ボフオhttps://bofuo.net靴と文具のレビューSun, 11 Jan 2026 08:40:18 +0000jahourly1https://bofuo.net/wp-content/uploads/2024/05/cropped-bofuo_1024x1024_2-32x32.jpgボフオhttps://bofuo.net3232 万年筆小説『メディコ・ペンナ』の感想https://bofuo.net/medico-penna/Thu, 25 Dec 2025 04:00:00 +0000https://bofuo.net/?p=2472

蓮見恭子さんの小説『メディコ・ペンナ 万年筆よろず相談』を読んでみました。 万年筆をテーマにした小説で、ペン先調整士の店長がアルバイトの女子大生とともに、顧客から持ち込まれるさまざまなトラブルを解決していくスト ... ]]>

蓮見恭子さんの小説『メディコ・ペンナ 万年筆よろず相談』を読んでみました。

メディコ・ペンナ

万年筆をテーマにした小説で、ペン先調整士の店長がアルバイトの女子大生とともに、顧客から持ち込まれるさまざまなトラブルを解決していくストーリーです。

作品のなかには、思った以上にたくさんの万年筆が登場していました。
ほとんど文具の解説本と言ってもいいくらいの詳しさながら、万年筆を介した人々の喜怒哀楽が散りばめられていて共感を覚えました。

憧れの万年筆を手に入れて夢をかなえる女性もいれば、コレクションに溺れて身を滅ぼす男性も出てきます。
商品を売る側としては語れないような万年筆収集の闇も描かれていて、いろいろ考えさせられました。

『メディコ・ペンナ』はデング熱ならぬブング熱という感染症を媒介する書物です。
これを読めば、欲しいペンを買うのに背中を押してくれるかもしれません。

一方すでに万年筆依存症のかたにとっては、解毒剤になってくれる可能性もあります。
新たな生活に向けて、コレクションを手放す覚悟ができるかも…

ついでに神戸の聖地めぐりもしてみたので、小説に出てくる元町周辺の飲食店や、モデルとなった文具店もご紹介します。

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本作に出てくる万年筆

『メディコ・ペンナ』に出てくる万年筆をリストアップしてみました。
小説のなかで登場・言及される順番に、メーカーとモデル名を並べています。

  • パイロット カクノ
  • モンブラン マイスターシュテック146、149、145、114
  • プラチナ プレピー
  • プラチナ #3776センチュリー(シュノンソーホワイト、ニース・リラ)
  • ペリカン トータスシェルブラウン(復刻版とオリジナル101N)
  • ペリカン M1000緑光(螺鈿)
  • ペリカン スーベレーンM400(トータスシェルレッド)
  • ラミー サファリ(赤)
  • アウロラ オプティマ(バーガンディ)
  • アウロラ オセアニア(大陸シリーズの5番目)
  • デルタ ドルチェビータ
  • フルハンターの森山さんが調整したペリカン
  • セーラー 創業80周年記念ブライヤー
  • パイロット シルバーン
  • ラミー サファリ(2018年限定のオールブラック)
  • ペリカン M600ヴァイブラントオレンジ
  • パイロット カスタムヘリテイジ92(オレンジ色・廃番)
  • モンブラン 作家シリーズ(フリードリッヒ・シラー)
  • ウォーターマン エドソン(サファイアブルー)
  • ペリカン ペリカーノジュニア(左利き用)

社名や人名もトリビア満載

そのほか具体的な製品名は出ていないものの、「セルロイド製のペリカン」「古いモデルのパーカー」などヴィンテージコーナーの陳列品として紹介される万年筆もあります。
また「フルハンターの森山さんが調整したペリカン」「長刀研ぎを再現させたセーラー万年筆の長原宣義さん」など、業界の有名人も実名で言及されていたりします。

ちなみに主人公が就活で面接を受ける企業の名前が「並木工業株式会社」で、パイロットの前身「並木製作所」をもじっていると思われます。
作中に出てくる「フカミ貿易」という社名も何か由来がありそうですし、店長が話していた「台湾にいる熱心なモンブランコレクターの女性」というのも、元ネタがあったりするのでしょうか?
万年筆業界に詳しいかたなら、いろんなトリックに気づけて楽しめるかもしれません。

万年筆用のインクについても、パイロット色彩雫の躑躅~山葡萄からKobe INK物語の六甲グリーン~居留地セピア、カランダッシュなどいくつか紹介されています。
顔料インクのメリット・デメリット、使用場面に合わせたインクの選び方など万年筆関連のチュートリアルも満載です。

文具がテーマの小説とは知りつつも、ここまで多彩な商品が紹介されているとは予想していませんでした。
数ページごとに新しい筆記具が出てきて、高密度の万年筆トークが展開されています。
上記のリストに自分の持っている万年筆や、これから買いたい気になっているモデルがあれば、それぞれの立ち位置や業界での評判がわかって勉強になると思います。

またペン先にインクが供給される仕組みや、万年筆が発明された歴史などのうんちくも、調整士の店主によって事細かに説明されます。
小説のなかで技術的な解説が続くと不自然になりそうですが、アルバイトの女の子に対するレクチャーという形式をとっているため、違和感なく読み進められました。

登場人物が選んだ万年筆

小説の主要な登場人物と、彼/彼女らが選んだ万年筆を整理してみると、

  • 野並砂羽:モンブラン146→新たな万年筆を探す(未定)
  • 山口美海:カクノ→プラチナ#3776センチュリー(ニース・リラ)
  • 橋口博子:プレピー3種→アウロラ(オセアニア)
  • 桂木さん:LAMYサファリ限定オールブラック→シルバーン
  • 四方純:モンブラン作家シリーズ(フリードリッヒ・シラー)
  • 寺田怜人の父:ウォーターマン エドソン(長刀研ぎカスタム)
  • 寺田怜人:エドソン→ペリカーノジュニア(左利き用)

女性キャラは20~30代と若く、安価なスチールペンからステップアップして「初めて金ペンを買う」という、おいしいタイミングで出てきます。
長い万年筆ライフのなかで数万円の高価なペンをついに購入する、不安と期待が入り混じった時期ではないでしょうか。

いかにも女の子らしくピンク色の万年筆にピンクのインクを入れるという学生もいれば、クールなLAMYからスタートして、渋いスターリングシルバーの軸に興味を持つ編集者も登場します。

一方で男性陣は大成した作家(あるいは売れない小説家)という位置づけが多く、大御所らしい高級万年筆を使いこなす様子が描かれます。

たとえば流行のSF作家がサイン会に使っているのは、モンブランの作家シリーズのなかでも意外と地味なフリードリッヒ・シラー。
「オレンジ色の万年筆」を見たという謎かけから始まって、デルタやペリカンを連想しつつ、サインに添えられたドイツ語のメッセージ(ベートーヴェン第九の歌詞)からシラーを突き止めるという、ミステリー要素もありました。

その人に相応しい万年筆

『メディコ・ペンナ』を読んでいておもしろいのは、お店を訪れる客の性格や状況に合わせて、調整士の店主(冬木透馬)が最適な万年筆を見立てるところです。
調整のかたわら「万年筆よろず相談」と名乗ってカウンセラーのような役目も果たしつつ、探偵のような謎解きや推理も披露するところスリルがあります。

「ここであの万年筆を出してくるのか!」
「なるほど、この万年筆はこういうキャラに似合うのか」

といった発見があって楽しめました。

アウロラ・アルファのペン先

使い込まれた万年筆には、オーナーの好みや書き癖、仕事の内容からライフスタイルのようなものが反映されているようです。
ペン先調整と店主との会話を通じて、顧客が自己実現や問題解決のヒントを得るというストーリーにおもしろさを感じました。

たとえばウォーターマンのエドソンは太軸で重量もあるため、病気で握力が落ちた小説家のため特別にあつらえられた、というエピソードが出てきます。
外観デザインやブランドのイメージだけでなく、こうした実用上の必然性からペンを選ぶ(高価な輸入物を買う理由にもなる)という考え方が勉強になりました。

ちなみに本書巻末の参考文献に出ている桐山勝さんの『万年筆国産化100年』という本には、小児麻痺で手が不自由な息子さんのためにエドソンをおすすめした、という逸話が紹介されています。

万年筆国産化100年~セーラー万年筆とその仲間たち

作家に限らず「書く」という行為は、人間にとって「歩く」のと同じくらい基本的な動作かもしれません。
こうした筆記にまつわる障害を解消してくれる一本に出会えれば、とても幸せだろうと共感できました。

万年筆には、人の生き方を変える力がある

メディコ・ペンナがうたっている「あなたの人生が変わります」というキャッチコピーは、万年筆を買う人の心理をうまくとらえていると思います。
高価な文具が欲しくなるときは、必要にせまられてというより、なにか「人生を変えたい」「現状を改善したい」といったスピリチュアルな動機があるのではないでしょうか。

小説では「でも、いつか…、いつか、こういった万年筆を持てるような自分になりたい」と願ってプロになる目標を達成し、憧れのアウロラ・オセアニアを手に入れる同人作家が出てきます。
その反対に、「菱田さんにとって万年筆とは、ただの物ではなかった。彼の心を支える防波堤のような物だった」と現実逃避のため文具収集に溺れるコレクターも登場します。

アウロラ

ペン先の状態から過去の経緯を推測しつつ、その人に合った万年筆を提供して、お客さん自ら気づきを得る…

ここに出てくる筆記具は、実用品というよりパワーストーンのようなものかもしれません。
実際ペリカンの製品で宝石の名前がテーマになっているのも、運気アップや願掛け、癒しといったニーズを意識しているように思われます。

筆記具のメンテナンスという技術的なサービス以外にも、人生相談を交えた万年筆ソムリエ、万年筆カウンセラーといった職能には需要がありそうです。
ペン先と同時に、心の調整もしてくれるドクターがいたらありがたいですね。

最後はあの万年筆

この小説では仕事柄、万年筆を使うであろう職業として、小説家を中心に校閲記者、編集者、画家、大学教授や弁護士といった職業の人が登場します。
世間一般のイメージとして、今でも万年筆といえば作家や小説家が連想されるのかもしれません。

志賀直哉旧居に展示されている万年筆
奈良の志賀直哉旧居に展示されている万年筆

最終話に出てくるウォーターマンのエドソンは、病気で握力を失った高名な小説家が、太軸重量級の軸に長刀研ぎのペン先を接合させるという魔改造アイテムでした。

物語が進むごとに出てくる万年筆の価格とスペックがどんどんインフレしていって、最後はいったいどんな際物が出てくるのかワクワクしながら読みました。
(たとえば肉合研出蒔絵の沈金石目塗にパイロット50号オーバーサイズのプラチナ合金クロスコンコルドニブとか…)

ところが高飛車な若手作家が親譲りのカスタムエドソンを手放して選んだのは、左利き用のペリカーノジュニア。
価格も安い、子ども向けのスチールペンだったのは驚きの結末でした。

その昔、ロマンシングサガというRPGに出てきた最強の片手剣が「レフトハンドソード」だったのを思い出します。
名前は地味ながら左利き設定のキャラに持たせると攻撃力がアップして、攻略に便利な固有技も手に入るという設定になっていました。

「万年筆はブランドや希少性よりも、その人に合った使いやすさがいちばん大事」という、作者からのメッセージとも受け取れます。
万年筆といえば高価な金ペンや吸入式がスタンダードと思われがちな風潮もありますが、作中でカクノやプレピーといった鉄ニブの良品も取り上げられているのは公平でよかったです。

万年筆コレクターの生態

『メディコ・ペンナ』を読んで衝撃を受けたのは、初々しい万年筆ビギナーの女性陣に対して、文具愛好家の男性キャラがやけに気色悪く描かれていることです。

たとえば第三話では、情緒不安定な万年筆依存症のコレクターが登場します。

この菱田さんは病的な収集家で、借金してまで高価な限定品を買い漁っています。
その挙句、家族に万年筆を大量処分され、鬱状態で各店舗の売り場を徘徊する廃人のようになってしまいます。(いちおう最後は反省して更生するエピソードあり)

店長の回想では、コレクションを手放した客のなかには自死を選んだ人もいた…という暗い話も出てきて、不気味なリアリティーを感じます。
我ながら最近万年筆収集にはまりつつも、「ここまでいったらヤバい」と危機感を覚えて、いい薬になりました。

五話ではお金持ちの二世作家、寺田怜人が店を訪れては、アルバイトの女子大生にカスハラを繰り返します。

実はこの男性も主人公の女の子も「親に対するコンプレックス」が共通の背景となっていて、父から贈られた(奪った)高級万年筆から解放されて自由になるというストーリーが描かれます。
新しいものを買うのではなく、因縁の万年筆を諦めることで先に進める…という人物も出てきたのは印象的でした。

「人から筆記具をプレゼントされたけど、全然使ってなくて申し訳ない」というかたも多いのではないでしょうか。
自分は安いペンで十分とか、デザインが趣味に合わないといった事情もあると思います。

さいわい高級ペンは中古売却できるので、断捨離して気持ちをすっきりしたうえ、必要な人に役立ててもらうと思えば、良い気分になれるかもしれません。
まさに万年筆はそれを手放すことによっても、人の生き方を変える力があると言えます。

文具マニアへの警告

店長や万年筆画家、多和田さんの女性に対するセリフも、いちいち上から目線で癇に障ります。

「凄いのを持ってるね…」
(大学生の分際でマイスターシュテック?)

「初心者で、いきなりアウロラですか?」
(しかもオプティマより高い18Kの限定品とは…)

こういったさりげない会話の端々から、モンブランが特別な(とりわけ高い)ブランドであり、アウロラは玄人好み(素人には扱いにくい)とみなされていることがわかります。

モンブラン

文具卸店の池谷隼人も、外見は比較的まともそうなのに、女性客そっちのけで店長とマニアトークを始めてしまいます。
そのうえ初心者の女の子に自分のコレクションを自慢して、ついマウントを取ってしまうという情けなさ…

まだまだ甘いね。砂羽ちゃんは。僕は三百本持ってるけど、それでもオフ会では小僧扱いさっ

池谷さんがたびたびお店に現れて万年筆選びに絡んでくるくだりは、『めぞん一刻』の四谷さんのようでツボにはまりました。
営業担当の給与がそんなにあるとも思えず、高価な限定品やアンティークにばかり興味を示す池谷さんの財源が謎です。

ちなみに池谷さんのセリフのひとつは、参考文献に挙げられている『万年筆の達人』で、著名な収集家すなみまさみちさんのインタビューが元ネタになっているようです。
コレクターも上には上がいるというか、もはや個人的な趣味の領域を超えて、万年筆文化を保存・継承していく使命感のようなものがモチベーションになっているのかもしれません。

きれいになっているものをネットでパッパッて買うのは本当はコレクションじゃないんですよ。ドロドロになっているやつをひとつ一つ探して、磨いて、全部修理して直すのがコレクションなんです。いまは即物的でコレクションの醍醐味っていうのが全然ないんですよね。買うか買わないかだけの世界になっちゃうんですよね。

古山浩一『万年筆の達人』

『万年筆国産化一〇〇年 セーラー万年筆とその仲間たち』『万年筆の達人』『万年筆クロニクル』

この小説の作者は女性なので、何となく文具女子勢から見た男性マニアのイメージが、作品のなかに垣間見える気がします
初めて万年筆を買う人にアドバイスするとか、人の持っているペンを褒めるというのは、ありがちなシチュエーションですが、自慢や自説を語りすぎないよう気をつけようと思いました。

文房具を集めてしまう心理

池谷さんの万年筆300本コレクションというのは異常に見えますが、文具業界やマニアの界隈ではまだまだ序の口なのでしょうか。

インク交換やペン先洗浄が大変そうですし、外箱も含めて収納場所に悩まされそうです。
実際のところ、すべての価値ある万年筆をローテーションしながら使い続けるのも困難では…?

使われない道具ほど可哀想なものはないと思うな。僕は……。

お店側としてはどんどん万年筆を買ってもらったほうが儲かるはずですが、調整士としてはせっかくメンテしたペンを長く使ってほしいという、店主のジレンマがうかがえます。

あらためて考えると、文房具収集というのは不健全で倒錯した趣味に思われます。
1本数万円もするペンを買うなんて、たいていの人には信じられない浪費でしょう。
世間体もよくないですし、家族からひんしゅくを買うこと間違いなしです。

受験や資格勉強でもなければ、日常生活でそんなに大量の筆記具は必要ありません。
せいぜい粗品でもらったボールペンか、100均で売られているもので十分間に合います。
書きやすさやインクの安さという実用的・経済的価値で万年筆を評価するとしても、実際は鉄ニブのプラスチックペン(小説にも出てくるプレピーやカクノ)で満足できる気がします。

コレクターが文具を何百本も買い集めるのは、単に気分転換したいとか刺激が欲しいだけなのかもしれません。
車や自転車のように場所を取らず、趣味のアイテムとしては比較的安価なため、ついつい買いすぎてヘドニック・トレッドミルに陥りやすいよう傾向があります。

「上がりの一本」「良いものを長く使う」と覚悟して高級品を買ったつもりが、気がつけばさらに高価なペンがどんどん増えていたとか…
量産品のシャーペン・ボールペンにおいても、新製品や限定モデルが出るたび全色・全種類集めてしまう人がいるのではないでしょうか。

万年筆はほかの筆記具よりペン種や素材、メーカー、デザインの選択肢が多く、個体差やコンディションによる書き味の変化も含めて無数のバリエーションが存在します。
さらにインクと紙の相性まで考えはじめると、どこまでものめり込むことができる危険な底なし沼です。

片岡義男さんくらい有名な作家であれば、仕事道具にとことんこだわるのも納得できるのですが…

こうした後ろめたさは重々承知したうえで、むしろその罪悪感から逃れるために万年筆を買ってしまうという悪循環があるのではないでしょうか?

まさに「酒を飲むのが恥ずかしいから、酒を飲む」という、『星の王子さま』に出てくる酒飲みの理屈です。
高い買い物をするたび、「自分へのご褒美」なのか懲罰なのかわからなくなります。

犬と万年筆

自己表現、投資対象としての万年筆

万年筆は腕時計と同じく顕示的消費の対象であり、財力やステータスを誇示する目的でも使われます。
選んだペンで自分の価値観やアイデンティティーを表現したいという、自己表現のツールにもなります。

道具に対するリテラシーが高まってくると、仕事の打ち合わせで相手が持っているペンや、道ですれ違う人が着けている時計が気になって仕方なくなります。
一目見ただけで価格やレア度の察しがつくので、人知れず心のなかで「勝った負けた」と一喜一憂してしまいます。

いちおう仕事道具としての体裁を保ちつつ、男性でも身に着けることが許される数少ないアクセサリーとして、筆記具と腕時計は定番アイテムです。

キングダムノートの運営会社がGMTという中古時計店も手掛けているのは、どちらも限定品やレアモデルが高値で取引され、中古品の仲介という同じビジネスモデルが通用するからでしょう。
万年筆もメカニカルウォッチも、実用品としてはすでに代替製品(ボールペンやクオーツ時計)が発明されているため、耐久性やコスパを度外視して価格が高騰しやすいのかもしれません。

近年は資産価値が認められて転売市場も拡大し、投資対象としても人気を博しています。
一部のブランドには、蒔絵や宝石で飾り立てられた万年筆や複雑機構の機械式時計で、億を超える商品も存在ます。
昨今のゴールドをはじめとした貴金属相場の急騰により、インフレヘッジに役立つ実物資産として金ペンを買い求める人も増えているとか…

最初は純粋に書き味の改善を求めていたはずが、いつの間にか軸の付加価値を追求していた…というパターンもありそうです。
快楽順応で刺激に慣れてしまうと、金ペンの樹脂軸定番モデルでは物足りなくなり、高価な限定品やアンティークを探しまわるようになってしまいます。

必要なのは万年筆じゃなかった

『メディコ・ペンナ』がおもしろかったのは、こうした万年筆への執着・依存という負の側面も的確に描写しているところです。
文具業界では「何をいまさら」「それを言っちゃあ、おしまいよ」というようなネガティブな話題にも、鋭く切り込んでいきます。

主人公の野並砂羽は、両親から離れたくて遠くの大学を選んだのに、卒業後も経済的な支援を期待しているという認知的不協和を抱えています。
親から贈られたのに使われていないモンブランがその心境を表していて、「僕には君が、まだ子供でいたいと思っているようにみえるんだけど」と店長に見透かされてしまいます。
「万年筆には、人の生き方を変える力がある」と認めつつも、「今、砂羽に必要なのは万年筆ではない」と甘えを突き放すことで、成長していく姿が描かれます。

収集家の菱田さんも、「僕に必要なのは万年筆じゃなかった。心穏やかに過ごせる環境だったんだ」と悟り、最後は愛蔵のコレクションを委託販売に預けます。
そして別の会社に再就職したうえ、奥さんとも別居して人間関係をやり直す道を選びます。

分不相応な高級筆記具が気になって仕方ないとき、本当に解決すべき問題は別にあるのではないでしょうか。
砂羽や菱田さんのように、いつかは現実に向き合う必要があるのでは…

自分の経験からしても、文具に執着するのはたいてい仕事がうまくいかなかったり、生活上のトラブルを抱えていた時期だった気がします。
そうしたストレスから逃れるため、オークションで掘り出し物探しに熱中していたような記憶があります。

いつかは菱田さんと同じくコレクションを手放すときがきて、やがては「万年筆にこだわっていたのもいい思い出だった」と振り返ることができたらいいなと思います。

<メディコ・ペンナ>を訪れた人達は、万年筆によって人生が変わるのではない。
本気で人生を変えたいと願い、足掻く者が辿り着く乗換駅のような場所なのだ。
訪れた時には既にその準備は整い、後は透馬が最後の一押しをして、入念に調整した万年筆と共に、彼らを次の目的地にへと送り出す役目を担うだけ——。

とはいえ高級文具の収集がいかに不健康だとしても、最終的に何にお金を使うかはその人の自由と考えられます。
アイドルの推し活などより文具オタクのほうが、案外知的でスマートな趣味に見えるかもしれません。

ICDでもDSMでも精神疾患の診断基準は結局のところ、その症状によって生活や仕事に支障をきたすかどうかです。
余剰資金で趣味を楽しみ、まわりに迷惑をかけない範囲であれば、好きな文具をじゃんじゃん買って経済をまわせばいいのでは…と開き直るのもありでしょう。

神戸の文具店情報

この小説は万年筆に関する話題のほか、神戸の地名や飲食店が多く取り上げられているのも特徴です。
元町にはモデルとなった万年筆店が実在しており、周辺グルメの情報も豊富で、ちょっとした観光ガイドとしても役立ちます。

神戸旅行のついでに訪ねてみた、現地の文具店や飲食店をいくつかご紹介します。

メディコ・ペンナのある場所

小説の舞台となる万年筆店は生田神社の北側、パールストリートの近くと説明されています。

砂羽と美海がはじめてお店を訪れる際、「韓国総領事館とNHKの間にある狭い筋…(パールストリートを超えて)そのまま真っすぐ」という描写から、メディコ・ペンナのある場所はこのあたりでないかと推測されます。

Googleマップを見ると、路地の奥には「メゾン・ド・スガ」という集合住宅があります。
小説のなかで「道が右にカーブして…その少し奥まったところ」と説明された場所には、ストリートビューで見ても普通の住宅しかなさそうでした。

北野の異人館街とも離れた場所なので、確かにここにレトロな洋館があったら驚くかもしれません。
それはあくまで小説のなかの話で、実際は周辺のマンション開発に取り残された地味な住宅街という感じです。

Pen and message.

メディコ・ペンナは架空のお店ですが、実在する神戸の万年筆店「Pen and message.」に取材協力を受けたと謝辞に書いてありました。
モデルとなった店舗は元町駅にほど近い、生田中学校の西側にあります。

Pen and message.

以前、神戸観光のついでに行ってみたことがあり、ちょうど別のお客さんが万年筆の調整をされている最中でした。

Pen and message.

ほかにもお店の方か常連客か数名いて、万年筆談義で盛り上がっていました。
小説と同様に委託販売のコーナーもあったりして、めずらしい輸入万年筆も展示されていました。

ペン&メッセージの店内は、まさに『メディコ・ペンナ』の雰囲気そのままでした。
いつかちゃんと予約して、ペン先調整のご相談にお伺いしてみたいと思います。

そういえば『メディコ・ペンナ』の小説を知ったのも、Pen and message.さんのXアカウントで投稿を見たのがきっかけでした。
作品の冒頭にも登場する神戸ペンショーに出展されていて、ブース紹介の写真にこの本が並んでいるのを見て興味を持ちました。

『メディコ・ペンナ』にはもうひとつ、N(ナガサワ)文具センターという有名店も登場します。
ここの高級文具コーナーも品揃えが豊富なので、神戸を訪れたらぜひ立ち寄りたい場所です。

ナガサワ文具センター

また小説には出てきませんが、元町駅の北側には590&Co.というニッチな文具店もあります。
「黒鉛」という店名のとおり鉛筆やシャープペンシルの販売が中心で、特に木軸ペンは作家さんの作品を多く扱われています。
店頭にはオンラインショップに出ていない掘り出し物も並んでいたりするので、神戸で定期的にチェックしておきたいお店のひとつです。

590&Co.

関西圏には万年筆を扱う店舗が多く、文具関連のイベントもたびたび開催されています。
小説に出てくるような文具コミュニティーで趣味の話ができたら盛り上がれそうです。
逆に文具依存症の人にとっては、誘惑が多くて危険なエリアかもしれません。

『メディコ・ペンナ』の聖地めぐり

『メディコ・ペンナ』に登場する元町~三宮周辺の飲食店をまとめてみました。
作中に出てくるメニューも併記してあります。

  • さんちかのゴディバでチョコレートドリンク
  • にしむら珈琲店
  • GREEN HOUSE(森カフェ)
  • エビアンのコーヒーゼリー
  • 元町サントスのホットケーキ
  • 南京町エストローヤルのシュークリーム
  • HANAZONO CAFEの桃パフェ、ミルフィーユとアイスティー
  • 元町駅東口のイスズベーカリー
  • 順徳の葱汁そば
  • 神戸森谷(もりや)のコロッケ
  • モダナークファームカフェ
  • 新装オープンしたモロゾフ神戸本店
    マスカルポーネクリームとミックスベリーのデザートワッフル

いずれも地元の女子大生がよく利用するお店、神戸出身の作家が紹介する穴場という感じで、流行りのカフェからレトロな喫茶店、定番のブランドなど幅広く取り上げられています。

そのほか万年筆の入れ物として、モロゾフのほかアンリ・シャルパンティエの紙袋も何度か登場します。
神戸発祥の洋菓子店は数多くありますが、この2店は紙袋のデザインが特徴的で、遠目からもわかりやすいという理由で選ばれたのではないかと思います。

神戸旅行のついでに、上記のお店をいくつか訪ねてみました。

元町サントス

元町商店街のアーケードのなかにある、萩原珈琲店のサントスでモーニングをいただきました。

元町サントス

作中で紹介されたホットケーキのほか、ピラフやサンドイッチなど喫茶店らしいメニューもそろっています。

元町サントス

モーニングはトーストとサンドウィッチの2種類あり、Aのトーストにはハムエッグとサラダ、フルーツもついてきます。

元町サントス

炭火焙煎でこだわりのコーヒーをじっくりいただきました。

元町サントス

店内はそれほど広くないですが、1階の奥の壁は鏡張りになっていて奥まで続いているように見えます。
緑色のビロードが張られた椅子は座面が低く、こじんまりした昭和のスケール感を堪能できます。
使い込まれた木のテーブルや床材、アンティークらしい照明もいい雰囲気を演出しています。

元町サントス

2024年にプラチナ万年筆から発売された「マイ・フェイバリット・シングス」第一弾のコーヒーゼリーは、まさに神戸のレトロ喫茶、元町サントスのようなお店にぴったりです。
落ち着いた赤色のボディと、珈琲カラーのキャップがバイカラーになっているためか、不思議とおっさん臭さを感じさせない渋さがあります。

カラバリ豊富な樹脂軸といえばセーラー万年筆の得意技。
プラチナはボディに彫刻がほどこされた富士山シリーズというイメージでしたが、今後はセンチュリーも色違いの限定品が増えていくのかもしれません。

にしむら珈琲店

元町サントスのすぐ近くに、作中で触れられている「にしむら珈琲店」もありました。

にしむら珈琲店

9時の開店前でしたが、ボリューム抜群の朝食セットをいただけるようです。
パンの具材はたっぷり、フルーツも山盛りで、一般的なモーニングよりかなり食べごたえがありそうです。

にしむら珈琲店

イスズベーカリー

元町のアーケード街を東に進んで鯉川筋に出ると、イスズベーカリーが見えてきます。
通勤ラッシュの時間帯、駅から出てくる人たちで通りは混雑していました。

イスズベーカリー

超ロング粗挽きソーセージをフランスパンで包んだ、トレロンというパンが気になります。
あいにく売り切れか、まだ焼き上がり前だったようで、ほかのパンを買って帰りました。

イスズベーカリー

チーズ入りのクロワッサン、ピロシキなど凝ったパンがいろいろ並んでいます。
ほかにも神戸牛入りのコロッケパンやカレーパンなど、揚げてあるパンが多いように感じました。

イスズベーカリーでもらったビニール袋は、神戸の観光名所がプリントされていておしゃれです。

イスズベーカリー

さんプラザ地下のベトナム料理

『メディコ・ペンナ』の第三話で、砂羽と美海がベトナム料理店で食事するシーンが描かれます。

店名は明かされていないのですが、三宮センター街の「さんプラザ」地下という情報をヒントに、それらしきお店を探してみました。

アーケードから階段を下りてみると、さんプラザ~センタープラザ~センタープラザ西館に連なる広大な地下街が広がっていました。
トアロードからフラワーロードまで東西に長く伸びる「さんセンタープラザ」の地下に、居酒屋からファストフード、各国料理の飲食店がひしめきあっています。

その中にベトナム料理店は3つもあったのですが、17時台と早めから開いていたHOI AN(ホイアン)に入ってみました。

ホイアン

ベトナム人と思しき店員さんは、ものすごく接客が丁寧で、何かお願いすると「かしこまりました」と返されて恐縮します。

333やサイゴン・スペシャルなど、地元のベトナムビールもそろっています。

ホイアン

お料理のメニューは無数にあり、今回はバインミーとガパオライスが含まれるセットを注文してみました。
どちらもパクチーたっぷりで、鶏肉のフォーや生春巻きがついてくるのがうれしいです。
セット料理はボリュームもあり、特にバインミーのほうは食べごたえありました。

ホイアン

大学生が日常利用するのに、ホイアンは少々高級なお店だと思います。
小説のモデルになっていたのは、もっとリーズナブルな屋台風のベトナム料理屋だったのかもしれません。

ホイアン

本格的な海外エスニック料理を手軽に食べられる神戸がうらやましいです。

万年筆の参考文献

『メディコ・ペンナ』の巻末に、万年筆関連の参考文献が掲載されています。

図版の豊富なムック本からブランドの解説、歴史の本まで、幅広くリサーチされたようです。
『趣味の文具箱』もvol.50と54が2冊挙げられていました。

以下は今でも手に入る参考書の一覧です。

万年筆のブランド・製品紹介、機構や使用法を解説する入門書、業界人へのインタビュー、メーカー社史など、幅広いジャンルの関連書籍が参照されています。
このうち古山浩一さんの『万年筆の達人』と桐山勝さんの『万年筆国産化一〇〇年』、さらにこれらの本で言及されている、すないまさみちさんの『万年筆クロニクル』を読んでみました。

万年筆の達人、万年筆クロニクル

達人&クロニクルは20年ほど前に書かれた本ということもあって、本で取り上げられている職人さんやお店も、亡くなられたり閉店したところがいくつかあります。
アンティークの古いモデルや吸入機構の解説が中心とはいえ、万年筆の歴史を深く知ることができて勉強になりました。

これらの本で「理想の万年筆」として挙げられているモンブラン149やペリカンM800/トレドはそれなりに高価ですが、現行品も手に入るのでいつか試してみたいです。
また先代や師匠の跡を継いで今でも活躍されている万年筆博士や万年筆工房FURUTA、エイチワークスさんなど至高のオリジナル作品にも興味が出てきました。

近年の金ペン値上げラッシュで買える万年筆を吟味せざるを得ないなか、「急がば回れ」と専門書を読んで理解を深めるのも有意義かと思います。
いずれ現行モデルとヴィンテージの価格が逆転して、高級文具の中古流通が盛んになったりするかもしれません。

続編に期待

主人公の野並砂羽が、疎遠な両親から押し付けられたモンブランを手放し、新たに手に入れる万年筆とは…?
結局それがわからないまま小説が終わったのは、少しさみしい気もしました。

砂羽ちゃんはここまで素晴らしい万年筆を見てきたので、自分用に選ぶのは既製品でなく、メーカーで自ら企画した一本とかだといいですね。
たとえば#3776センチュリー「マイ・フェイバリット・シングス」の新シリーズで、神戸元町のアジアン・エスニック料理店をテーマにした「さんプラザ生春巻き」とか…

主人公が大手文具メーカーに就職してから業界で奮闘する様子や、メディコ・ペンナを訪れる珍客、ライバル店の出現など、続編で取り上げてほしいエピソードを勝手に妄想してしまいます。

野並砂羽のその後

本作は万年筆以外の基本ストーリーとして主人公、野並砂羽の精神的成長がテーマとなっていました。

特にやりたいこともなく漫然と学生時代を過ごし、就職活動も失敗ばかり。
文具店でのアルバイトや客との出会いを通じて、本当にやりたいことを見つける…というシナリオはよかったのですが、最後が普通に就職して終わりというのは案外地味な印象を受けました。

もっとも、ほかの登場人物が作家や画家という変わった人ばかりなので、普通の女子大生を登場させてバランスをとる必要があったのかもしれません。
ただ主人公は法学部出身(父親も弁護士)という万年筆ネイティブな家系なので、第二部ではメーカーを退職して、究極の万年筆をたずさえ司法試験にトライ!…といった流れも考えられます。

そのほか文具業界で活躍する女子のイメージとしては、文具批評家やYouTuberとしてインフルエンサーになった後、雑誌でコラムを書いて書籍も出版、さらにメーカーとコラボして独自企画の筆記具をリリースするとかどうでしょうか。

あるいは店長の跡を継いで女流調整士を目指すとか、パイロットの平塚工場で蒔絵の修行を積み人間国宝に選ばれるとか、職人路線での発展を描くのもありだと思います。

ミステリー寄りの続編としては、砂羽が父と和解して一族に代々伝わる業物万年筆を譲り受けるといったアイデアも…
所有者が次々と不幸に見舞われるため封印されていたペンの謎を解き、透馬の調整(お祓い)によって先祖の魂を成仏させるなど、呪具・呪物としての万年筆廻戦を描いてもおもしろそうです。

万年筆ネタの宝庫といえる『メディコ・ペンナ』でも、まだまだ拾いきれないエピソードがあったのではないでしょうか。
野並砂羽や橋口博子のさらなる成長、番外編として山口美海の恋愛武勇伝、寺田怜人の回心と救済など、ぜひ続きも読んでみたいです。

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夜間券でも満喫できた大阪・関西万博レポートhttps://bofuo.net/expo/Mon, 18 Aug 2025 02:00:00 +0000https://bofuo.net/?p=2278

大阪・関西万博を「夜間券」で訪れた体験レポートです。 最安に見えるナイトパスは実質的に割高ながら、20時以降は会場が空いてきて、人気パビリオンもいくつか見学できました。予約なしでも見学できた各施設の見どころや、会場内で手 ... ]]>

大阪・関西万博を「夜間券」で訪れた体験レポートです。

最安に見えるナイトパスは実質的に割高ながら、20時以降は会場が空いてきて、人気パビリオンもいくつか見学できました。
予約なしでも見学できた各施設の見どころや、会場内で手に入る値段の安い飲食物などをご紹介します。

ミャクミャク

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万博FOMOで夜間券

始まるまでは、たいして行く気がなかった大阪・関西万博…
たまたま知り合いがはまって「もう5回も行った!」という話を聞いて、にわかに興味を持ちました。

さえない前評判と裏腹に、意外と盛り上がっているらしいという報道を聞くたび、万博に取り残される恐怖(FOMO:Fear Of Missing Out)をひしひし感じていたのも事実です。

ミャクミャク

わざわざお金を払って行列に並ぶのも嫌ですが、期間限定のイベントなので、行っておかないと後から後悔しそうな不安もあります。
万博自体たいして楽しめなかったとしても、後学のため、パビリオンや会場の様子は視察しておきたい気持ちもあります。

万博会場

とはいえ個人的な優先度は低いので、用事がひと段落してから万博に行こうと思っていたら会期も半分終わってしまいました。
今年は近畿地方が早めに梅雨明けして連日猛暑日ですが、涼しくなるのを待っていたら終盤の駆け込み需要と重なってしまいそうです。

天気予報を見ながら思い切って3日後の万博チケットを購入し、当日のホテルも大阪市内に予約しました。
2日目の予定はフリーとして、1泊2日で大阪万博をチラ見してくる弾丸ツアーで訪問してきました。

夢洲駅

夜間券は本当にお得なのか?

「昼間は暑そうだし、どうせ1日で全部は見切れないから、ナイトパスでいいか?」と考え、17時以降に入場できる夜間券(3,700円)を購入しました。

夜間券

あとから考えると、夜間券には平日/休日の区別がありません
フルタイムでいられる平日券(6,000円)に比べて、休日もOKな一日券は7,500円で、価格が25%もアップします。

夜間券

また開場時間9~22時(13時間)のうち、夜間券でいられるのは17~22時の5時間です。
しかもパビリオンや大屋根リングは21時で閉まるので、現地で遊べるのは実質4時間くらいということになります。
(実は後述のトワイライトキャンペーンで5時間いられます)

夜間券

一見、最安でお得そうに見える夜間券ですが、時間単価で見ると割高です。
しかも平日に使うのはもったいないとわかりました。

通期パスを買うか否か

当日の昼間は心斎橋で暇をつぶしてから万博に行ったのですが、時間に余裕があるならチケット代をケチらず平日券を買えばよかったと後悔しています。
話のネタの下見程度という気持ちだったので、料金最安を目指して初日は夜間パスを選んでしまいました。

夕方から行ってみて予想以上に万博がおもしろければ、翌日は一日券か通期パスを購入して再訪問する計画を立てました。
夜だけ見て十分満足したら、2日目は普通に大阪観光して帰る予定です。

夢洲駅

万博の評判はよさそうですが、さすがに3万円もする通期パスをいきなり買う度胸はありません。
元をとるには平日5回も行かなければならず、旅費や食費も馬鹿にならないです。

知られざるトワイライトキャンペーン

当日は地下鉄中央線の夢洲駅で降りて、東ゲートから万博会場に入りました。
電車はそこそこ混んでいて、駅にも人がたくさんいます。

夢洲駅

17時よりちょっと早めの15分前には東ゲートに到着したのですが、予想していた行列もなくがら空きで拍子抜けしました。
夜間券の入場時間まで、外で待っているのももったいないので、試しに荷物検査を受けてゲートをくぐってみました。

東ゲート

スマホ画面のQRコードはエラーで弾かれると思ったのですが、特に何事もなく通過できてしまいました。
不思議に思ってスタッフのかたに聞いてみたところ、今はナイトパスでも1時間早く、16時から入場できたとのことです。

あらためて調べてみると、万博公式ページに「トワイライトキャンペーン」のお知らせが出ていました。
だいぶ前の5月7日から、夜間券の入場時間が1時間前倒しされていたようです。

購入時に告知がない理由

チケット種類の説明画面や、夜間券の購入プロセスを振り返ると、トワイライトキャンペーンの情報はなかった気がします。
かなりお得なルールなのに、購入者に対して告知がないのは不親切に思います。

ただし、自分のようにキャンペーンの存在を知らないまま定時に来てしまう人もいることで、夜間組の入場時間がばらけるメリットはありそうです。

東ゲート

そもそもそれが運営側の狙いだったのかもしれません。
公表する情報を意図的にコントロールしている節もあり、万博を効率よく攻略するには運営の裏をかいた綿密なリサーチが必要そうです。

いずれにしても、ゲートでまったく並ばずに入れたのはラッキーでした。
時間延長キャンペーンを逃して悔しい反面、余裕をもってストレスなく入場できました。

東ゲート

パビリオン予約はほぼ不可能

ほとんど思いつきで入場チケットを直前購入したため、「パビリオンの予約」という難関ポイントに考えがおよびませんでした。

結論からいうと、公式混雑予想カレンダーで「余裕あり」表示の平日中日であっても、飛び入り参加でパビリオンの予約は不可能でした。

予約日時の3日前からオープンしていたらしい「空き枠先着予約」はすでに完売。
一縷の望みをかけてトライした「当日登録」という制度も、17時入場ではまったく使いものになりません。

当日登録

万博公式サイトも予約が殺到している時間帯は頻繁にフリーズします。
エラーが出てページが正しく表示されません。

万博公式サイト接続エラー

混雑時にうまくつながったとしても、サイトアクセスまで30分待ちという状況はざらです。

予約のプロではない一般人としては、おそらく前もって計画を立てて「2か月/7日前抽選」に参加しないと、パビリオンの予約は難しいと思います。
週間天気予報を見ながら、天気のよさそうな日を直前で選ぶとしたら、空き枠と当日登録は当てにならないと覚悟したほうがいいです。

当日登録も厳しい

無計画なひとでも万博を楽しめる救済措置とおぼしき当日登録は、入場10分後から操作可能になります。

当日登録

とりあえずゲートをくぐった17時前後にスマホで確認してみたところ、予約可能なパビリオンやイベントはゼロでした。
あまり噂を聞かないマイナーなパビリオンでさえ、すべての時間帯で予約不可の×マークがついています。

当日登録

しばらく間を置いて19時頃、当日登録の画面を見ると、「やや混雑」の△マークが出ているパビリオンが出現していました。
速攻で希望の時間帯を選んで申し込んでみたところ、「予約が確保できませんでした」画面が出ました。

当日登録

ほかのパビリオンや時間帯の△マークを選んで何度か繰り返しましたが、すべて同じエラーが表示されて、先に進めませんでした。

当日登録

しばらく観察していると、やや混雑の△マークは稀に出るものの、ページをリロードするとすぐ消えてしまうとわかりました。
つまり空き表示が画面に出た瞬間、おそらく数秒以内に、他の人が予約を押さえてしまうのではないかと推測されます。

空きが出てもすぐ埋まる

パビリオンの行列待ちや食事中に、何千人もの人が当日予約を狙ってページの再表示を繰り返している状況がイメージできます。
あるいは万博ヘビーユーザーで職人級の人がいたり、端末を何台も用意して予約枠を転売するようなプロもまぎれているのかもしれません。

平日夜7時以降の比較的空いている時間帯でもこれだったので、日中や休日の当日登録はさらにハードルが高いと思われます。
わざわざ万博会場に来て、スマホばかり見ているのももったいないので、パビリオンの予約は早々に諦めて会場散策に向かいました。

万博公式サイト接続待ち時間

どうしても中に入ってみたいパビリオンがあるなら、前もって抽選に申し込むか、当日行列枠があるなら素直に並ぶしかないと思います。
空き枠や当日登録の先着系で予約をゲットするのは、素人にはハードルが高すぎる気がします。

ちなみに自分のiPhone、Safariブラウザでは、個別パビリオンの予約画面を別タブで開けない仕様になっていました。
そのため前の画面に戻るたび、パビリオンの検索リストのトップに戻ってしまい、下にスクロールして項目を追加表示するのが面倒でした。

このあたりも慣れている人なら、もっとうまい検索・予約方法があったのかもしれません。

パビリオンの待ち時間目安

東ゲートを入ってすぐの人気パビリオン、たとえばパナソニックや電力館は予約でしか入れません。

当日予約終了

ためしに前を通ってみましたが、当日枠の案内はありませんでした。
入り口に並んでいたとしても、それはあらかじめ予約した時間を待っている人たちです。

null2は完全予約制

根性で並べば見られる

住友館や当日枠の行列もありましたが、すでに人が並びすぎているせいか新規参加をストップしていました。
近くにある日本館も予約なしで入れたものの、数百人待ちとおぼしき大行列だったのでスキップしました。

パビリオンの行列

およその待ち時間を表示してくれている親切なパビリオンもあります。
たとえば海外パビリオンのカナダ館で90分待ちでした。

カナダ館の待ち時間

万博リピーターで暇つぶしグッズも準備してあるなら、のんびり並んでみるのもありかと思います。
今回は夜間パスの突貫ツアーだったので、なるべく行列の少ないパビリオンに絞って見学しました。

夜8時以降は空く

日が沈んで暗くなると、徐々に会場内の人が減ってくる気配がしました。
帰りのゲートや電車混雑を避けて、早めに帰る人がいるのかもしれません。

パビリオンの予約

特に夜8時を過ぎると、先ほどまでかなり並んでいたオーストラリアやスペインのパビリオンが、がら空きになっていました。
この時間帯は大屋根リングの北側にいたので、モナコパビリオンや「夜の地球」もスムーズに入れました。

夜の万博会場

しっかり定点観測したわけではないですが、終了1時間前くらいになると海外パビリオンはかなり空いてくるようです。
本当に終わり間際になると、建物の前で海外スタッフの人が「すぐ見られるよ~」と日本語で呼び込みをやっている光景も見られました。

下調べしていない未知のパビリオンは、展示に当たり外れがあります。
せっかく長時間並んだのに、展示があっけなかった…という失敗を避けるため、海外系のパビリオンは夜間のボーナスタイムにまとめて見るのが効率よいと思います。

パビリオンの待ち時間

企業系もチャンスあり

今回見たかったパビリオンのひとつ、飯田グループ×大阪公立大学は18時の時点で20分待ちでした。
ほかに比べればマシとはいえ、まだ会場内で未踏破のエリアがたくさんあったので一旦スキップしました。

飯田グループ×大阪公立大学パビリオン

その後、大屋根リングの下をぐるぐる回りながら再訪すると、20:30には「待ち時間1分」の表示に変わっていました。

たまたま入れ替えのタイミングに出くわしたのかわかりません。
競争率の高い企業パビリオンで、ほとんど待たずに入れたのはラッキーでした。

見学できたパビリオン紹介

夜間チケットの短い時間で、予約もなく体験できたパビリオンをご紹介します。
海外パビリオンや企業パビリオンも、短縮ルートや閉館間際ならスムーズに入れたところがありました。

行列のないコモンズ館もすべては行けなかったので、夜間券の持ち時間であれば「見られるパビリオンがひとつもない!」という事態には陥らないと思われます。

UAE(アラブ首長国連邦)

東ゲートにほど近く、日本館の大屋根リングを挟んで向かいにある海外パビリオンです。
隣のカタールやカナダが激込みで行列しているなか、17時台にさくっと入館できました。

建物は単純な形状で、ガラスの箱のなかに天然素材で覆われた柱がランダムに林立しています。
天井は高く、太い柱が冗長に配置されているので、シンプルな構成ながら新鮮味があります。

UAEパビリオン

万博ゲートの建築のように、「いかに柱を少なくして、屋根を薄く見せるか」というチャレンジの逆で、UAEパビリオンは宗教的な静謐さを感じさせるような空間でした。
エジプトの神殿や、イスタンブールの地下貯水池と似ているかもしれません。

柱は葦のような植物か細い木材で覆われて、金具で締められています。

UAEパビリオン

カーペットもアースカラーで、刺激の多い万博会場のなかではめずらしく落ち着いてくつろげる場所です。
地べたに座って映像を見ながら、チルアウトしている人々がたくさんいました。

UAEパビリオン

レストランもあるのですが、入口はパビリオンの外で別になっており、こちらは行列ができていました。

お土産ショップはスムーズに入れます。
現地のスカーフや置物など、そこそこいい値段で販売されていました。

UAEパビリオン

モナコ

日が暮れた19:30頃の時間帯に、モナコ館はかなり空いていました。

メインの円筒形タワーのほか、敷地内に分散された展示スペースがあり、そちらは並ばず自由に入れます。
メインタワーから各展示スペースを巡回する一方通行の見学ルートになっていますが、ルートの途中から乱入できる変則ルールになっています。

モナコパビリオン

先に見学した屋外展示スペースのひとつ、「海を守る」というテーマの建物です。

モナコパビリオン

リサイクルされたプラスチックで、海のなかの様子が抽象的に表現されています。
照明やBGMが穏やかで、瞑想的な空間でした。
冷房も効いているので気持ちよく、つい長居してしまいます。

モナコパビリオン

ほかにも敷地内の小展示スペースには、ミツバチの効用を説明するパネルや木の模型、映像がインタラクティブに動く本などがありました。

モナコパビリオン

ただし海中スペース以外の屋外ゾーンは空調が効いていないので、日中の暑い時間帯に見学するのは厳しいと思います。

モナコ館のメイン建物は少し並んでいましたが、2分待ちくらいですぐ入れました。

モナコパビリオン

建物は4階建てになっていて、3階のワインバーと4階展望ラウンジは入口が分けられています。
夜は展示スペースより、ワインバーのほうに長い行列ができていました。

モナコパビリオン

1階の体験型展示は触覚を重視したインタラクティブな仕掛けがあり、かなりおもしろかったです。

モナコパビリオン

ワイヤーが刺さった揺れる石ころを触ると、触った場所に応じて目の前の映像が変化します。

モナコパビリオン

ほかにもざらざらしたサンゴのようなテクスチャー、回せる球体、空気の出る穴、金属板などがあり、手で触れるとそれぞれ映像が反応します。

モナコパビリオン

映像自体は抽象的で意味がよくわかりませんでしたが、「自然に触れてみよう」的なコンセプトは実感できました。

モナコパビリオン

大人数をさばく必要のある万博パビリオンとしては、大画面のシアターやジオラマのほうが観客の回転効率を上げられると思います。

モナコ館はあえて狭い空間で、パーソナルな親密さを感じさせる触覚展示で勝負しているところが印象的でした。
全体的にデザイン性や展示物のクオリティーが高いと感じます。

モナコパビリオン

ただし2階の「ディスカバー・モナコ」は、望遠鏡型のデバイスでモナコのパノラマ映像が見られるだけです。
ポイントを注視すると場面が切り替わる機能はありますが、見ためのわりに退屈なので、並んでいたらスキップしてもよいかと思います。

モナコパビリオン

モナコ館の入口には高そうなロードバイクも展示されています。

モナコパビリオン

スペイン

スペイン館はライトアップされた巨大な階段に、沈む太陽のような円形の開口部が設けられた建築です。
思わず階段を上って穴に入ってみたくなるような魅力があります。

スペインパビリオン

入口ステージで行われていたフラメンコショーは満員で、通りがかりの観客は滞留・撮影も禁止でした。
ちょうど夜8時でしたが、フラメンコを見なければほぼ待たずに入れます。

スペインパビリオン

スペイン館の内部は前半が黒潮に関連する海の映像展示です。

スペインパビリオン

発電や材料工学?に関した細かい展示もあり、じっくり見ればそれなりに時間がかかります。

スペインパビリオン

後半は一転してオレンジ色の空間になり、スペインの魅力や観光地を紹介する映像、ポストカードが展示されています。

スペインパビリオン

展示内容は凡庸なのですが、床から天井までビビッドな橙色というのが刺激的です。
人によっては強迫的で気分が悪くなりそうな不安もあり、日本ではまず見かけないような空間といえます。

スペインパビリオン

こうした海外の常識(日本の非常識)や美的センスを垣間見れるのが、万博のおもしろいところでもあります。

スペイン館の最後にあるショップでは、高級なオリーブオイルや現地のミネラルウォーター、ビールやワインを購入できます。
ちょうど上階のフラメンコショーが終わったタイミングで、どっと人が押し寄せてきました。

ここの缶ビールは500円と案外安くておいしいのでおすすめです。

スペインパビリオン

併設の飲食スペースで頼むと、コーラやウーロン茶が660円もしてビールより高いです。
ドリンクは隣の売店でテイクアウトしたほうが、だいぶ安くあがります。

スペインパビリオン

スペイン館のレストランは夕方かなり並んでいましたが、20時過ぎはほぼ空いていました。
ほかのフードコートに比べると、料理のお値段は少々高いです。

万博グルメ

オーストラリア

夜8:30、スペイン館の2軒となりにあるオーストリア館も並ばずに入れました。

オーストラリアパビリオン

内部はまず木がニョキニョキ生えた森のようなスペースがあります。
壁が鏡張りになっているので、実際より広く大森林のなかにいるような雰囲気を味わえます。

オーストラリアパビリオン

後半はパネル上のディスプレイをいくつも組み合わせた、没入型のシアターです。
内容は宇宙や空、海の中などをCGで表現したパノラマ映像でした。

オーストラリアパビリオン

スクリーンに隙間も多く、臨場感満点というわけではないのですが、CGのクオリティーは高く、それなりに楽しめます。

オーストラリアパビリオン

スペイン館の展示はたったこれだけで、映像を全部見ても10分くらいで完了します。
必死に予約して見学するよりも、閉館間際にやってきてざっと見てまわれば十分かと思います。

オーストラリアパビリオン

ちなみにオーストラリア館もカフェスペースがあり、1,650円もしますが「ワニの切り身」などめずらしい料理を食べられます。
さすがにコアラやカンガルーの肉は販売されていませんでした。

オーストラリアパビリオン

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

飯田館は見た目の派手さで、一二を争うパビリオンと思われます。
花柄模様の西陣織で全体を包んでおり、日本館よりもダイレクトに「和」の要素を感じられる建物です。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

エントランスのひさしが巨大な扇子の形になっていて、建物本体と同じくギネス世界記録に認定されたそうです。
おそらく空からの撮影と映えを意識した造形のため、地上からは扇子がどれなのかよくわかりません。

18時の時点ではまだ20分待ちだったのでスキップしました。
ほかと比べて行列も短く、予約なしでも比較的入りやすい企業パビリオンです。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

万博敷地内を一巡してきて、20:30に再訪すると「予約なし待ち時間:1分」と表示されていました。
ちょうど観客入れ替えのタイミングに重なったのか、本当に1分程度で中に入れました。

館内では最初に大型スクリーンによる全体説明があり、扉を抜けるとあとは自由行動です。
館内体験時間20~45分とされていますが、ざっと見てまわるだけなら10分もかかりません。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

飯田パビリオンの特筆すべき点は、建物の設計から内部の展示まで、かなり建築色が強いということです。
スポンサーの飯田グループが「戸建て分譲住宅が得意な不動産会社」という背景もあると思います。

奇抜な外観はもとより、展示内容も未来の都市空間や住宅などで、「いかにも万博パビリオン」という王道の構成です。

外観デザインについて、コンセプトや設計者のメッセージが丁寧に展示されているパビリオンは初めて見ました。
ミスタードーナツのフレンチクルーラーのような形状ですが、中身は複雑な鉄骨構造になっています。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

パビリオンの外装に張られているのは特殊加工された西陣織で、生地のサンプルも展示されています。
西陣織は総延長5kmもあり、特殊コーティングされているそうです。

外観はあまり布っぽくなくて、普通のテント生地に模様をプリントしたように見えました。
仮設とはいえ十分な耐久性・耐候性をもたせるため、フッ素やシリコンでぶ厚く樹脂コーティングされているのかもしれません。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

室内中央に位置する未来都市ウエルネススマートシティのジオラマは、メビウス形状の空中庭園のまわりに高層ビルや住宅が配置されています。
コンセプトがWellness(広義の健康)であるせいか、革新的な新技術や交通・インフラといった印象は受けませんでした。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

パンフレットの説明を読むと、メガ人工光合成の施設と水素ショップが隣接していて、ここで各種のエネルギーを製造しているのかと思います。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

ジオラマ内の高層建築やホテル・スタジアムなどをよく見ると、パビリオン設計者の過去作品が登場しています。
外観デザインだけでなく展示物まで監修されていたのか、建築業界の詳しい人向けトリビアが散りばめられています。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

ジオラマは見ごたえあるのですが、外周部に配置されたスマートハウスが普通の家っぽいのは少々興ざめでした。
「これだけ技術の進んだ未来でも、庶民は今と変わらない庭付き一戸建てに住んでいるのか…」と、急に現実に引き戻される感覚です。

実際、100年後になっても都市景観は今とたいして変わらないのかもしれません。
インフラ更新の過程で電線が地中化されたりする可能性はありますが、土地所有の概念や不動産ビジネスが健在なら、戸建て住宅も似たようなものでしょう。

せっかくなら業界最大手の飯田グループとして、分譲住宅の進化系といったビジョンも提示してほしかったです。

個々の住宅の内容については、ジオラマと別に「ウエルネス・スマートハウス」の展示で説明されています。
パビリオン内にある実寸大の住宅模型で、キッチンや寝室もついています。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

とはいえインテリアに目新しさはなく、家具の提供元もカンディハウスでした。
広告とQRコードも添えられています。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

ソファやチェアは実際に座れるので、ほかの人の迷惑にならない範囲で多少は休憩できます。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

スマートハウスの目玉はメディカルトイレです。
糞便を採取して腸内細菌を分析し、未病の改善などに役立ててくれるそうです。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

便器に座ってモニターを操作すると、「採便システムの準備が整いました」と表示され、丸見えのトイレで本当に用を足すのかと一瞬焦りました。
さすがに映像とパネルの説明だけで、観客の便を採取するデモは行われていませんでした。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

体重や血圧などは今でも自分で測れますが、検尿・検便まで自宅のトイレで済ませられるのは便利かもしれません。
見た目の派手さはありませんが、こうした地道なところから住宅設備・サービスの改善が進んでいくのかと学べました。

パビリオンの内壁には超大型の16Kワイドスクリーンがあり、ジオラマの説明映像やAI美女を拝めます。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

出口付近に西陣織のギフトショップと、2階にはレストランもあります。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

カレーが2,800円、パスタは2,400円とフードはかなり高価ですが、コーヒーは600円でいただけます。
パビリオン内は特に時間制限もなさそうなので、日中の営業時間に空いていれば、落ち着いてくつろげる穴場といえそうです。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

大阪ヘルスケア

人気のありそうなパビリオンながら、意外とすんなり入れたのがNest for Rebornの大阪ヘルスケアです。

大阪ヘルスケアパビリオン

入口の左側に、行列を避けて短縮ルートで見学できるファストパスがあります。

大阪ヘルスケアパビリオン

リボーン体験やモンスターハンターは体験できないものの、館内中央のアトリウム空間でiPS細胞や人間洗濯機を見られます。
最後に協賛企業の飲食ブースも通過できて、ここにあるMetro KITCHENは価格が安いのでおすすめです。

大阪ヘルスケアパビリオン

iPS細胞からつくられた心筋シートは、本万博における主要展示物のひとつです。
まさか予約もなしであっさり見学できるとは思いませんでした。

大阪ヘルスケアパビリオン

心筋シートは3つ展示されているので、ある程度人がばらけてゆっくり見ることができます。
写真撮影も自由です。

大阪ヘルスケアパビリオン

直径3cmくらいの薄い膜がピクピク動いているのは、なかなか衝撃的な光景でした。
電気信号は外部から流しているのかと思いきや、培養液の糖分・酸素を消費することで、自律的に脈動しているそうです。

大阪ヘルスケアパビリオン

本来、心臓で電気信号を発生させている洞結節を置き換えるのか、心臓のどこにでも貼って使えるシートなのはわかりませんでした。

自分は洞性徐脈で精密検査を受けたこともあり、不整脈の持病を抱えています。
従来のペースメーカーでなく心筋シートを移植してもらえれば、電池交換の手間もなく便利そうです。

心筋シートの実用化は意外と早そうなので、自分が生きているうちにお世話になるかもしれないと思うとありがたく感じました。

運よくパソナ館のほうにも入れれば、さらに高度なiPSミニ心臓の展示も見られます。
こちらは予約か行列必至なので、サクッと見たいならヘルスケア館の心筋シートで十分かと思います。

パソナパビリオン

ヘルスケア館のショートコースでは、もうひとつの目玉展示物、人間洗濯機も見学できます。

大阪ヘルスケアパビリオン

あいにくデモ時間は終了していたので、実際に人が入る様子は見られませんでした。
観客がなかに入ることもできません。

大阪ヘルスケアパビリオン

「人間洗濯機」というネーミングからは、何となく人権侵害や虐待のようなイメージを連想します。
前回1970年の大阪万博にも登場した有名展示のひとつで、おじさんの万博ノスタルジーに訴えかける定番ネタといえます。

新型洗濯機の機能については、株式会社サイエンスのウェブページに詳しく記載されています。

装置の外観は55年前のオリジナルとそう変わっていないように見えますが、マイクロバブルによって洗浄力や温浴効果が向上しているそうです。
既存のバスタブに後付けするタイプなら、30万円台から導入できます。

石鹸不要で体がきれいになり、風呂掃除も不要になるとしたら、見た目は地味ながら画期的な技術といえるかもしれません。

1970年万博の人間洗濯機は、あくまで「未来感の演出」というエンターテイメントでしたが、今回の新型は介護や医療の現場で省力化に役立ちそうな実用性を感じさせます。
映画『老人Z』で描かれたような、全自動介護の要素技術として役立ちそうです。

コモンズD~E

万博予約難民の救いがコモンズ館です。
夜間券の持ち時間なら、コモンズをすべて見るだけでも終わってしまうくらい、展示のボリュームがあります。

コモンズパビリオン

AからDまで4棟ある詰め合わせ展示で、独立パビリオンを持たない国が共同でブースを構えています。

コモンズパビリオン

アフリカや中東の小国が多いようです、どういう基準でA~Dに分けられているのかわかりません。
自分が見学したのはコモンズD館だけですが、A~C館も似たような内容のようです。

コモンズパビリオン

コモンズE館だけは規模が小さく、よくわからない神輿やマンガの原画が展示されていました。

コモンズパビリオン

海外コモンズの中身はよくある展示会形式で、国ごとに展示区画が割り当てられています。
パキスタンのように、まわりを壁で覆って凝った展示を行っているブースは、コモンズ内でも行列ができていました。

コモンズパビリオン

大半の国はオープンなセットで、写真や映像を交えて民芸品や特産品を紹介しています。

コモンズパビリオン

観光誘致が目的と思いきや、コンゴのように鉱物資源を展示して投資や開発をアピールしている国もあります。

コモンズパビリオン

マリ、スーダンなど完全にお土産屋さんに振り切ったブースもあり、めずらしい民芸品やパワーストーンなどが販売されていました。
とはいえアフリカの現地価格ということはなく、革製品やアクセサリーなど、そこそこいい値段がつけられています。

コモンズパビリオン

スーダンの動物型ポーチなどは、日本国内であまり見たことのないデザインです。
普段は輸入販売されていないようなレア商品も見られるので、エスニック雑貨が好きな人は盛り上がると思います。

トルコ石やラピスラズリの販売コーナーには、人だかりができていて近づけませんでした。

コモンズパビリオン

夜の地球

モナコ館の隣にあり、ふらっと入れたのが「夜の地球 Earth at Night」です。
建物の周囲に大漁旗が掲げられていて、海鮮丼でも振る舞ってくれそうな雰囲気です。

夜の地球パビリオン

名前からして謎のパビリオンですが、輪島塗の巨大地球儀を中心に、能登半島地震の復興に向けて現地の伝統工芸を紹介するコーナーになっています。

夜の地球パビリオン

メインの地球儀は直径1m、重さ215kgもあり、黒い漆のうえに金で陸地が表現されています。

夜の地球パビリオン

同じ製法でつくられたと思しき、有名都市の地図パネルも展示されています。

夜の地球パビリオン

漆の地球儀は万博のために作られたのではなく、2017年に制作され、石川県の輪島漆芸美術館で展示されていたようです。
もともとこのパビリオンはイランが使う予定で建物も完成していたところ、途中で撤退したので、能登復興に転用されたとわかりました。

夜の地球パビリオン

せっかくなら伝統工芸だけでなく、北陸のグルメも楽しめる飲食コーナーがあればよかったと思います。

大屋根リング

とりあえず万博に来てよかったなと思えるのは、大屋根リングを見られたことです。

半径2km、世界最大の木造建築物としてギネスにも認定された代物で、間近で見ると想像以上に迫力がありました。
万博会場が広いので、それほど巨大には見えないですが、人の大きさと比べるとスケールを実感できます。

大屋根リング

高さは12~20mあり、4~5階建てのビルに相当します。

ちなみに『進撃の巨人』に出てくる壁は高さ50mで大屋根の2倍以上あります。
アニメやマンガのなかでしか見ないような超構造体といえます。

圧倒的な虚無空間

リングの内部は木の骨組みがあるだけで、圧倒的な虚無…
雨風しのぐ機能と歩行路・展望台、万博を象徴する円環シンボルである以外、ほとんど機能がない「無の空間」というのがとても日本的に思われます。

大屋根リング

1970年大阪万博におけるトラス構造の大屋根と同じく、「万博=巨大な屋根」というわかりやすいランドマークが求められたのかもしれません。
必要な機能に対して明らかにオーバースペックな印象を受けますが、広い会場ではこのくらいのスケール感がないと目立たなかったのでしょう。

大屋根リング

前万博を経験したシニア層がターゲットとして、方形を円形リングに、太陽の塔モニュメントを森に置き換えて中心性・象徴性をぼかしたのが、21世紀版大屋根のコンセプトと推測されます。

大屋根リング

構造はシンプルに柱と貫だけで合理的につくられており、挿肘木を多用した大仏様(天竺様)の木造建築をイメージさせます。
3次元グリッドのマトリックス空間は、東大寺南大門を下から見上げたかのようです。
少々コストをかけて肘木の木鼻に繰形を施せば、さらに和風なお寺感を演出できたかもしれません。

大屋根リング

万博が終わったあとの大屋根リングは、現状のまま、もしくは部分的なモニュメントとして保存が検討されているそうです。
個人的なアイデアとして、うめきたエリアの再開発に合わせ大阪駅を取り囲むようにリングを再配置したら、ユニークな都市景観になると思います。

リングの上は撮影スポット

会場に到着してすぐ、雷雲が接近しているとのことで、大屋根リングの上層部は立入禁止になってしまいました。
エスカレーターは下りだけ動いていて、警備員さんが見張っているので勝手に上ることもできません。

大屋根リング


天候状況によって大屋根は閉鎖されることも多いようです。
開いていたら早めに上ってみることをおすすめします。

1時間ほど経って立入制限解除のアナウンスが流れると、人々がエスカレーターに殺到しました。
この日は平日で問題ありませんでしたが、1.5万人くらい上がると安全のため入場制限が行われるそうです。

大屋根リング

屋根のうえは途中からスロープになって分岐するルートがあります。
スロープを上ると外周部まで歩ける芝生広場があり、撮影スポットとして人気でした。

大屋根リング

ちょうど夕日が沈む時間帯、大屋根リングの一番高い位置から写真を撮るときれいです。
がんばって海側まで歩けば、海までさえぎるもののない絶景を拝めたかもしれません。

大屋根リング

時間があればリングを1周してみたかったですが、人混みのなか撮影しながら2kmも歩くと30分くらいかかりそうです。
いくつかあるエスカレーターの間で、ひとまず1/3周歩いたところでやめておきました。

大屋根リング

大屋根リングのエレベーターは、順番待ちでかなり並ぶときがあります。

体力に余裕があれば、外周部に設置されている階段で上り下りするのもおすすめです。
木造構造体の中心付近からのぞきこめて、おもしろい写真も撮影できます。

大屋根リング

夜景も映える

日が沈んでから夜景を見るため、また大屋根リングのうえに上がってみました。
ライトアップされたリングや、各国パビリオンがきれいです。

大屋根リング

夜は日差しもなく涼しいので、パビリオン見学で疲れたらビールを片手にリング上の芝生で休むのもいいと思います。
みんな同じことを考えているのか、夜になっても大屋根は混雑していました。

大屋根リング

夜景スポットとして最高の大屋根リングですが、閉館はほかのパビリオンと同じ21時なのは残念です。
その時間を過ぎるとエスカレーターも下り一方通行になり、屋根上のスロープ通路も閉鎖されます。

しばらくうろうろしていても、警備員さんに早く降りるよう促されます。
閉館後の観客誘導は人力なので、毎日大変そうだなと思いました。

万博の名物建築

万博ではパビリオンの展示内容に加えて、建築のデザインにも見どころがあります。
大屋根リングのほかに、気になった建物やトイレ・休憩所をご紹介します。

ポーランドパビリオン

カーサ ブルータスで予習

万博建築の予習としては、カーサ ブルータスの6月号「万博と建築」特集が参考になりました。

建築・デザインの観点から各種パビリオン・付属施設を紹介している書籍として、ほかの一般的なガイド本より内容が充実しています。

抽選でも空き枠でもパビリオンに失敗した時点で、夜間券の滞在時間はとにかく会場を歩いて建築を見てまわろうと思いました。

ヌルヌルの謎

落合陽一とNOIZが手がけるパビリオン「null2」は、シグネチャーゾーンの海側に位置しています。

null2

建物の形状はわりと単純で、ヴォクセルをイメージした立方体の集積になっています。
しかし壁面が鏡面反射するステンレスのような材質で、かすかに振動することによって複雑な模様を映し出しています。

null2

壁面に触れることは禁止されていたのですが、見たところアルミホイルを強化したような膜で覆われている感じでした。

null2

こんな柔らかい素材を外壁に使って破れないのか心配ですが、独自開発とのことで強度や対候性は担保されていそうです。
飯田パビリオンの西陣織のように、樹脂やなにかで裏打ちして補強されているのかもしれません。

ヌルヌルの写真を見ると、外壁全体がディスプレイで映像が投影されていると勘違いしそうです。
実物を見ると丸い穴のなかにモニターがあって、ほかの壁面は鏡になっているだけだと気づきます。

null2

建物のどこかから重低音のBGMと連動した振動が発生していて、鏡面膜が微妙に揺れることによって反射した風景も動いているように見えるというトリックです。

音響も含めた建築の異質さとしては、万博でもトップレベルのインパクトがありました。

残念石トイレ

パビリオン以外にも、若手建築家20組が設計を担当したトイレや休憩所が会場内に散りばめられています。
いずれも小規模で予約も不要なため、待ち時間にふらっと訪れて暇つぶしや休憩に使えます。

トイレのなかで印象に残ったのは「残念石」です。
大阪城再建のために切り出されながら使われなかった巨石で、トイレの屋根を支えています。

残念石トイレ

5個ある石は1個1トン近くするらしく、京都の木津川から夢洲まで運んでくるのは大変だったのではないかと思います。
会期終了後はまた元の場所に石を戻すそうです。

残念石トイレ

短期間の展示ということで解体・撤収が容易な仮設構造物が多いなか、リアルな石材(しかも城の石垣に使われるような巨石)を採用しているのは異様です。
一般の人が見たら、ディズニーランドにあるようなフェイクの石と思われてしまうかもしれません。

残念石トイレ

経済的合理性を無視したアートのパフォーマンスとも言えそうな残念石は、万博終了後もレガシーとして夢洲に残せばいいのではないかと思います。

残念石トイレ

ただしトイレのなかは空調がないので、夏場は蒸し暑くて地獄でした。
残念石は眺めるだけにして、トイレは別の涼しいところを利用するのがおすすめです。

ナンセンスな石屋根

残念石と並ぶもうひとつの「リアルな石建築」が、宴外食パビリオンの隣にある休憩所です。
こちらは巨石ではないものの、そこそこ重量のありそうな石材にワイヤーを通して上から吊っています。

石屋根休憩所

石の間に隙間が多いので、テントのように雨風をしのげるわけでもありません。
ほんの気持ち程度の日よけにしかならないので、何のために苦労して石を浮かせているのか、理解に苦しむ建築といえます。

石屋根休憩所

残念石トイレが意味不明な巨石を持ち込んで話題性を狙ったとすれば、石吊り休憩所は非合理な素材と工法で用途不明な建築物を表現した感じです。
ナンセンス勝負としては後者のほうが上といえそうです。

石屋根休憩所

常識にとらわれないアートとして意味はあるかもしれませんが、少なからぬ公金が投じられている施設としては、倫理性が疑われる作品です。
そういうモヤモヤした気持ちも含めて、来場者の感情を逆なでするのが目的なのかもしれません。

石屋根休憩所

万博の食料事情

なんとなく予想はしていましたが、万博会場内のレストランはどこも高いです。
フードコートのような庶民向け飲食店でも、大阪の物価に比べて2倍くらいはかかります。

海鮮丼やラーメンなど、海外からの観光客にも人気がありそうなメニューは2,000円くらい。
定食やパスタは1,500円程度で、具なしのプレーンカレーならようやく1,000円切る価格帯です。

万博グルメ

なかには7,000円の伊勢海老うどんなど、インバウン丼みたいな超豪華メニューもあります。

万博グルメ

スパイ×ファミリーバーガー

万博とは関係ないですが、スパイファミリーのおまけ付き2,000円ハンバーガーも販売されています。

スパイ×ファミリー

ノベルティーとして、万博限定バッジとステッカーが付いてきます。

スパイ×ファミリー

シグネチャーゾーンのキッチンカーと、大阪ヘルスケアパビリオンのなかなど、複数の場所でスパイファミリーメニューを見かけました。

スパイ×ファミリー

ヘルスケアのフードコーナーでは、アニメのお皿がついてくるオムライスなども食べられます。

スパイ×ファミリー

西ゲートの果てに…

21時の閉館後に西ゲートの先のフューチャーライフゾーンまで歩いてみたところ、会場内で最安と思われるフードコートを見かけました。
海鮮丼880円~、たこ焼き900円~と、ほかに比べればだいぶ良心的な価格設定に思われます。

万博グルメ

ただし格安フードコートがあるのは、大屋根リングからもっとも離れた西側エリアなので、地下鉄&東ゲートから歩くには30分以上かかると思われます。
西ゲートから見てもメインエリアとは逆方向なので、食事のために行って帰ってくるだけでかなりの時間をロスします。

すでに閉まっていましたが、巨大なくら寿司パビリオンもあります。

万博グルメ

夜間券では持ち時間が貴重なので、少しでも食費を安くあげるためにフューチャーライフゾーンに向かうのは非合理です。
会場内の飲食店をまわって価格相場を調べると、中心に近い便利な立地ほど値段も高くなっているように感じました。

フューチャーライフゾーン

夢洲駅のローソン自販機

時間を優先して効率よくパビリオンを見てまわりたいなら、グルメの楽しみはあきらめてもよいと思います。

万博に飲食物の持ち込みは制限されておらず、ゲートでもボトルの中身くらいしかチェックされません。
事前にコンビニでおにぎりなど買っておいて、行列待ちのあいだにむしゃむしゃ立ち食いするのが早いです。

無印良品の不揃いバウム

その点で利用価値が高いのは、地下鉄夢洲駅の構内にあるローソンの自販機です。
ここではメロンパン140円、ランチパック150円~とまだ良心的な値段で菓子パンやエナジージェル、カロリーメイトを購入することができます。

自販機

隣にある実店舗はたいてい並んでいるので、入場前に自販機で非常食を買っておくのがおすすめです。

フードコートのパン屋

コンビニ以外で、さほど並ばずに買える安めの飲食店としては、リングサイドマーケットプレイス西にあるパン屋さんが挙げられます。

万博のパン

豪華なメロンパンやプレッツェルは480円もしますが、地味なパンなら1個200円台から手に入ります。
金額あたりの満足度、食べごたえというコスパを考えると、ここで菓子パンをいくつか買って食事を済ませるのもありです。

万博のパン

パン屋には巨大なフードコートが併設されていて、平日夜なら予約指定席でなくても普通に座れました。

万博のフードコート

海外レストランの相場

もしランチ2,000円~の予算を許せるなら、法外に高価なうどんやラーメンを食べるよりも海外レストランがおすすめです。
大屋根リング北側のリングサイドマーケットプライス(東西)には、韓国やインド料理に特化したレストランがいくつかあります。

万博グルメ

いずれも「日本で食べられない」ということはないですが、せっかくなら万博らしく多国籍料理を試してみたいです。

さらに時間とお金に余裕があるなら、海外パビリオン内の本格レストランという手もあります。
時間帯によってはかなり並ぶうえ、セットやコース料理は5,000円くらいかかります。

万博グルメ

自分が見たなかでは、スペイン館のピンチョス&タパスセット5,500円、ポーランドのテイスティングセット4,900円などがおいしそうでした。

水分補給のコツ

真夏の万博会場で水分補給は死活問題です。

マイボトルに水を入れられる給水機があるのですが、リング下のスポットは行列ができていました。
水をくむのに並ぶ時間も惜しいというかたは、給水をあてにせず、ペットボトル数本かついで持ち込むのがベターです。

万博の給水所

せっかくマイボトルを持ってきたのですが、「自販機でペットボトルを買ったほうが早い」という状況は本末転倒に思われました。

もし海外旅行気分を味わいたいなら、パビリオン内のショップでドリンクを買うのもありです。

スペイン館では、めずらしい硬水のミネラルウォーター「ソラン・デ・カプラス」が販売されていました。
330mlで300円近くしますが、変わった味でおもしろいです。

スペインのミネラルウォーター

ペットボトルの蓋が取れないので邪魔に感じましたが、よく見ると「わざと」分離できないデザインになっていました。

スペインのミネラルウォーター

缶ジュースのプルタブが一体型に変わったように、ヨーロッパではペットボトルの蓋もゴミにならないよう、外せない構造がスタンダードなのかもしれません。
こういう風習・文化の違いを体感できるのも、万博ならではの楽しみです。

スペインのミネラルウォーター

水分以外に糖分も補給したいと思ったら、アイスやスムージーも会場内で買うことができます。
値段が控えめでわりと満足度が高かったのは、、大阪ヘルスケアパビリオン内のメトロ・キッチンにあるフローズンスムージー(400円)です。

メトロキッチンのフローズンスムージー

お酒入りのフローズンスムージーカクテルでも600円、アサヒのスーパードライ生ビールは500円でした。
メトロ・キッチンは万博内の他の飲食店よりちょっと安いように感じます。

メトロキッチンのメニュー

アルコールはどこで?

せっかくなら海外のお酒も飲んでみたいと思いついたのがベルギービール。
パビリオンでも販売されていますが、ステラアルトワ、リーフマンスで1,200円~となかなか高価でした。

ベルギービール

マルタのラガービールも1,300円はします。

マルタパビリオンのレストランメニュー

運よく並ばず入れたモナコ館も、上階のワインバー「オテル・ド・パリ・モンテカルロ」には行列ができていました。

いろいろ探して見つけたのが、スペイン館の缶ビール「マオウ」です。

スペインのビール

330ml缶のセッションIPAだと500円、瓶入りだと600円でした。
冷蔵庫で冷やしたビールも手に入ります。

スペインのビール

スペインのビールはポップなデザインで、見た目も楽しませてくれます。
大屋根リングの下で、休憩を兼ねてビール休憩をとりました。

スペインのビール

会場内やフードコートでも、飲酒禁止の表示は特に見かけませんでした。
スペイン館のショップは穴場なのか、まわりで同じ缶ビールを飲んでいる人も数名いました。

万博の人間模様

万博会場をくまなく歩いて気づいたのは、大阪らしい(?)変な人がそこそこいるという事実です。
ともかく会場が広いので、通期パス利用者のなかにはウォーキングやエクササイズ目的で連訪れている人もいるかもしれません。

大屋根リング

変なおじさんに注意

ひたすらお酒を飲んでいる臭いおじさん。
ベンチを占有して寝ている迷惑おじさん。
パビリオンの映像からスタッフの説明まで、ずっと動画で撮影しているYouTuberおじさん…

万博おじさん

怪しい行動をしているのはたいてい40~50代くらいの中年男性で、何のために万博に来ているのか…もはや会場に住んでいるのか、というレベルの常連リラックス感をただよわせています。

普通の商業施設でGoPro・ジンバル撮影していたら注意されそうですが、万博では制御不能なのか無礼講となっているようです。
スマホ撮影で顔が写るのはお互い様という感じですが、動画撮影している人からはなるべく距離をおいて自分が写らないように気をつけました。

折りたたみ椅子

少しでも万博を快適に過ごすため、いろんな便利グッズを持ち込んでいる人がいて参考になります。

飯田パビリオン冒頭の映像コーナーで、折りたたみ式のスツールを使っている老夫婦を見かけました。
円筒形の脚部分が伸縮する構造で、収納時はかなりコンパクトになり、重さも1kgを切るようです。

折りたたみ椅子

見学したパビリオンのいくつかでは、椅子がなく地面に座って映像を眺めるコーナーがありました。
衛生上心配ということもありますが、膝や腰が悪くて地べたに座れない、足腰の負担が大きいというかたには、持ち運びできる軽量チェアが有効かもしれません。

安いプラスチック製のものなら、2,000円以下で手に入るようです。

閉館後の楽しみ方

万博全体の開場時間は夜10時までですが、パビリオンは夜9時でいっせいに閉まります。
ゲート前オフィシャルストアも最終入店時間が21:20までと早めに設定されているのでご注意ください。

住友館パビリオン

21時にパビリオンの営業時間が終わった直後、人々がいっせいに帰るため、東ゲートの地下鉄乗り場は混雑が予想されます。
せっかくあと1時間いられるので、会場内をぶらぶら歩いてタイミングをずらすことにしました。

ウズベキスタン館など、外から見るだけでも構造や照明の工夫を楽しめるパビリオンがあります。

ウズベキスタンパビリオン

リング内は立入禁止

最後に大屋根リングの上にのぼって夜景を撮影していたのですが、屋根上の遊歩道も21時で閉鎖され、警備員の人に下りるよう促されます。
エスカレーターも下り方向にしか動かなくなります。

大屋根リング

夜間ライトアップされたパビリオンも撮影したかったのですが、大屋根リングの内側も21時を過ぎると関係者以外立ち入り禁止になってしまうようです。
一般人が通過しようとすると、見張っている警備員に呼び止められます。

パビリオン閉鎖後に西ゲートから東ゲートに向かうには、若干遠まわりして大屋根リングの下をぐるぐる歩かなければならなくなります。

大屋根リング

パビリオンが屋外シアターに

さいわいリングに近いパビリオンの外観は見られるため、韓国パビリオンの大型ディスプレイなど鑑賞して時間を過ごすことができます。
営業時間が終わっても、外壁の照明や映像はついたままになっているところが多いです。

韓国パビリオン

壁面ディスプレイの巨大さは韓国が群を抜いていて、夜はさながら野外シアターのような雰囲気になっています。

韓国パビリオン

自分と同じく、凝ったCG映像をずっと眺めている人が数名いました。

韓国パビリオン

ただパビリオンの夜景を撮影したり、壁の映像を眺めていると、警備員の人から「早く帰れ」とプレッシャーをかけられるときもあります。
やはり22時の閉場までには、全員ゲートを出ないといけなそうな雰囲気です。

パビリオンの夜景

21:30は地下鉄がら空き

夜10時近くになってもリングのベンチでくつろいでいた人々は、本当に万博会場に住んでいて、空港のトランジット移民みたいな存在なのかもしれません。
最後までいなかったので未検証ですが、どこかに隠れて一夜を明かせば、翌日も入場料を払わず万博を楽しめるのかもしれません。

東ゲート

21:30を過ぎたあとの東ゲートはがらがらで、まったく並ぶことなく地下鉄に乗れました。

夢洲駅

人が少ないとはいえ、ゲートから地下鉄駅まで広大な空き地を迂回誘導させられるので疲れます。
夜はまだ涼しいのでましですが、最後まで歩きまくってへとへとになった今回の万博でした。

夢洲駅

まとめ、うめきた観光

滞在時間の限られた夜間チケットでも、平日ならそこそこ楽しめた印象です。
事前にパビリオンの予約が取れていればもっとよかったですが、予約なしの無計画訪問でも入れる施設はたくさんあります。

ミャクミャク

プチ海外旅行体験

万博の魅力のひとつは、今まで行ったこともない国の文化や食べ物に触れられることではないでしょうか。

海外パビリオンのスタッフのかたは基本的に現地人(留学生のアルバイトなど)なので、ちょっとした会話もできて、風習の違いを実感できます。
たとえばインドネシアなど、やけになれなれしく話しかけてくる外国人もいておもしろいです。

万博会場

パビリオン内の売店でも、商売っ気のあるなしにお国柄があらわれてのは興味深いです。
積極的に売り込んでくる人もいれば、やる気がない店番だけのスタッフもいます。

日本人も外国人も関係者の方々は総じて対応がフレンドリーなので、ディズニーランドのように完全なお客様気分を味わえました。
パビリオンの展示や建築以外にも、スタッフのサービス精神やおもてなしサプライズが好評で、万博の評判が上がってきているのかもしれません。

万博バス

今回はコスパ重視で地味な菓子パンを食べてしまいましたが、せっかくならある程度の予算を確保して海外料理も楽しんでみたかったです。
特にクオリティーの高そうな海外レストランをはしごすれば、軽くヨーロッパ周遊旅行したような気分を味わえるかと思います。

万博の旗

価格は決して安くないですが、大豆と米からできた、めずらしい「かるカツバーガー」も食べられます。
場所はパソナ館の前のキッチンカーです。

かるカツバーガー

話しネタに万博詣で

意外と話題になっている大阪万博が気になっているかたは、関西への出張ついでなど短時間でも入場してみてはいかがでしょうか。

行列の人気パビリオンには入れなくても、多国籍コモン棟やトイレ・休憩所、そして大屋根リングをぐるっと回るだけでも、雰囲気はつかめます。

万博の休憩所

特に予約や行列不要で、ガンダムの撮影もできます。

ガンダム

ご当地料理とお酒を楽しむだけのグルメツアーでも構わないと思います。
炎天下で長距離歩くのは確実なので、ダイエットと運動不足の解消にも役立ちます。

万博会場

泣いても笑ってもあと数十日しか体験できない大阪万博…
子孫への土産話や、取引先との雑談ネタとして、一度は訪れておく価値があるといえます。

うめきた見学もおすすめ

1泊2日の大阪ツアー、万博は夜間券でだいぶ楽しめたので、2日目のチケットは買いませんでした。
翌日は万博に行く代わりに、梅田駅周辺の再開発エリアを見学して帰りました。

大阪駅の北側では、SANAA設計のロートハートスクエアうめきた、安藤忠雄設計のギャラリーVS.など、有名建築家の作品を見られます。

ロートハートスクエアうめきた

パビリオン建築の見学目当てで万博を訪れるかたには、梅田の最新スポットを散策するのもおすすめです。

ミャクミャク
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ニトリのソファベッド、パーシーGYレビューhttps://bofuo.net/nitori-percy/Tue, 08 Apr 2025 04:00:00 +0000https://bofuo.net/?p=2195

ニトリのパーシーGYという、2Way仕様のソファベッドを購入しました。 ひとり用ソファとしてはゆとりのあるサイズ感で、体を伸ばしてくつろげます。展開したときの長さは188cm、幅も85cmあり、簡易ベッドとしては十分な大 ... ]]>

ニトリのパーシーGYという、2Way仕様のソファベッドを購入しました。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ひとり用ソファとしてはゆとりのあるサイズ感で、体を伸ばしてくつろげます。
展開したときの長さは188cm、幅も85cmあり、簡易ベッドとしては十分な大きさです。

体型や用途に合わせて複数のクッションを組み合わせたり、継ぎ脚で座面の高さを上げたりすれば、さらに快適に使えます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

税込29,990円(2025年4月現在)という廉価製品ながら、クッションも硬めで意外と高級感があります。
食事も休息も睡眠も、ソファ1台でいろいろ済ませたい」というミニマリストにおすすめの商品です。

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座面が広いソファ

パーシーは前後に伸ばすタイプのソファベッドで、ひじ掛けがありません。
シンプルな形状で見た目がすっきりしていて、横からも出入りしやすいというメリットがあります。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ソファとしては1.5人用

ひじ掛けがないパーシーは「ソファ全体の幅=シートの幅」となり、85cmの広さをフル活用できます。

「1.5人掛けのソファ」というくらいのサイズ感が、意外と便利でした。
ひとりで座るには十分な広さで、体の横に本やスマホを置くこともできます。

クッションが硬めで安定しているので、お盆に乗せればコーヒーやおやつを置くことも可能です。
ソファから立ち上がるときは、ひじ掛けの代わりに座面に手をついて体を起こすこともできます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

幅85cmのソファは、詰めれば二人で座ることも可能です。

体が密着するので、家族や男同士だと嫌がられるかもしれません。
しかしカップルや夫婦なら距離が近くなって、かえって円満にすごせそうです。

  • 普段は1.5人がけの広々ソファ
  • 来客時は予備のベッドになる
  • 必要になれば2人でも座れる

といったイレギュラーな用途に対応できるのが、パーシーの利点です。

大きすぎず小さすぎず、中途半端なサイズ感が、賃貸マンションの狭いリビングでは、わりと役に立ちます。

座面の奥行きが広い

パーシーの座面は奥行きが実測で60cmほどあります。
一人用のコンパクトなソファに比べると、シートの幅だけでなく前後の奥行きもゆったりした設計です。

実際に腰かけると座面が深く、背もたれが遠く感じられます。
腰を伸ばし、だらけたスタイルで座れるので、リラックス感は抜群です。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ダイニングチェアのように姿勢よく座りたい場合は、クッションを1つか2つ追加して背中に挟めば、奥行きを調整できます。
クッションに背を当ててソファの前のほうに腰かければ、テーブルを合わせて食事をとることも可能です。

楽にあぐらを組める

ひじ掛けのないフラットな形状で、座面の奥行きも深いため、ソファの上であぐらをかくこともできます。
私は体がかたいほうですが、パーシーなら難なく脚を組めました。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

本を読むときや、姿勢を変えて体のこりをほぐしたいときは、よくソファであぐらをかいて座っています。
組んだ脚の上にクッションを置くと、本を支えるのにちょうどよい高さになります。

お尻にクッションを敷けば、ソファで座禅を組むことも可能です。
畳と座布団に比べてシートが柔らかく不安定とはいえ、リビングで気軽に脚を組んで瞑想できるのは便利です。

ベッドは適正サイズ

パーシーは背もたれを倒して引き出すだけで、簡単にベッド化できます。
幅は少々狭めですが、慣れれば大人ひとりで寝るのにちょうどいいサイズ感です。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ソファ/ベッドの組立方法

パーシーの組立方法は簡単で、座面上部と背もたれのクッションカバーを裏からジッパーで連結するだけです。
一度済ませておけば、あとは背クッションを引き出しパタパタと展開するだけで、ワンタッチでベッドに変形できます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ジッパー結合部の断面が斜めにカットされているため、ソファ利用時に座面と背が隙間なくちょうどいい角度で接するようになっています。
斜めの面と隙間はベッド展開時に床側にくるため、寝ていても違和感がありません。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

このあたりの収まりは、ソファベッドとしてよく考えられていると思います。

ベッドの幅は85cm

パーシーの幅は85cmなので、一般的なシングルサイズの布団(幅100cm)よりもだいぶ狭く感じます。
家が広く寝室もあるのなら、普通のベッドを入れるか、布団を敷いた方が快適に寝られると思います。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

しかし非常用・ゲスト用の簡易ベッドとして、85cmの幅は十分な広さです。

たとえばコールマンの折りたたみ式コットなら、コンパクトタイプで幅68cm、通常サイズで幅87cmです。
アウトドア向けのキャンプ用品として軽量化・可搬性が重視された簡易ベッドなので、「人が寝るにはこのくらいで十分」という最低限の寸法になっています。

自分も以前よく車中泊をしていたときは、1BOXカーの荷台にキャンプ用コットを入れていました。
寝返りを打つとき多少きゅうくつに感じられますが、慣れれば問題なく寝られます。

普段からこうした狭いベッドで寝るように訓練しておけば、災害時の避難所生活でも、不便に感じることなく暮らせるかもしれません。

ベッドの長さは188cm

パーシーをベッド利用したときの長さについては、「背もたれの厚みを除き、長さは約188cm」とニトリの公式サイトで説明されています。

身長174cm程度の男性が寝てみても、特に頭が背もたれに当たったり、足がはみ出るといった不都合は感じませんでした。
やや狭めのベッド幅に比べて、長さは十分に確保されています。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

身長180cmを超えるような背の高い人だと、少々きゅうくつに感じられるかもしれません。
逆に身長160cm以下の平均的な女性なら、違和感なく使えると思います。

マットの厚さは14~16cm

ベッドとして使う際、マットレスになるクッションの厚みは14~16cmあります。

座面下側はバネが入っていて硬いため厚さ14cm。
座面上側と背もたれはウレタンのみのため、荷重をかけた際の沈み込みを計算してか16cmと、2cm厚めに設計されています。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

一般的なコイル入りマットレスは厚さが20~30cmあるので、それに比べると薄めのコンパクト仕様です。
ゲスト用としてはこれでも十分な厚みだと思いますが、気になるならソファの上に、布団用の敷きパッドやベッドマットを追加すればよいと思います。

クッションは硬め

パーシーの売りのひとつはクッションの硬さです。
公式サイトでもその点が強調されていて、座面の底部はSバネとウェービングベルトになっているそうです。

ソファの内部構造

座面の上側と背もたれ部分のクッションにはジッパーがあり、これを開けると不織布に包まれた水色のウレタンが見えます。
写真で黄色っぽくまだらに見えている部分は、ウレタンにカバーを接着するための糊です。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

水色のウレタンはかなり硬めで、見たところこれ一種類でもたせているようです。
用途に合わせて硬さの異なるウレタンを使い分けるとか、そういう工夫はありません。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

座面の下側と、背もたれを支えるパーツは、ほかと違って分解できない仕組みになっています。
公式ウェブサイトでも、中身の写真は公開されていません。

手で触った感じでは、脚につながる底部から背面にかけては木製の構造体になっています。
木枠の上にSバネとウェービングベルトを張っていると思うのですが、両者を重ねて使っているのか、座と背で使い分けているのかは不明です。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

座面の下側は上側よりリジッドな感触で、品質表示の説明書にもクッション材の部分に「鋼製ばね」と記載されています。
全体的にウレタンも硬めのものが使われているのですが、座面底部はバネのおかげでさらに硬く仕上がっています。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ベッドとして適度な硬さ

コイルスプリングやポケットコイルに及ばないものの、パーシーにはちゃんとしたソファ向けの構造材が使われています。
少なくとも、クッション材としてウレタンしか入っていない格安ソファよりは、しっかりした座り心地で快適に使えます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

この製品はベッドとして使う際の快適さも考慮して、クッションの硬さを設計したのでしょう。
マットレスがふにゃふにゃだと寝返りを打ちにくく、背中や腰を痛めがちです。

シートの上部はウレタンのみにすることで、ソファとして利用する場合は若干柔らかくなるよう工夫されています。
座面が二重でボリュームのある見た目ながら、適材適所でクッションの硬さをコントロールしています。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

健康に良さそう

個人的には板座のチェアや座面の硬いソファが好みなので、パーシーはぴったりでした。
体が沈み込みすぎないので、長く座っても疲れにくいというメリットがあります。

なぜ柔らかいクッションより硬いクッションのほうが疲れにくいかというと、ひんぱんに姿勢を変えたり、多様なポジションで座れるからでないかと思います。

人間、同じ姿勢でずっといると、血流が滞ったり関節が固まったりして不快になってきます。
座面が硬ければ、寝返りを打つように姿勢を変えるのも楽ですし、横向き/斜めに座ったり、体重のかけかたを変えることができます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

また椅子が硬いとお尻が痛くなるので、体圧を分散させるように自然と体が動く傾向があります。
「座面が硬くて、座りにくい椅子」というのはデメリットのように見えて、実は健康上ポジティブな効果があるのかもしれません。

近年は「座りすぎると寿命が縮む」と警告されています。
柔らかすぎるソファで長時間過ごしてしまう癖のある人には、ほどよいくつろぎ感と弾力性を得られるパーシーのようなソファがおすすめです。

意外と高級感あり

パーシーは3万を切る低価格帯ながら、硬めの安定した座り心地は高級ソファに劣りません。

高いソファほど硬い説

今までいろんなソファを試してきて、「高級品ほど座面が硬い」傾向があるように思います。
安いソファの底付きするようなクッションの柔らかさに比べて、バネやコイルの入った高級ソファでは心地のよい弾力性を感じられます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

和菓子・洋菓子の世界でも、老舗の高級店ほど薄味で、あっさりと品のよいお菓子が多いです。
駄菓子のように過度な砂糖や調味料に頼らないことで、素材そのものの良さを引き立てているのかもしれません。

これと同じで家具の世界でも、高級品ほど甘すぎない(柔らかすぎない)クッションや構造になっていて、長く使っても疲れにくい仕組みになっているのではないでしょうか。

パーシーはニトリ製品ながら、安っぽさを感じさせない弾力性をそなえています。
目をつぶって座れば、10万円の高級ソファと変わらない感触を味わえると思います。

シンプルで使いやすい

パーシーは余計な装飾がついていないシンプルな形状なので、どんなインテリアにも合わせやすい利点があります。

高価な北欧家具やモダニズムの名作家具でそろえた部屋にも、案外なじむ気がします。
ニトリというよりもイケアや無印良品の家具に近い、ミニマムで匿名的、質実剛健なデザインといえます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ポケットコイルといった過剰・複雑な機構をもたず、必要最低限の性能でリーズナブルな価格を実現しているところが「潔い」と感じます。
ポリエステル生地の質感が安っぽいのは否めませんが、もしウールや本革で覆われていたら価格は2~3倍に跳ね上がるでしょう。

品質は高くても安価なニトリ製品なので、気兼ねすることなく普段使いできるのがメリットです。
多少汚れても心理的なダメージは少なく、お子さんがいる家庭にも合っていると思います。

メンテナンス性を上げて生地を長持ちさせるなら、後述のようにカバーで覆ったり、シーツやブランケットをかぶせて使うのもおすすめです。

保証は5年間

パーシーの保証期間が5年間もあるのは、品質に対する自信の表れかもしれません。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

購入してから4年間、ほぼ毎日使っていますが、クッションが不自然にへこんだり、バネが壊れれるといった不具合は出ていません。
金属のきしむような音がすることもなく、ソファベッドながらソファ単体としても性能は高いように思われます。

生地は多少こすれて劣化しているものの、最近はカバーをかけて使っているのでダメージも少ないです。
ニトリ製品は安くても、全体的に耐久性はかなり高いイメージがあります。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

クッションが付属

パーシーは深すぎる座面の奥行きを補うためか、細長いクッションが最初から付いてきます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

これを背の下に当てることによって、座ったときに「腰が浮く」ような違和感を解消する目的と思われます。
また長めの形状は、ベッドに変形した際、枕として使ってもらうことをイメージしたのかもしれません。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

しかし座面の高級感ある硬さに比べて、付属のクッションはふにゃふにゃのいただけない代物です。
「ないよりはまし」という程度のおまけで、枕としてもよほど低めのタイプが好きな人でなければ、体に合わないと思います。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

カバーの一部は洗える

ちなみにこのクッション、カバーが外せて手洗いできます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ソファ本体の生地も同じ生地なので、ジッパーを開けて中身を取り出せば、背中と座面上部のカバーは洗えるのかもしれません。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

カバーの着脱に手間はかかりますが、ちょうど肌の触れる部分だけ布地を洗えるようになているのは親切な設計です。
木枠・バネのある座面下部と背もたれ裏のパーツは洗えませんが、ここは普段触らないので、汚れる頻度も少ないと思います。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

別売りクッションを推奨

結局パーシーの付属クッションは使いにくいので、普段は外して押入れに収納しています。
代わりに置いているのは同じニトリのポリエステル製クッションで、こちらの方が硬さも張りも十分あって快適です。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ニトリのヌードクッションは税込499円と格安なので、これを2個買ってパーシーに挟めばちょうどいいと思います。

45cm角の標準サイズなら、他社製でも国産・フェザーなど、さまざまなヌードクッションが手に入ります。
サイズの合うクッションカバーも、ニトリなら1枚1,000円以下で豊富に用意されています。

付属クッションの出番があるとすれば、ソファを壁際に設置したときです。

背もたれの上に細長いクッションを乗せると、ちょうどヘッドレストになります。
首や頭を支えてくれるので、ソファに深くもたれて仮眠をとるときにちょうどよいです。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ただし説明書によると、壁紙に布地の塗料が移るかもしれないので、5cmは離して使うよう指示されています。
色移りのおそれがあるという点においても、パーシーの生地はあまり上質なものではなさそうです。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

生地が安っぽい

パーシーの座面クッションは優秀ながら、生地はいかにも安いポリエステルという感じです。
化繊っぽいザラザラした肌触りもいまいちなので、普段は綿素材のカバーをかけて使っています。

グレーというより茶色

生地の色はグレーと書かれているのですが、私の目にはどう見ても茶色に見えます。
強いていえば「赤みの強いグレージュ」で、無彩色とはいいがたいです。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ソファにカバーをかけているのは、肌触りの改善、汚れ防止といった目的のほかに、この赤っぽいブラウン色が気に入らず「ほかの家具とも合わせにくいから」という理由もあります。

一人掛けソファ用のマルチカバーも探したのですが、しっくりくるものはありませんでした。

ニトリが用意しているストレッチソファカバーは、ひじ掛け付きで二人用のものばかりです。
パーシーの「1.5人用」という半端なサイズには、ぴったり合うカバーが見つかりません。

ニトリ公式でなければ、2~3人用の肘なしソファ用のマルチカバーが販売されています。
多少大きめでも、パーシーにフィットする製品が見つかるかもしれません。

布をかぶせて使う

とりあえず、家で余っていた大き目の布を折りたたんでソファに乗せています。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ソファの側面はむき出しになっていて見た目はいまいちですが、コットン製なので触った感触はだいぶましです。
ソファの上でなにかこぼしても、本体の生地を汚すリスクは避けられます。

もし器用な人なら、パーシーに合うソファカバーを自作できるかもしれません。
形状がシンプルなのでカバーも作りやすく、カスタムベースとして便利な製品です。

中身はしっかりしているので、お気に入りの布でカバーをつくれば、さらに愛着をもって使えると思います。

ソファの高さを上げる

パーシーの座面高さは34cmで、ソファ・マットレスとしては標準的な寸法です。
普通に使うぶんには、まったく問題ないですが、個人的な好みで座面の高さを上げてみました。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

家具業界で流行の低座スタイルとは反対に、我が家のリビングは椅子も机も高さのあるものが多いです。
輸入品のテーブルを買ったら天板の高さが74cmもあったため、それに合わせてシートハイ45cmくらいの椅子を買いそろえました。

欧米向けの座高が高い椅子に座っていると、ソファの低さが気になります。
家族と会話していても、目線の高低差がコミュニケーションの妨げになる気がしました。

また私は膝に故障を抱えているため、低い椅子や床から直接立ち上がるのが苦手です。
布団よりベッドのほうが乗り降りするとき膝に負担がかからないように、椅子やソファの座面も高い方が楽に感じます。

継ぎ脚を購入

ソファの高さを上げるには、「継ぎ脚」といわれるパーツを使いました。
樹脂製の土台で、ソファ脚の下に挟むことで物理的に高さを稼ぐという、単純な仕組みです。

ソファの継ぎ脚

似たような製品がいくつも販売されていますが、高さを3段階で調整可能なUpingの継ぎ脚を選びました。
当時はAmazonで4本セット2,799円でした。

ソファの継ぎ脚

Upingは現在品切れのようですが、もっと安い類似品が販売されています。

ソファはもちろん、ベッドやテーブル、こたつなどにも使える便利グッズです。

「耐荷重500kg」と書かれているだけだって、安定性は抜群でした。
1年ほどソファと合わせて使ってみて、特に気になる不具合は出ていません。

継ぎ脚の設置方法

パーシーはそこそこ大きなソファで15kgあるため、継ぎ脚をセットするのに工夫がいります。
ひとりでやるのは難しそうに見えましたが、慣れればうまくできるようになりました。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

継ぎ脚のうえにソファを乗せるコツとしては、まず樹脂パーツの片側2つを椅子脚の幅にだいだい合わせ、設置場所にセットしておきます。
その上にソファの片側、2本の脚を乗せ、残りの2本は床に置いたまま、傾けた状態でキープします。

ソファの継ぎ脚

次にソファを片手で持ち上げつつ、残りの脚の位置にパーツを順番にセットして乗せれば完成です。

ソファの継ぎ脚

15kgのソファを一気に持ち上げるのは、男性でもさすがに厳しく腰を痛めそうです。
左右か前後、半分ずつ継ぎ脚に乗せていくことで、作業が楽になります。

継ぎ脚の調整

この継ぎ脚の調整可能高さは5.5cm、10cm、15.5cmの3種類で、最初はいちばん高い15.5cmで挟んでいました。
ソファの座面高さはデフォルトの34cmから50cmくらいまで大幅にアップします。

ソファの継ぎ脚

ほかのダイニングチェアより目線が高くなり、スツールのような使用感です。
座ると足が地面から浮くため、ソファの手前に腰かける必要があり、背中に挟むクッションも2個では足りないという状況でした。

これはこれでおもしろいのですが、さすがに上げすぎかと思って継ぎ脚は中間の10cmに下げました。
2つあるパーツのうち、円筒型のほうを抜くだけなので、調整は簡単です。

ソファの継ぎ脚

10cmの継ぎ脚だと、ソファの座面は44cmの高さに落ち着きました。
これなら一般的な椅子と同じ高さになり、インテリアとしても違和感ありません。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

初期状態の34cmよりシートの手前に腰かけることになりますが、クッション1~2個挟めばちょうどいい奥行きになります。

座面が高い利点

ソファの高さを上げたことによって、座ったときの目線の高さに違和感がなくなりました。
また天井の照明に近づいたことで手元が明るくなり、本を読むとき便利になりました。

さらにテーブル天板との距離が近くなったので、ドリンクのカップや小物を取りやすくなりました。
ソファの横に置いた作業用のデスクを、サイドテーブル代わりに使っています。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

継ぎ脚を導入した副次的効果として、ソファの下に掃除機やモップを入れて、ほこりを取りやすくなりました。
北欧家具のように、ソファやキャビネットといった大きな家具でも足を付けて床から浮かせることによって、空間に抜けができ部屋が広く見える効果もありそうです。

継ぎ脚のデメリットとしては、せっかくのソファベッドなのに、ベッドに展開しにくくなることです。

ベッド化するには、せっかく挟んだ継ぎ脚パーツを取らなければなりません。
ソファに戻す際にまたセットするのも一苦労です。

ソファの継ぎ脚

我が家ではパーシーをベッドとして使う頻度が少ないので、この点は妥協しました。
急な来客など、あくまで緊急時の対策としてソファベッドをとらえています。

親戚や友人が泊まりにくる機会も少なく、ここ1年くらいはソファのみの状態で使っています。
それでも「必要になればベッドとして使える」という安心感はあります。

2台並べて使える

パーシーはさらに「2台横に並べて使える」という拡張性もそなえています。

ひじ掛けが省略されたフラットな構造のため、横につなげても1台のソファ・ベッドとして活用できます。
2~3人用のワイドなソファ、あるいは2人用のダブルベッドとして拡張可能です。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ベッドとして使う際は、一般的なダブルベッドとは違ってマットレスが分離しているので、お互いの体の動きが気になり夜中に起こされるデメリットも防げます。
距離を離してホテルのツインルームのように設置したり、1台ずつ別室に持っていくことも可能です。

家族が増えてもOK

購入してから4年、パーシーGYは色も仕様も変わらず、そのまま販売され続けています。
ニトリの定番品として今後も安定供給されるなら、将来の拡張を見越して1台ずつそろえていってもよさそうです。

これから結婚したり子どもを産むなど、家族が増える予定があるなら、多機能かつ連結可能なパーシーが向いているかもしれません。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

まとめ

ニトリのロングセラー、ソファベッドのパーシーGYをレビューしました。

ベッドに変形して急な来客時などに対応できるだけでなく、ソファとしても使いやすい、すぐれた製品だと思います。
クッションが硬めで疲れにくく、値段のわりには高級感もあります。

1.5人用という微妙なサイズ感なため、一人なら広々使え、詰めれば二人でも座れるという便利なソファです。
ひじ掛けがないため座面がフラットで、座面の奥行きも深いのであぐらをかきやすく、見た目がシンプルなのは好感が持てます。

これ一台で1~2人用ソファ、ベッドを兼ねられるため、場所をとらない多機能家具を求めているミニマリストにはぴったりです。
一人暮らしで日中はソファ、夜はベッドに転用するという、フレキシブルな使い方も可能です。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

ソファとしては4本足のシンプルな形状なので、継ぎ脚を挟めば座面の高さをアップできます。
普通のダイニングチェア並みのシートハイ(40~45cm程度)に設定すれば、ソファからの立ち上がりが楽になり膝の負担もやわらぎます。

ニトリのソファベッド、パーシーGY

またパーシーは横方向に2台並べて使うことも想定されています。
将来的に家族が増えたり、家が広くなる予定があるなら、少しずつ買い足していくのもありです。

ソファからベッド、さらにダブル/ツインベッドとして自在に変形・拡張できるパーシーGYは、賃貸マンションや狭小住宅で便利に使えます。
ひじ掛けもなく箱型のすっきりした外観なので、どんなインテリアにもなじむと思います。

見た目はシンプルで使いまわしやすく、5年保証の高品質ながら2万円台の適正価格…
さすがニトリの製品はよくできていると感心しました。

ソファに座る犬
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MUFGで法人口座開設、ネット銀行との比較https://bofuo.net/mufg-netbank/Sun, 09 Mar 2025 00:00:00 +0000https://bofuo.net/?p=2121

おもに節税目的で運営している一人会社では、ゆうちょ銀行のほか、三菱UFJ銀行にも法人口座をもっています。 メガバンクとしては審査もゆるく便利な反面、地方に引っ越すと支店どころかATMも存在しません。唯一経営セーフティ共済 ... ]]>

おもに節税目的で運営している一人会社では、ゆうちょ銀行のほか、三菱UFJ銀行にも法人口座をもっています。

メガバンクとしては審査もゆるく便利な反面、地方に引っ越すと支店どころかATMも存在しません
唯一経営セーフティ共済の掛金振替で利用する以外は、まったく使わなくなってしまいました。

MUFGはBizSTATION(Light)の送金方法がやたらと煩雑なのもデメリットです。
久々にログインしようと思ったら、パスワードロックや電子証明書の期限切れで書類申請が必要になってしまいました。

MUFG法人口座の使いどころを整理したうえで、最近サービスがよくなってきたネット銀行についてもいくつかご紹介したいと思います。

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MUFGの法人口座開設

三菱UFJ銀行に法人口座を開設したのは、会社設立から約1年後です。
審査のためには多少の取引実績を積んでからのほうがいいかと思い、少し時間をおいてから申し込みました。

MUFGの審査もわりとゆるい

大手都市銀行のなかで、MUFGは口座開設のハードルが低いと、昔から言われています。
会社や組合を設立するたび何度かお世話になりましたが、口座開設の審査に落ちたことは今まで一度もありません。

MUFGの通帳

そのせいか、MUFGをかたるフィッシングメールが多く届きます。
安易に口座開設できてメガバンクとして社会的信用もあるせいか、詐欺に利用されやすい傾向があるように思われます。

MUFGの通帳

MUFGは過去にも金融庁から不祥事の多さを指摘されていました。
昨年ニュースになった行員による貸金庫窃盗事件も、やはり舞台は三菱UFJでした。

社会保険と共済加入が目的

MUFGに口座をつくった目的は、社会保険料を毎月自動で引き落とし、節税用の共済に加入するためです。

保険料口座振替納付(変更)申出書

給与振込など当面の取引はゆうちょ銀行で間に合っていたのですが、当時はまだ保険料の振替にネット銀行が対応していませんでした。
今ならゆうちょ銀行やイオン銀行、GMOあおぞらネット銀行も保対応しているため、わざわざ手数料の高いメガバンクに申し込む必要はありません。

地方には支店もATMもない

その後、地方に移住したら、MUFGの拠点がまわりにひとつもないと気づきました。
支店はおろか、大型モールや駅構内など、どこを探してもATMが見つかりません。

ネットバンキングだけなら問題ないですが、窓口で手続きしたり現金を引き出したいときは、わざわざ電車に乗って他県や中核都市まで出かける必要があります。
さすがに不便なので残高をすべて引き出し、せっかくつくった法人口座も使わなくなってしまいました。

あらためて調べてみると、地方には県庁所在地にしかメガバンクの支店がなかったり、そもそもATMすら存在しない県が多数あるとわかりました。

長年東京に住んでいると気づかなかった事実で、ちょっとしたカルチャーショックでした。
都市銀行とはその名のとおり、大都市にしか存在しないのです。

三菱UFJ銀行は2006年に東京三菱銀行とUFJ銀行が合併して生まれた銀行で、2017年までは三菱東京UFJ銀行という長い名前でした。
かつては名前に「東京」と入っていたとおり、首都圏を拠点とするローカルな銀行なのかもしれません。

三菱東京UFJ銀行

Neil Denari設計のMUFGプラザ

MUFGを選んだのは、アメリカ人建築家のニール・ディナーリが設計した渋谷支店を利用したいという、ミーハーな目的もありました。

銀行のサービス内容とは直接関係なく、あくまで個人的な趣味です。
世の中には建築やインテリアの好みで取引銀行を選ぶ人もいるという、レアな事例としてご紹介します。

ニール・ディナーリは1980年代末に提案した、ウエストコースト・ゲートウェイや東京国際フォーラムのコンペ設計案が有名です。
ガンダムのモビルスーツみたいにメカメカしいドローイングで、はじめて見たときは衝撃を受けました。

日本ではピーチ・アビエーションの機体をデザインしたことでも知られています。
彼の数少ない日本国内での実現作品のひとつが、渋谷のMUFGプラザです。

東京に出てきて真っ先に、ニール設計の渋谷支店で個人口座をつくりました。
法人口座は登記住所の最寄り支店で開設しましたが、たまに渋谷の店舗を訪れては、サイバーな内装デザインを堪能していました。

渋谷MUFGプラザ
渋谷のMTFGプラザ(2005年撮影)

こちらは今から20年前に撮影した外観写真で、当時はまだUFJとの合併前だったので「東京三菱銀行」でした。
MUFGではなくMTFG PLAZAと表示されています。

渋谷MUFGプラザ

夜間の様子はこんな感じで、外壁に埋め込まれたLEDライトが光ります。
しかも時間が経つと、ライトの色が青からオレンジに色が変わっていくというこだわりようです。

渋谷MUFGプラザ

内部は銀行なので撮影できないのですが、インテリアも一見の価値があります。
カウンターの下にライトが仕込まれ、ハニカムパネルで柔らかくぼかされていたり、柱の下の通風孔みたいなパーツまでカプセル型のデザインモチーフで統一されています。

再開発がさかんな渋谷駅周辺でも、MUFGプラザはまだ現存するようです。
渋谷駅西口のロータリーに面した歓楽街の入口で、白いパネルに控えめなイルミネーションが輝くファサードは、今でも新鮮に感じられると思います。

MUFGでセーフティ共済

普段はまったく使わないMUFGでも、中小機構の経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金引き落としには継続利用しています。

中小企業倒産防止共済契約締結証書

法人はネット銀行不可

節税に有効なセーフティ共済ですが、加入できる金融機関は今でも都市・地方銀行などに限られています。
最近はルールが緩和され、個人事業なら「ゆうちょ銀行、楽天銀行、GMOあおぞらネット銀行」からも振替できるようになったようです。

法人の場合は「加入時のみ」GMOあおぞらネット銀行を掛金口座に設定できると案内されています。

しかしネット銀行は窓口がないせいか、加入手続きは委託団体経由で行うことになります。
所属団体が商工会であれ組合であれ、事前に加入して会費も納めなければならず、手続きが面倒です。

同じく中小機構の小規模企業共済であれば、上記3つのネット銀行を掛金引落口座に指定できるうえ、変更手続きもオンラインで可能になりました。
こちらは法人ではなく個人が対象のため、倒産防止共済の個人事業主と同じ扱いなのかもしれません。

一部はオンライン手続き可能に

2023年9月1日から経営セーフティ共済の手続きがいくつか、オンラインで申し込めるようになりました。
掛金月額の増額/減額、掛止め、再開、前納のほか、登記住所や電話番号の変更も可能です。

ただし他社や個人事業からの共済契約承継など、込み入った手続きは従来どおり窓口での手続きが必須です。
将来的にはこうした申請もオンラインで可能になり、法人の掛金振替もネット銀行で済ませられるようになるかもしれません。

それまではせっかくつくったMUFG口座を活用しようと思います。

節税条件の厳格化

小規模企業共済と同じく、節税ツールとして有益な経営セーフティ共済ですが、とうとう抜け穴をふさがれるときが来ました。

2024年10月1日以降、共済解約後2年間は、再契約しても掛金を損金算入できないという新ルールが、税制改正によって定められました。

みそぎの期間が「2年間」というのは、消費税の課税事業者選択や簡易課税制度と同じです。
このくらい時間を空ければ、あからさまな節税には使いにくいだろうという目論見でしょう。

そもそも中小機構の共済は、掛金が経費や所得税控除として認められるものの、解約後に受け取るお金は収入・所得とみなされ課税対象になります。
つまり課税タイミングの先延ばしにすぎないわけで、今回のルール変更は厳しすぎるような気もします。

普通の会社であれば、共済を活用しつつ売上・経費を適切にコントロールするのは、案外難しいものです。
場合によっては逆効果で税率アップしてしまうという、諸刃の剣ともいえる制度です。

銀行窓口での手続きも面倒なので、今後も締め付けが厳しくなるようなら、セーフティ共済の節税利用はあきらめてもよいかと考えています。

MUFGの窓口事情

ゆうちょ銀行のネットワークにはかなわないとはいえ、三菱UFJも国内の大都市圏なら支店の窓口を利用できます。
法人口座や共済の手続きなど、込み入った相談をしたいときに窓口が使えるのは、ネット銀行にないメリットといえます。

窓口が予約制に

最近は銀行窓口の混雑を緩和するためか、対面で相談するには予約が必要になっています。
特に法人口座の場合は、口座開設から住所変更、保険料や共済掛金の振替など、ほとんどの手続きが予約必須に変わっています。

そうと知らずに飛び入りで来店してしまい、受け付けてもらえなかったこともあります。
わざわざ遠方から電車で来たので、無駄足に終わってショックでした。

今はきちんと予約してから行くようにしていますが、時間を守らなければならないのは面倒です。
支店が多く、いつでもふらっと立ち寄れる郵便局(ゆうちょ銀行)に比べて、メガバンクはこの点が不利だと感じています。

とはいえ予約どおりに窓口へ伺えば、待たずに話すことができます。
相談内容もウェブ上のフォームから事前に伝えてあるので、手続きもスムーズです。

繁忙期や時間帯によって、都内の支店では数十分も待たされるのが常識でした。
窓口の予約制は一長一短ですが、長い目で見れば銀行側・顧客側、双方にメリットのある合理的なサービス改良だと思われます。

取引支店は変更不可

メガバンクの支店・ATMが地方に少ないとはいえ、近隣の大都市に出ればまだ利用できるのは救いといえます。
しかし共済関連の手続きで最寄りのMUFG支店に相談したところ、「加入した支店でしか受け付けられない」という回答でした。

経営セーフティ共済の意外な盲点ですが、同じ金融機関のなかであっても掛金振替口座は他支店に変更できません。
掛金の増減など基本的な手続きも、最初に申し込んだ支店の窓口でしかできないルールになっています。

しかも最近は支店の統廃合が進んでいるので、取引支店が消滅・移転することもありえます。

中小企業倒産防止共済・契約申込書

以前、首都圏内で転勤したときにこの制約に気づきました。
当時はまだ支店が近かったので、たまに電車で旧取引店に行って各種申請を済ませていました。

しかし地方に引っ越すと、わざわざ手続きのために東京まで出張するのも面倒です。
交通費や宿泊費など余計な費用もかかります。

せめて最寄りの支店に法人口座を移動できないかMUFGに電話で相談してみたところ、それでも不可との回答でした。
しぶとく窓口に行って「法人の登記住所も移転した」など事情を説明したら、ようやく他支店経由で都内の支店に書類を転送してもらえることになりました。

中小企業倒産防止共済、掛金預金口座振替申出・依頼書

窓口での説明が毎回面倒ですが、いちおうこの特例措置によって、地方移住後も経営セーフティ共済を使えるようになっています。

法人の住所移転は不便

法人口座の支店移動ができないのは、そもそも「会社が引っ越す」というのがレアケースだからかもしれません。

業務拡大のため首都圏内でオフィスを移転するとか、地方に新たな拠点を構えるという可能性は考えられます。
しかし都内なら移動も楽ですし、地方に進出する場合も地元の支店で新たに口座をつくると思います。

わざわざ登記住所ごと他県に移すのは面倒ですし、法務局の管轄が変わると変更登記で登録免許税を6万円もとられます。
ひとり会社で引っ越しの多い場合は、都市部のバーチャルオフィスで登記しておくのもありかと思います。

中小機構の共済対策としては、移住先の地方銀行や信用金庫で法人口座を開設するのも手です。
ただし引っ越すたびに取引銀行を増やすのも面倒ですし、法人口座は個人より審査も厳しくなります。

結局のところ、今あるMUFGの口座を最大限活用して、いずれネット銀行でも掛金引落できるようになるのを待つ、というのが無難に思われます。

BizSTATIONの難点

三菱UFJ銀行の法人向けインターネットバンキングとして用意されているのが、BizSTATIONです。
2022年5月6日からMUFG Bizという新サービスに統合されたようですが、ウェブサイトのトップページは変わったものの、中味はたいして変わっていないように思われます。

BizSTATIONのトークン

維持費と手数料が高い

BizSTATIONの月額料金は1,760円~と高額で、他行宛ての振込手数料も3万円以上は660円かかります。

この点、ゆうちょ銀行の「ゆうちょBizダイレクト」(スタンダードプラン)は契約時に5,500円かかるものの、毎月の維持費は550円と良心的です。
振込手数料も他行宛ては金額を問わず165円と、ネット銀行並みにリーズナブルです。

前職でBizSTATIONをメイン利用していたときは、毎月の給与振込に数百円×人数分かかっていました。
これが毎月・毎年積み重なると、膨大なコストになってしまいます。

今の会社で契約しているBizSTATION Lightのほうなら、月額費用はかかりません。
ただし振込手数料は通常版と同じで、維持費無料の代わりに取引時間(8:00~23:55のみ、祝日は不可)利用者IDの登録数(2件まで)といった制約があります。

ログインと証明書が煩雑

BizSTATIONをPCブラウザから利用するには電子証明書のインストールが必要で、さらに1年ごとに証明書の更新が必要といったルールがあります。

さらに送金など取引確認の際だけでなく、ブラウザからのログインするときにも、トークンで生成したワンタイムパスワードの入力が要求されます。
以前は必要なかったプロセスですが、安全性は高まる半面、残高確認や振込作業がわずらわしくなりました。

BizSTATIONのトークン

昔は数か月おきにログイン/取引パスワードを変更しなければならない決まりもあり、インターネットバンキングとしてはかなり厳重なセキュリティー方針だと感じていました。

BizSTATION

ゆうちょダイレクトの送金限度額でトラブルが生じたため、久々にBizSTATION Lightを使おうと思ったら泥沼にはまりました。

まず長いことログインしていなかったので、PC内の電子証明書は期限が切れています。
そもそも利用しているパソコン自体が変わったので、証明書の取り直しが必要です。

普通にログインしようとしても、「アクセスが拒否されました」という画面が出て、パスワードを入れることすらできません。

BizSTATION

そこでMUFGのマニュアルに従い「電子証明書取得用ツール」をインストールしてみました。

BizSTATION

ツールを起動しつつ証明書取得用ログインを試してみたのですが、過去に変更したパスワードを入れてもうまくいきません。

BizSTATION

「ご入力内容をご確認の上再度入力してください」

というエラーメッセージを頼りに原因を調べてみたところ、どうやら過去に間違ったパスワードを数回入力して、ロックされた状態であるようです。

サービス管理責任者であれば、自分でロック解除してログインパスワードも再発行できると書かれています。
しかしロック解除を試そうとすると、またアクセス拒否のエラー画面が出てしまいます。

ウェブの説明を読み進めると、アクセス拒否の原因は電子証明書がないか、期限切れが原因と推測されます。
手順どおりにChromeの設定から電子証明書の有無と期限を調べて見ましたが、BizSTATION関連のものはインストールされていませんでした。

Chromeの電子証明書

すると必要なのはやはり電子証明書のインストールです。
しかし証明書の取得画面にログインできないという、堂々めぐりになってしまいます。

ロック解除は書面手続き

おそらくここまで放置してしまったアカウントは、書面でのパスワード再発行が必要と思われます。
申請用の「書式3 パスワードに関する諸届」という書類を見ると、

  • ログイン/取引実効パスワードのロック解除/再設定
  • 電子証明書取得用パスワード再発行

のチェック項目があり、現在おちいっているトラブルをすべて解決できそうな気配がします。

やり方はわかりましたが、書類の記入・押印と郵送は面倒です。
BizSTATION Lightの再開はそこまで急ぎではないので、ゆうちょ銀行の制限解除に関する審査結果を待ってから対応したいと思います。

その他のネット銀行

最近の銀行、法人口座開設について調べてみたのは、ゆうちょ銀行の送金限度額に引っかかったせいです。

スマートフォンを操作する犬 ゆうちょ認証アプリで法人がはまる送金限度額

ゆうちょダイレクトは法人に対してやや不親切…
MUFGもセキュリティーが厳重すぎて、かえって使いにくくなっている気がします。

思い切って別の銀行に法人口座を新設するのもありかと思い、審査のゆるそうなネット銀行を調べてみました。

楽天銀行は安くない

個人のメインバンクは楽天銀行で、投資関連も楽天証券を使っています。
同じ楽天銀行で会社の口座もつくれば、相互の送金手数料が安く済むはずです。

調べたところ、楽天銀行の同行宛て振込手数料は金額を問わず52円。
他行宛ては3万円以上で229円となっています。

ゆうちょダイレクトなら、月5回まで同行宛ての振り込みは無料。
他行宛ても金額によらず165円で済みます。

意外なことに楽天銀行の振込手数料は、ゆうちょ銀行より高いとわかりました。
後述のGMOや住信SBIなら、同行宛ては無料で他行宛ても145円と最安です。

また楽天銀行の法人口座開設審査は、ネット銀行のなかでもハードルが高いです。

申請には履歴事項全部証明書(発行6か月以内)と印鑑証明書(発行3か月以内)の「原本」がそれぞれ必要です。
これだけで数百円の費用と、法務局に行くか郵送で依頼する手間が発生します。

さらに事業実態を確認するためウェブサイトのURLや、自社宛ての請求書・契約書なども提出する必要があります。
さすがにここまで資料をそろえれば審査合格は間違いかと思いますが、郵送でOKとはいえ、ネット銀行にしては意外と大変な手続きです。

楽天銀行といえば、過去にはMUFGと同じく犯罪の温床になった経緯があります。

恥ずかしながら過去に詐欺サイトに入金してしまった経験があり、その時の振込先が楽天銀行でした。
警察に相談したところ、当時の楽天銀行はそういうクレームが多いと言われました。

汚名返上のためか、楽天銀行の口座開設は以前よりかなり厳重になっているような印象を受けます。
手数料も若干高めなので、無理して楽天銀行に法人口座をつくる必要はないかと思います。

GMOあおぞらネット銀行の謎

ゆうちょ認証アプリの送金上限に気づいたその日、なぜかGMOあおぞらネット銀行から法人口座に関するDMが届いていて不気味でした。

GMOあおぞらネット銀行

人知れずネット上での行動が監視されていて、口座開設に興味をもった絶妙なタイミングで宣伝を送ってきたのかもしれません。
AIで行動パターンを分析すれば、そのくらい巧妙なプロモーションも今では可能な気がします。

営業資料を読んでみると、口座開設には謄本も印鑑証明書も不要とのことで驚きました。
代わりに代表者の運転免許証やマイナンバーカードと、スマホのセルフィー動画を送ればいいようです。

GMOあおぞらネット銀行

書類はすべてデータ提出で済み、書類の送付も必要ありません。
さすがネット銀行、手続きについては徹底的な合理化が図られています。

上記のプロセスには「代表者と取引責任者が同一人物」といった制約がありますが、一人会社なら問題ないです。

しかもGMOあおぞらネット銀行は、ゆうちょ銀行に引き続き2024年4月1日から社会保険料の口座自動振替に対応しています。
かつては都市銀行や地方銀行など、マイクロ法人には敷居の高い銀行でしかできなかった引き落としですが、間口が広がったのは大歓迎です。

口座の維持はもちろん無料で、振込手数料は同行宛て無料、他行宛てでも145円と最安レベルに抑えられています。

GMOあおぞらネット銀行

残る懸念は中小機構の共済ですが、上述のように委託団体を経由すればGMOの法人口座を掛金の引き落とし先に設定できます。
ゆうちょ銀行や楽天銀行はこのオプションがなく、個人事業でしかセーフティ共済に使えない状況です。

なぜほかのネット銀行に比べて、GMOだけ先に中小機構と提携が進んでいるのかは謎です。
もし今から会社をつくるなら、GMOあおぞらネット銀行に口座をひとつ作れば、すべての取引も振替も済ませられそうです。

もし万が一、ゆうちょ銀行で申請中の振込限度額審査に落ちたら、GMOに乗り換えてもいいかと考えています。
リアルな相談窓口はないですが、給与支払いなどオンラインでの定型作業だけなら、GMOで十分間に合いそうです。

住信SBIネット銀行は微妙

住信SBIネット銀行も手数料が最安クラスのネットバンクです。

GMOと同じく、「代表者=取引担当者」という条件を満たせば、書類送付の必要なくオンラインで口座開設審査に申し込めます。

ただし住信SBIは今のところ、社会保険料の口座振替に対応していません。
中小機構の共済も同様です。

住信SBIの微妙なメリットは、bitFlyerのクイック入金が無料でできるという点です。
ほかの銀行では1件あたり330円かかります。

別に即時入金が必要でなければ、振込手数料の安い法人口座からビットフライヤーの指定口座に入金すればいいと思います。

またビットフライヤーからの出金時は、特に優遇がありません。
住信SBIではなく三井住友銀行宛てなら、他行宛てより半額くらい安くなるという特典があります。

ビットフライヤーの法人口座へ入金する機会の多いかたなら、わずかな利点を感じられるかもしれません。
しかしそれ以外は、たいしたメリットを感じられないネット銀行です。

イオン銀行は問題外

イオンの株主優待と年会費無料のゴールドカード保有などで、個人的には長年お世話になっているネット銀行です。

イオン銀行もゆうちょ銀行およびGMOあおぞらネット銀行と同じく、社会保険料の自動引き落としが可能になっています。

ただし法人向けのビジネスネットサービスは月額2,200円もかかり、MUFGのBizSTATIONより高額です。
振込手数料も他行宛て5万以上440円と、ネット銀行のなかでは割高に感じます。

保険料を振替できるのは便利な反面、維持費用が異様に高いため、あえてイオン銀行で法人口座をもつ理由はないかと思います。
同じく自動振替に対応した、ゆうちょかGMOを先に検討したほうがよさそうです。

まとめ

かれこれ20年以上、個人・法人で口座を維持している三菱UFJの現状について振り返ってみました。

まともな事業実態のない節税用のペーパーカンパニーであれば、社会的な信用を気にしたり、顧客や取引先に対して見栄を張る必要もありません。
メガバンクは振込手数料が高く、インターネットバンキングも多機能すぎてオーバースペックな感じがします。

中小機構の共済掛金を引き落とせるのは唯一のメリットですが、これもいずれは、ゆうちょ銀行やほかのネット銀行で代替できるようになるでしょう。
経営セーフティ共済はまだ途上ですが、小規模企業共済のほうは対応できるネット銀行がどんどん増えています。

小規模企業共済

今から法人口座をつくるなら、審査が簡単で維持費も安い、GMOあおぞらネット銀行あたりが適当と思われます。
社会保険料の口座振替や、条件付きでセーフティ共済にも対応できるようになっていて、ネットバンクの進化はあなどれません。

とはいえ手数料の値下げなど銀行間のサービス競争によって、すぐにまた状況が変わってしまうかもしれません。
法人口座の開設と残高管理はそれなりに手間がかかるので、必要なければ今あるゆうちょ銀行とMUFGでやりくりしていこうと思います。

お札を数える犬
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ゆうちょ銀行の法人口座を使いこなすコツhttps://bofuo.net/yucho-direct/Sat, 08 Mar 2025 11:00:00 +0000https://bofuo.net/?p=2091

資産運用会社のメインバンクとして、ゆうちょ銀行を使っています。 「法人口座開設の審査がゆるかった」というのがおもな理由ですが、ネットバンキングの手数料も大手都市銀行より格安です。さらに田舎や離島でも郵便局の窓口やATMを ... ]]>

資産運用会社のメインバンクとして、ゆうちょ銀行を使っています。

「法人口座開設の審査がゆるかった」というのがおもな理由ですが、ネットバンキングの手数料も大手都市銀行より格安です。
さらに田舎や離島でも郵便局の窓口やATMを使えるので、引っ越しの多いかたなら便利だと思います。

ゆうちょダイレクトの認証方法をトークンからアプリに切り替えたのをきっかけに、ゆうちょ銀行のメリットについて振り返ってみました。

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ゆうちょ銀行の審査はゆるい

今から約10年前、会社設立と同時にゆうちょ銀行で法人口座を開設しました。

郵便局

節税目的のペーパーカンパニーで資本金もきわめて少額…
設立直後で取引実態も不明な怪しい会社ながら、ゆうちょ銀行では問題なく口座をつくれました。

当時、実店舗があるのに「ネット銀行と同じくらい審査がゆるい」と評判のゆうちょ銀行でしたが、そのうわさは本当でした。

ICキャッシュカードのデザインは、個人も法人もまったく同じです。

ゆうちょ銀行のキャッシュカード

今はマネーロンダリングや犯罪防止のため、口座開設のハードルが上がっているかもしれません。
最新の申請方法を調べると、法人口座を開くには決算書や残高試算表、事業計画書など、さまざまな書類を用意する必要があるようです。

社会保険料の振替も可

2019年4月1日から、ゆうちょ銀行も社会保険料の口座振替に対応して、ますます便利になりました。
最近ではイオン銀行やGMOあおぞらネット銀行など、その他のインターネット専業銀行でも保険料の引き落としができるようです。

ひとり社長のマイクロ法人とはいえ、社会保険の加入義務はあります。
毎月保険料を納付するために銀行に入ったり、ペイジーで電子納付するのも手間がかかります。

保険料の自動納付に口座振替が便利ですが、昔は大手の都市銀行や地方銀行しか対応していませんでした。
しかし設立間際の弱小ベンチャーでは、そもそもまともな銀行に法人口座を開けないというジレンマがあります。

今は審査のゆるいネットバンクでも保険料を納められるため、無理してメガバンクに口座を開く必要もなくなったといえます。

どこにでもある郵便局

日本中どこに引っ越しても郵便局の窓口やATMを利用できるのは、ゆうちょ銀行がもつ最大の強みです。

ゆうちょ銀行の通帳

法人口座に関しては「ゆうゆう窓口」のあるような中央郵便局のほうが、待ち時間は長くても、手続きをスムーズに進めてもらえます。
しかし集落にある出張所レベルの郵便局でも、相談や申請は親切に受け付けてくれます。

今回の限度額解除に関する相談はそれほど急ぎでもなかったので、最寄りの小規模郵便局に行ってみました。

案の定、スタッフのかたは法人口座や認証アプリについて不慣れらしく、解決するのに時間がかかりました。
郵便局の職員さん総出でマニュアルを見つつ、ほかの部局に電話で相談したりしながら待つこと数十分…ようやく送金限度額は変更できるとわかりました。

ゆうちょダイレクト送金限度額変更届書

しかも便利なゆうちょ認証アプリを使ったまま、限度額だけ引き上げてもらえるという理想のパターンです。
わざわざ窓口まで来て、待った甲斐がありました。

もしこれが窓口のないネット銀行だったら、フォームや電話で問い合わせるとしても、相当時間がかかりそうです。
問題解決をあきらめて、ほかの銀行に変えていたかもしれません。

預金限度1300万の壁

ゆうちょ銀行特有のルールとして、預金限度額1,300万円というものがあります。

法人口座も例外ではなく、総合口座の通常貯金であれば預け入れ上限は1,300万円です。
利子のつかない振替口座であれば、こうした制限はありません。

ゆうちょ銀行の通帳

普段は少額の給与支払いにしか使っていないので、上限が1,300万もあれば十分です。
投資資金の移動などで制限に引っかかる可能性はありますが、限度額以内で何度か振込すれば用事は済ませられます。

ただし振込の手間が増えて手数料もかさむので、もし将来、億単位の貯金を扱えるようになったら、ほかの銀行に乗り換えるかもしれません。
ペイオフは気になりますが、それだけ巨額の資金を預けるとしたら、利率も気になるところです。

今のところ零細ペーパーカンパニーの運営に関しては、ゆうちょ銀行の預金限度額を気にすることはありません。
いつかまとまった資産ができて、ゆうちょ銀行を卒業するときが来るのを楽しみにしています。

ゆうちょダイレクトの利点

ゆうちょ銀行では、法人口座でも個人と同じ「ゆうちょダイレクト」というインターネットバンキングを月額無料で利用できます。

ゆうちょダイレクト

ほかの銀行、たとえばMUFGでは個人向けの「三菱UFJダイレクト」を、会社は利用することができません。
法人はBizSTATION(Light)という別の専用サービスを使うことになります。

振込手数料が安い

ゆうちょダイレクトは月額無料で、他行宛ての送金もできます。
送金手数料は同行宛てなら月5回まで無料、他行宛てでも送金額にかかわらず165円と格安なのがメリットです。

法人口座はどの銀行でも、個人口座より振込手数料が高いのがネックです。
MUFGの場合は個人口座の三菱UFJダイレクトで「他行宛て3万円以上、220円」のところ、法人口座のBizSTATIONでは同条件で3倍の660円かかります(月額無料のLightプランも同じ)。

他社への送金や給与振込の回数が多いと、振込手数料はじわじわ効いてくるコストです。

GMOあおぞらネット銀行や住信SBIネット銀行など、他行宛ての送金手数料がゆうちょ銀行よりもう少し安いところもあります。
ただし上述のように全国どこでも窓口を利用できて、いまだに紙の通帳も使えるゆうちょ銀行の利便性にはかないません。

有料Bizでもまあまあ安い

ゆうちょ銀行のインターネットバンキングには、法人向けの「ゆうちょBizダイレクト」という有料サービスがあります。

スタンダードとエキスパートの2プランあり、後者であれば給与の自動振り込みなど、便利な伝送サービスも使えるようになります。
また振替・振込などの送金限度額を、上限99億円~まで実質無制限に設定できます。

スタンダードで契約料金5,500円と、初期費用こそ割高ですが、月額料金は550円と比較的リーズナブルに抑えられています。

MUFGのBizSTATIONは毎月1,760円かかります。
ゆうちょエキスパート並みの便利機能を利用するには、さらに追加費用がかかります。

最近のネット銀行は月額無料のサービスも多いですが、ゆうちょ銀行のBizダイレクトもメガバンクよりは割安です。
ただマイクロ法人で自分への給与振込に使う程度なら、無料のゆうちょダイレクトで十分な気がします。

ゆうちょBizダイレクトはログインに電子証明書が必要なところを見ると、普通のダイレクトよりはセキュリティーが厳重なのかもしれません。
手続きの面倒くささとトレードオフですが、会社として安全にネットバンキングを利用したいなら、有料Bizに切り替えるのもありかと思います。

振込限度額の設定

10年前は書面によるゆうちょダイレクトの利用申し込みと同時に、送金限度額も最高1,000万円まで設定できていました。
個人も法人も同様です。

ゆうちょダイレクト利用申込書

現在はマネロン対策でハードルが上がったのか、送金限度額を50万より大きくしたい場合は、窓口での手続きと審査が必須になっています。
ゆうちょ認証アプリを使う場合も同様で、たとえスマホで本人確認を済ませても、オンラインで上げられるのは 50万までです。

ゆうちょダイレクト

トークンから認証アプリへ

ゆうちょ認証アプリを使いはじめたきっかけは、「トークン」と呼ばれるパスワード生成機の電池切れです。

トークンの電池切れ表示

ゆうちょダイレクトでオンライン送金するときに、物理的なトークンでワンタイムパスワードを生成・入力する必要があります。
2019年12月22日からはセキュリティー強化のため、事前に送金先の口座番号をトークンに打ち込んでからパスワード生成する方式に変わりました。

口座開設から約8年、毎月の給与振込に使っていたのですが、とうとうバッテリー切れの警告表示が出るようになりました。

ゆうちょ銀行のトークン

ゆうちょ銀行のFAQによると、

  • 「Lo-bAtt 2」の表示が出ると、電池の残量は残り1.5~3か月
  • 「Lo-bAtt 1」で残り1.5か月以下
  • 「Lo-bAtt」でバッテリー切れ直前

その後も表示を確認していると、3か月ほどたって「Lo-bAtt 2」から「Lo-bAtt 1」の表示に変わりました。

ゆうちょ銀行のトークン

警告時期にやや幅はあるようですが、おおむね正確に電池切れまでのタイミングを示していると思われます。

トークン交換が有料に

過去に口座開設したときの案内を見ると、当時はトークンの電池切れによる再発行は手数料がかからなかったようです。
トークンの実物を郵送すれば、無料で新品を送り返してくれました。

2017年時点のトークン再発行情報

現在はトークン再発行が有料になり、1,650円と金額も約1.5倍に値上げされています。
「電池の切れたトークンを送り返す」というプロセスが廃止され、常に有償で再発行するしかなくなったわけです。

ゆうちょダイレクトで送金するには必須のパスワード生成機ですが、電池が切れるたびにお金をとられるのは厄介です。
代替手段を探したところ、送金時の承認方法を「ゆうちょ認証アプリ」に切り替えれば無料で済むとわかりました。

ゆうちょ認証アプリの功罪

ゆうちょ認証アプリは従来のトークンに代わるものとして、2019年7月22日にリリースされたサービスです。

その直前、2019年7月20日にトークンの再発行料金が一律1,620円に値上げされています。
ゆうちょ銀行としては、物理的なトークンから認証アプリへ移行してほしいというメッセージに受け止められます。

認証アプリの設定方法

ゆうちょ認証アプリはApp StoreかGoogle Playから無料でダウンロードできます。
以下はiPhone版のアプリに関する説明です。

認証アプリは初回起動時に、以下のどちらかで登録できます。

  • 口座番号(記号5桁+番号8桁)+キャッシュカード暗証番号(4桁)
  • お客様番号(4-4-5桁)+ログインパスワード(ゆうちょダイレクト)

続いて個人情報の第三者提供に同意した後、運転免許証かマイナンバーカード、在留カードなどによる本人確認に移ります。

ゆうちょ認証アプリ

私は運転免許証を選びました。

法人口座の本人確認エラー

免許証のICチップをスマホに読ませ、暗証番号を入力したうえ、さらに顔写真の撮影まで行います。
しかし最終段階で、

生年月日が一致しないため、登録できません。エラー種別 P084

という謎のエラーが出てしまいました。

ゆうちょ認証アプリ

どうやら法人口座で認証アプリを使う際は、免許証やマイナンバーカードが使えないため、「書類による確認をスキップ」すればよかったようです。
アプリの画面では、そのように書いてありました。

ゆうちょ認証アプリ

本人確認をスキップすると、利用開始まで24時間かかり、さらに送金限度額が5万円になると警告メッセージが出ます。

ゆうちょ認証アプリ

ここで私は、「24時間経つと送金限度額の制限も解除される」と誤解してしまいました。
これがのちのトラブルの原因になります。

iPhoneの指紋認証が便利

書類確認をスキップすると認証情報の登録に移ったので、iPhoneの指紋認証を使った生体情報で済ませました。

ゆうちょ認証アプリ

手持ちのスマホはiPhoneSE(第2世代)という5年前の古い機種で、Face IDは非搭載ですがTouch IDはついていました。
(そもそも顔認証のFace IDは認証アプリで使えません)

送金時の取引認証は「行う」を選び、取引コードの設定は任意なので、「登録しない」で済ませました。

ゆうちょ認証アプリ

取引コードは認証アプリをさらに厳重にするものと思われ、必要であれば後からでも登録できます。

ゆうちょ認証アプリ

これでゆうちょ認証アプリの設定が終わり、警告どおり24時間経った後はふつうに使えるようになりました。

パソコンでの送金方法

認証アプリを一度セットアップしてしまうと、ゆうちょダイレクトにパスワードでログインしても送金できなくなります。
以下はその際のエラー画面です。
(メッセージID UG401AC01W)

ゆうちょダイレクト

以後はゆうちょ認証アプリによるログインと送金確認が必須です。
これまでのようにパスワードでログインしても送金できないと、赤字で警告されています。

ゆうちょダイレクト

認証アプリを使ったログインというのは、お客様番号を入れたあと、PC画面に表示されるQRコードをアプリで読み取る、という方式です。

ゆうちょダイレクト

スマホ純正のカメラアプリでコードを読み取ってもエラーになります。
認証アプリを起動し、「QRコード読み取り」を選ぶ必要があります。

アプリでコードを読み取り、指紋を読ませて認証すると、PCブラウザでゆうちょダイレクトにログインできます。

その後いつもどおり送金しようとすると、最後にまたQRコードが出て、認証アプリによる読み取りと承認を求められます。
今までのトークンとワンタイムパスワードによる認証が、アプリで置き換わったかたちです。

ゆうちょダイレクト

スマホ画面で「承認」を押して、ブラウザの「実行する」ボタンを押します。

ゆうちょ認証アプリ

これでトークンを使わず振込まで完了できますが、ログイン時と送金時に計2回、アプリでQRコードを読み取るのは面倒です。

スマホでの送金方法

ゆうちょ認証アプリのトップ画面を見ると、「QRコード読み取り」の上段に「ゆうちょダイレクトにログイン」というボタンがありました。

ゆうちょ認証アプリ

Touch IDで指紋を読み取ると、スマホのブラウザ(iPhoneの場合はSafari)が起動し、ゆうちょダイレクトにログインした状態になります。

ここから先はPC版と同じで、ブラウザ内で振込関連の情報を設定し、送金前にアプリで認証を行います。

ゆうちょダイレクト

アプリとブラウザを行き来する点ではPCと同じですが、スマホなら端末1台で完結できるのがメリットです。
パソコン画面のQRコードを2回も読み取る手間を考えると、最初からスマホでログイン・振込したほうが圧倒的に早いといえます。

ゆうちょ認証アプリ

わざわざトークンに送金先の口座番号を入れてパスワード生成する必要もなく、認証アプリはすばらしいと感激しました。
送金限度額の問題に気づくまでは…

ブヒオ
ブヒオ

1日5万しか振り込めないブヒー

スマートフォンを操作する犬 ゆうちょ認証アプリで法人がはまる送金限度額

ゆうちょ通帳アプリは法人不可

認証アプリについて調べていたところ、「ゆうちょ通帳アプリ」という似たようなツールがあることを知りました。
残念ながらこちらは法人口座に非対応で、個人の総合口座でのみ使えるサービスです。

ゆうちょダイレクトのアプリ版

通帳アプリでは現在高や入出金明細を確認できるだけでなく、他銀行宛ての送金まで可能なようです。
ただし振り込みには「ゆうちょ認証アプリ」もセットで必要となり、認証のため2つのアプリを行き来することになります。

要はゆうちょダイレクトをアプリ化して、見た目やメニュー操作をわかりやすくしたサービスかと思います。

送金に認証アプリを使うところは一緒なので、個人口座でもあえて乗り換える必要はなさそうです。
MUFGが以前行っていたキャンペーンのように、紙の通帳から切り替えで1,000円もらえるといった特典でもあれば、アプリの導入を検討してもよいかと思います。

MUFGのエコ通帳
三菱UFJ銀行のEco通帳切り替え

ATM生体認証で500万

通帳アプリにはもうひとつ、「ATM生体認証」というユニークな機能があります。
通帳アプリと認証アプリを併用すれば、ATMでの引き出し・送金額を一時的に500万円まで上げられるというサービスです。

現金で500万持ち歩くというのも勇気がいりますが、場合によっては役立つ機能かもしれません。

自分もかつて数100円の振込手数料を節約するために、せっせと毎日100万くらいずつ、複数銀行のATM間で現金輸送した経験があります。
作業の手間と、途中で盗難にあうリスクを考えて今はやらないですが、100万円の札束を持ち歩くという緊張感もなかなかスリリングでした。

法人では通帳アプリが使えないため、ATMで設定できる引き出し額はICキャッシュカード上限の200万までになります。
またATMで引き出せるお札は100枚までなので、実際は100万ずつ分けて処理しなければなりません。

なんらかの理由で急に大量の現金が必要になったときのため、個人口座のほうには通帳アプリを入れておいてもよさそうです。

まとめ

ゆうちょ銀行、三菱UFJ銀行、各種ネット銀行の最新状況を調べてみて、どれも一長一短だと感じました。

お札を数える犬 MUFGで法人口座開設、ネット銀行との比較

もしミニマムにひとつの法人口座で済ませるとしたら、GMOあおぞらネット銀行がベストと思われます。
ただし倒産防止共済の掛金振替に利用するには団体経由で新規加入する必要があり、余計なコストが発生します。

今のところ自分にとっては、すでに口座がある「ゆうちょ銀行とMUFGの併用」がベストな気がします。

法人口座の用途整理

当社における法人口座の利用シーンを整理してみると、

  1. 毎月の報酬支払い(定期同額給与)…ゆうちょ銀行
    ※法人→個人口座送金で無料
  2. 社会保険料の引き落とし…ゆうちょ銀行
    ※すでにMUFGから変更済み
  3. 経営セーフティ共済掛金の振替…MUFG
    ※各種申請はオンラインか他支店経由で可能
  4. 投資資金の送金…ゆうちょ銀行
    ※楽天証券やbitFlyerは同一名義の法人口座から入金する必要あり
  5. その他、補助金、還付金、売上の受取など…ゆうちょ銀行

もし4で「1,300万の壁」に引っかかるなら、BizSTATION Lightを再開して、振込元をMUFGに変更するかもしれません。
とはいえ年に数回程度の操作なので、小分けに振り込めば十分といえます。

現状では共済関連の3だけMUFGで済ませる必要があり、それ以外はたいてい郵貯で間に合う感じです。

中小企業倒産防止共済

1も月額給与の手取りは5万未満なので、認証アプリの限度額制限があっても、ぎりぎりこなせます。

GMOの法人口座も魅力的ですが、たまにしかない振込のため、わざわざ口座を新設するのも面倒です。
維持費用はかからず手数料も安いとはいえ、ログイン情報やパスワードなど口座管理の手間をむやみに増やしたくありません。

もしゆうちょ銀行やMUFGでどうしてもこなせない手続きや、致命的なサービス改悪(値上げも含む)が出てきたら、そのときは格安ネット銀行への乗り換えを検討しようと思います。

ゆうちょ銀行のトークン
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ゆうちょ認証アプリで法人がはまる送金限度額https://bofuo.net/yucho-error/Fri, 07 Mar 2025 09:00:00 +0000https://bofuo.net/?p=2073

ゆうちょ銀行の法人口座で「ゆうちょ認証アプリ」を導入すると、「1日の送金限度額」が5万円に制限されます。法人は運転免許証などの書類による本人確認ができないため、アプリやウェブからは限度額の引き上げができません。 試行錯誤 ... ]]>

ゆうちょ銀行の法人口座で「ゆうちょ認証アプリ」を導入すると、「1日の送金限度額」が5万円に制限されます。
法人は運転免許証などの書類による本人確認ができないため、アプリやウェブからは限度額の引き上げができません。

試行錯誤して銀行窓口で相談したところ、送金限度額変更届書を提出すれば制限解除できる(要審査)とわかりました。

ボフオ
ボフオ

窓口に行けば限度額アップできるよ

(追記)
スマホを機種変更する際「ゆうちょ認証アプリ」の内容は引き継げないとわかりました。
新しいスマホにアプリをセットアップすると、送金限度額もまた1日5万円に下げられてしまいます…
再度ゆうちょ銀行窓口に出向いて、書面での手続きをやり直す必要がありました。

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ゆうちょ認証アプリの罠

無料で使えて一見便利な「ゆうちょ認証アプリ」
法人口座で使うと必ずはまるのが送金限度額の制限です。

ゆうちょ認証アプリ

法人は本人確認できない

ゆうちょ認証アプリの設定時に、「書類による本人確認」をスキップすると、1日の送金限度額が5万円に制限されてしまいます。
そして法人口座の場合は、そもそもスマホでの本人確認ができないため、この手続きはスキップするほかありません。

ゆうちょ認証アプリ

社長の運転免許証などを読み取らせても、エラーになってしまいます。
ほかに「登記簿謄本をスマホで読み取る」といったような法人向けのオプションも、今のところは用意されていません。

それまでゆうちょダイレクトで多めの送金限度額を設定していたとしても、法人が認証アプリを使ったとたん、1日5万円に強制リセットされてしまうのが難点です。

5万以下なら問題ないが…

そのままでも1日5万以下ならオンラインで振り込みできるため、少額の取引しかなければ問題ないかもしれません。
私の場合、毎月の給与支払いが5万以下なので、しばらくは限度額に引っかかることはなく振り込みできていました。

ゆうちょダイレクト

ただこれは社会保険料を軽減するため、意図的に報酬を下げていたおかげです。
自分の月給を月額63,000円未満の1等級におさえているので、健康保険料と厚生年金保険料の折半額を差し引くと、手取りが5万円を下まわるという状況です。

1日の送金限度額が5万しかないと、一般的な会社では使い物にならないと思います。

送金限度額のエラー

たまたまゆうちょ銀行経由で投資用の資金を振り込もうとした際、上限額のエラーが出ました。
画面には「エラー種別 P021送金限度額 50,000」というメッセージが表示されています。

ゆうちょダイレクト

実は認証アプリを入れてから数か月、ゆうちょダイレクトを問題なく使えていたので、送金限度額があることを忘れていました…

認証アプリの登録情報を振り返ると、
「ご本人様確認 電話・認証のみ」
「一部のサービスは、制限されています」

と赤字で警告も出ていました。

ゆうちょ認証アプリ

ゆうちょダイレクト側の「ご利用状況」を確認しても、
eKEY本人認証:未実施(制限あり)
と表示されています。

ゆうちょダイレクト

限度額の引き上げ方法

ゆうちょダイレクトのメニュー画面をたどっていくと、「各種手続等→ご登録内容 確認・変更」から送金限度額を変更することができます。

ゆうちょ認証アプリ

オンラインでも50万までは引き上げ可能となっていますが、手続きには認証アプリかトークン(ワンタイムパスワード生成機)が必要になります。
そして認証アプリを入れてしまった場合は本人確認が必須のため、やはり法人では上限額を5万円からアップすることができません。

ゆうちょ認証アプリ

さすがに不便すぎるので、法人口座で限度額を上げる方法をいろいろ調べてみました。
しかしゆうちょ銀行のウェブサイトやFAQには、法人の本人確認や制限解除に関する説明がどこにも見あたりません。

単純に思いつく解決策は、無料の「ゆうちょダイレクト」をやめて、有料の法人向け「ゆうちょBizダイレクト」に乗り換えることくらいです。
今回はトークンの電池切れをきっかけに認証アプリへ切り替えたのですが、もしかすると法人利用者を有料サービスへ誘導するための罠だったのではないかと勘ぐってしまいます。

限度額解除の代替手段

今まではゆうちょダイレクトでトークンを使って、1,000万円の上限まで問題なく振り込みできていました。
認証アプリの制限のため有料サービスへ切り替えるのは悔しいので、代替手段を考えてみました。

①銀行窓口で送金

ゆうちょ銀行の窓口に行けば、「1回あたり99億…円」と実質無制限で送金することができます。

ただし振込手数料は「5万円以上=880円」と高額で、ゆうちょダイレクトの「他行宛て165円(金額に関わらず)」の5倍以上かかってしまいます。

もし「ゆうちょBizダイレクト」のスタンダードプランを契約すると、初回5,500円、月額550円、さらに他行宛て振込も毎回165円かかります。

認証アプリ制限の5万以上を送金する機会がまれなら、その都度窓口で880円払って送金したほうがリーズナブルといえます。
ただし郵便局まで出向いて窓口で待たされたうえ、書類を書いたりハンコを押すという手間も発生します。

②トークン認証に戻す

ゆうちょ認証アプリの落とし穴ともいえる送金限度額ですが、単純に以前のトークン式に戻せないかと考えてみました。

ゆうちょ銀行のトークン

それまでは振込上限を1,000万に設定していたので、問題なく使えていました。
いったん認証アプリに慣れると、トークンは不便に感じられますが、送金する機会はそれほど多くありません。

認証アプリを有効化すると、ゆうちょダイレクトの振込確認時にトークンは使えなくなり、アプリでのみ承認できるようになってしまいます。
ゆうちょダイレクトのメニューやオンラインの手続きでは、トークン認証に戻す手段はないようです。

いろいろ調べたところ、ゆうちょダイレクト自体を「書面で」再申し込みすれば、以前の認証方法に戻せるとわかりました。
ブラウザ経由の「Webかんたん利用申し込み」では、認証方法を変えられないそうです。

ゆうちょダイレクトの書面申し込みは、ウェブ上で作成した利用申込書を印刷し、郵送する流れになっています。

ゆうちょダイレクト

ためしに途中までやってみたところ、申請時に「1日の送金限度額」も設定できるのですが、フォーム上では上限が50万円になっています。
それ以上金額を上げたい場合は、窓口で手続きしたうえ「10日程度の審査期間」が必要と書かれています。

ゆうちょダイレクト

時間と手間はかかりますが、手順どおりに再契約すれば法人口座でも振込上限を上げられそうです。
さらに1,650円払ってトークンを手に入れれば、以前の認証方法に戻せるはずです。

③他の銀行に乗り換える

なにかと不便なゆうちょ銀行はあきらめて、ほかの銀行を使うという選択肢も検討してみました。

自分はもうひとつ、三菱UFJ銀行(MUFG)に法人口座をもっています。
こちらも月額無料でBizSTATION Lightという、インターネットバンキングのサービスを契約しています。

MUFGの場合、BizSTATION(Lightも含む)オンラインでの振込手数料は、他行宛て3万円以上で660円になります。
ゆうちょダイレクトが165円なので、ちょうど4倍という感じです。

ゆうちょ銀行より手数料が高いのはネックですが、たまにしか使わないならありかと思います。

お札を数える犬 MUFGで法人口座開設、ネット銀行との比較

あるいはゆうちょ銀行よりさらに手数料の安いネットバンクで、新たに口座開設するのも手です。

GMOあおぞらネット銀行なら、「他行宛て3万円以上」の振込手数料が145円。
住信SBIネット銀行の場合は金額にかかわらず、他行宛ては145円で同額です。

どちらもゆうちょダイレクトの165円より20円安く利用できます。
他行への振込回数が多いなら、こうしたネット銀行をメイン利用したほうがお得かもしれません。

とはいえ、たまにしか使わない法人口座をむやみに増やすのも面倒です。
やはりこれまでどおり、ゆうちょ銀行で高額振込もできないかと思い、ダメもとで窓口に相談に行ってみました。

窓口相談で解決

ゆうちょ銀行であれば、どんな離島や片田舎にも支店(郵便局の貯金窓口)が存在して、法人口座の手続きもできるのは便利です。

ゆうちょ銀行のトークン ゆうちょ銀行の法人口座を使いこなすコツ

最悪、窓口から手動で送金しよう思って最寄りの郵便局に行ってみたところ、認証アプリを使ったまま送金限度額を引き上げられるとわかりました。
事前に調べてきた、ゆうちょダイレクトの再契約や、トークンの有料再発行も必要ありませんでした。

送金限度額変更届

具体的な手続きとしては、「ゆうちょダイレクト送金限度額変更届書」に必要情報を書いて窓口で提出するかたちになります。

ゆうちょダイレクト送金限度額変更届書

法人の住所・名称・電話番号と口座番号を記入して「1日の送金限度額」を指定、限度額変更の目的や資金の出どころ、送金頻度などを書く欄があります。
さらに銀行への届け印も必要になります。

法人口座の場合は、申請者本人確認のための運転免許証だけでなく、自身と会社の関係を証明できる資料を求められます。
とはいえ登記簿謄本ほど厳密な書類は必要なく(あれば十分ですが)、社名が書かれた名刺程度で済むようです。

限度額の引き上げには審査があり、1~2週間後に郵送で結果を知らせてもらえるそうです。
記入済みの届書については、控えとしてコピーをもらえました。

一度は限度額1,000万まで増やせた法人口座なので、今回の審査も無事に通るのではないかと思います。
結果がわかったらまたご報告します。

(追記)6~10日で審査合格

送金限度額の変更届窓口で提出した後、土日も含めて10日後に郵便が届きました。
キャッシュカードのように書留・手渡しではなく、普通にポストに入っていました。

ゆうちょダイレクト送金限度額変更完了のお知らせ

書類に記載の日付は申請から6日後だったので、そこから自宅に届くまで4日かかった計算です。
もしかすると変更完了した6日後には、通知の到着を待たなくても限度額アップした状態だったのかもしれません。

さっそくゆうちょダイレクトにログインして確認したところ、1日の送金限度額は申請どおり1,000万円になっていました。

ゆうちょダイレクト、1日の送金限度額

予定していた証券会社法人口座への送金も、設定した金額で問題なく受理されました。
手続きに時間はかかりましたが、なんとか以前の限度額に戻せてほっとしました。

法人向けの情報がない

ゆうちょダイレクトの設定画面をあらためて確認すると、送金限度額変更の注釈に以下のような文言がありました。

ゆうちょダイレクト

送金限度額を50万円超に引き上げる場合は、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口(簡易郵便局を除く)でお手続きください。

つまり本人確認できない法人口座であっても、窓口に行けば限度額を変更できるオプションが用意されていた、と解釈することができます。

それと同時に、

本人確認が行われていない場合、送金限度額の引き上げはできません。

という注意書きもあって混乱したのですが、どうやらこれはオンラインで最高50万まで上限額を上げる場合に適用されるルールのようです。

ゆうちょ銀行のFAQでは、法人口座でも認証アプリが使えるものの、書類による本人確認ができない送金額が制限されると、こっそり書かれています。

冷静に考えると、窓口に会社の代表者が銀行印を持ち込み、本人確認も済ませたとしたら、セキュリティー的には万全の状態です。
多額の振込でも送金限度額の変更でも、あらゆる手続きは可能と思われます。

状況をまとめると、

  1. 法人のトークン利用者が認証アプリに変えると、強制的に送金限度額が下げられる
  2. 送金限度額を元に戻すには、窓口で申請して再び審査を受ける必要がある
    (審査中1~2週間は、ゆうちょダイレクトで1日5万までしか振込できない)

このあたりの仕組みがそもそも不親切なうえ、ウェブ上で丁寧に説明されていないところが問題と考えられます。

いろいろ調べて自己解決できるならいいですが、うっかり諦めて「ゆうちょBizダイレクト」を契約してしまう人も出てきそうな気がします。
(ゆうちょ銀行としては、それが狙いなのかもしれません)

ゆうちょダイレクト

そもそも法人口座なのに、無料のゆうちょダイレクトを使っている会社がまれな気もします。
もし同じ状況で困っているかたがいらっしゃったら、上記の手続きをご参考にしていただければ幸いです。

スマホ機種変更でやり直し

何となく嫌な予感はしていたのですが、スマホを変更してゆうちょ認証アプリを入れ直すと、送金限度額がまた5万円にリセットされてしまう問題が発生しました。

認証アプリは引き継ぎ不可

スマホ機種変更の際、モバイルSuicaであれば旧端末からいったんデータをサーバに退避して、新端末に取り込み残高などを引き継ぐことができます。

一方、ゆうちょ認証アプリにはこうした便利機能がなく、新しいスマホで最初から登録し直す必要があります。
この事実はゆうちょ銀行のFAQにも明記されていて、アプリの仕様のようです。

引き継ぎはできません。恐れ入りますが、新しいスマートフォンでゆうちょ認証アプリを再度、利用登録してください。

認証のため電話番号変更

ひとまず新端末でゆうちょ認証アプリをセットアップしてみます。
法人口座なので、前回と同じく「書類による本人確認」はスキップしなければ先に進めません。

さらにゆうちょ銀行に登録してある法人の電話番号が、IP電話(SMARTalk)のサービス終了により使えなくなっている、という別の問題に気づきました。
電話かSMSで確認コードを受け取れないと、アプリの設定を完了できません。

ゆうちょ認証アプリ

ゆうちょダイレクトの操作方法案内によると、住所・電話番号の変更には「ゆうちょ認証アプリまたはトークンが必要」と書かれています。
電話番号の変更前に認証アプリも使えない状態なので、デッドロックでは…?

ゆうちょダイレクト

そもそも法人はネットでの住所変更が不可なので、どのみち銀行窓口に行く必要があるように思われます。

いろいろ調べたところ、電話番号だけなら法人でもATMで変更できそうとわかりました。

ゆうちょダイレクトの画面では「住所・電話番号変更が可能な口座がありません」と表示されていたので誤解したのですが、電話番号のほうは書面手続き不要なようです。

ゆうちょダイレクト

結局、郵便局に行く必要はあったのですが、ATMにキャッシュカードを差し込み暗証番号を入力すると、登録情報変更のメニューがあり、新しい電話番号を設定することができました。
窓口でわざわざ書面を書く必要はなかったので、この点は助かりました。

ATMでの電話番号変更はすぐに反映されたようで、携帯番号のSMS経由で認証コードを受け取り、無事アプリのセットアップを済ませることができました。

送金限度額はリセット

新端末で認証アプリを使えるようになりましたが、予想どおり1日の送金限度額は5万円にリセットされていました…

ゆうちょダイレクト

しかも新しいスマホで認証アプリの利用を始めると、旧端末では同アプリが使えなくなります。
このタイミングで5万円を超える振り込みの必要があるとピンチです。

ゆうちょ認証アプリ

法人が送金限度額を変更するには書類申請→審査で数日かかるので、給与や支払いなど急ぎの送金がある場合は、機種更新を遅らせたほうが無難です。

ゆうちょダイレクト

再度書面で送金限度額変更

ここから先、送金限度額変更については前回と同じ手続きなので、銀行窓口でもらった書類に記入して提出しました。
結局ATMでの電話番号変更と送金限度額変更で、2回も郵便局に行く羽目になりました。

送金額変更の際は、本人確認の免許証のほかに登記簿謄本も持参しました。

ゆうちょダイレクト送金限度額変更届書

窓口での申請後6日後にアプリを見ると、送金限度額が上限の1,000万円に変更されていました。
これでようやく新しいスマホから認証アプリを使って、給与の振り込みなど元通りできるようになりました。

ゆうちょダイレクト

その後、申請から9日後にはオフィスに送金限度額変更のお知らせが郵便で届きました。

ゆうちょダイレクト送金限度額変更のお知らせ

郵送で通知が届く前に、ゆうちょダイレクトでは上限額アップしていました。
制限解除のタイミングが気になるかたは、申請後6日程度を目安に、こまめにアプリで状況確認すればよいかと思います。

まとめ

ゆうちょ認証アプリの送金限度額制限を解除する方法についてまとめました。

法人口座はオンラインで本人確認できないため、窓口に行って書面で変更届を提出する必要があります。

審査に時間がかかり、その間はゆうちょダイレクトで1日5万円までしか振込できなくなります。
認証アプリに切り替えるなら、給与振込や取引の少ない時期に余裕をもって手続きするのがベターです。

アプリかトークンか

現在トークンを使ってパスワード生成されている会社さんは、電池が切れるまで使い続けて構わないと思います。
いずれバッテリーが切れたとしても、1,650円払ってトークンを再発行してもらい、アプリ関連の余計なトラブルを避けるのも手です。

ゆうちょ銀行のトークン

ゆうちょ認証アプリはスマホ単体で振込できて、便利な側面もあります。
出張先からゆうちょダイレクトで送金する必要があるかたは、トークンを持ち歩かなくて済むので有利かもしれません。

またアプリはトークンのように電池切れの懸念もなく、ずっと無料で使えます。
限度額変更については窓口で申請したうえ審査を受ける必要がありますが、それさえ済ませばもっともリーズナブルな認証手段になります。

ゆうちょ認証アプリ

長い目で見れば物理トークンは廃止され、認証アプリに一本化されそうな気がします。
とはいえ今でも紙の通帳が使えるゆうちょ銀行なので、デジタル認証への完全切替には、まだ数十年かかるかもしれません。

さしたるメリットや必要性を感じなければ、焦って認証アプリに切り替える必要はない、というのが今回いたった結論です。
トークン利用中のかたは、アプリ承認の導入について慎重にご検討ください。

スマートフォンを操作する犬
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ヤマハの木製電子ピアノTORCHが気になるhttps://bofuo.net/torch/Wed, 19 Feb 2025 04:00:08 +0000https://bofuo.net/?p=1932

2025年2月18日、ヤマハの新しい電子ピアノTORCH(トーチ、型番T01)が発表されました。 ミニマリズムの塊ともいえるソリッドな見た目で、しかも鍵盤にはグラナディラ(アフリカン・ブラックウッド)の希少木材が使用され ... ]]>

2025年2月18日、ヤマハの新しい電子ピアノTORCH(トーチ、型番T01)が発表されました。

ミニマリズムの塊ともいえるソリッドな見た目で、しかも鍵盤にはグラナディラ(アフリカン・ブラックウッド)の希少木材が使用されています。
素材の希少性もあってか量産品ではなく、20台限定の抽選販売になっています。

価格も99万円と高額で機能も絞られた特殊な製品ですが、インテリアピアノの分野では今までにない尖ったコンセプトの意欲作といえそうです。

ボフオ
ボフオ

木工好きにはたまらないピアノ!

公開されている情報をもとに、特徴や注意点をまとめてみました。

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ミニマムな外観

TORCHは側板から譜面台まで、板材を単純に組み合わせたような形をしています。
ピアノとして実用性を担保しながら、構成要素を限界までそぎ落としたようなコンセプトを感じられます。

サステナブルキーボードの製品化

2023年にヤマハ銀座店「楽器の木」展で展示された、非売品のサステナブルキーボード(アンティークタイプ)と外観は似ています。
当時のプロトタイプは木製らしさを強調した重厚感のあるフレームで、足元に貫もあり、側板はTORCHより若干厚いように見えます。

2024年に出ていたサステナブルキーボードは、脚の横材が省略された代わりに、斜めの鋼材で補強されていました。

こうした地道な改良が続けられて、ついに新商品TORCHとして販売されるにいたったのかと思います。

コの字型のフレーム

ローランド×カリモク家具のKIYOLAが北欧家具からインスパイアされたとすると、トーチのデザインソースはバウハウスの機能性・合理性ではないでしょうか。
椅子にたとえるなら、マックス・ビルのウルムスツールを連想させます。

据置型ピアノにありがちな背面のパネルや、貫のような横材も大胆に省略されています。
ペダルも専用設計らしく、本体とケーブルでつながる独立ユニット式なのはKIYOLAと同じです。

さすがにコの字型のフレームだけでは演奏時の揺れを抑えられなかったのか、コーナー部分に金属製の棒材が仕込まれています。
左右からわりと大きく張り出しているので、椅子に腰かけた際、膝が当たらないか少し心配です。

汎用キーボードスタンドのように側板がハの字に開いていれば、金属ロッドはもう少し高い位置に配置して、長さも短く設定できたと思います。
あくまで90度の接合角度と直線的な外観を優先して、金属棒による補強が選ばれたようです。

木工職人なら方杖まで無垢の木でつくりそうなところ、細い鋼材を黒く塗って目立たなく仕上げているところはさすがです。
木と金属という異素材の組み合わせで、合理的な構造になっています。

鍵盤蓋がない理由

ヤマハのTORCHは据置型ピアノにたいてい付いている、鍵盤の蓋がありません。
鍵盤にほこり積もったりぶつけて壊したりしないよう、布かなにかで覆っておく必要があると思います。

コルグC1ローランドDP603のように蓋を閉めると上面がフラットになり、物置やテーブルとしても流用できるよう配慮された製品もあります。
TORCHはそうした邪道な使い方もできず、楽器に徹したストイックな機材といえます。

もし鍵盤カバーを付けたしたら、パネル面に余計なパーツや機構が必要となり、厚みが出てここまでスリムにはできなかったと思います。
彫刻のように美しいグラナディラ製の黒い鍵盤を常に見せるため、あえてカバーを設けなかったという説も考えられます。

ボフオ
ボフオ

ピアノを眺めながらお酒が飲めそう…

安全性やメンテンナンス性も犠牲にして、ポータブルピアノのように鍵盤や操作部をむき出しにした引き算のデザインには賛否両論ありそうです。
少量生産の限定品であるため、「わかる人だけが使ってくれる」という割り切りもあるかと思います。

ここまでエッジの立った設計は、プロトタイプだからこそ可能だったのではないでしょうか。
もしTORCHの量産バージョンが出るとしたら、鍵盤蓋つきで外装もポリウレタン塗装に変更されそうな気がします。

譜面台は着脱式

譜面台も側板と同じ樹皮模様が刻まれ、パネル上面に固定されています。
使わないときは折りたたみできそうな雰囲気もあるのですが、手前に倒すと鍵盤にかぶってしまいます。

TORCHの製品情報ページには、取扱説明書もPDFで公開されています。
マニュアルを読むと、譜面立ては本体上部スリットへの差し込み式になっていました。

参考 T01 ダウンロード 取扱説明書YAMAHA

安価なキーボードやポータブル式の電子ピアノでよく見られる構造ですが、譜面立てもちゃんと木でできているところは、デザイナーさんのこだわりを感じます。
補強の鋼材と同じく、KORG Lianoのように簡素な金属棒で譜面立てをつくってもよかったと思いますが、レーザー加工された板材の存在感をアピールしたかったのでしょう。

壁際に設置すれば、楽譜を壁に立てかけられるので譜面台は必要ありません。
パネルの上に冊子やiPad、クリップボードを差し込めて、手前にずり下がって来ないための溝さえあれば十分といえます。

iPad楽譜

そもそも慣れた曲を弾くだけなので、基本的に楽譜は見ないというユーザーすらいそうです。

シチュエーションに応じて譜面台を丸ごと外せるというのは、高価格帯の据置型ピアノではめずらしい仕様です。
鍵盤カバーと同様に、構造を単純化して本体の厚みをおさえるための、大胆な工夫と考えられます。

ボタン類も最小限

鍵盤カバーを設けずコンソールをむき出しにしたためか、液晶画面がなくボタンやダイヤルも最小限の構成になっています。

写真を見るかぎり、鍵盤の左側に機能選択のボタンが2つ、右側に電源ボタンとボリューム調整用のつまみしか存在しません。
そのため電子ピアノ特有のガジェット感がなく、ぱっと見は生ピアノのように見えなくもありません。

TORCHの説明書によると、音色やデモソングの選択は、ファンクションボタンを押しながら対応鍵盤を押下する方式のようです。

左パネル上側ピアノマークの「設定ボタン」と鍵盤の組み合わせで、音色やリバーブの選択、トランスポーズの設定や、各種機能のオンオフができます。
下側音符マークの「曲ボタン」と対応鍵盤を押せば、各音色のデモソングやプレイリストを再生できます。

鍵盤上部にこうした機能表示のガイドは印字されていないので、付属の「鍵盤操作早見表」を見ながら操作することになりそうです。
とはいえ音色選択以外は使う頻度も少なそうなので、10ボイス程度ならすぐ暗記できるかと思います。

MDFのレーザー加工

TORCHのプレスリリースをよく読むと、グラナディラが使われているのはピアノの筐体ではなく、鍵盤部分だけのようです。
外装は木質ボードにレーザー加工で「グラナディラの樹皮の模様を表現」したと書かれているので、若干まぎらわしいことになっています。

エッチングは高級車内装用の加工技術が適用されていて、クオリティーは高そうです。
しかも木目ではなく「樹皮」の模様というのが独特で、レオパード柄のように2トーンのワイルドな見た目になっています。

鍵盤を木粉から再成型したのと同様、外装も人工的に木質感を表現しているところから、「木材の再解釈」という意図が感じられます。
KIYOLAが無垢の白木にこだわったとすると、TORCHは未利用材やMDFなど木のリサイクルに取り組んだ作品といえます。

化粧板を貼らず木質ボードをむき出しにすることで、接合部や木口に丸みをもたせる加工が可能となったそうです。
TORCHのボディーに思わず触ってみたくなる気がするのは、部材のエッジに大きめの角Rが施されているせいでしょう。

鍵盤周辺のパネルには樹皮模様がなく、木質ボードそのままの等方性を見せているのも渋い表現です。
荒々しいレーザー加飾と、均質なMDFのコントラストによって、派手すぎず大人しすぎない、洗練されたバランスが保たれているように見えます。

サステナブルキーボードの「DIYタイプ」に使われていたOSBボードがMDFに変わったことで、手づくりのクラフト感が減った代わりに高級感はだいぶ増したと思います。

木質ボードも経年変化

木部の塗装にワックスや亜麻仁油など天然材料が使われているのも、電化製品としてはめずらしいポイントです。
鍵盤同様、外装パネルも使っているうちに表情の変化を楽しめそうです。

ただMDF自体は木材チップと樹脂から成形した素材なので、水に弱いという弱点があります。
シートが貼られていないので、表面が水ぶくれして剥離する現象は起こらなそうですが、湿気の多いところには置かないほうがいいと思います。

オイルとワックスで多少のシミは防げると思いますが、パネル上に熱い湯のみや氷の入ったコップを置くのは危険です。
中身をこぼさなくても、温度変化や水分の浸透で輪じみができてしまうかもしれません。

ラッカーやウレタン塗装より自然な風合いを感じられる反面、取り扱いや設置場所には配慮を要するデリケートな仕上げといえます。

グラナディラ製の鍵盤

白鍵まで黒いユニークな鍵盤はグラナディラそのものではなく、粉砕した端材を「木質流動整形技術」で再成型した人工素材のようです。
白鍵部分の木粉比率は70%となっているので、樹脂よりは木材が主原料といえます。

端材のリサイクル

グラナディラはクラリネットなど木管楽器に使われる素材なので、音楽業界の人にはなじみ深いかもしれません。
流行の木軸ペン界隈でも高値で取引される樹種でもあり、ピアノに適用するとはかなり贅沢な設計です。

材料となる木材は、クラリネットやオーボエなど別の楽器製造のプロセスで生じた未利用材とのことです。
革の端材と樹脂を混ぜ固めたリサイクルレザーと同様に、環境への配慮もさりげなくアピールされているところが今っぽいです。

木材と樹脂の複合素材という意味では、文具メーカーのパイロットが得意とする樹脂含浸カバ材(コムプライト)に近いかもしれません。

カスタムカエデのイラスト カスタムカエデは枯れ木のような味わい

積層強化木は乾燥や経年変化で狂ったり割れたりする木のデメリットを樹脂で補い、木の質感はほぼそのままに、安定性や均質性を向上させる技術です。
工芸的な材料である木材とプラスチックを組み合わせ、量産品に適用して品質向上するための工夫といえます。

白鍵と黒鍵の違い

ヤマハのTORCHは鍵盤が白鍵も含めて真っ黒なので、HHKBの無刻印キーボードのような匿名性やプロ仕様といった趣があります。
マットブブラックという色からは、「軍用、黒帯」といった上級者向けの雰囲気も感じられます。

プロトタイプ「サステナブルキーボード」の説明によると、黒鍵部分は成形木材、白鍵部分は高充填WPCで、2種類の素材が使い分けられているようです。
黒鍵はグラナディラ100%の木粉であるため、ほぼ無垢材のように感じられるそうです。

鍵盤の拡大写真や説明動画をじっくり見ると、黒鍵にはやや木目調のテクスチャーがあり、色のトーンも若干変えてあるようです。
鍵盤全体は半光沢の炭っぽい見た目ですが、白鍵と黒鍵に微妙なメリハリをつけることで、演奏時の視認性に配慮したのかもしれません。

構造はグランドタッチ-エス

TORCHの鍵盤構造は、クラビノーバシリーズの「グランドタッチ-エス」が採用されています。
エスケープメントもついているので、生ピアノに近いクリック感を味わえます。

ヤマハの電子ピアノとしては上から2番目のグレードで、「エス」が付かないグランドタッチ鍵盤のほうが高級品となります。
公式FAQによると、後者のほうが指先から鍵盤支点までの距離が長くとられ、グランドピアノの打鍵感により近いと説明されています。

参考 グランドタッチ-エス™鍵盤とグランドタッチ™鍵盤の違いはなんですか?YAMAHA

どちらも白鍵は木製ですが、黒鍵はプラスチック製で黒檀調の仕上げがほどこされています。
TORCHは黒鍵もグラナディラ製(しかも純度100%)なので、通常のグランドタッチより上位バージョンと考えることもできます。

ザラザラ系の鍵盤

カワイの高級電子ピアノは、白鍵・黒鍵とも木製なのが売りとされています。
ローランドの木製鍵盤は、木と樹脂のハイブリット構造で品質が安定しているのが特徴です。

鍵盤を木粉とプラスチックから再構成したTORCHは、両社のいいとこどりを狙ったのかもしれません。
しかも無塗装で木本来の吸湿性もあり、指に汗をかいても滑りにくく、素材のエイジングも楽しめるメリットを兼ねそなえています。

グラナディラに皮脂や汗がしみ込んでだんだんテカッていくのか、それとも風化して色あせていくのか、どんな変化が起きるのかワクワクします。
人工象牙やアクリルが貼られてエターナルに輝く白い鍵盤も美しいですが、練習の成果が味や風合いとしてあらわれる木製鍵盤も味わい深いと思います。

万年筆の書き味と同じく、ピアノの鍵盤をツルツル~ザラザラ系に分類するとしたら、TORCHは無塗装に近い木材で、やすりのように荒い究極のザラザラ鍵盤と期待できます。

演奏中、指先の汗ですべって困るという人には、うってつけの素材といえそうです。

ボフオ
ボフオ

汗っかきには良さげな鍵盤

操作パーツも木製

デザイナーのかたのインタビューによると、音量調整用のつまみもグラナディラの削り出しとなっています。

参考 「TORCH」に込めた想いYAMAHA

まるで「ノック部のパーツまで木でつくった木軸ペン」のようなこだわりようです。
木工製品が好きな人には、たまらないディティールだと思います。

ボタン類は樹脂製のように見えますが、色味はパネルとそろえてあります。
操作説明の表示もさりげなく、ブランド名や製品名も同系色でまとめられているため違和感はありません。

機能は限定的

有機ELやLCDディスプレイを省略してボタンの数も絞ったせいか、TORCHの搭載機能はかなり控えめです。

音色は10種類だけ

音色の数は10ボイスしかなく、100万近くする高額商品としては物足りなく感じます。

ただし似たような木製ピアノのKIYOLAはもっと少なく、6音色しかありません。
ローランドの競合製品を意識して、せめて2桁まで増やしたのかもしれません。

TORCHの説明書によると、搭載されている音色は以下の10種類です。

  1. CFXグランド
  2. ベーゼンドルファー
  3. モーツァルトピアノ
  4. ステージエレピ
  5. DXエレピ
  6. ハープシコード
  7. ビブラフォン
  8. パイプオルガン
  9. ジャズオルガン
  10. ストリングス

やはりピアノとエレピが中心で、オルガン系はKORGのLianoと同じ2種類だけです。
個人的にはハープシコードとビブラフォンを外して、ハードロック系の電子オルガンも増やしてほしかったです。

音源はCFXとベーゼンドルファーサンプリングで、上位機種のクラビノーバシリーズと同等です。
CFXについてはバイノーラルサンプリングされていて、最大同時発音数256というのもクラビノーバと共通の仕様になっています。

スピーカーも控えめ

Bluetoothのオーディオ受信もできるので、たとえピアノを弾かなくても高価なスピーカーとして活用できそうです。
製品の写真を見ても、どこにあるのかわかなないほどさりげなく、スピーカーも組み込まれています。

ただしアンプの出力は(20W+6W)×2と控えめで、スピーカーのサイズを見てもClavinovaより下位のARIUSシリーズと同等に思われます。

TORCHはデザインにこだわり抜いた別格の製品ですが、機能性を追求するなら素直にふつうの電子ピアノを選んだほうがいいと思います。
予算が100万円あれば、AvantGrandの一部機種、Clavinovaが全モデル余裕で買えるレベルです。

椅子のこだわり

TORCHの椅子も本体と同じく板材と金属棒の構造になっていて、統一感があります。
KIYOLAでカリモクが製造する椅子と違い、こちらは昇降機能が付いているのが特徴です。

内部の金物や高さ調整用のダイヤルは、本体と同じカラーで仕上げられています。
木製かプラスチックかわかりませんが、大型のノブもつい触ってみたくなりそうな魅力をそなえています。

TORCHの前身とおぼしき「サステナブルキーボード」のプロトタイプは、ヤマハが1930年代に作っていた折りたたみ式の山葉文化椅子を参照しているようです。

文化椅子と同じくX型の木製フレームで構成されたピアノ椅子のスケッチも公開されていますが、製品版ではよりシンプルな構造が採用されています。
椅子もピアノ本体と似通った外観にして、昇降メカの部分を横材で隠したかったのかもしれません。

ヒノキ由来の材料

椅子の座面には「ヒノキ由来の材料を使用」と書かれています。

写真を拡大してみると、椅子のシートはクッション入りの茶色い革張りに見えます。
説明がないので、本革か人工皮革か、ビニールレザーのような安い素材かはわかりません。

座面内部のクッションにヒノキのチップやおが屑、かんな屑が使われているのか…
それともヒノキの精油で香りがつけられているだけなのか…

「ヒノキ由来」という表現から、ヒノキそのものではなく二次的な副原料、間接的な用法と想像されますが、詳細は不明です。

ともかくヒノキを使っているということで、フィトンチッドのアロマ成分を感じられるのではないかと期待できます。
森林浴のように、森のなかでピアノを演奏しているような気分になれれば素晴らしいです。

TORCHのコンセプト動画も、森のなかにピアノがたたずんでいるラストシーンは印象に残りました。
まさに『ピアノの森』です。

抽選について

これだけスペシャルな仕様のTORCHは、わずか20台の限定発売というきわめて希少な商品です。

高倍率を予想

セーラーの創業周年万年筆などもレアですが、さすがに大手メーカーの商品として100本以上はリリースされます。
たった20台しかないコンセプトモデルなら、最初からオークションにかけたほうがよさそうな気もします。

これだけ知名度のあるメーカーで、商品に話題性もあり、さらにユーザーが全世界にいることを考えると、抽選販売は相当な倍率になりそうな予感がします。
本気で欲しい人は、家族や知り合いもエントリーに動員して勝率を上げてくるのではないでしょうか。

ターゲット顧客

メインのターゲットはピアノや木管楽器の演奏者というよりも、インテリアやオブジェとしてピアノを愛でたいコレクター的な人種かもしれません。

北欧テイストの木製家具が好きな人や、野原工芸・工房楔など木軸ペンの愛好家にも興味をもってもらえそうです。

ボフオ
ボフオ

しーさーさんにレビューしてほしい

TORCHの鍵盤は木粉を練り込んだ特殊素材なので、木製とはいえ普通のピアノの鍵盤とは質感が異なる可能性があります。
ピアノのレッスンを受けていて、自宅での練習用に生ピアノと同等の使用感を求めているなら、避けたほうがよいかもしれません。

ある意味、まともなピアニストからはキワモノ扱いされそうな、珍商品とも考えられます。
希少で高価とはいえ中身は電子ピアノなので、アコースティックピアノとは別種の楽器です。

ただし見た目のインパクトは絶大なので、実際に演奏するより展示目的で購入されるかたが多いかもしれません。
高級マンションのショールームや住宅展示場、おしゃれなオフィスの演出用としても需要がありそうです。

予算100万円

TORCHの価格は99万と、誰でも買える金額ではありません。
送料も含めると100万円を超えるかもしれません。

材料代も製造原価も不明な一点物というイメージなので、適正価格なのかどうかわからないです。
定価はぎりぎり100万以下というきりのいい金額ですが、その2~3倍しても違和感のない圧倒的な存在感があります。

とはいえ同等スペックのクラビノーバやアリウスなら、TORCHの半額以下で買えるというのも事実…
本物のアコースティックピアノと同様の木製鍵盤を搭載した上位のアバングランドシリーズも、N1XNU1XAなら予算100万以下で手に入ります。

もう数十万追加すれば、グランドピアノの最安GB1Kや、アップライトピアノのミドルグレードYU33も視野に入るレベルです。
ピアノを演奏のための道具と考えれば、外見より中身に投資したほうが有意義かもしれません。

初心者がおいそれと手を出せる価格でもないですが、素材の特殊性と限定品の希少さもあいまって、有無を言わさぬ魅力があるのも事実といえます。

保証期間は1年

冷静に考えればTORCHはかなり趣味性の高いアイテムです。

木の粉を練って固めた鍵盤というのもまだ実験段階で、10年、20年…と長く使える耐久性が実証されているわけではありません。

保証期間はヤマハの他製品と同じく、購入から1年間です。
内部は精密機器で、鍵盤や操作ボタンといった可動部もあるので仕方ないですが、高価な木製家具としては保証が薄く感じます。
(たとえば飛騨高山の大手家具メーカーは10年保証)

経年変化が楽しみな素材とはいいつつも故障がこわく、観賞用のオブジェとして邸宅に飾っておくほうが無難な気もします。

会員登録が必要

応募条件としてはヤマハミュージックメンバーズの会員登録が必須で、対象者は日本国内在住、納入先も国内のみとなっています。
商品価格とは別に、運送費もかかります。

いちおう転売目的の購入は禁止されていますが、使い込まれた中古品でも将来プレミアム価格で取引されそうな気がします。
ただ数も少ない特殊な商品なので相場もわからず、買取業者に適正価格で引き取ってもらえるかは不明です。

これだけ語りどころのあるレア商品なので、できれば長年愛用してもらえるヤマハファンの手元に届いてほしいと思います。

店頭展示もあり

ひとまず抽選に申し込む前に、鍵盤に触ったりして全体の質感を確かめてみたいです。
TORCHはレア商品ながら、ヤマハ店舗と蔦屋書店を含めた以下の6店舗に展示されているようです。

  • ヤマハ銀座店
  • Yamaha Sound Crossing Shibuya
  • ヤマハミュージック 横浜みなとみらい
  • ヤマハミュージック 名古屋店
  • ヤマハミュージック 大阪なんば店
  • 代官山 蔦屋書店

このうち代官山のツタヤのみ3月1日からの公開なのでご注意ください。

名古屋店では2/5~3/24に「楽器の木」展が行われていて、先代のサステナブルキーボードも試奏できるようです。

参考 「楽器の木」展ヤマハミュージック 名古屋店

銀座店の展示も好評だったようで、3/30まで会期延長されています。
両店舗でTORCHとサステナブルキーボードの弾き比べができたら、おもしろそうです。

首都圏・名古屋・大阪の大都市でしか見られないのが残念ですが、もし近くに出張できるタイミングがあったら、実機を体験してみたいと思います。

続編に期待

趣のあるインテリアピアノは、無機質な型番ではなく愛称(ペットネーム)があればいいと考えていました。

ローランドのKIYOLA(きよら)が好例でしたが、ヤマハの新商品もTORCH(トーチ)という印象的なブランド名がつけられています。
「松明、灯(ともしび)」といった意味あいのとおり、なにか今後の鍵盤楽器が向かっていく方向性のようなものを感じられます。

型番はT01(ティーゼロワン)と、今後の続編も期待できそうなナンバリングになっています。
T02、T03…と、グラナディラ以外の樹種やデザインを変えて、新商品も出してくれるとおもしろいです。
マルニ木工のジャスパー・モリソン設計T&O(T1チェア、T2バースツール…)のように、シリーズ化できそうな可能性を感じます。

ウッディーな外観は電子ピアノ以外のキーボード製品、特にオルガンとの相性がよさそうです。
ステージキーボードのYCシリーズや、エレクトーンにもグラナディラの黒鍵盤バージョンが出たら、爆売れするのではないでしょうか。

もともと木製のグランドタッチ鍵盤でなければ、グラナディラ材への換装は難しいかもしれませんが…
ドローバーが売りのシンセなら、パネルがMDFのオイル仕上げになるだけでもレトロなハモンドオルガンみたいに見えて、雰囲気がぐっと良くなる予感がします。

まとめ

YAMAHAの新製品、TORCH(トーチ)の特徴について調べてみました。

これまでは外観や木の素材感にこだわったインテリアピアノといえば、チッペンデール様式の猫足仕様が主流でした。
ヤマハもアップライトピアノのbシリーズや、サイレントピアノのYFシリーズなどで、クラシカルな外観の別バージョンを展開しています。

ピアノを弾く犬 ローランドのKIYOLAとインテリアピアノ

KIYOLAのライバル

そんななか2015年に発売されたローランド&カリモクのKIYOLAは、直線的なモダンデザインでオークやウォールナットの無垢材を多用した、革新的な電子ピアノでした。
北欧インテリアの流行など、家具業界のトレンドをおさえた興味深い製品といえます。

今回ヤマハが打ち出したTORCHという新製品は、KIYOLAを意識しつつも素材や製法に工夫を加えたライバル機種といえそうです。
しかしTORCHは価格が2倍以上する少量生産のプロトタイプで、楽器というより工芸品に近い印象です。

TORCHが話題になったら、ぜひ廉価版の量産シリーズも展開してほしいです。
さすがにグラナディラは高そうなので、圧縮した国産杉材や間伐材を有効活用すればコストダウンを図れるうえ、環境への配慮をさらにアピールできると思います。

高山ウッドワークスの椅子のように、「白鍵=オーク、黒鍵=ウォールナット」の2トーンにしたら、おしゃれなピアノに仕上がりそうですね。
さらに自分で樹種を選んで鍵盤をカスタムできたら、めちゃくちゃうれしいです

歴史に残る名機

TORCHは電子ピアノの名機として、すでに各種デザイン賞やMOMA収蔵品の候補にも挙がっているのではないでしょうか。

見た目だけでなく、端材のリサイクルという観点からも社会的意義の大きい製品です。
KIYOLAと同じく、審査に応募していればグッドデザイン賞&ウッドデザイン賞のダブル受賞は固いと思います。

  • 果たして4月までに100万円の購入資金を用意できるか…
  • 相当な高倍率が予想される抽選に当たることができるか…

ハードルは高いですが、もし幸運にも手に入れることができたら、孫の代まで長年使い続けてエイジングを味わってみたいと思います。
抽選販売の新品以外に展示中古品でもかまわないので、モニターキャンペーンなどで実際に触れられる機会があれば、ぜひ検討してみたいです。

ボフオ
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ブヒオ
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2月末に暴落したブヒー!

森の中でピアノを弾く犬
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ローランドのKIYOLAとインテリアピアノhttps://bofuo.net/kiyola/Tue, 18 Feb 2025 12:00:21 +0000https://bofuo.net/?p=1940

電子ピアノの買い替えについて検討していると、「インテリアピアノ」というジャンルがあることを知りました。おもにヤマハとカワイが使っている用語ですが、ローランドやカシオにもデザイン性を意識した「家具として映える」製品が存在し ... ]]>

電子ピアノの買い替えについて検討していると、「インテリアピアノ」というジャンルがあることを知りました。
おもにヤマハとカワイが使っている用語ですが、ローランドやカシオにもデザイン性を意識した「家具として映える」製品が存在します。

据置固定型で20万以上、高いものでは100万を超えるので予算オーバーです。
しかし経済的に余裕ができて、大型ピアノも置ける広い家に住めたら、見た目重視でピアノを選んでみてもいいかと思います。

モダンデザインの傑作、ローランドのKIYOLAとカシオのPriviaを比べつつ、ヤマハ・カワイの猫足(カブリオールレッグ)ピアノについても調べてみました。

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家具としてのピアノ

大型の据置型電子ピアノはリビングで大きな面積を占め、「家具」としての側面もあります。
ピアノという文化においては機能よりも外観やデザイン、ステータス性を重視して選ぶ顧客層もいると思われます。

木製へのこだわり

外見がプラスチックの電子ピアノは家電のようですが、木材だとほかの家具ともなじみやすく統一感を出せます。
スピーカーやミニコンポのように、ピアノも木製にこだわりたいというニーズはありそうです。

しかし天然の木材がいいのはあくまで外観上の話で、それで「スピーカーの響きがよくなる」とか性能上のメリットはなさそうです。
趣味の道具として高級車の内装と同じく、パネルにレザーや銘木を貼るような感じなのでしょう。

ピアノが黒い理由

本物のピアノらしいツヤツヤの黒塗りも高級感があるとはいえ、どんな家にも似合うかというと微妙です。
「ペンキ塗りより白木を好む」という日本人の感性を考えると、天然木でソープやオイル仕上げのピアノがあってもよさそうな気がします。

カワイの特集ページによると、日本で黒塗りのピアノが普及した背景には、湿気に強い漆塗りの伝統や、「黒は高級」というイメージがあったようです。
近年は木目調のピアノが増え、さらに明るいライトオーク系の需要が増えているという傾向もうなずけます。

参考 インテリアピアノの魅力に迫る!KAWAI

1952年に発表されたアルネ・ヤコブセンのアントチェアも、最初は座面のひび割れを隠すために黒く塗られていたそうです。
歴史的に有名なT型フォードも、耐久性と経済性の観点から黒色塗料が採用されたという経緯があります。

「高級感」という意味では、ロイヤルブルーやパープルも一般的には高貴な色と認識されています。
しかし量産品という製造上の都合もあって、最大公約数的にブラックが選ばれたのかもしれません。

棚にもなるピアノ

懸垂台が物干しとしても便利なように、天板がフラットなタイプのピアノは棚としても活用できます。

いずれ弾かなくなったとしても、高価な物置として役に立つ(つぶしが効く)のは、ピアノの利点のひとつです。
そう考えると、将来の棚としてもインテリアに映える木製ピアノに投資するのは、悪くない選択だと思います。

コルグC1 Airの商品説明には、「キー・カバーを閉じるとフラットになり、テーブルとしての利用も可能」と書かれています。

ローランドのDP603の外観も、「鍵盤蓋を閉めるとすっきりフラットになるキャビネットは、2003年の発売以来変わらない人気のデザインです」と説明されています。
コルグほどあからさまではないですが、暗に棚としてのサブ用途をほのめかしているようです。

飲み物をこぼしたりして内部に液体が入るとやばそうですが、簡易的なテーブル・棚としての活用法は、暗黙のうちに認められていると思われます。
上面フラットになるタイプの据置型ピアノも、家具としての実用性を意識した一種のインテリアピアノと呼べるかもしれません。

KIYOLAか、それ以外か

現行機種の木製ピアノとして、圧倒的な存在感を誇るのがローランドのKIYOLA(型番KF-10)です。
2015年のグッドデザイン賞受賞作品で、ついでに「ウッドデザイン賞」というジョークのような木製品関連の賞もとっています。

カリモク家具とコラボ

KIYOLAはローランドが国内家具メーカーのカリモクとコラボした、Made in Japanの商品です。
愛知県のカリモク工場で部材をつくり、静岡県のローランド工場で組み立てているらしく、隣県で協業しやすいメリットもあったのでしょう。

静岡なら飛騨高山や長野の松本といった家具産地も近いですが、東海道新幹線や東名高速でつながった愛知県のほうがアクセスはよさそうです。
カリモク家具の本社も名古屋より南の知多郡にあり、愛知のなかでも浜松寄りといえます。

ちなみに国内楽器メーカー、ヤマハ、カワイ、ローランド(さらに鈴木楽器)の共通点は、拠点が静岡県浜松市にあるというところです。

Wikipediaによるとヤマハの出身者がカワイを設立して、さらに元カワイ社員が鈴木楽器を始めたそうです。
のれん分けというか人脈も共通するところがあって、3社の製品やサービスが似ているのかもしれません。

サングラスをかけた犬 YAMAHA、KAWAI、ROLANDの安いピアノ

以前、新幹線の浜松駅で降りたら、駅構内に楽器の展示ブースがありました。
JR浜松駅にも各メーカーのグランドピアノが置いてあり、地域の特産品としてPRに力を入れているようです。

経年変化する無垢材

ウェブに公開されているKIYOLAの製造動画を見ると、脚や側板はNCマシンで仕口が加工され、本物の家具のように組み立てられています。

さすがに値段は高額で40万円くらいしますが、ここまで素材と加工法にこだわったピアノは他になく、唯一無二の存在といえます。

脚は板材でなく丸棒の4本脚になっていて、アームトップもソファの肘掛けをイメージした曲面仕上げになっています。
ピアノ側面の上端(腕木)が、意味もなく手で触りたくなるような丸みを帯びた形状になっていて、椅子の肘掛けのようにエージングを楽しめそうです。

ローランドKIYOLAカタログ

筐体が無垢材なので、天然木の経年変化も楽しめるのがKIYOLAの特徴です。
時間が経つにつれて化粧板がめくれてくることもなく、傷や汚れも味になるので親しみを持てそうです。

ローランドのKIYOLAカタログ

ハモンドオルガンの側板

かつてハモンドオルガンのレトロな外観に魅力を感じて、鈴木楽器のXK-2を買ったことがあります。
ただ木材のように見える部分は安価な化粧材だったので、時間がたつとペロッとはがれてきて安っぽい印象を受けました。

現行機種の2段鍵盤SKX PROには、本体に後づけできるウォールナット製のサイドパネル(SBW-SKXPRO)がオプション販売されています。
定価4万円以上するので、さすがに突板ではなく無垢材のようです。

ローランドのKIYOLAは外観だけでなく中身もリアルな木にこだわったという、稀有な商品です。
価格は跳ね上がるかもしれませんが、オルガンメーカーも側板だけでなく全体に天然木を取り入れたら、本物志向のユーザーにうけると思います。

ウォールナットも同価格

KIYOLAは明るいオーク色が目立ちますが、木目を残したホワイト塗装と、ウォールナットのバージョンもあります。

見た目が焦げ茶色のピアノもよくあるとはいえ、ウォールナットの無垢材が使われた製品はめずらしいと思います。
家具の分野では高級材とされますが、KIYOLAのウォールナットはオークと同価格なので、お得感があります。

オークは使い込むにつれて色が濃くなり、肌が触れる部分は徐々に黒ずんで、見方によってはみすぼらしくなっていきます。
ホワイト色もかなり汚れが目立ちそうです。

ウォールナットは逆に色が明るくなっていくので、クリーンなイメージを保ちたい人にはこちらの方が向いているかもしれません。
もともと色が濃いので、皮脂が付着したり、脚に掃除機をぶつけても、変色や傷が目立ちにくいはずです。

いずれのカラーもおそらくウレタン塗装なので、見た目の変化はそれほど激しくないと思います。
ウレタンといっても最近主流のマット加工に見えるので、いかにもニス塗りのツヤツヤした人工的な質感ではなさそうです。

せっかく無垢材を使うなら、オイル塗装やワックス、ソープ仕上げが選べたらうれしかったです。
ただし中身は精密機器なので、べとべとしたオイルや石鹼水で丸洗いするのは、現実的でないともいえます。

限定だったシアーブラック

過去のニュースを見ると、2017年に数量限定でKIYOLAのモカブラウン色、2018年には新色のシアーブラックが販売されたようです。
シアー(sheer)という英単語は「透明な、薄い」という意味があり、木目のテクスチャーを残したクリア塗装と考えられます。

参考 カリモク家具と共同開発した国産ピアノ。天然木の木目を活かした「シアーブラック」を限定販売Roland

木部だけでなく、操作部のパネルやペダルのケース、椅子の生地までブラックに統一された精悍なモデルです。
希少な無垢材でありながら、あえて木の存在感を減らしたブラックというのも渋く感じます。

黒色は安価な樹脂製キーボードの定番なので、一見安物の据置型ピアノと間違われるかもしれません。
しかし木目が透けて見える半光沢の塗装になっていて、手で触ればプリントされた化粧繊維板とは違うことがわかります。

KIYOLA特有の4本脚も、黒色だとさらにスリムに際立って見えます。
現行モデルのシアーホワイトよりは、シア―ブラックのほうを定番色に加えてほしかったと個人的には思います。

元ホスト界の帝王、ローランド氏が住むROLAND HOUSEはモノトーン基調のクールなインテリアなので、KIYOLAのシアーブラック色ならばっちり似合いそうです。

ROLANDの本

名著『俺か、俺以外か。』の続編『君か、君以外か。』のなかに、ROLAND HOUSEの写真が掲載されています。

北欧家具と似合う

KIYOLAは足が板でなく、独立した円柱状になっているのもポイントです。
このおかげで見た目がかなり家具っぽくなっているため、北欧家具を中心にしたインテリアにも似合うと思います。

デンマークやフィンランドの家具は空間を広く見せるため、ソファやサイドボードであっても4本脚で下が抜けているものが多いです。
このほうがホコリもたまらず、掃除も楽だと思います。

さらに見た目をすっきりさせるためか、KIYOLAの3本ペダルは独立したケーブル接続になっています。
ここは賛否両論ありそうですが、私はペダルをめったに使わないので丸ごと外せてありがたいです。

スタンドにペダルを固定すると、デザインの自由度は大幅に制限されます。
グランドピアノのように上から支柱を下してくるか、床面近くに横材を設置、もしくは背面全体をパネルで覆うかたちになると思います。

あくまで見た目の家具らしさと空間の抜け感を優先して、KIYOLAは独立式のペダルユニットを採用したように思われます。

機能は大幅に省略

カリモクが他社と手がけた商品といえば、イトーキのvertebra03 WOODを思い出します。
オフィスチェアの背と座に国産のクリ材を使用したもので、通常のファブリック・クッション版より価格が倍くらいに設定されています。

KIYOLAもローランドの同等スペック製品よりはるかに高級で、上位シリーズのLX-5やLX-6より高値で販売されています。
外観がすばらしいとはいえ、鍵盤も音源もワンランク下で、スピーカーのアコースティック・プロジェクション機能とヘッドホン・3Dアンビエンスも省略されています。

外観重視のためか、有機ELやLCDのディスプレイも備えていません。
ボタン類は鍵盤の左側、狭いパネルに集約されていて、スピーカーも目立たないよう本体底面に隠されています。

音色は6つだけ

「操作ボタンが少ない」というデザイン上の制約もあってか、KIYOLAの音色はわずか6つしかありません。
ほかの据置型LXとHPシリーズは300音色以上、ポータブルの最安FP-10でも15は音色があるので、思いきった割り切りです。

GO:PIANO88の4音色よりはかろうじて多いですが、40万円の高級ピアノとしては大胆な仕様といえます。
このメリハリというか引き算のコンセプトがむしろローランドらしく、おかげで上面パネルのガジェット感を減らせています。

こうした細かい工夫の積み重ねも、グッドデザイン賞の受賞につながった一因かと思います。

ピアノ用の椅子

ピアノはたいてい座って演奏するため、椅子も不可欠なパーツの一部といえます。

KIYOLAは椅子もカリモクによって、専用のものがセットで販売されています。
カシオも椅子だけですが、家具メーカーとコラボした専用品をPrivia最上位モデルのために用意しています。

KIYOLA専用椅子

KIYOLAの椅子はピアノ本体と同じく4本脚で、素材も同じなので統一感があります。

見た目はすっきりしたスツールのようですが、ピアノ用なのに「高さ調整ができない」という強気の設計になっています。
シートハイは52cmで、普通の国内向けダイニングチェアに比べると5cmくらい座面が高いです。

後部が盛り上がったクッション形状は、骨盤を立てるサポート機能をそなえています。
クッション材も高密度のウレタンが使われているらしく、ネット通販の安物とはぜんぜん品質が違いそうです。

椅子の張地については記載されていませんが、カリモクが得意とする高品質の合皮でないかと思われます。

これだけのスペックでカリモク製なら、椅子だけでも4万以上しておかしくない代物です。
背もたれこそありませんが、デスクでの作業やダイニングテーブルでの食事にも兼用できそうな、しっかしした構造のスツールに見えます。

カシオのピアノ椅子

カシオの据置型ピアノはオーソドックスなデザインですが、広告用の写真には高級家具メーカーの製品を採用してイメージアップを図っているようです。
カタログを見るとACTUS、ASPLUND、MASTERWALなど家具ショップ/メーカーの撮影協力クレジットが見られます。

そしてカシオのポータブル最上位PX-S7000向けに、付属のスタンドと色味や形状を合わせた専用スツールが販売されています。
ローランド×カリモクと同じく、福岡県の関家具(CRASH GATEブランド)と共同開発されたピアノ椅子です。

こちらのテレビCM動画でも、さりげなく専用椅子が使われています。

カシオの「ピアノスツール CC-7」は、ローランドのKIYOLA付属チェアと異なり、昇降機能も付いています。
座面を回転させるタイプなので昇降に時間がかかりそうですが、可動域は490~565mmと広めに75mmは確保されています。

ピアノ専用のチェアとして、シートが円形なのはめずらしいと思います。

演奏するポジションに合わせて体を横に移動するのは不便そうですが、省スペースで使わないときも場所をとりません。
また座面が回転するので、座ったまま体の向きを変えられるメリットがあります。

定価は税込49,500円とそこそこするものの、こちらもつくりがしっかりしていてピアノ演奏以外の用途に兼用できそうです。

カシオのスツールはPrivia専用という外観ですが、単体で販売されているため、ほかの電子ピアノにあわせることもできます。

LUMEと似ている

カシオのCC-7と同じ構造の円形昇降チェアとして、関家具と同じ福岡県大川市にある、広松木工のLUMEスツールも活用できそうです。

昇降範囲は460~600mmとカシオ製チェアより大幅に広く、座面を外せばサイドテーブルとしても活用できるアイデア商品です。

オイル塗装かつネジ部分も木製なので、木の質感にこだわるかたに向いています。
タイ製ですが定価は3万円台と安く、ビーチ以外にオーク、チェリー、ウォールナットの素材も選べます。

プリヴィアとの統一感を気にせず他機種で利用するなら、LUMEスツールをピアノ椅子として購入してもいいかもしれません。

猫足のインテリアピアノ

ローランドとカシオが家具メーカーとのコラボに取り組んでいますが、「インテリアピアノ」というジャンルはヤマハとカワイの独壇場です。

両社ともアップライトピアノのバリエーションとして、定番・黒塗り以外に木目調で装飾の多いレトロなピアノを販売しています。
カワイの場合は、真っ白なピアノもまとめてインテリアピアノと称している節もあります。

両社とも天然木の化粧材を貼ってあったり、チッペンデール様式の猫足だったりして、古典的なデザインが主流です。
ピアノで弾く曲はたいていクラシックだと思うので、楽器の見た目も古めかしいほうが似合うのかもしれません。

ヤマハは縮小傾向

ヤマハはアップライトの小型bシリーズや、サイレントピアノYFシリーズの色違いとして木目調、猫足バージョンを用意しています。

今は製造中止ですが、直線脚でモールディングの装飾がほどこされたネオクラシック様式のM2SDWというピアノもありました。
こちらは譜面台も立体的に肉抜き加工されていて、芸が細かいです。

後述のカワイに比べるとヤマハのインテリアピアノは種類が少なく、2016年と最近の発売商品もすぐ廃番になってしまうようで残念です。
やはり消費者の嗜好が変化して、装飾過剰で高価なピアノは売れにくくなってきたのかもしれません。

本記事の執筆中、ヤマハからTORCH(トーチ)という斬新な木製ピアノが発表されました。
高額かつ限定生産のレアモデルですが、素材や外観へのこだわりから次世代のインテリアピアノとみなしてもよさそうです。

TORCHの仕様や見どころについて、こちらの記事にまとめてみました。

森の中でピアノを弾く犬 ヤマハの木製電子ピアノTORCHが気になる

カワイは種類豊富

カワイのインテリアピアノもアップライト型が中心で、直営店・特約店モデルも含めるとヤマハより種類が豊富です。
カワイはポータブルタイプのESシリーズも他社より高めの価格設定で、ブランドのイメージとしても富裕層をターゲットにしているように感じられます。

化粧板ではあるものの、バーチ材の半艶塗装で重厚感のあるKi-650やC-480F、C-880Fはピアノ本体も椅子も猫足仕様です。
このうちKi-650とC-880Fは譜面台まで彫刻がほどこされていて、見た目のクラシック感は最強レベルです。

マット仕上げも選べる

マホガニーかウォールナット艶出し/艶消し塗装仕上げの3種から選べるLD-200も同じ路線で、装飾はやや控えめになっています。

高価な輸入木材は木目を際立たせるためツヤあり塗装が多いですが、オンラインショップ限定でマット仕上げを選べるというのはマニアックなサービスです。

カワイのスペック表では構造体について記載はなく、「外装仕上げ」としか書かれていません。
もしかするとオークやアッシュをベースに、色味だけで高級材を再現したものかもしれません。

塗装のツヤが多いと、それだけでどんな樹種でも高級に見えたりします。
逆に時代遅れて嫌味に見える懸念もあるため、LD-200は家具のトレンドに合わせてマット塗装を用意したのでしょう。

サペリ材のピアノ

標準モデルのKシリーズにもマホガニーに加えて、柾目の模様を強調した「サペリ調マホガニー」という高級バリエーションがあります。
樹種としてはサペリ自体がマホガニーの代用材のはずなので、どういう意味のネーミングなのかは謎です。

マホガニーもサペリも今は希少な木材なので、さすがに無垢ではなく突板だと思われます。
もし据置型ピアノのサイズで杢目のすぐれた銘木を採用したら、材料費だけで100万以上アップしそうです。

以前、飛騨高山の高級家具メーカー、キタニのショールームでヤコブ・ケア設計のプリンセスデスクを拝見したことがあります。
カワイのK-500と同じく、サペリ材の完璧な柾目が天板にあしらわれていて、定価200万のまさに王室用という迫力でした。

そこまで高価なものではないですが、handwoodさんの作品で「サペリ変わり杢」のシャーペンを1本所有しています。
緻密な木目はまさにマホガニーと似た高級材の趣をたたえています。

サペリ材のシャーペン
サペリ材のシャーペン

Kシリーズでは上記に加えて、直営店限定のアンバーバーチ色も選べます。
見た目は直線的で装飾も少ない機種のため、ほかの家具とも合わせやすそうです。

松本民芸家具に期待

ヤマハ・カワイとも据置固定型のアップライトピアノは100万近くするため、圧倒的に予算オーバーです。
しかし豪邸に住む富裕層であれば、ステータスとして所有したくなるような代物かもしれません。

電子ピアノの基本性能が頭打ちとなっても、素材やデザインで差別化を図っていくというのは興味深い展開です。
ローランドやカシオのように、楽器メーカーと家具メーカーの協業もどんどん進めてほしいと思います。

ローランドがカリモクなら、ヤマハとカワイは松本民芸家具あたりと相性がよさそうな気がします。
伝統的なウィンザーチェアのディティールは、ピアノの外装にも似合うと思います。

松本民芸の定番、ミズメザクラのラッカー塗装だけでなく、最高級製品にだけ適用されるケヤキ拭き漆のピアノがあったらうれしいです。
予算100万どころか1000万から1億を越えてもおかしくない、究極のインテリアピアノとなることでしょう。

蒔絵のピアノ

漆塗りのピアノといえば、真和楽器がヤマハのピアノに蒔絵をほどこした特別なモデルを販売しています。

もはや工芸の域に達した作品ですが、1,000万円以上払えば京都市のふるさと納税で手に入るようです。
模様の好みはともかく、これだけ大型の漆塗り製品と考えれば、思ったより安い気もします。

蒔絵のピアノは自宅用というよりも、ホテルやレストラン、結婚式場の演出アイテムという位置づけなのかもしれません。
話題性やPR効果をそなえた、とんでもないクオリティーのピアノなら、法人向け・業務用のニーズも見込めそうです。

ネーミングの工夫がほしい

ヤマハもカワイも、ピアノの商品名がアルファベットと数字の組み合わせだけなのは、もったいない気がします。
覚えにくいうえに味気なく、機能より情緒性を重視したインテリアピアノの魅力を損なっているようで残念です。

せっかく見た目にこだわるのなら、ローランドのKIYOLAやコルグのPoetyのように、ブランドイメージを意識したペットネームをつけてはどうでしょうか?

たとえばヤマハとカワイの古典的デザインのピアノには、マルニ木工が1960年代に販売していた家具シリーズのヒット商品、「エジンバラ」や「ベルサイユ」といった名前が似つかわしい気がします。
ほかにも「エドワード」「アンドリュー」「ケントコート」「ブリタニア」…など、西欧の様式美をイメージさせるネーミングは、家具メーカーの製品群がネタの宝庫です。

まとめ

電子ピアノの購入検討にあたって、外観のデザイン性を重視した「インテリアピアノ」というジャンルを調べてみました。

国内のピアノメーカー各社は、なにかしら見た目にこだわったスタンド・椅子付きのピアノを販売しています。
コルグも形状こそスマートですが、C1 AirやPoetryなど木目調のパネルを選べる機種をそろえています。

ピアノに寝そべる犬 KORG、CASIOほか10万以下の電子ピアノ

装飾的なアンティーク調だけではなく、北欧家具のようにシンプルな木製ピアノも増えてきて、家具業界のトレンドを追従しているように思われます。

古典派とモダニズム

これまでインテリアを意識したピアノといえば、ヤマハとカワイの古典的な猫足製品が定番でした。
近年はローランドやカシオから、モダンなデザインのピアノも出てきています。

特にカリモクとコラボしたローランドのKIYOLAは、直線的な外観かつナチュラルな木の質感で、従来のインテリアピアノより現代的なインテリアに合わせやすいです。
消費者としては、選択肢が増えてうれしい傾向に思われます。

中身より見た目重視でピアノを選ぶのは邪道かもしれません。
パーツが劣化、スペックも陳腐化しやすい電化製品としては、車と同様、内装・筐体に貴重な木材を使うのはもったいないとも考えられます。

ただ素人の趣味としては、所有欲を満たしたり練習のモチベーションを上げたりするために、機材の外観に投資するのも悪くないと思います。
たとえ使わなくなったとしても、物置棚やオブジェとして目を楽しませてくれます。

ピアノの資産価値

KIYOLAは無垢材のケースに対して、電子ピアノ本体の耐用年数は短いと思われます。
この点はスケルトン・インフィルのように、鍵盤や内部メカだけ換装できるサービスがあれば理想的です。

親から子、孫の代まで、三代にわたって「100年使える電子ピアノ」というコンセプトの商品があってもいいと思います。
長年使いこんでアンティーク家具のように味が出た、無垢材のKIYOLAを見てみたいです。

ヤマハの新商品TORCHは、まさにこうした長期利用とエイジングのニーズを満たすべく、木部をオイルやワックスで仕上げているようです。
グラナディラ製の鍵盤も含めた木素材へのこだわりは、KIYOLA以上といえます。

本物志向のインテリアピアノも、いずれは中古市場でプレミア価格がついて、高く取引されるかもしれません。
「趣味と実益を兼ねた投資」という観点から、高級車と同様に転売できて、資産価値のあるハイエンドなピアノを所有してみるのも一興です。

ピアノを弾く犬

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YAMAHA、KAWAI、ROLANDの安いピアノhttps://bofuo.net/yamaha-kawai-roland/Sun, 16 Feb 2025 01:00:01 +0000https://bofuo.net/?p=1951

コルグLianoの次に買ってみたい、電子ピアノを調べてみました。 ヤマハやローランドといった国内大手の楽器メーカーには、数十万もする高級モデルが多くラインナップされています。 上を目指せばきりがなく、鍵盤や音源などの繊細 ... ]]>

コルグLianoの次に買ってみたい、電子ピアノを調べてみました。

ヤマハやローランドといった国内大手の楽器メーカーには、数十万もする高級モデルが多くラインナップされています。
上を目指せばきりがなく、鍵盤や音源などの繊細な違いを体感できるか自信もありません。

ひとまず身の丈にあったレベルとして、予算5~10万円くらいのミドルレンジを中心に検討してみました。
Lianoを買うときに迷った廉価モデルもご紹介します。

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楽器界の王者ヤマハ

ヤマハはコンサート用のグランドピアノからコンパクトなアップライトピアノまで、アコースティックピアノの製品ラインナップが豊富です。

またデジタル技術を組み合わせたサイレントピアノやトランスアコースティックピアノなど、ハイブリッドな構造のピアノも手がけています。
さらにディスクラビアという自動演奏ができるタイプもあります。

本物志向の高級製品から、入門用のキーボードまで幅広く取り揃えているのがヤマハの特徴です。
「10万以下のピアノタッチ鍵盤」としてはPシリーズが候補になります。

持ち運べるPシリーズ

ヤマハのClavinova、ARIUSは据置型の電子ピアノで、ポータブル型はPシリーズもしくはステージピアノが該当します。

シリーズ名の「P」はPortableの略かと思います。
型番が上がるほど高機能になるラインナップで、ローランドのFPシリーズやカシオのPriviaと同ランクの製品群です。

PシリーズはすべてGHC鍵盤以上のハンマーアクションを搭載しています。
鍵盤・音源スペックは価格相応で、P-525までいくと「グランドタッチ-エス鍵盤」に加えヤマハCFX/ベーゼンドルファーインペリアルサンプリングの音源が付く豪華版となります。

最上級のP-525でも10万円台で手に入るのは、案外リーズナブルといえそうです。
ヤマハの据置型でいえば、アリウスを超えてクラビノーバのミドルレンジに相当します。

最安のP-145および鍵盤上部が光るナビゲーション機能の付いたP-S500は、Bluetoothが付いていないのでご注意ください。
それ以上の機種はすべて搭載しています。

やはり鍵盤・音源にこだわってヤマハのPシリーズを選ぶなら、中間クラスのP-225以上で検討したいところです。
バランスのよいP-225は5万円台から購入できるので、7万円以上するローランドFP-30Xよりお買い得といえます。

バイノーラル録音

ヤマハの電子ピアノにもヘッドフォン使用時の臨場感を向上させる「ステレオフォニックオプティマイザー」という機能がそなわっています。
カシオの「ヘッドホンモード」や、ローランドの「ヘッドホン・3D・アンビエンス」に相当する音場表現技術のようです。

カシオの場合はPriviaのPX-S6000以上とCelviano、ローランドはFP-60X以上の高級モデルにしか搭載されていない機能です。
ヤマハの場合はP-145も含めたPシリーズ、アリウス全機種にデフォルトでそなわっていて良心的に感じます。

P-525になるとさらに上位の「CFXバイノーラルサンプリング」が搭載されています。
CFXグランド音源のみの対応ですが、演奏者の耳の位置でマイク収録しているので臨場感は高そうです。

「ステレオフォニックオプティマイザー」のほうは「バイノーラルサンプリングに近い…」と説明されているので、疑似的な再現技術と思われます。
どちらもカタログ上は「おまけ機能」といった扱いですが、ヘッドフォンで練習する時間が長いかたには、有利かもしれません。

ポータトーンの再評価

カシオトーンと双璧を成す低価格キーボードのポータトーン(PSRシリーズ)は、30年くらい前に所有していました。
マイナーチェンジを重ねながら今でも販売され続けているのは、最安キーボードの手堅い需要があるからでしょう。

あらためて調べると、ポータトーンも1~2万円の格安品とはいえ、各種機能が充実しています。

最安のPSR-E283でもAUX IN端子が付いていたりします。
音色数は410以上あり録音機能もついていて、乾電池での駆動も可能です。

ただしカシオCT-S1-76のように鍵盤数が多いバージョンはなく、PSRはすべて61鍵のみです(ミニ鍵盤のPSSシリーズは37鍵)。
後述のピアジェーロであれば、76鍵のNP-35が存在します。

ポータトーンとカシオトーンに共通する地味なデメリットは、「低価格モデルのパネル表記が日本語という点」です。
PSR-473以上は英語表記の上に和文シートがつくので外せますが、PSR-E283とE383は本体にがっつり日本語がプリントしてあります。

各ボタンの説明が日本語なのは、親切でわかりやすいとはいえ「見た目的にダサい」と考える人も多いでしょう。
私もそのクチです。

パソコンのキーボードに使わない日本語が書いてあるのは嫌なので、わざわざFILCOの「かな印字なし」モデルを選んでいました。
最近は英語配列に変えて、アルファベットがキー前面に印字された、さらにシンプルなMajestouchのNINJAモデルを使っています。

FILCO

見た目がいいPiaggero

ピアジェーロは見た目が電子ピアノですが、中身はポータトーンの機能限定版、鍵盤もバネ式という安価なシリーズです。
ただし操作パネルがシンプルで、説明も英語表記のおかげか、あまり安っぽさを感じさせないデザインといえます。

61鍵のNP-15と、76鍵のNP-35の2種類あり、ローランドGO:PIANOのような88鍵モデルはありません。
ピアジェーロはあくまでお試し・入門用という感じで、88鍵が欲しいなら上位のPシリーズをどうぞ、という住み分けのようです。

NP-35のほうのみ「グレードソフトタッチ鍵盤」という機能が搭載されています。
これは「低音部ほど鍵盤が重い」というだけの意味で、ハンマーアクションではありません。

ピアジェーロも昔からあるロングセラー商品で、ちょうどLianoを購入した2023年に新バージョンが発表されました。
店頭で試してみたところ、「グレードソフトタッチ」のせいか、Lianoに比べると鍵盤は重く感じました。

新型ではスピーカーの性能が強化され、音色も前モデルの10種類から15種類に増えています。
細かいところではLEDが3色になったり、外観のデザインも微調整されたようです。

  • とりあえずピアノを弾いてみたいけど、続くかわからない
  • ポータトーンのガジェット的な見た目は苦手、シンプルなピアノがいい
  • 複雑な機能や拡張性は必要ない、音色も少なめでOK

こういうかたにマッチするのがピアジェーロといえます。
76鍵ならカシオトーンにもありますが、価格の安さではNP-35が勝ります。

高価なハイブリッドピアノ

据置型で予算オーバーですが、ヤマハが出している特殊構造のピアノも調べて見ました。

「サイレントピアノ」というのはその名のとおり、ヘッドフォンを使った消音演奏が可能なピアノです。
既存のアップライトピアノに後付けできる消音ユニットという、アイデア商品も販売されています。

「トランスアコースティック」はさらに進んで、音量調整ができるアコースティックピアノです。
音源はデジタルながらスピーカーがなく、ピアノ本体の響板を振動させるという離れ業を実現しています。

「アバングランド」シリーズは鍵盤機構だけ生ピアノと同じで、ゴージャスなスピーカーがついた「ほぼ電子ピアノ」です。
構造的にシンプルなため上の2つより価格が安く、サイズもコンパクトになります。

いずれの機種もヘッドフォン接続を可能にしただけでなく、USB録音やBluetooth接続の便利機能も搭載されています。
音色もエレピやオルガンなどいろいろ選べて、「構造はアコースティックでも機能はデジタル」という、いいとこどりの製品といえます。

消音機能の必要性

田舎の一軒家といえども、夜間はピアノの音がはばかれるかもしれません。
消音・ヘッドフォン機能は時代のニーズと日本の住宅事情にあわせた、国内メーカーならではの工夫といえそうです。

ハイブリッドピアノは、あくまで本物の感触を追求するプロ向け、もしくは富裕層向け趣味のアイテムと考えられます。
200万を超えるSH3やTA3が買える余裕があり、さらに大型ピアノを置ける広い家に住んでいるなら、普通の生ピアノでよさそうな気もするのですが…

都市部のタワーマンションなど、豪邸だが集合住宅で音漏れが気になるとか、ニッチな需要に対応した製品群なのかもしれません。

ピアノに強いカワイ

河合楽器はピアノ専門というイメージなので、あまりなじみがありませんでした。
オルガンを弾かない人が、鈴木楽器に興味がないのと同じかと思います。

シンプルなESシリーズ

カワイの電子ピアノでポータブルなのはESシリーズ、ES60、ES120 Filo、ES920の3つだけです。
ほかにステージピアノやMIDIキーボードといったコンパクトモデルもあります。

ES60にはBluetoothやLINE INの外部入力端子がないかわりに、同時発音数は192と多めです。
機能がシンプルなわりには重さも11kgあり、「レスポンシブ・ハンマー・アクション・ベーシック(RHB)」という鍵盤の構造が本格的なのかもしれません。

パネルの操作部はボタンが3つとボリューム用のスライドしかなく、極めてミニマムな外観です。
ES60とES120で音色を選ぶには、ボタンを押しながら対応する鍵盤を押さえる必要があります。

カワイの電子ピアノや消音ピアノは演奏に集中するため、ボタンや液晶画面をなるべく目立たなくしているようです。
デジタルなガジェット感をなくそうという、本物のピアノメーカーらしいこだわりといえます。

鍵盤も音源も品質はよさそうですが、最安のES60でも6万円近くするのがネックです。
同等スペックの他社製品と比べても、カワイはやや割高に感じられます。

ESシリーズのES120だけ「フィーロ」という愛称がついていて、特設サイトも公開されています。
実売価格は8万円以上しますが、Bluetoothも搭載していて値段とスペックのバランスがよさそうです。

他社に比べて際立った特徴はないですが、ESシリーズはデザインのシンプルさに好感を持てます。
多少価格が高くても、「カワイの音や鍵盤タッチが好き」というコアなファン層がいて、別室・別荘向けのサブ用途で買うのでは…と想像しています。

ヘッドフォン関連機能

カワイの電子ピアノにもヘッドフォン向けのエフェクトが2つ提供されています。

「ヘッドホンタイプ」というのはオープン、セミオープン、クローズ、インナーイヤー、カナルといった形状に応じて、音質を調整してくれる機能です。
ESシリーズではES120以上に搭載されています。

「スペイシャル・ヘッドホン・サウンド」はノーマル以外にワイド、フォワードのモードがあり、左右の音の広がりか前方への定位を強調してくれるそうです。
こちらはES920と、据置型のCA/CNシリーズに搭載されています。

他社の同等機能に比べて、カワイのヘッドフォン技術は説明が具体的でわかりやすいです。
特にヘッドフォンの種類で最適化してくれる機能はユニークといえます。

高価な電子ピアノにインナーイヤーやカナル型ヘッドフォンを合わせる人がいるのかわかりませんが、軽いので耳に着けても疲れにくいのはメリットです。
大型のヘッドフォンより場所もとらないので、カワイの「ヘッドホンタイプ」で音質改善できるならありかもしれません。

消音・静音ユニットの違い

カワイは電子ピアノよりも、グランドピアノやアップライトピアノの製品が豊富にそろっています。
響板スピーカーや音源と組み合わせた消音ユニットを販売しているところは、ヤマハと似ています。

カワイの場合は「ピアノマスク」という、物理的なパーツの開閉で音量を制御する静音・減音装置も開発していたりもします。
ヘッドフォンは使えませんが、本物のピアノをなんとか一般家庭にも普及させようというアイデア商品に思われます。

カワイのチャーチオルガン

生ピアノのイメージが強いカワイですが、実は家庭向けのコンパクトなチャーチオルガンも販売しています。

カワイが扱っているのはオランダのヨハネス、アメリカのロジャースという海外メーカーの製品です。
高級モデルでは3段鍵盤のものもあり、JOHANNUS ONEというポータブルタイプまでそろっています。

デモ映像が教会の映像や讃美歌の伴奏シーンだったりするので、明らかに宗教行事での利用をイメージしているようです。
操作部もハモンドオルガンのドローバーではなく、パイプオルガンらしいボタンやドローノブタイプのストップが中心です。

クラシックのなかでもバッハが好きで、フーガやコラールばかり弾きたい人には向いているかもしれません。
あえてピアノでなくパイプオルガンを使いこなすおじさんというのも、ネモ船長のように渋くてかっこいいと思います。

ローランドか、それ以外か

グランドピアノやアップライトピアノは作っていないものの、3万円から200万円まで幅広い機能と価格帯の電子ピアノを手がけているのがローランドです。

ピアノだけでなくシンセやオルガンの鍵盤楽器もそろえ、DJ用の機材も販売しているローランドは、ヤマハに並ぶ巨大楽器メーカーといえます。

基本のFPシリーズ

ポータブルタイプのFPシリーズは4種類あり、鍵盤はすべてハンマーアクションになります。
FP-10、30X、60Xの鍵盤は「PHA-4スタンダード」という最低ランクで、価格20万円超のFP-90Xだけ「PHA-50」と2段階グレードアップします。

ローランドもスペックの細分化が激しく、鍵盤グレードは6種類、音源は7種類くらいあります。
自分はPHA-4の鍵盤でも十分だと感じましたが、本気でピアノを練習している人には物足りないのかもしれません。

価格に比例した6~7段階グレードという製品構成は、ロードバイクのコンポーネントと似ています。
デュラエースやスーパーコーラスの最上位グレードは性能差以上に価格が大幅アップするので、アマチュアならせいぜい中間レベルで十分と思います。

ローランドのFPシリーズはポータブルタイプながら、板型の専用のスタンドとペダルユニットが別売りされています。
FP-10からFP-90Xまで、スタンドも各モデル専用に4種類販売されているのは芸が細かいです。

スタンドに乗せれば見た目は据置型のようになって、汎用のX型スタンドなどより格段に安定しそうです。
ペダルも後付け・別売りなので、めったに使わないとか掃除の邪魔になるという人にはうれしい設計です。

最安はBluetoothなし

FPシリーズは最安のFP-10を除き、新発売のFP-E50を含むすべてがBluetoothオーディオに対応しています。
30X、60X、90Xという製品名の末尾にXが付くのはBluetoothレディという意味のようです。

FP-10だけBluetoothで音声入力できない点にだけ注意すれば、ローランドは「型番・価格が上がるほど音色数やスピーカー出力が増えると」いう、わかりやすい製品構成になっています。

ポータブルタイプの同等品、ヤマハのPシリーズ、カワイのESシリーズも、最安のP-125、ES60だけBluetoothが省略されているのは同じです。
Bluetoothなしの廉価製品をさらに細分化したのが、カシオのCDPシリーズ、コルグのB2シリーズと思われます。

電子ピアノのラインナップは、鍵盤・音源に加えてBluetoothの有無で判断すると、価格とスペックの相関関係がわかりやすいです。
カタログをじっくり見比べると、ライバル会社がお互いを意識しているのか、製品構成がかなり似通っていることに気づきます。

音場再現技術

FP-60Xには「ヘッドホン・3D・アンビエンス」という特殊機能が搭載されてます。
「ヘッドフォン着用時にもピアノ本体から音が出ているように聞こえる」という音場再現技術です。

結局のところ電子ピアノの国内5大メーカーのうち、コルグ以外はなんらかのヘッドフォン音質向上機能を上位機種にそなえていることになります。
音場再現や定位に関するものから、ヘッドフォンのタイプに合わせたものまで、さまざまです。

アコースティックピアノの消音機能と同じで、搭載スピーカーの良さよりヘッドフォン向けのオプションを重視する顧客層もいるように思われます。
音源自体の品質にこだわるよりも、出力時にエフェクトを加えて、高性能なヘッドフォンで聴いたほうが、体感的なクオリティーは増すかもしれません。

ただしローランドの3Dアンビエンスについては、「ピアノ音色以外には効きません」とネット上のナレッジベースに書かれていました。
ピアノ以外の音色も多用する人には、あまり意味がないのは残念です。


参考
ヘッドホン3Dアンビエンスはどのような効果がありますか?Roland

FP-90Xにはさらに上位の「ヘッドホン・アコースティック・プロジェクション」という技術が採用されています。
これは据置型ピアノでも、最上位のLXシリーズにしか搭載されていないテクノロジーです。

LXのスピーカー・システムには同じ名前の「アコースティック・プロジェクション」と設計手法が適用されています。
FP-90Xはコンパクトなポータブル型なので、さすがにスピーカーまわりの技術は簡略化されています。

「リアルな響きや奥行き感」「ピアノの胴鳴りも再現」…という説明からすると、「ヘッドホン・3D・アンビエンス」の上位互換と推測されます。
ただこれもピアノに特化した音場再現かもしれず、ほかの音色に適用されるのかは不明です。

ポータブル最上位対決

やはりFPシリーズのなかでもFP-90Xだけは別格です。
鍵盤、音源が上位製品のHP~LXと同じだけでなく、ヘッドフォンまわりの技術も最高級のものが搭載されたモンスターマシンです。

20万円近くする卓上型の最高峰として、ローランドのFP-90Xは、ヤマハのP-525、カシオのPX-S7000に匹敵します。
カワイの最上級ES920は15万程度で買えて、ほかよりちょっと安めです。

スピーカーの性能にこだわらず、可搬性重視でポータブル電子ピアノを究めるなら、この3台が最終目標になりそうです。
いずれも小型ながら、各社シリーズのなかで鍵盤・音源・付帯機能が別格のハイエンドに位置づけられます。

見た目で選ぶなら、カシオのPX-S7000がカラバリ豊富でデザイン性も高いです。
とはいえFP-90XとP-525も昔ながらの黒いキーボードという感じで、質実剛健な渋さを感じます。

GO:PIANO88の謎

ローランドの電子ピアノでもっとも安いのはGO:PIANOシリーズです。
公式サイト上では「キーボード」に分類されていますが、鍵盤がバネ式である以外は電子ピアノといえそうな構成です。

最安価格帯なのに同時発音数128はあり、しかもBluetoothにも対応しているという、隠れた名機です。
Amazonのクラウド音声サービス、Alexaを搭載した実験的なバージョンも存在します。

GO:PIANOは61鍵、88鍵というメリハリの効いたラインナップで、なぜか88鍵のほうは音色数がたったの4つと、極端に絞られています。
同じ製品の鍵盤数違いで、基本スペックがなぜ違うのか謎ですが、そのせいか88鍵のほうが61鍵より安く売られる逆転現象が生じています。

コルグのLianoを買う際、GO:PIANO88と迷いましたが、鍵盤の軽さ、音色の多さで前者を選びました。
GO:PIANOのBluetoothは魅力的でしたが、やはり音色が少なくオルガンも1つしかないというのが不満でした。

とはいえ「基本的にピアノしか弾かない」という人なら、エレピもオルガンも余計な音色は不要かもしれません。
GO:PIANO88は演奏・練習に特化したストイックな電子ピアノといえます。

GO:KEYSが進化

2024年にGO:PIANOの姉妹品、GO:KEYS 3/5が発売されました。
GO:PIANO(GO-61P)と同形状だった旧GO:KEYS(GO-61K)から、見た目も機能も大幅にアップデートされています。

旧型は赤色一色でおもちゃっぽい外見でしたが(これはこれでよい)、新型は流行のニュアンスカラーが取り入れられています。
GO:KEYS 3はターコイズ、ダークレッド、ミッドナイトブルーで定番のブラックがなく、GO:KEYS 5はグラファイト、ホワイトのモノトーン系統です。

いずれもBluetooth搭載で、ZEN-Core音源の1,154音色、自動伴奏や録音機能などもひととおり付いています。
ZEN-Coreは高級シンセのFANTOMシリーズと同じなので、この価格帯にしてはうれしいオプションといえそうです。

GO:KEYS 3も5も61鍵で、本体の色が違う以外、見た目はほとんど同じです。
強いていえばスピーカーのカバーのパターンが違います。

5のほうはステレオ、マイクの入力端子が増え、スピーカーにパッシブラジエータが付いて機能強化されているようです。
3と同サイズながら、スピーカー出力時の音質向上には期待できそうです。

ただ鍵盤の数や構造、音源はまったく同じなので、実売2万円の価格差を考えると、たいていの人にはGO:KEYS 3で十分かもしれません。
ヘッドフォンを中心に使う人には、5の売りであるパッシブラジエータも関係ないです。

コルグやカシオのビビッドな色彩に比べて、新型GO:KEYSの微妙なカラーは今っぽく見えます。
このおしゃれな外観で、88鍵バージョンの新しいGO:PIANOも発売してくれるとうれしいです。

ローランドのオルガン

ローランドはピアノやシンセだけでなく、多段鍵盤の電子オルガンも製造しています。

ミュージック・アトリエシリーズのうち、今でも販売されているのがATELIER Combo AT-350Cです。
2段鍵盤の大型モデルですがスタンドは別売りで、黒ベースのモダンな外観をしています。

ステージ・キーボードのV-Combo VR-09-Bも、オルガン関連の機能が強化された機種です。
ドローバーのようなハーモニック・バーという操作部があり、トーンホイールをデジタル再現した音源も搭載しています。

ローランドのオルガン製品はいずれもカラーがモノトーンで、重厚感のある木調パネルを使っていないのが特徴といえます。

鈴木楽器のハモンドオルガンや、カワイのチャーチオルガンのように「いかにもオルガン」という外見でなく、かえって使いまわしやすいかもしれません。
オルガン以外のピアノやシンセ音源を鳴らしても、見た目的に違和感のない機材です。

シンセと映像機材も

ローランドは鍵盤楽器以外にも、シンセサイザーやリズムマシンなど幅広いジャンルの楽器を販売しています。

個人的に思い入れがあるのはTB-303というシンセで、これを多用したアシッド・ハウスの音色が出てくるとノスタルジーにひたれます。

機材を直接触ったことはないですが、Hardfloorの”TB Resusitation”や”Respect”といったアルバムを昔よく聴いていました。
TB-303は製品名と、これを使用した楽曲などが、アニメの『交響詩篇エウレカセブン』でさかんに引用されています。

現行モデルではTB-03という、TB-303を小型化したベースシンセサイザーが販売されています。

動画のなかで、TB-03を操作している人がJoy Division “Unknown Pleasures”のTシャツを着ているのが一瞬見えます。
ピーター・サヴィルの名デザインが、アナログシンセの雰囲気づくりにも役立っているようです。

映像用の機材としてはローランドのV-5というビデオミキサーにあこがれていました。
20年以上前ですがノンリニア編集をしていた頃、リアルタイムで映像をミックスできるV-5は革新的でした。

現在も映像用のミキサーやスイッチャーは継続販売されていて、4K解像度やHDMI入力に対応した新機種が登場しています。
もっともコンパクトなV-1HDでさえHDMI入力が4系統もあり、BPM SYNCや各種エフェクトまでそなえていて、技術の進化におどろきます。

名前の由来

いまや「ローランド」といえば、世間の人は楽器メーカーより元ホストの有名人を思い出すのではないでしょうか。

Google検索でもトップはかろうじてローランド株式会社ですが、2位以降はROLAND GROUP HDのWikipediaやYouTubeが拮抗しています。
良くも悪くもメーカーの知名度向上に役立っているとは思います。

ROLANDの本

いちおう参考のためROLANDさんの著作を読んでみたのですが、名前の由来や楽器メーカーとの関係については記載されていませんでした。
YouTubeを見ると自邸ではBGMが流れていたり、クラシックやジャズにも詳しそうですが、特にピアノを弾いているシーンは出てきません。

マンガ版『ローランド・ゼロ』には、「シャルルマーニュの聖騎士ローラン」にちなんでローランドという源氏名を授けられるシーンが出てきます。
ただこれもホスト漫画『夜王』の上条聖也をもとにした、道明寺セイヤという架空のキャラのセリフなので、事実かどうかはあやふやです。

Wikipediaによると、ローランド株式会社の社名もやはり中世ヨーロッパ叙事詩のローランから取られているそうです。
騎士道精神における勇敢さや忠誠心など、ポジティブなイメージを連想させるローランドという名前は、社名としても源氏名としても都合がよかったのでしょう。

数々の名言で有名なROLAND氏…
楽器メーカーとしてのローランドも、他社とは異なる独自路線をつらぬき、多くの名機を輩出しています。

特に2015年に発売された据置型ピアノのKIYOLA(きよら)は、家具メーカーのカリモクとコラボした至高のインテリアピアノです。
KIYOLAに関する情報は、別途こちらの記事にまとめました。

ローランドのKIYOLAとインテリアピアノ

まとめ

カシオとコルグに続いて、ヤマハ、カワイ、ローランドの電子ピアノ(おもに10万円以下のポータブルタイプ)を調査してみました。

おおよそ5万円以上するハンマ―アクション鍵盤のピアノは、どのメーカーも似たり寄ったりという感じです。
鍵盤構造や音源は各社のオリジナルですが、名前と説明だけでは良し悪しがわかりません。

ヤマハが案外安い

各社のカタログとスペックをじっくり見比べると、おおむね性能と金額は比例しているようです。
際立った掘り出し物というのはなさそうですが、カシオとコルグに続いてヤマハのPシリーズが意外とリーズナブルに感じました。

購入に際してBluetooth接続機能や専用スタンドの有無というのも、ひとつの判断基準になると思います。
またポータブル型としては、スピーカーの性能よりヘッドフォンの音場再現機能を重視するのもありだと思います。

その点ではヤマハのPシリーズ全機種に「ステレオフォニックオプティマイザー」が搭載されているのは魅力的です。
カシオ、カワイ、ローランドのヘッドフォンに関する同等機能は、中間~上位グレードにしか備わっていません。

鍵盤構造は大差ない?

鍵盤の弾き心地は大型楽器店でまとめて試せるとよいのですが、地方ではモールにある島村楽器くらいしか思いつきません。

いくつか触ってみた印象としては、素人レベルなら各社最安のピアノタッチ鍵盤で十分な気がしました。
それ以上の鍵盤・音源の違いについて語れるのは、よほどのマニアか業界人だけだと思います。

電子ピアノの世界でも、ロードバイクのように何台も所有して弾き比べている人がいるのでしょう。
文具沼やインク沼と同じく、楽器沼やピアノ沼も存在するようです。

6~7万円がおすすめ

Piaggero、GO:PIANOといった最安クラスと、P・ES・FPシリーズのような本格鍵盤の廉価クラスは、せいぜい価格差2万円程度という感じです。
スタンド付きというメリットに惹かれてコルグのLianoを買いましたが、もう少し上乗せしてピアノタッチのモデルにしてもよかったかと考えています。

KORGの格安88鍵電子ピアノLianoレビュー

88鍵を検討する時点である程度の中級者か、ピアノを続ける覚悟がある人だと思うので、せっかくなら後者を選んだほうが後悔は少ないでしょう。
さらにBluetooth搭載の6~7万円レベル(ヤマハP-225やカシオPX-S1100)を買えば、最悪、弾かなくなってもスマホ用の高品質なワイヤレススピーカーとして流用できます。

電子ピアノは多種多様ですが、ご自身の演奏経験と意気込みによって適正モデルが決まってきます。
万が一まったく使わなくなっても棚や物置として転用できるよう、蓋つきの据置モデルにするのも賢い選択と思います。

サングラスをかけた犬

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KORG、CASIOほか10万以下の電子ピアノhttps://bofuo.net/korg-casio/Sat, 15 Feb 2025 02:00:45 +0000https://bofuo.net/?p=1977

コルグの安い電子ピアノLianoを使っていると「もっと音色の数が欲しい」「重い鍵盤も試してみたい」と物足りなく感じるときがあります。 88鍵のLianoを使いこなせるようになったら、さらなる上位機種にアップグレードするこ ... ]]>

コルグの安い電子ピアノLianoを使っていると「もっと音色の数が欲しい」「重い鍵盤も試してみたい」と物足りなく感じるときがあります。
88鍵のLianoを使いこなせるようになったら、さらなる上位機種にアップグレードすることも考えています。

  • 本格的なハンマーアクション鍵盤
    …本物のピアノに近い打鍵感
  • Bluetoothでスマホと無線接続できる
    …練習曲に合わせて弾いたり、外部スピーカーとしても活用できる
  • スタンドと分離可能なポータブルタイプ
    …引っ越しや模様替えの際に、ひとりで運べる
  • 予算は10万円くらいまで
    …高級モデルの違いを実感できるかわからない

といった観点から、候補のピアノを考えてみました。
メーカーはコルグとカシオの10万円以下、そして海外メーカーの廉価商品が中心です。

鍵盤がピアノタッチではありませんが、Liano購入時に検討した格安モデルもいちおう取り上げました。

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コスパで選ぶKORG

コルグの電子ピアノは「高くてもせいぜい10万円台」という、リーズナブルな品ぞろえが売りです(高機能のステージピアノを除く)。
今持っているLianoも88鍵、スタンド付きにもかかわらず3万円台で買えて、ずいぶんリーズナブルに感じました。

KORGの格安88鍵電子ピアノLianoレビュー

品質・機能はもとより価格最優先で電子ピアノを選ぶなら、コルグは真っ先に検討すべきメーカーです。

カラバリに特徴あり

コルグのピアノは機種によってカラーバリエーションが充実しています。

特に売れ筋らしきC1 Airはカラフルで、標準のブラック以外に木目調の黒や茶色、ホワイトやレッドと、奇抜な色が用意されています。
据え置き型で白いピアノは他にもありますが、真っ赤な筐体は唯一無二の存在です。

Lianoもいつの間にかブラック以外に、ブルー、レッド、シルバー、グレー、ホワイトと5種類も色が増えていました。

白以外はメタリック塗装で、バンドのライブやステージでの見栄えを意識したカラーリングかもしれません。
88鍵にしては6kgと軽いLianoなら、外に持ち運んで人前で演奏することも可能だと思います。

コルグは過去にもLP-380という機種で、135通りのカラーバリエーションというカスタムサービスを提供していました。
基本カラーは8つですが、パーツごとに色を選んで組み合わせられるというアイデアは、ピアノ業界でほかに見たことがありません。


参考
LP-380に135のカラー・バリエーションから選べる「Custom Color Order System」新登場。KORG

新製品のPoetryでは反対に「ウォールナット風のミドルブラウン1種類のみ」という、硬派な設定になっています。

ショパンを意識したコンセプトにレトロな茶色は似合っていますが、ツヤありブラックという高級ピアノの定番カラーを排したのは潔いといえます。

他社製品でもローランドGO:KEYSやカシオCT-S1のように、ポータブル型ならカラフルなキーボードは存在します。
カシオはPX-S7000という最上位機種で、「ハーモニアマスタード」という、くすんだ黄色を用意しているところが、コルグとちょっと似ています。

ピアノにはインテリアとしての側面もあるので、好きな色を選べてよろこぶユーザー層も多いと思います。
自分も設置スペースがあって大型のピアノを買えるなら、黒ではなくナチュラルな木の色を選びたいと思っています。

予算度外視、見た目だけで据置型ピアノを選ぶなら、ローランドのKIYOLAとヤマハのTORCHを候補に考えています。
この2製品は数あるインテリアピアノのなかでも、デザイン性と素材・製法へのこだわりが異次元です。

ヤマハの木製電子ピアノTORCHが気になる

KORGの鍵盤は3種類

Lianoの上位機種にはB2シリーズ、C1 Air、G1B Airなどがあります。
音源はステージピアノ以外すべてステレオPCMとシンプルなわりに、鍵盤は以下の3種類が用意されています。

  • NT(ナチュラル・タッチ)鍵盤…B2N
  • NH(ナチュラル・ウェイテッド・ハンマー・アクション)鍵盤…B2、B2SPなど
  • RH3(リアル・ウェイテッド・ハンマー・アクション3)鍵盤…C1 Air、G1B Airなど

NT鍵盤はB2シリーズの廉価版B2Nにだけ搭載されていて、B2のNH鍵盤より軽いというのが気になります。

どちらも「低音から高音に向けて鍵盤が軽くなるハンマーアクション」という説明だけで、具体的な構造の違いがわかりません。
もし価格相応にLianoのLS鍵盤と同レベルなら、強いてB2シリーズに買い替える必要性はなさそうです。

LianoのLS鍵盤

LianoのLS鍵盤

RH3はコルグの最高級鍵盤で、高級シンセのKRONOSに採用されているものと同じです。
「下手なアコースティックピアノより上質」という評判もあり、せっかく買うならC1 Air以上、RH3鍵盤とBluetooth搭載モデルを選びたい気がします。

ステージピアノのSV-2もRH3鍵盤で、さらに「ベロシティ・センシティブ」と書かれています。
普通のRH3より進化したバージョンなのかもしれませんが、情報が少なく詳細はわかりません。

美山町の日本製

RH3鍵盤を搭載したコルグの上位機種は、「日本製」というのも売りです。

京都の美山町という茅葺きで有名なエリアにある、​宇治電器工業の工場で生産されています。
美山町は自転車のイベントでも有名な町なので、いつか行ってみたいと思っています。

日本製にしては価格もそれほど高くないのが不思議ですが、なんとなく品質に安心感を持てます。
水や空気のきれいな場所でつくられたピアノは、音もよさそうなイメージがあります。

製品のクオリティーだけでなく、地方の経済活性や雇用促進に興味があるなら、コルグを選ぶ理由になりそうです。

Bluetooth搭載は希少

コルグ製品で名前に「Air」とつくのは、Bluetooth搭載という意味のようです。

今のところコルグの電子ピアノでBluetooth対応なのはC1 Air、G1B Airと新発売のPoetryのみになります。

B2シリーズやD1、SV-2、Grandstage Xといった高価格帯の製品にも、残念ながらBluetoothはついていません。
ポータブルタイプでBluetooth付きの機種がないのはコルグの弱点です。

B2シリーズには代わりに3.5mmジャックのAUDIO INがそなわっています。
LianoやLP-380UにもUSBの入力端子は付いています。

古いMP3プレーヤーを持っていたりして、「有線接続のほうが手軽で安心」というかたには向いているかもしれません。
変換ケーブルを用意すれば、iPhoneからUSB経由で音声を入力することもできそうです。

外部入力にはあまり関係なさそうですが、Bluetoothの無線通信には遅延が生じるデメリットもあります。
有線接続の手軽さとコストダウンの観点から、コルグはあえてミドルレンジ製品にもBluetoothを採用していないのかもしれません。

最安B2シリーズ

価格とスペックのバランスからすると、B2とC1 Airが売れ筋かと思われます。
据え置き型でLP-380U、LP-180といった機種もありますが、スペックの違いがいまいちわかりにくいです。

B2シリーズの共通スペックとして、音色数は12と少なめながらLianoの1.5倍用意されています。
Lianoと違ってAUDIO IN端子も付いています。

またB2にSTB1という別売りの専用スタンドを付ければ、据え置き固定型のように変更できます。

STB1はLiano付属JamStandsのような、見た目の安っぽさがなく、安定感もよさそうです。
B2SPの場合は、最初からスタンドと3本ペダルが付いています。

専用スタンドが別売りで、汎用のキーボードスタンドも選べるというのは親切な設定に思われます。
据置型と違って鍵盤の蓋こそないですが、見た目はすっきりしてインテリアになじみそうです。

BluetoothなしのB2は不人気なのか、Lianoとたいして変わらない3万円台まで値下がりしていました。
さらに鍵盤スペックが中途半端なB2Nは、上位モデルなのにLianoより安く売られていたりします。

いちおうハンマーアクションでピアノらしい鍵盤をそなえたB2シリーズは、電子ピアノのなかでも最安価格帯です。
ぎりぎり10万円以下でRH3鍵盤やBluetooth搭載のC1 Airも手に入りますが、価格最重視でピアノを選ぶならB2もありだと思います。

種類豊富なCASIO

カシオのキーボードといえば、「家電屋に並んでいる安いカシオトーン」というイメージでした。
しかし電子ピアノの製品ラインナップを調べてみると、実は50万円近くする木製鍵盤の本格モデルも販売していたりします。

腕時計もカシオといえば、定価2,200円のチープカシオやG-SHOCKを連想します。
しかしG-SHOCKも最近はMR-Gの登場で高価格化が進み、特別仕様の限定モデルでは100万円以上するものまであります。

なんとなく安っぽい印象だが、実は中身がすごい…
高級電子ピアノでも老舗の楽器メーカーではなく、あえてカシオを選ぶというのは通好みのチョイスといえそうです。

カシオは鍵盤も多様

カシオの電子ピアノ用鍵盤は、最安のCDPシリーズから最高級のCELVIANO Grand Hybridまで6種類に細分化されています。
ヤマハ、カワイ、ローランドといった大手楽器メーカーに匹敵するバリエーションです。

上から安い順に並べると、

  • スケーリングハンマーアクション鍵盤II
  • スマートスケーリングハンマーアクション鍵盤
  • 3センサースケーリングハンマーアクション鍵盤II
  • スマートハイブリッドハンマーアクション鍵盤
  • スケーリングハンマーアクション鍵盤 CELVIANO Edition
  • ナチュラルグランドハンマーアクション

おおむね名前が長いほど高級で、本体価格も鍵盤スペックに応じて上がっていきます。
「スケーリングハンマーアクション」はバージョン2のものもあり、上位の鍵盤よりすごそうに見えたりして、まぎらわしいです。

「スマートハイブリッドハンマーアクション」から上は、鍵盤の一部に木材(スプルース材と樹脂のハイブリッド)が使われています。
最高級のGP-510BPに搭載される「ナチュラルグランドハンマーアクション」になると、白鍵・黒鍵・土台がすべて木材で、さらにグランドピアノと同じアクリル、フェノールでコーティングされています。

カワイのCAシリーズは「白鍵・黒鍵とも100%木製」を売りにしていますが、カシオはそれ以上かもしれません。
ヤマハやカワイのように生ピアノを製造していないぶん、カシオとローランドは電子ピアノの分野で、とてつもないハイエンドの製品をリリースしています。

他社より軽く、凹凸のある鍵盤

鍵盤素材の違いやセンサー数という指標はわかりやすいものの、体感的な弾き心地がどこまで違うのかは実際に触ってみないとわかりません。

店頭で弾いてみたカシオの電子ピアノは、CDPもPriviaもCelvianoも他社製品より鍵盤が軽く感じられました。
価格帯により鍵盤構造はまちまちですが、総じてローランドが一番重く、ヤマハとカワイは同じくらい…カシオだけやけに軽めのタッチに感じられました。

生ピアノの鍵盤を使ったヤマハAvantGrandもローランド並みに重かったので、本物に近づけるならこのくらいの抵抗感が必要なのかもしれません。
本格的にピアノを習った経験がないと、強弱の表現もふくめて使いこなすのは難しそうです。

カシオの鍵盤が軽いのは、カシオトーンの安価なバネ式キーボードから買い替える顧客層をターゲットにしているためと思われます。
ピアノらしくないという批判もありそうですが、「鍵盤の軽さ」でコルグLianoを選んだ身としては共感できるポイントです。

またカシオの鍵盤は表面に滑り止め用の立体的な模様が刻まれているのも、他社にはない特徴です。
メーカー側が「微細なシボ加工」と表現しているとおり、素材はプラスチックながら革製品のような凹凸があります。

ザラザラした質感で指先に汗をかいても滑りにくく、案外効果的な加工だと思いました。
「ピアノかくあるべし」という規制の概念にとらわれないカシオの開発アイデアは、個人的に評価したいです。

音源不明なCDP

カシオの電子ピアノはわかりやすい松竹梅のラインナップになっていて、「竹」ランクのPriviaが売れ筋と思われます。

「梅」に相当するCDPはピアノタッチでの88鍵あるものの、ほかの部分はかなりコストを削っている感があります。
価格のみで選ぶ顧客層をターゲットにした戦略的製品という印象です。

CDPシリーズで気になるのは音源の品質で、スペック表に具体的な記載がありません。
カシオトーンのCT-S1以上に搭載されているAiX音源でもないようです。

「カタログに説明がない」という共通点から察すると、1万円前後の最安キーボードに搭載されている謎音源と同等に思われます。
CDPは88鍵でハンマーアクションなのに、音源がカシオトーン以下?の可能性もある、ずいぶん割り切った設計です。

もっとも安いCDP-S110は3万円台から購入できて、ピアノ鍵盤としては最安ランクのコルグB2と競合します。
ただ最大同時発音数が電子ピアノにしては64と低く、コルグのLiano(発音数120)にすら劣ります。

CDP-S100、CDP-S105という亜種があって迷いますが、S100は旧製品、S105はAmazon限定品で中身は大差ないようです。
販売価格に違いがなければ、最新のS110を選べば間違いないと思われます。

CDP-S160は3本ペダルの接続端子やデュエット機能が追加されただけで、基本性能はS110と同じです。

上位モデルのCDP-S300は島村楽器の限定モデルなので、カシオの公式サイトには商品説明がありません。
ただしメーカーのサポートページから説明書はダウンロードできます。

CDP-S300は価格相応に、音色の数がS110の10から700へと大幅にアップしています。同時発音数も64から128に倍増していて、WU-BT10のBluetoothアダプタが付いてくるのも特徴です。
WU-BT10単体でも5,000円以上することを考えると、S110/160より数千円アップで手に入るS300はお買い得です。

CDPは音源に不安を感じるものの、「まともに音が出れば十分」という人には十分かと思います。
とにかく88鍵のピアノ鍵盤を壊れるまでがんがん使い倒したいという、ヘビーデューティーな練習マシンのようです。

バランスのよいPrivia

コスパ重視のCDPに比べ、プリヴィアはポータブルタイプの優等生です。
モデルによっては予算10万円以内から買えて、スペックも手頃でデザイン性もよく、専用スタンドも後付け可能と、バランスのよい設定になっています。

音源は「マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR」で、特にピアノの音質がよさそうです。
PX-S1100から上の機種は、CDP-S300と同じくUSB端子のBluetoothアダプタが付いてきます。

PX-S3100は音色数がS1100の12から700へと格段にアップします。
CDP-S300と同じく、カシオの電子ピアノは機種による音色の増減が極端です。

PX-S5000以上は鍵盤が木製になるので、さすがに10万円を超えます。

最上位のPX-S7000はスタンド・ペダル一体型で、ほかにはないユニークな形状とカラーリングが特徴です。
海外のデザイン賞なども受賞しており、見た目に惹かれてPX-S7000を指名買いする人も多そうです。

外観重視のPX-S7000については、専用のスツールも別途販売されています。
インテリアピアノの一種と考えられ、こちらの記事で情報をまとめてみました。

ローランドのKIYOLAとインテリアピアノ

予算5万円~でそこそこよさげな電子ピアノを選ぶなら、PX-S1100で十分かと思います。
Bluetooth搭載で別売りスタンドもあり、今どきのスペックは網羅されているので、買ってから後悔することもなさそうです。

ヘッドホンモードとは

プリヴィアのPX-S6000、S7000、据置型の上位PX-870とセルヴィアーノ全機種には「ヘッドホンモード」という特殊機能が搭載されています。
設置場所によって内蔵スピーカーの音響設定を変更できる、「ピアノポジション」機能のヘッドフォン版と考えられます。

カタログによると、ヘッドフォン使用時に音質を補正し、「グランドピアノを弾いているかのような自然な音の広がり方を再現」と説明されています。
具体的なテクノロジーは不明ですが、ヤマハの「ステレオフォニックオプティマイザー」と似たバイノーラル録音の再現機能かと思われます。

ピアノ以外の音にも有効なのか不明ですが、長時間ヘッドフォンを着けて練習する際に、疲れにくくなるメリットが期待できるかもしれません。

カシオトーンを見直す

カシオトーンはピアノ鍵盤でなく、88鍵のバージョンもありません(CT-S1-76の76鍵が最大)。
しかし他シリーズとスペックを比べると、案外捨てたものではないと再発見しました。

ミニ鍵盤ではない通常サイズで61鍵の最安CT-S200は、実売価格1万円ちょっと買えます。
しかし音色は400もあり、さらにステレオミニジャックのAUDIO IN端子を備えています。

最安価格帯のキーボードでも、音色数や拡張性がコルグLianoより上なのは驚きです。
鍵盤の数にさえこだわらなければ、初心者には1万円のカシオトーンで十分だったかもしれません。

上位のCT-S1になると、別売りのワイヤレスMIDI & AUDIOアダプタを付けてBluetoothにも対応できます。
CT-S500以上の高級カシオトーンになると、プリヴィアと同じくBluetoothアダプタが同梱されます。

CT-S1はデザイン性やカラーリングのセンスが秀逸です。
2025年1月16日にはFRAGMENTのコラボモデルも登場しました。


参考
カシオの電子キーボードとFRAGMENTによるコラボモデル「Casiotone CT-S1 × FRAGMENT」を「V.A.」にて1/16(木)に発売PR TIMES

価格71,500円と強気の設定ですが、V.A.のオンラインストアでは早々に売り切れたようです。
希少なブランド品なので、転売目的で買い占められてしまったのかもしれません。
(2025年2月20日現在、在庫は復活しています)

昨年は76鍵モデルのCT-S1-76も追加され、廉価キーボードの選択肢が広がりました。
「キーボード以上、電子ピアノ未満」というニッチな需要に対応した製品と思われます。

予算的にCDPで妥協せざるをえないというかたは、思い切ってカシオトーンも検討してみてはいかがでしょうか。
鍵盤の数と構造を除けば、スペックも拡張性もカシオトーン(CT-S1以上)のほうがCDPを上まわっています。

島村楽器のBORA

Amazonや島村楽器のオンラインストアを検索していると、国内五大ブランドではない海外製の電子ピアノも出てきます。
なかでも最安クラスなのが、BORA SBX2という製品です。

1万円台の88鍵

BORA SBX2は島村楽器のオリジナルモデルです。
実売価格1万円台で購入できて、88鍵の電子ピアノとしてはLianoを超える最安商品といえます。

ネット通販なら楽天市場の島村楽器店か、Amazonでも購入できます。

さすがに見た目はしょぼそうですが、イヤホンとペダル、譜面台、キャリングバッグまで付いてくるなど付属品が豪華です。
日本語の説明書もちゃんとあり、1年保証とうたわれています。

気になる鍵盤は「強弱表現ができる」とだけ書かれています。
構造的な説明がないので、おそらく安価なバネ式スイッチかと思われます。

またスピーカーが付いているのはもちろんのこと、音色が128、デモソングも21曲内蔵されています。
さらに鍵盤を1つ押すと和音が再生される自動伴奏機能や、録音機能までそなえています。

おまけに入出力端子も豊富で、L/Rステレオ出力できるほか、「MP3」と書かれた音声入力端子が存在します。
文字通りMP3のフォーマットにしか対応しないのか謎ですが、鍵盤の音と重ねて練習できるなら便利です。

バッテリー内蔵で4.5kg

変わった機能として、ピアノ本体にバッテリーが内蔵されています。
そのため乾電池なしで野外演奏できるうえ、電池交換せず充電も簡単に済ませられます。

電子ピアノを動かすほど大容量のバッテリー(1750mAh)を載せていたら重くなりそうですが、本体重量はわずか4.5kgしかありません。
スペック表の誤植でなければ、Lianoの6kgを下まわる驚異的な軽量製品といえます。

スタンドが付いていない以外は、すべての機能がコルグLianoを超えています。
もしLianoより先にBORA SBX2を見つけていたら、こちらを買っていたと思います。

BORAといえばカンパニョーロのカーボンホイール、30万円以上する憧れのパーツを連想します。
電子ピアノのボーラは反対の格安路線ですが、88鍵多機能ピアノとしては史上最強のコスパを誇るユニークな商品です。

わりと安いMEDELI

88鍵かつハンマーアクションを搭載しながら、3万円台で売られているMEDELI SP201も格安ピアノのひとつです。
台湾の自転車メーカー「メリダ(MERIDA)」と名前が似ているせいか、なんとなくリーズナブルな印象を受けます。

3万円台のMEDELI SP201

音色は30、同時発音数は192もあり、リズム40、デモソング100曲と内蔵機能は豊富で、レイヤー/スプリットもできます。
Bluetoothは非対応ながら、USB type-B端子でオーディオ/MIDIに対応し、AUX INもそなえています。

低価格商品ながら拡張性もあり、ST430という別売り専用スタンドも用意されています。
3本ペダルを追加できるうえ、見た目が据え置き型のようにすっきり安定するのもメリットです。

鍵盤の「ウェイテッド・グランデッド・ハンマーアクション」というのが、他社に比べてどの程度の品質なのかは気になります。
ちなみにタッチレスポンスは5段階で調整できます。

価格と機能が好バランス

メデリがおもしろいのは、「日本の電子楽器メーカー出身の製品企画担当者がプロデュース」したという背景です。

さすがに日本製ではなさそうですが、国内の電子ピアノ市場を意識して練り込まれたスペックといえます。
日本語のウェブサイトもちゃんと準備されています。
(2025年2月現在、MEDELIの製品情報にはデジタルドラムとアンプの紹介しかありません)


参考
MEDELI 電子ピアノ SP201 は、外観、機能、操作性や音質に至る全ての工程を、日本の電子楽器メーカー出身の製品企画担当者がプロデュース。MEDELI

Bluetooth以外の「あったら便利」という機能をすべて盛り込んで、3万円強という低価格に落とし込んだところは評価できます。
Lianoを買う前だったら、BORAとMEDELIで悩んだかもしれません。

Studiologicの沼

海外メーカーでやや高級なスタジオロジックのステージピアノ、Numa Compact 2も比較的リーズナブルに購入できます。

88鍵で6万円台の製品ですが、気になる鍵盤仕様は「TP/9 Piano semi weighted」と書かれています。
この価格帯と「Dual Switch Detection System、アフタータッチ」という説明からして、さすがにハンマーアクション機構ではないかと想像できます。

音色は88、同時発音数は128と標準的ですが、エフェクトはコーラス、リバーブ以外にフェイザー、フランジャー、ロータリーやトレモロと多彩に用意されています。
ファームウェアの更新で音色を増やせるというのも魅力的なオプションです。

スピーカー内蔵ながら7.1kgと軽量なので、ライブや練習に持ち運びやすいのもメリットといえます。
Bluetoothこそ付いていませんが、USBやMIDIの入出力は可能です。

Numa SEとXの違い

Numa Compactの上位モデルSEも、ぎりぎり10万円以内で購入できます。
SEは通常版と同じ重量7.1kgながら、おもに音源が強化されているようです(音色は148)。

SEの鍵盤は「TP-9P」で、Numa Compactの「TP/9」とは微妙に違うようです。
性能は不明ですが、鍵盤がアイボリー色になっているのがわかりやすい特徴です。

日にあたって退色したプラスチックのようで、見た目がヴィンテージ感のある鍵盤です。
蛍光灯のブルーライトを反射しにくそうなので、夜間の練習にも適しているかと思います。

Numa Compactのシリーズで「2x」「X SE」とつく機種は、パネルにドローバーが搭載されています。
上位機種のNuma X Pianoとまぎらわしいですが、音色も若干増えていたりします(Numa Compact 2xで100音色)。

ハモンドオルガンのドローバーというよりは、スライダー式のスイッチのようで、狭い上部パネルにコンパクトに収まっています。
電子ピアノの細身のボディで、オルガンサウンドもリアルタイムに制御できる魅力的な設計です。

高価で場所をとる上下2段の鍵盤よりも、88鍵ですっきりさせたいオルガニストに適しているかもしれません。
ピアノもオルガンもシンセも弾きこなしたいという、欲張りな人に向いています。

オルガン沼

もっともスタジオロジックにはNuma Organ 2というオルガン専用機もあり、こちらのほうがドローバーのつくりは本格的です。

ただし61+12=73鍵と鍵盤の数が少ないうえ、ほとんどオルガンの音しか出せないようです。
その代わりトーンホイールやエフェクトの再現性はクオリティーが高そうで、レスリー・スピーカーに接続するための端子までついています。

鍵盤は「TP/8O (Organ Waterfall)」と明記されているので、オルガン向けの軽いバージョンと推測されます。
電子ピアノに比べて電子オルガンの選択肢は少ないので、Numa Organ 2もいつかどこかで試してみたい製品です。

鍵盤OEMのFATAR

スタジオロジックはイタリアのFATAR(ファタール)手がける独自ブランドです。
ファタールがどんな会社かというのは、イケベ楽器の関連サイトにある訪問レポートが参考になりました。


参考
イタリア・FATAR/Studiologic本社訪問レポートイケベ デジタルタワー

ファタールは鍵盤のOEMメーカーで、日本国内でもローランドやコルグ、カワイなどにパーツを提供しているそうです。
どのモデルやグレードなのかは不明ですが、上記のサイトによると樹脂製鍵盤をおもに扱っているようです。

自転車業界で「OEMメーカーの自社ブランド」といえば、台湾のNOVATECあたりを連想します。
私もここのホイールを愛用していていますが、知名度は低いながらスペックのわりに価格が安くてお得でした。

NOVATECのホイール

ノバテックと同様にスタジオロジックも、大手メーカーに比べて中間マージンやブランド代・広告代などを省いた分、価格が安く設定されている可能性はあります。
それなりの価格はするので、聞いたことのないブランドというのは不安ですが、実は知る人ぞ知る名門ブランドなのかもしれません。

Numaの語源

スタジオロジックのピアノ・オルガン製品にはNumaという名前がついています。
楽器沼を想起させる皮肉でおもしろいネーミングですが、ファタール社の近くにあるヌマーナ(Numana)というリゾート地が語源のようです。

ヌマーナはアマルフィやカプリ島ほど世界的に有名なビーチでもなく、Googleマップで見たかぎりは小さな町です。

イタリアの行楽地といえばほかにも、ポルトフィーノ(Portofino)がフェラーリやIWCの製品名に採用されています。
日本ではあまり知られていないリゾート地というのが、かえって海外セレブ御用達のラグジュアリー感を連想させておもしろいです。

静岡の楽器メーカーも、「Numazu(沼津)」といった地元の地名をネーミングに採用してはどうでしょうか?
マルニ木工のHiroshimaチェアのように、世界的に大ヒットするかもしれません。

まとめ

コルグLianoに代わるピアノタッチの上位製品として、予算10万円までの電子ピアノ(コルグ、カシオ、その他海外ブランド)をご紹介しました。

御三家 vs 新興勢力

世界の三大ピアノは一般的に「スタインウェイ&サンズ」「ベーゼンドルファー」「ベヒシュタイン」といわれています。
国内メーカーなら社歴の長いヤマハとカワイがツートップで、ローランドが三番手、カシオとコルグは新規参入のチャレンジャーというイメージです。

アコースティックピアノも手がけているヤマハとカワイは別格という感じがします。
ローランドも200万円近くするデジタル・グランドピアノを作っていたりして、高価格帯の製品ラインナップが豊富です。
「電子ピアノ」のジャンルにおいては、この3社を御三家と呼んでもいいかもしれません。

カシオは楽器というよりも、時計や電卓のメーカーとして一般的に認知されていると思います。
コルグも今まではシーケンサーやシンセサイザーが主力だと思っていて、ピアノを作っているのは初めて知りました。

ヤマハやカワイの音楽教室ではなく、廉価キーボードの独学でピアノを始めた層には、むしろカシオやコルグのほうが親しみやすいかもしれません。
ピアノでなくシンセサイザーの分野なら、コルグとローランドの知名度も高いです。

王道のピアノらしいスタイルではなく、変わったカラーリングやデザインも選べるというのもカシオとコルグの特徴です。
デザイン重視でこれらの製品を購入する人もいると思います。

安いだけではない

カシオとコルグは価格・性能的にユニークな製品で差別化を図り、新たなユーザー層を開拓しようとしているように見受けられます。
どちらも実売価格3万円台から手に入る、ピアノタッチ鍵盤の廉価モデルをリリースしているのが特徴です。

最安ランクであるカシオのCDPとコルグのB2シリーズは、価格最優先で極限までコストダウンされた割り切り商品と思われます。
楽器店でもこれらをよく見かけるので、「安いメーカー」という印象を抱きがちですが、実は両社とも10万円を超える据え置き型ピアノも作っています。

カシオもコルグもBluetooth対応でそれなりの音源や機能をそなえたモデルは5万円以上します。
同等スペックで比べれば、実はヤマハのPシリーズやローランドのFPシリーズとたいして変わらない値段です。

あらためて製品スペックを調べてみると、カシオとコルグのピアノは決して安物ではなく、価格相応で良心的という印象を受けました。
激安商品も用意して消費者の選択肢を増やしてくれるという意味では、ありがたい存在です。

掘り出し物か人柱か

ネット上で見かけたBORAやMEDELIの廉価製品も興味深いです。
ボーラは「1万円台の88鍵」、メデリは「3万円台のハンマーアクション鍵盤」といったわかりやすい特徴があります。

店頭で実機を目にする機会もなく、レビューも少ないので不安を覚えますが、価格最重視なら手を出してみるのもありです。
もとが安いので、仮に失敗しても後悔は少ないといえます。

FATARのStudiologicはそれなりに定評のあるブランドだと思いますが、5万円以上出すならやはり国内メーカーのピアノのほうが安心かもしれません。
ステージピアノらしい尖った機能をそなえているので、収集家のかたならコレクションに加えてみてもよさそうです。

こうした海外メーカーは情報が少ないぶん、個人ブログやSNSでレビューする意義は大きいと考えられます。
たとえ欠陥だらけで使い物にならなかったとしても、それはそれでおもしろい話のネタになりえます。

先に国産ピアノを試して実力を把握できたら、比較のためメデリやスタジオロジックを試してみるのも一興です。
Numaシリーズはまさにそうした楽器沼にはまった人向けのアトラクションなのかと思います。
語源であるイタリアのヌマーナにも、いつか行ってみたいです。

ピアノに寝そべる犬

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