HI-TECの防水シューズWOLKで失敗した話

長年使ったゴアテックスの登山靴が壊れたので、新しいトレッキングシューズを買いました。

ABCマートで売られていたHI-TEC(ハイテック)の、WOLK HI(ヴォルクハイ)WPという製品です。
防水透湿性をうたっているわりには格安で、見た目もスマートでした。

ハイテックのヴォルクハイ

実際に山で履いてみたところ、履き心地は固くていまいちです。
幅が狭くて足に合わず、爪が黒く変色しました。

防水性を確認すべく雨の日に履いてみたら、普通に浸水してきました。
DRI-HI LIGHTという独自機能は気休めにすぎませんでした。

3回くらい試しただけでお蔵入りになってしまった、残念なシューズです。
処分前の供養と思ってレビューします。

安い防水透湿シューズ

以前履いていたトレッキングシューズは、ニューバランスのMT620というモデルです。

ニューバランスMT620

ニューバランスMT620

内部はゴアテックス製で防水性は十分。
見た目も普通のスニーカーっぽくて汎用性があり、町でも山でも大活躍した一足でした。

こちらで別途レビューしています。

AIGLE、KEEN、New Balanceの防水靴比較

長年履き込んでアッパーメッシュと防水透湿メンブレンが破れ、ソールも擦り減ってきたので買い替えることにしました。

GORE-TEX以外の選択肢

防水シューズといえばゴアテックスは定番ですが、アウトドライやオムニテックなど独自の防水透湿性能をアピールしているメーカーもあります。

以前キーンのピレニーズという登山靴を履いていましたが、大雨でも渡渉でも靴のなかに水が入ってくることは一切ありませんでした。

キーンのピレニーズ

KEENのピレニーズ

ピレニーズには、ゴアテックスではなくKEEN.DRYという防水機能が搭載されていました。

技術の進化によって、廉価製品でもシューズの防水性能が底上げされてきたのかもしれません。
実用性に問題がないなら、高価なゴアテックスでなくても十分といえます。

ABCマートのハイテック

今回はゴアテックスにこだわらず、低価格の防水シューズを探していたところ、ABCマートでよさそうな商品を見つけました。
HI-TECという謎のブランドです。

HI-TEC

店頭にはホーキンスの防水モデルもありましたが、ハイテックのほうが垢抜けた印象です。
いずれも値段は1万円以下で、他ブランドのゴアテックスモデルに比べれば格安に感じます。

ハイテックのヴォルクハイ

HI-TECのWOLK HI WP

価格が安いので、万が一失敗してもダメージは少ないといえます。

人柱になる覚悟で、ハイテックのヴォルクハイWPというモデルを買ってみました。
名前のWPというのはWaterproofの略かと思われます。

HI-TECとは

ブランドの由来を調べてみたところ、1974年にイギリスで生まれた歴史のあるメーカーで、軽量トレッキングシューズの開発で有名になったそうです。

ハイテックは創設から50年以上の歴史があり、マラソン、サッカー、テニスなど様々なスポーツ用のシューズを手がけています。

HI-TEC

日本国内では現在、ムーンスターという会社が製造・販売しています。

HI-TEC

製品のイメージとしては、本格的な登山用というよりも、アウトドアテイストの街歩きシューズという印象を受けました。
カラフルな配色のシューズもあり、キャンプやフェスで履いたら似合いそうです。

レトロフューチャー

ハイテク(ハイ・テクノロジーの略)という名前は、1980年代くらいの古さを連想させます。

個人的には子どもの頃、スーパーの靴売り場で売っていたようなダサいシューズを連想します。
時代がひとまわりして、30~40年前の流行が新鮮に感じられる時代になったというのは衝撃的です。

ハイテックのヴォルクハイ

ミズノとディアドラを組み合わせたようなロゴは匿名性があります。
全国のABCマートで売られているのですが、ほかの人ともかぶりにくそうです。

HI-TEC

都会で履いたら意図的な「はずし」っぽくみえて、クールに思われるかもしれません。
絶妙に計算された「抜け感」「ダサかっこよさ」という特徴が伝わってきます。

WOLK HI WPの特徴

ハイテックのウェブサイトで見たなかでは、最新のEASTEND WPというモデルがよさそうでした。
しかし田舎のショッピングセンターにあるABCマートでは、取り扱われていませんでした。

店頭に並んでいた製品のなかで、AORAKIやAMACROといったモデルと迷ったすえ、WOLKを選びました。

ハイテックのヴォルクハイ

WOLK(ヴォルク)シリーズは2022年の秋冬モデルで、ほかにもローカットのモデルやサイドゴアブーツがラインナップされています。

いずれもブラックモデルはソールもアッパーも艶消しの黒一色で、軍用シューズのように精悍な印象を受けます。

シンプルなルックスは、ジーンズでも登山用パンツでも似合います。
ファッションアイテムとしての使い勝手もよさそうです。

ダナーライトと似ている

ヴォルクハイを選んだ理由のひとつは、有名なトレッキングシューズのDANNER LIGHTに似ているからです。
ダナーは憧れのブランド、なかでもダナーライトはロングセラーの鉄板製品といえます。

米国製ダナーライトの正規品は、いまや7万円を超える高級品。
ABCマートで販売されているベトナム製の廉価版、ダナーフィールドでも3万円を超えます。

いずれも本物のゴアテックスとビブラムソールを搭載して、アッパーの素材はフルグレインのウォータープルーフレザーです。
将来的にソール交換も可能というハイスペック製品なので、価格が高いのは納得できます。

王道のハイカットスタイルは美しいですが、素材と外観は武骨そのものです。
さらに重量は片足で600グラム以上あります。

自分の用途は低山ハイキングが中心なので、そこまで重たいブーツは必要ありません。
自転車に乗ることも考えると、シューズは軽い方が有利です。

オールスターとも似ている

ハイテックのヴォルクハイは軽くて防水性もあり、ダナーライトの進化版アーバンモデルという感じがします。
さらに価格は十分の一というコスパの良さが魅力です。

ハイテックのヴォルクハイ

ミリタリー風のシンプルな外観は合わせる服を選びません。
コンバースのオールスターにも通じるブラックのハイカットシューズは、リトルブラックドレス(LBD)のような定番品といえます。

オールスターにも1万円を超える防水ゴアテックスモデルはありますが、登山靴も兼ねられるハイテックのほうが汎用性は高いです。

最終的にABCマートのアプリクーポン500円引きも適用させてもらい、7,000円を切る低価格でヴォルクハイを購入できました。

WOLK HI WPの感想

店頭でいくつか試して、サイズは26.5センチを選びました。

ハイテックのヴォルクハイ

シューズは足との相性があるので、近くのABCマートで試し履きできるというのも安心材料です。
Amazonでいくつか取り寄せ返品するという手もありますが、巨大な段ボール箱を発送するのは手間がかかります。

購入直後に重さを測ってみたところ、左右とも片足400グラム程度でした。
ハイカットのシューズとしては、軽い部類に入ると思われます。

ハイテックのヴォルクハイ

謎の薄型インソール

初期装備のインソールは、HI-TECとプリントされた薄手の安っぽい素材でした。
触った感じはOrthoLiteでもなさそうです。

ハイテックのヴォルクハイ

さすがにこれでは頼りないので、手持ちのちょっといいインソールに交換しました。

インソールはワークマンで売られている2,000円くらいの廉価品でも、換えた方が性能は格段にアップします。

ウィズは2E

ハイテックのヴォルクハイを履いて、山を軽く歩いてみました。
以下は標高差200メートルくらいの低山尾根を、上り下りしながら8キロくらい縦走してみた感想です。

靴の幅は2Eサイズということもあり、全体的にスリムで無駄のない形状です。
試着時は問題なかったのですが、長く履いていると小指が靴に当たって痛くなってきました。

ハイテックのヴォルクハイ

痛みはだんだんひどくなり、家に帰ると右足の小指の爪が黒ずんでいました。
さいわい爪が取れるほどの重症ではありませんでしたが、自分にはウィズが狭かったようです。

履き心地は固め

またくるぶし周辺にクッション材が入っていないせいか、一番上まで靴ひもを締めると足回りがタイトに感じます。
足首が痛くならず、適度なフィット感を得られる締め付け具合になるよう、靴ひもを何度も調整しました。

ハイテックのヴォルクハイ

下り坂では足首まわりのパーツで体重を支えられたので、足のつま先が痛くなることはありませんでした。
ここはハイカットシューズの利点で、期待どおりの性能でした。

一般的なトレッキングシューズと比べるとソールのクッション性が弱く、全体的に固めの履き心地です。
ゴム製の長靴を履いて、ボコボコ歩いているような感触でした。

ハイテックのヴォルクハイ

ヴォルクハイは見た目のスマートさを優先した製品なのか、正直なところフィット感は個人的にいまいちです。

外観どおりのスパルタンなシューズですが、余計な機能を省いた軽量シューズが好きな人にはマッチすると思います。
ごてごてした装飾過剰な登山シューズが苦手なかたにもおすすめです。

アッパーが傷つきやすい

ハイテックのヴォルクとアオラキは、アッパー素材が安っぽいヌバックのような合皮でできています。
見た目はつや消しで触った感触も気持ちよいのですが、耐久性はいまいちでした。

山から戻ると、岩場でぶつけたのか、アッパーに大きな傷がついていました。

ハイテックのヴォルクハイ

表面が若干起毛したような素材でほこりを吸着しやすいのか、全体的に白っぽく汚れてしまいました。

ハイテックのヴォルクハイ

革靴用のブラシをかけてあげれば、だいたいきれいになります。
それでも残っている汚れは、ウェットティッシュで拭き取る必要がありました。

ハイテックのヴォルクハイ

たった1回の登山でこの傷み具合です。
履くたびに洗ってメンテナンスすれば汚れは取れると思いますが、合皮が削れた跡は残ります。

ハイテックのヴォルクハイ

早めのエイジングを楽しめますが、日頃の手入れが面倒なかたには向いていないシューズです。

GAMAHEXは強力

ヴォルクハイには「ガマヘクス(GAMAHEX)」というすべり止め機能がついています。

GAMAHEX

カエルに着目して開発された防滑ラバーソールとのことで、蝦蟇(Gama)+六角形(Hexagon)を組み合わせた造語かと思われます。

GAMAHEX

ソールの赤い部分が、ガマヘクスに相当する部分のようです。

ハイテックのヴォルクハイ

ボロノイ図のように分割された多面体の突起があり、そのうえに六角形の凹凸があります。
よく見ると六角形の凸面上にも細かいでこぼこがあり、4段構えくらいのすべり止め対策が施されています。

ハイテックのヴォルクハイ

木の根や岩場など、滑りやすそうな路面で片足だけ体重をかけても、滑ることはまったくありませんでした。

ハイテックのヴォルクハイ

おろしたてのシューズで、ソールがまだ摩耗していないという事情はありますが、ガマヘクスのグリップ力は期待以上でした。
滑りにくさという点では、ハイテックも有名ブランドの登山靴に引けを取らないといえます。

DRI-HIの防水透湿性

防水性を試すため、山のなかで少しだけぬかるんだところを歩いてみました。
湧き水がしみ出ている程度の水たまりで、アッパーも多少濡れましたが、シューズのなかまでは浸水しませんでした。

ハイテックのヴォルクハイ

ちょっと水がかかるくらいであれば、ドライハイのウォータープルーフ機能が十分に発揮されているようです。

またハイカットの靴でも、極端に足が蒸れるという感触はありませんでした。
透湿性のほうもちゃんと効いているようです。

大雨で浸水…

さらなる防水テストのため、雨が激しく降っている日に近所を歩いてみました。

ハイテックのヴォルクハイ

風も強く、横なぐりの雨で足元はびしょぬれです。
さらに夜間で見通しが悪かったので、暗がりのなか路面にできた深い水たまりに何度か足を突っ込んでしまいました。

最初の15分くらいは問題なかったのですが、徐々にシューズのなかに水がしみ込んでくる感覚がありました。
歩き続けると浸水が悪化してきて、明らかに内部でジュブジュブいっています。

ハイテックのヴォルクハイ

家に帰って確認したら、シューズのなかは盛大に濡れていました。
ハイテックのDRI-HIという防水機能は、激しい雨や深い水たまりに耐えられなかったようです。

ハイテックのヴォルクハイ

タグに書かれていたDRI-HIの説明を読んでみると、「※完全防水ではありません」と注意書きがありました。

HI-TECのDRI-HI

この商品は、アッパーとタンのインナー材それぞれに、優れた耐水性と透湿性を備えた透湿防水フィルムを使用しています。
また、ソール接着面からは漏水しにくい設計のため、短時間での浸漬状態での防水性を備えています。

ゴアテックスのような防水透湿メンブレンではあるものの、もともと防水性は完全でなかったようです。

ライトとストームの違い

また今回購入したヴォルクが搭載しているのは、DRI-HI LIGHTという簡易版の防水機能です。
イーストエンドなどに使われているDRI-HI STORMという上位版であれば、さらに強力なウォータープルーフ性能を得られたのかもしれません。

HI-TECのDRI-HI

ムースターのオンラインショップに掲載されている機能説明によると、ドライハイ・ストームの耐水圧は10,000mm、透湿度は5000g/m2/24hrとのことです。
ドライハイ・ライトについて数値の説明は見つかりませんでしたが、名前と価格からしてストームに劣ることは明らかです。

HI-TECのDRI-HI

一般的に、ゴアテックスの耐水圧は4万以上、透湿性も1万は超えるといわれます。

ドライハイ・ストームは耐水圧が低い代わりに透湿性は高いとか、そういった特性もありません。
いずれの数値もゴアテックスに見劣りします。

今回試したドライハイ・ライトの性能はおそらくそれ以下で、防水透湿機能もおまけ程度と考えられます。

ゴアテックスとの比較

あえて廉価な防水シューズを試してみましたが、結局はゴアテックスのよさを再確認することになりました。

その後あらためて、普通のゴアテックス搭載トレッキングシューズをAmazonで購入しました。
アディダスのテレックスAX4という製品で、雨天時もまったく浸水せず重宝しています。

AX4についてはこちらでレビューしています。

アディダスのゴアテックスシューズAX4感想

ほかの購入候補として、ABCマートで売られているホーキンスや、ヒマラヤスポーツの独自ブランド、ビジョンピークスの防水透湿シューズも検討していました。
しかしこれまでの経験からすると、シューズの防水性は値段に比例しているように思います。

アウトドアブランドのそこそこ高価なシューズに搭載されている、キーンのKEEN.DRYやコロンビアのOutDryはGORE-TEXに匹敵すると考えられます。
その他メーカーのひとまわり安い独自の防水機能は、ハイテックのドライハイとおそらく似たようなレベルと推測されます。

HI-TECのDRI-HI

もしハイテックのなかでドライハイ・ストーム搭載の製品を選ぶとしたら、イーストエンドの高級ラインで定価は1万円を超えます。

あくまでシューズの防水透湿性を重視するなら、少し予算を増やしてゴアテックス製品を買ったほうが無難といえそうです。

まとめ

登山兼雨の日用の防水シューズがほしかったのですが、ハイテックのヴォルクハイは普通に浸水してくる期待外れの商品でした。
ドライハイ・ライトという防水透湿機能も、本格的な雨天では役に立たないようです。

ハイテックのヴォルクハイ

ハイカットのヴォルクは履き心地も固めで、長時間の登山では足が痛くなりました。
内部の幅も狭めなので、足幅が広い人は避けた方がよさそうです。

ハイテックのヴォルクハイ

余計な装飾がなく、マットブラックの外観はすっきりしていて、どんな服とも合わせやすそうです。

街歩きには適したおしゃれスニーカーですが、本格的な登山に使うには厳しいかと思いました。
アッパーの素材が傷つきやすく、汚れがつきやすいのも注意が必要です。

ハイテックのヴォルクハイ

ガマヘックスというソールのイボイボだけは強力でした。
濡れたタイルの上や岩場を歩く際など、特殊な用途では役に立つかもしれません。

ハイテックのGAMAHEX

ハイテックに難点は多いですが、価格が安く、地方のABCマートでも手軽に買えるのはメリットです。
あえてそこまで性能にこだわらず撥水程度でよしとするなら、選択肢に加えてもよいかと思います。

数回履いただけで傷だらけの残念なWOLK…
ダメもとでリサイクルショップに持ち込んでみたら、なんと200円くらいで引き取ってもらえました。

街中でほかにハイテックを履いている人はまだ見たことがありません。
人とかぶらないシューズにこだわっている方には、ひそかにおすすめできるブランドです。

ハイテックシューズのイラスト