所要時間4時間ほどで、金沢市内の中心部を効率よく見てまわれるモデルコースをご紹介します。
金沢21世紀美術館をスタート地点として、兼六園→金沢城→ひがし茶屋街→近江町市場の順に歩いてまわる、健脚向けコースです。
近隣県からの日帰り旅行でも、数時間あれば兼六園や茶屋街の金沢らしい雰囲気を十分味わえると思います。
以下の情報は2022年の年末に、全国旅行支援を利用して北陸観光した際の情報です。
能登半島地震の影響で、お店や施設の営業状態が変わっているかもしれません。
あらかじめご了承ください。
金沢21世紀美術館
町の中心部で車をとめるなら、金沢21世紀美術館の地下駐車場がわかりやすいです。
能登観光の1日目、関西方面から高速道路経由で昼頃、金沢に到着しました。
21世紀美術館は兼六園や金沢城にも近く、町歩きの拠点として活用できます。
お金を払わなくてもくつろげるパブリックスペースが充実しているので、自由行動後の待ち合わせ場所としても便利です。
美術館の建築自体もSANAAの設計で見ごたえがあります。
ガラスの壁に囲まれた円形のプランで、外周部の通路は芝生の庭園と連続性があります。
特に目的もなく、ぼーっとくつろげるベンチがいくつか置いてあります。
観光客以外に、地元のひとにも愛されている公共施設です。
ラビットチェアに座れる
館内の無料スペースには、ラビットチェア(製品名:SANAAチェア)が置いてあります。
背もたれがウサギの耳のようになっていて、微妙に左右非対称なのがかわいいです。
似たようなプライウッドのチェアで、アリンコチェアやセブンチェアとも違う、ユーモラスな雰囲気があります。
こちらはマルニ木工から販売されていて、通販などで買うこともできます。
通常サイズは定価53,900円で、ほかに子ども向けのミニサイズと、さらに小さいミニミニサイズもあります。
かつて企画されたnextmaruniの家具シリーズで、今でも唯一製造され続けているチェアです。
建物を設計したのと同じ建築家がデザインした椅子でもあり、軽やかな雰囲気が透明感のある空間に似合っていると思います。
スワンチェアもある
21世紀美術館で座れるもうひとつの名作チェアは、アルネ・ヤコブセンのスワンチェアです。
無料で入れるアートライブラリーのコーナーに、カラフルな布張りチェアがいくつか置いてありました。
スワンチェアはフリッツ・ハンセンの正規品だと、一脚50万円以上する代物です。
ありがたくお借りして、座り心地を試させていただきました。
無料で見られるアート作品
美術館の内外に、無料で鑑賞できるアート作品が展示されています。
館内のアートライブラリーに近い場所に、ジェームズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」という部屋があります。
天井に正方形の穴が開いていて、雨も普通に吹き込んできます。
周囲の喧騒から隔絶された瞑想スペースのような感じで、わりと人気がありました。
ベンチに座ってずっと上を眺めているお客さんも見かけました。
長期インスタレーションルームという部屋では、SCAN THE WORLDという作品が展示されていました。
ここも半年くらいの期間、無料で見られるインスタレーションが展示されているようです。
外にある作品のなかでは、オラファー・エリアソンの「カラー・アクティヴィティ・ハウス」という作品が人気です。
迷路というほど複雑ではないですが、カラフルなオブジェが写真映えします。
夜は内部の電球に照らされて、さらにおもしろい景色になるようです。
レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」は有料ゾーンにありますが、チケット売り場の奥からガラス越しに眺めることができます。
ほかにもミュージアムショップやカフェ・レストランなどの施設があります。
まったくお金を払わなくても、1時間くらいは余裕で遊べる美術館です。
ターバンカレー総本店
夜に旅館で懐石料理を食べる予定なら、ランチはB級グルメの金沢カレーがおすすめです。
金沢カレーもいろいろありますが、中心部の観光エリアで利用しやすいのは広坂のターバンカレー本店です。
平日でも12時台のランチタイムは行列ができます。
メニューはライスの量が小から特大まであり、生卵やロースかつなど、いろいろトッピングできます。
辛さ調整などのオプションはなく、量と具を選ぶだけのシンプルな構成です。
納豆や素揚げなす(季節限定)といった、めずらしいトッピングもあります。
チキン&ロースカツ
とりあえず典型的な金沢カレーを食べてみようと思い、チキンカツとロースカツを乗せてみました。
黒くてどろっとした粘度の高いカレーで、カツの上にもソースがかかっていて、見るからに味が濃そうです。
千切りキャベツの水気に加えて、生卵も落としてルーを薄めたほうが、食べやすいかもしれません。
普通のカレーより脂っこくて、カツも乗せると胃にずしっときます。
金沢カレーはとても体に良いとは思えないので、なるべく若くて健康なうちに味わっておきたいです。
昔、金沢に住んでいたときは、地元に独特なカレー文化があるとは知りませんでした。
東京に出てからゴーゴーカレーを食べてみて、こんなカレーの食べ方もあるんだと発見しました。
当時は神保町や駒場のキッチン南海というお店でも、黒いカツカレーをよく食べていました。
ステンレス皿に先割れスプーンといったスタイルでなくても、金沢カレーっぽい見た目と味付けのカレーはいくつも存在するように思われます。
濃い目のルーが好みなら、黒カレーのルーツといえる金沢カレーは外せません。
メロンパン
金沢発祥の飲食店といえば「世界で2番めにおいしいメロンパンアイス」のお店もあります。
以前は竪町通りでメロンパンを食べられたのですが、そちらのお店は閉店されました。
今はターバンカレー総本店の並びに、メロンパンの広坂本店があります。
コロナ禍の2021年に閉店したらしく今回は食べられなかったのですが、2023年にまたオープンされたようです。
お店の場所は香林坊の交差点から兼六園に向かう、百万石通りに面したビルの1階です。
ターバンカレーを食べてもなお、お腹に余裕があれば、メロンパンアイスのデザートはいかがでしょう。
兼六園
金沢21世紀美術館の北東にある交差点を渡り、真弓坂を上ると兼六園にたどり着きます。
日本三名園のひとつで、広い庭園には見どころがたくさんあります。
翠滝(みどりたき)や海石塔(かいせきとう)といった名所のある、瓢池(ひさごいけ)です。
ニュースでよく見かける、灯篭越しに霞ヶ池を眺める地点には、ライブカメラが設置されていました。
ここは写真撮影で人気のスポットなので、休日はけっこう並ぶと思います。
たまたま紅葉の季節だったので、赤や黄色のモミジを眺められました。
レッドカーペットのように敷き詰められた落ち葉が見事です。
こちらは木立野口の近くにあるモミジの林です。
園内では冬の積雪に備えて、雪吊りの作業も行われていました。
毎年たいへんな作業だとは思いますが、円錐状に張られた縄は、いかにも雪国といった感じで風情があります。
兼六園の奥のほう、伝統産業工芸館の近くになる山崎山も、登ってみる価値があります。
山といっても標高はたいして高くないです。
頂上の東屋は観光客がほとんど来ない穴場ですが、先客がいらっしゃいました。
ここも秋は紅葉が美しいスポットです。
成巽閣
兼六園の散策中に余裕があれば、成巽閣(せいそんかく)の見学もおすすめです。
入館料が700円かかりますが、前田家の豪華な奥方御殿を堪能できます。
国の重要文化財にも指定されています。
あとから見たいと思っても兼六園の入園料が必要になるので、興味があればついでにチェックしておきたい場所です。
内部は撮影禁止なので、写真をご紹介できないのですが、謁見の間や2階にある群青の間・書見の間など、日本建築らしからぬ極彩色の装飾が見どころです。
縁側にある障子の腰板には、土筆(つくし)や蕨(わらび)の絵が描かれていて、芸が細かいです。
成巽閣の庭園のみ撮影可能で、庭の木々にも雪吊りが施されていました。
日本海の雪は湿気を含んで重たいため、積もると樹木が折れやすいそうです。
こんな小さな木まで毎年ていねいに雪吊りする風習も、加賀藩前田家の莫大な財力を物語っています。
金沢城
兼六園の北にある桂坂口から出ると、石川橋を渡って金沢城に近道できます。
広い城跡のなかで、橋爪門・五十間長屋・菱櫓などは有料スペースになります。
それほどお城に興味がなければ、無料エリアを歩くだけでも城郭の雰囲気を体感できると思います。
兼六園に近い石川門から入り、新丸広場を通って大手門を出て、次の目的地である茶屋街に向かいます。
ひがし茶屋街
金沢城から茶屋町へは徒歩10分くらいです。
大手門から浅野川大橋まで600メートルほど距離はありますが、歩けない距離ではありません。
金沢にある3つの茶屋街のうち、ひがし茶屋街と主計町茶屋街は隣接しています。
にし茶屋街はだいぶ離れた場所にあるので、半日観光ならスキップしてよいと思います。
このなかでいちばんお店が多くて見ごたえがあるのは、ひがし茶屋街です。
金沢にある伝建地区のひとつで、中心部は電線・電柱がなく、映画のロケにもそのまま使えそうな雰囲気です。
これだけ町家が保存されたレトロな町並みは、京都にもほとんどないと思います。
平日であいにくの雨模様ですが、観光客は大勢いらっしゃいました。
白磁のカフェ
ひがし茶屋街に飲食店はいくつかありますが、この日は白磁(はくじ)というお店で休憩しました。
茶屋街の奥の、細い路地にあります。
町家を改修した高級感のあるカフェで、金沢の洋食器メーカー、NIKKO(ニッコー)の器も展示販売されています。
国内の洋食器ブランドとしては、ノリタケやナルミと並ぶ知名度があります。
カフェでも使われている、ボーンチャイナのお皿やカップが美しいです。
抹茶プリンとコーヒーのセットが1,000円。
そこそこお値段はしますが、カウンターだけの小規模なカフェで静かにくつろげます。
主計町茶屋街
もうひとつの主計町(かずえまち)茶屋街は、浅野川を挟んだ対岸にあります。
ひがし茶屋街より歩いている人が少なく、橋の上から風情のある写真を撮れます。
京都の先斗町をほうふつさせる、狭い路地もあります。
主計町茶屋街の規模は小さく、古い建物が並ぶのは「中の橋」あたりまでです。
柱はコンクリートですが、手すりは木でできています。
主計町茶屋街を抜けたら住宅街を通って、近江町市場に向かいます。
近江町市場
近江町市場は魚屋が中心のアーケード街で、いろんな食材を購入できます。
旅先で鮮魚を買う機会はあまりないと思いますが、回転寿司や居酒屋もあり食事を楽しめます。
昔ここで初めて食べた、のどぐろの刺身のうまさは、今でも忘れられません。
白身魚としては信じられないくらい脂がのっていて、まるで大トロのような食べごたえでした。
今となっては丼ぶりでも2,000円以上する高級魚ですが、北陸を訪れたら、のどぐろはぜひ試していただきたいです。
その他の見どころ
近江町市場からは、金沢城公園の脇を歩いて21世紀美術館に戻ります。
城跡や橋は夜もライトアップされてきれいです。
今夏のルートでだいたい4時間くらいかかります。
成巽閣の見学や茶屋町での飲食を省略すれば、駆け足3時間程度で主要な観光名所を網羅できます。
そのほかの見どころとして、建築好きなら21世紀美術館の近くにある鈴木大拙館もおすすめです。
谷口吉生の設計で、広い水庭のうえに瞑想・座禅に適した静謐な空間が設けられています。
鈴木大拙館は禅がテーマの尖ったミュージアムなので、建築マニア以外には少々退屈かもしれません。
その点では同じ建築でも、犀川の向こうにある忍者寺(妙立寺)のほうが、いろんな仕掛けを楽しめて一般受けしそうです。
福井の恐竜
金沢とは関係ないですが、北陸自動車道の南条サービスエリアで恐竜のモニュメントを見かけました。
福井は勝山市にある恐竜博物館が全国的に有名で、恐竜メインのわかりやすいブランディングを行っています。
ほかにも永平寺や東尋坊といった渋い観光名所はありますが、いまや福井といえば恐竜王国…
以前、仕事で通っていたとき、福井駅前に動く恐竜が登場するのを目の当たりにしました。
普通は武将の銅像でも置いてありそうな駅前ロータリーに、恐竜のモニュメントが設置されています。
比較的大人向けの金沢と、子どもに大好評の恐竜博物館。
家族連れならセットで観光してまわるのが、北陸の定番コースといえます。
金沢の魅力
今から30年ほど前に、金沢で4年間暮らしていたことがあります。
当時は観光にまったく興味がなく、兼六園にすら入ってみることはありませんでした。
地元住民としては中心部に繰り出しても、せいぜい片町や竪町通りの繁華街でショッピングするくらいでした。
その後、他県に引っ越してから金沢が観光名所であることを知り、たまに訪れては開拓するようになりました。
期限切れ間近のJALマイルを使って、東京から小松空港経由で突貫日帰り観光したこともあります。
21世紀美術館ができたり新幹線が開通したりして、観光地としてこんなに人気が出るとは思いませんでした。
住んでいるうちに、もっとあちこち行っておけばよかったと後悔しています。
金沢は京都よりコンパクトで、古い町家や特別名勝の庭園を歩いてまわれるのが魅力だと思います。
長町の武家屋敷や、それ以外の住宅地でも水路が流れていたりして、古都の風情を感じられる場所が多く残っています。
今回の旅行では能登観光が目的だったので、夕方には金沢を出て、宿泊予定の休暇村能登千里浜に向かいました。
市内中心部から海岸に向かう道路は、「のと里山海道」で車通勤する人が多いのか渋滞していました。
その後は大雨で視界が悪く、海側の景色を楽しめなかったのは残念です。
あまりに天気が悪かったので、千里浜のなぎさドライブウェイも走るのは諦めました。
北陸観光は楽しいですが、いつも雨ばかりなのは残念です。