にこだわったスタンド・椅子付きのピアノを販売しています。
コルグも形状こそスマートですが、C1 AirやPoetryなど木目調のパネルを選べる機種をそろえています。

KORG、CASIOほか10万以下の電子ピアノ

装飾的なアンティーク調だけではなく、北欧家具のようにシンプルな木製ピアノも増えてきて、家具業界のトレンドを追従しているように思われます。

古典派とモダニズム

これまでインテリアを意識したピアノといえば、ヤマハとカワイの古典的な猫足製品が定番でした。
近年はローランドやカシオから、モダンなデザインのピアノも出てきています。

特にカリモクとコラボしたローランドのKIYOLAは、直線的な外観かつナチュラルな木の質感で、従来のインテリアピアノより現代的なインテリアに合わせやすいです。
消費者としては、選択肢が増えてうれしい傾向に思われます。

中身より見た目重視でピアノを選ぶのは邪道かもしれません。
パーツが劣化、スペックも陳腐化しやすい電化製品としては、車と同様、内装・筐体に貴重な木材を使うのはもったいないとも考えられます。

ただ素人の趣味としては、所有欲を満たしたり練習のモチベーションを上げたりするために、機材の外観に投資するのも悪くないと思います。
たとえ使わなくなったとしても、物置棚やオブジェとして目を楽しませてくれます。

ピアノの資産価値

KIYOLAは無垢材のケースに対して、電子ピアノ本体の耐用年数は短いと思われます。
この点はスケルトン・インフィルのように、鍵盤や内部メカだけ換装できるサービスがあれば理想的です。

親から子、孫の代まで、三代にわたって「100年使える電子ピアノ」というコンセプトの商品があってもいいと思います。
長年使いこんでアンティーク家具のように味が出た、無垢材のKIYOLAを見てみたいです。

ヤマハの新商品TORCHは、まさにこうした長期利用とエイジングのニーズを満たすべく、木部をオイルやワックスで仕上げているようです。
グラナディラ製の鍵盤も含めた木素材へのこだわりは、KIYOLA以上といえます。

本物志向のインテリアピアノも、いずれは中古市場でプレミア価格がついて、高く取引されるかもしれません。
「趣味と実益を兼ねた投資」という観点から、高級車と同様に転売できて、資産価値のあるハイエンドなピアノを所有してみるのも一興です。

ピアノを弾く犬

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