ピープルツリーチョコ、包装と製法のこだわり

長年気になっていたピープルツリーのチョコレートを買ってみました。
パッケージにある牛のイラストが、妙に印象に残る高級チョコです。

フェアトレードというだけでなく、材料や製法も変わっていて、独特の風味を感じます。

ウシさんとの出会い

PeopleTreeのチョコレートをはじめて見かけたのは、東京・昭島アウトドアヴィレッジにあるNORTH FACEのお店でした。
アパレルだけでなく、アウトドア関連の雑貨や書籍も販売されていて、カフェも併設されたすてきなショップです。

ノースフェイスのレジ横に、さりげなく置かれていたのが1本378円する板チョコで、パッケージに印刷された牛のイラストが印象的でした。
高級品にもかかわらず、気の抜けたゆるい感じの動物が描かれていて、そのギャップが記憶に残っていました。

People Treeのチョコ、ミルク味

その後、別のお店やカフェでもPeople Treeの製品を見かけるようになり、牛柄のミルクチョコ以外にも、さまざまなバリエーションがあることを知りました。

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かなり高価なので買おうかどうか迷っていましたが、GoToトラベルでもらったクーポンを使えるお店があったので、思い切って購入してみました。

実際のところ税込みで1本378円しましたが、あとから調べたエシカル(倫理的)な材料調達や製法へのこだわりを考えれば、十分納得のいく価格といえます。

手描きイラストの魅力

PeopleTreeの魅力は、何といっても表に描かれた動物や食材のイラストです。
ブランドの名前は知らず、味も未知数でしたが、ほとんど見た目で購入しました。

このイラストを描いているのは大神慶子さんという方です。
PeopleTreeのブログで紹介されているエピソードによると、「一番売ろうとしてないデザイン」というのが選ばれた理由らしいです。

ウシさんの目はぐしゃぐしゃっと鉛筆で塗りつぶした感じで、何を考えているのかわからない表情をしています。
体の輪郭は自信なさげで、鼻の部分に顔の線がはみ出ていたりします。
価格に見合った威厳や自信みたいなものは、まったく感じません。

愛想がなく、ふてぶてしいような印象も受けますが、いろいろ調べると商品のコンセプトをうまく表しているようです。
職人肌で口下手なウシさんが、「精一杯おいしい乳を搾りだしました」と訴えかけてくるようです。

なんとなくウシさんっぽい感じでブタを描いてみましたがいまいち…

ツチブタ

単に雑に描けばいいというものでもなく、絶妙なバランスでPeepleTree牛は成り立っているようです。

なかにもウシさんが…

チョコレートの裏側も、よく見ると帽子をかぶってマフラーを巻いたウシさんが描かれています。

People Treeのチョコ、包装紙

さらに包み紙を開くと、「ウラ面も見てね!」とフレンドリーに話しかけてくるウシがいます。

People Treeのチョコ、包装紙

言われたとおりに包み紙のウラ面を見ると、ウシがチョコレートを練って働いています。

People Treeのチョコ、包装紙

不愛想な見た目とは裏腹に、意外とサービス精神旺盛なツンデレ牛みたいです。

チョコ本体を包んでいる白い袋も、切り取り線の案内が、MDノートの帯みたいに手描きのイラストになっていました。

People Treeチョコのパッケージ

遊び心のある演出があちこちに施されていて、包装紙を開けるたびに期待感を盛り上げてくれます。
チョコを食べるまでの体験も、周到にデザインされているようです。

ウシさんのLINEスタンプ

PeopleTreeの公式サイトを見ると、期間限定バージョンなど様々なウシさんのイラストを見ることができます。
イラストが好評だったのか、牛をモチーフにしたLINEスタンプも販売されていました。

40種類の静止画バージョンが120円。
24種類のアニメスタンプもあり、こちらは250円です。
あまりのかわいさに、思わず両方買ってしまいました。

People TreeのLINEスタンプ

アニメ版では、先ほど紹介したチョコを練るウシが動いていたりします。
ほかにもウサギやトラの新キャラが登場するので、見ごたえがあります。

People TreeのLINEスタンプ

飛んだり跳ねたりしているウシさんを見ると、ノリがいいというか、いじられすぎ…という気の毒な感じもしてきます。

外箱のデザインも秀逸

お店で買ったミルク味やコーヒーニブが気に入ったので、ほかの味も試してみたくなり、通販でいろいろ注文してみました。
するとPeopleTreeの特製ケースに収められた状態でチョコレートが届きました。

ボックス型のパッケージも、手描きのイラストで賑やかにデザインされています。
ウシさんの新しいイラストも拝めました。

PeopleTreeチョコのパッケージ

箱の上面には木の下でくつろぐウシや動物たちがいます。
カカオの実を抱えたおじさんも描かれています。

PeopleTreeチョコのパッケージ

注意深く観察すると、普段は人目に触れないボックスの下面まで、植物の絵が描かれていました。

PeopleTreeチョコのパッケージ

切り取り線の上には、蝶がとまっています。
こういう外箱の細部までこだわっているところに、デザイナーさんの意気込みを感じました。

PeopleTreeチョコのパッケージ

製法のこだわり

PeopleTreeは「人と地球にやさしい貿易のしくみ」という、フェアトレードの概念を掲げています。
チョコレートのような食品に限らず、エシカルファッションの衣料品も販売されています。

持続可能な生産体制を実現するため、アフリカ・アジア・南米など、いわゆるグローバルサウスの小規模農家に対して、代金を前払いしたり、有機農法の促進を支援しているそうです。
詳しくは公式サイト「フェアトレードの10の方針」で説明されています。

チョコの高級化路線

国内大手の明治も「ザ・チョコレート」という高級ブランドを打ち出して、ベネズエラやペルーなどのカカオ産地に寄付を始めています。

コーヒー豆と同じでカカオ豆も、味や値段以外に、生産に関する倫理性が吟味される時代になってきたようです。

People Treeチョコのパッケージ

チョコレートの原料であるカカオ豆は、赤道付近でしか生産できません。
日本では地産地消が難しく輸入に頼らざるをえないため、輸送のコストや環境負荷が高くなります。

そのうちチョコレートは世界的な需要の拡大で、ウナギのようにプレミアムな価格を払わなければ楽しめない高級嗜好品になってしまうのかもしれません。

逆に考えると、私たちが今まで食べていた安価なチョコレートは、海外のカカオ農家を搾取してつくられていた可能性があります。
ブラックサンダーやイオンのプライベートブランドなど、格安チョコは農家の犠牲を前提とした、持続不可能な製品なのかもしれません。

イオンのPB格安チョコ

イオンの格安チョコ

あるいはこの先、天然のカカオ豆が希少になってエシカルな消費習慣が広まったら、大豆ミートのような代替素材が普及しそうな気もします。
昆虫の幼虫やサナギからできたチョコレート、案外おいしいかもしれませんね。

包装紙が薄っぺらい理由

PeopleTreeのチョコレートは、触ってみて驚くような、薄っぺらい包装紙に包まれています。
特に手触りや質感にこだわった紙という印象も受けません。

People Treeのチョコ、ミルク味

内部の包み紙もアルミ箔ではなくポリプロピレンになっています。
公式ウェブサイトのQ&Aによると、こちらの方が環境にやさしい素材であるそうです。

もしこれがゴディバのように重厚な箱に収められていて、ロゴが金色で箔押しされていたら、自分は興味を持たなかったと思います。

安っぽい包装紙と、ぶっきらぼうなウシさんのイラストが、独特の世界観をかもしだしていて、不思議と手に取りたくなる雰囲気を出しています。
あとから商品の説明やメーカーのコンセプトを知ると、その理由が腑に落ちるという仕掛けになっています。

中身が割れやすいので注意

頑丈な箱入りではないので、輸送中や陳列中に中身が壊れてしまうおそれがあります。
積み重ねたら、重さでチョコが割れてしまいそうです。
湿気や衝撃にも弱そうです。

People Treeのチョコレート

実際のところ、今回購入した2本のうち1本は、開けてみたらチョコが折れていました
自家用なのでさほど気にならないですが、プレゼントで人にあげるには、ちょっとはばかられます。

とはいえ中身のチョコが割れていたくらいなら、品質に問題はありません。
PeopleTreeは利便性と価値観のトレードオフを検討したうえで、あえて簡易包装を選んだのでしょう。
包みが軽くて最小限なので、製造・輸送のコストや環境負荷を低減することができると思います。

無添加・有機栽培の原材料

PeopleTreeはスイスで製造されています。
スイスはミルクチョコを発明した国で、リンツやカイエ(現在はネスレと合併)など、チョコレートの老舗ブランドが数多くあります。

海外製のためか、ザクロやレモンピールなど、日本ではあまり見かけないめずらしいフレーバーも提供されています。

原材料のカカオ豆はボリビア、ペルー、ドミニカ共和国。
黒砂糖はフィリピン、粗糖はコスタリカやパラグアイから輸入され、乳製品はスイス産です。
香料はマダガスカル産のバニラビーンズなど、人工ではなく天然のものが選ばれています。

黒糖と粗糖は有機栽培のもので、三温糖より精製度が少ないため、ミネラルが豊富に含まれます。
PeopleTreeのミルク系チョコに含まれる、黒糖のザラザラした舌触りはくせになります。

これらの厳選された原材料に加え、添加物が少ないのもこだわりのポイントです。
安いチョコレートにはたいてい含まれている乳化剤や植物油脂、保存料がPeopleTreeには使われていません。

イオンの格安チョコ原材料

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賞味期限は板チョコとしては短く、1年間に設定されています。
生チョコやボンボンショコラのように1~2週間というわけではないので、冷蔵庫に入れれば長く保存できると思います。

乳化剤の是非について

チョコレートに使われる乳化剤の多くは、レシチンという大豆由来の油です。

大豆や卵黄に含まれるレシチンは、脳内神経伝達物質アセチルコリンの材料になり、認知症や動脈硬化の予防に役立つといわれています。
カカオ豆に含まれるカカオポリフェノールと同じくらい、体によさそうです。

また乳化剤にはカカオ粒子とカカオバター、砂糖の結晶を結合させ、温度変化でブルーム現象が生じるのを防ぐ効果もあります。
チョコの表面が白くなっても健康への影響はないですが、見た目が悪く、風味も損なわれてしまいます。

People Treeのコンセプト

乳化剤自体にそこまでネガティブな印象は持たないですが、PeopleTreeがあえて使わないのは、「カカオの香りを損ねる不純物」という味覚上の理由によるようです。
もしチョコレートに含まれる乳化剤の有無を見分けられるほど味覚の鋭い方であれば、違いがわかるかもしれません。

口どけ滑らかなカカオバター

PeopleTreeのチョコは天然のカカオバターを使っていて、植物油脂を含んでいません。
植物油脂は植物油に水素を添加したもので、トランス脂肪酸が含まれています。

チョコレートに植物油脂を混ぜると温度変化に強くなり、品質が安定します。
一方で天然のカカオバター100%では、32度前後の温度で溶けてしまうそうです。

夏場は流通不可能なため、通販サイトでも「秋冬限定」とうたわれています。
高温に弱いというのは不便ですが、本物のカカオバターを使っている証ともいえます。
チョコレートも本来は寒い時期にしか楽しめない、カニやアンコウのような風物詩だったのかもしれません。

実際にPeopleTreeを手に取ってみると、体温でチョコが溶けて指にべっとり付きます。

チョコが溶けて指につく

袋に入れたままかじるのも無作法なので、あらかじめ一口サイズに割っておいて、お箸でつまんで食べるとスマートです。

箸でチョコを食べる

手づかみでは食べにくく夏場は気をつかいますが、カカオバターは融点が低いおかげで、口どけがすごく滑らかです。
意識して嚙まなくても、口の中で自然にチョコが溶けてくる感覚は新鮮でした。

まとめ

パッケージのイラストにひかれて購入したPepleTreeのチョコですが、中身もかなりこだわりのある商品でした。

折れやすく溶けやすいので取り扱い注意とはいえ、独特の柔らかい口どけを体験することができます。
無添加のチョコは、刺身のように繊細な味わいを楽しむ「生もの」といえるかもしれません。

少々お高いですが、最近はやっている高級チョコの入門編として、PeopleTreeのチョコ全種類を通販で買って食べてみました。

なかにはザクロやコーヒーニブなど、いかにも海外製らしい変わった味もありました。
各フレーバーを試した感想については、こちらにまとめました。

ピープルツリーチョコ、ほぼ全種類レビュー