街履きから山登りまで使えるデザイン性のすぐれた防水シューズとして、エーグルのレインブーツ、KEENのピレニーズ、ニューバランスのMT620をご紹介します。
エーグルはゴム製なのに見た目は革靴のようで、ビジネス利用に向いています。
ただし歩きやすさと蒸れにくさという点では、KEEN.DRYやGORE-TEXをそなえたトレッキングシューズが勝ります。
KEENとニューバランスの登山靴は、どちらも黒色でシンプルな外観のため、街中で履いても違和感ありません。
ソールの摩耗が早まるデメリットはありますが、防水登山靴ですべて済ませるのもありかと思います。
3足それぞれレビューしたうえで、防水シューズを普段履きする際の利点と欠点について考察します。
エーグルのレインブーツ
ゴアテックス搭載の防水シューズを買うまでは、エーグルのラバーブーツを雨靴として活用していました。
革靴そっくりのゴム靴
フランスのエーグルはゴム製ラバーブーツを手がける老舗で、実用性とデザイン性も両立しています。
このブーツは革靴のような見た目で、ソールの縫い目までゴム素材で表現されています。
とはいえ本革ではない分、ブランド品にしては価格が安いのもメリットです。
当時は靴ショップというより、乗馬グッズの販売店でひっそり売られているような、隠れたアイデア商品でした。
普通の長靴に比べると、同じゴム製でも履き心地がよかった記憶があります。
足が蒸れやすい
ラバー素材は通気性がないため、長く履いていると足が蒸れてきます。
またごわごわした感触で柔軟性にとぼしく、普通の靴より歩きにくいのも事実です。
サイドゴアは丈が短いので、上から空気が循環しやすい構造です。
長靴タイプよりは、足の蒸れを感じにくいといえます。
履き口のゴムのおかげで、スリッポンのように着脱が楽なのも利点です。
ハイカットのひも式ブーツに比べれば、ストレスをほとんど感じません。
現行品はロゴが目立つ
最近は類似品が多く出まわってきたせいか、AIGLEのロゴがシューズの前面に大きく取り付けられています。
スーツの裾からロゴが見えると恥ずかしいので、仕事用としては使いにくくなった印象です。
レインブーツの現行製品には「カーヴィル2ラバーブーツ」、「ソフトレイン2」、アウトドア仕様の「レスフォープラス2」といったモデルがあります。
昔はAIGLEロゴが、履き口のタグに縫い付けられていました。
使い込むうちにタグが取れてしまうので、どこのブランドかわからない匿名性の高さもメリットと考えていました。
雨対策という面で、ゴム長靴は完璧でした。
ただしソールもだいぶ削れて寿命が近くなり、後述のKEENやNew Balanaceのほうが履き心地もよかったので、エーグルのブーツは中古で売却しました。
かなり傷んだ状態でしたが、エーグルはブランド力もあるのか、わりと高値で引き取ってもらえたのはラッキーでした。
キーンのピレニーズ
次に買った防水シューズ、KEENのPYRENEES(ピレニーズ)をご紹介します。
「ピレニーズ」という聞き慣れない製品名ですが、フランスとスペインの国境に位置する「ピレネー山脈」を意味するようです。
富士山の砂走りで反省
10年以上前に富士山の須走口から下山したとき、「砂走り」という火山灰の積もったエリアを通りました。
足のすねまで潜り込むほど砂が深く、ふかふかで気持ちよさそうなのですが、砂のなかに大きな石がひそんでいます。
急斜面でスピードも出るためザクザク下っていくと、つま先を石にぶつけて痛い思いをします。
この日はトレラン用でもない、普通のランニングシューズを履いていました。
トレーニング用の安いadizeroで、アッパーメッシュが薄くて軽いタイプです。
登りはよかったのですが、砂走りの下りは石に削られ、シューズがずたずたになりました。
つま先の保護パーツもなかったので、石にぶつけた指先の爪が青くなり、しばらくして親指の爪が取れました。
足の爪はがれはその後も何度か経験したのですが、最初に取れたときのグロテスクな見た目と、ぞわぞわする感触が今でも忘れられません。
富士山級の山に登るときは、やはりちゃんとした登山靴を履かないとダメだと痛感しました。
デザイン性にすぐれたブーツ
富士山の須走口にリベンジして、さらに御殿場ルートの大砂走も踏破するため、KEENのピレニーズを買いました。
本革アッパーに金属製のくつひもフックという、レトロな外観のハイキングシューズです。
他の製品のように凝ったパーツがごてごてとついておらず、ミニマムな外観に惹かれました。
アッパーもソールも黒一色なので、ほかの服とも合わせやすそうです。
山だけでなく街履きにも通用する、洗練されたデザインといえます。
下り斜面に強い
ミッドカットのブーツは脱ぎ履きするのが面倒ですが、富士山の砂走りではおおいに威力を発揮しました。
さらに登山用のゲイターもつけてズボンの裾をカバーすると、シューズが埋没しても砂はほとんど入ってきません。
つま先はソールと同じ固いラバーで保護されているため、石を蹴っても指先は無事です。
レッドウィングやダナーのワークブーツと似た感じもあるのですが、要所要所が強化されているKEENは、さすが登山用です。
ローカットのシューズはどれだけ靴ひもをきつく締めても、下山の際につま先に荷重が集中して、爪が青くなることが多いです。
ピレニーズはシュータン部分が足のすねをサポートして、下り斜面で体重を支えてくれます。
これがミッドカットの利点で、つま先だけに体重がかかって、指先が痛くなるのを防いでくれます。
KEEN.DRYの防水性
購入時はあまり意識していませんでしたが、ピレニーズにはKEEN.DRYという独自の防水透湿素材が使われていました。
ゴアテックスの類似品で、防水性能は思った以上に強力でした。
アッパーのレザーも耐水性があり、ミッドカットで履き口から水も入りにくいせいか、靴の中まで浸水したことは一度もありません。
雨の日はもちろん、林道で川のようになった洗い越しを歩いても、KEEN.DRYは無敵でした。
これまでゴム長靴以外の防水シューズを履いたことがなかったので、深い水たまりに足を突っ込んでも濡れないのは不思議に思いました。
ピレニーズはデザイン性がいいので、雨天時は街中でもレインシューズとして活用していました。
本格的な登山靴ながら、おしゃれな革製ブーツに見えて使いまわしやすいのがメリットです。
低山ではオーバースペック
「年に一度は富士山登山」を目標に、4年かけて吉田口・富士宮・須走・御殿場の主要ルートを制覇しました。
登山はつねに軽装・日帰りのUL(ウルトラライト)ハイキングがモットーなので、日ごろ登るのは低山が中心です。
いちおうキャンプ用のソロテントは持っていましたが、山に運んで使ったことはありません。
自分の行動範囲では、ミッドカットで重厚なピレニーズが若干オーバースペックに思われてきました。
当時は首都圏から日帰りできる範囲で、奥多摩や丹沢によく通っていました。
富士山以外で登ったことのある高い山は、せいぜい標高2017メートルの雲取山、1873メートルの蛭ヶ岳くらいです。
マラソン趣味が高じてトレイルランニングも楽しむようになり、キタタン・ハセツネといった地元のトレランレースにも出ていました。
山のなかを走ってみると、それなりに岩場やぬかるみのあるコースでも、軽量なトレランシューズで通用してしまいます。
KEENは高く売れる
KEENのピレニーズは重くてかさばるため、雨の日以外は次第に履かなくなりました。
また「富士登山競争」というレースに何度か出てみると、砂走りさえ下らなければ、シューズはマラソン・トレラン用で十分と気づきました。
結局引っ越しを機に、KEENのブーツは断捨離してしまいました。
そこそこ使い込んでソールも擦り減っていましたが、リサイクルショップで高く売れたのは意外です。
KEENというブランドが人気なのか、見た目がおしゃれだからか、中古市場でもニーズがあったようです。
KEENのピレニーズは、今でも販売されているロングセラーの定番商品です。
もしまた砂走りを下ったり、本格的な登山に挑戦する機会があったら、ピレニーズを買い直してもいいかなと思っています。
本革で使い込むほど味が出るため、愛着をもってメンテナンスできるトレッキングシューズです。
ニューバランスのMT620
最後に2017年頃購入した、ニューバランスのMT620というシューズをご紹介します。
1万円以下で買えた
MT620は今から7年ほど前に、通販のAmazonのセールを利用して8,000円台で購入できました。
27センチから0.5刻みで3サイズ取り寄せ、選んだのは少し大きめの28センチです。
高機能なゴアテックス入りのシューズが1万円を切るのはめずらしく、今ほどインフレの進んでいない当時でも格安でした。
最近、傷んだMT620の代わりに類似品を探しましたが、2023年時点で1万円未満のゴアテックスシューズはもう見つかりませんでした。
実店舗も通販もかなり探しましたが、MT620のように数千円で買えるのは、もはやゴアテックス以外の独自防水透湿シューズしかありません。
厚めのソールが快適
MT620は廉価ながら、登山用としても十分実用的です。
アッパーはメッシュ地の柔らかい素材ですが、つま先は頑丈に保護されています。
CUSH+という機能がついた、厚めのソールも快適でした。
重さは片方330グラムくらいで、この手のシューズとしてはまだ軽いほうかと思います。
ゴム製だったエーグルのレインブーツに比べると、歩きやすさは格段に向上しました。
ソールのクッション性も比較にならないくらい強化されています。
防水性能はばっちり
ゴアテックスの防水性能は期待どおりでした。
かなり雨の強い日に履いても、シューズのなかまで浸水してくることはありません。
普通の靴のように、水たまりを踏んだくらいでソールから濡れてくるような不安も感じません。
さすがに台風並みの大雨暴風だと、履き口から水が入ってきたことはあります。
そこはローカットシューズの弱点なので、山で履くならスパッツを併用したほうがよいかもしれません。
透湿性については少々わかりにくいですが、長く履いていて靴のなかがじっとり濡れてくるような不快感はありませんでした。
アッパーがメッシュ素材とはいえ防水透湿膜が入っている分、普通のスニーカーより湿気はこもるような気がします。
完全に晴れた日であれば、ゴアテックス非搭載のシューズのほうがドライで快適に歩けそうです。
ローカットで十分
登山靴といえば重厚なミドルカットを想像しますが、用途によってはローカットのほうが使い回しやすいと思います。
KEENのピレニーズも役に立ってくれましたが、私にとっては軽量なニューバランスで十分でした。
MT620は軽くてかさばらないため、特に登りで足を上げるのが楽になります。
ちょっとしたトレイルランニングもこなせるほど、機動性の高いトレッキングシューズといえます。
見た目が普通という利点
MT620はトレッキングシューズですが、ローカットなのでそれほど圧迫感はありません。
ちょっとごつめのスニーカーといっても通用すると思います。
普通のシューズのように街中や電車でも違和感なく履けて、カジュアルな仕事用としても使えるのは便利でした。
雨の日は革靴の代わりに、ニューバランスを履いて打ち合わせに行くこともありました。
当時は格安防水シューズとしてひそかに流行っていたのか、東京都内で電車に乗っていて、同じMT620を履いている人を見かけたこともあります。
自転車で役立つ防風性
ゴアテックスのメンブレンは防風性もあるため、寒い季節に足が冷えるのを防いでくれます。
特にロードバイクに乗っているときは、風に当たって手足の指先から冷えてきます。
ゴアテックス入りの手袋やシューズがあれば、おおげさな保温機能がなくても冷気を防げます。
冬場はフラットペダルに付け替えて、ゴアテックスのシューズで乗っていました。
厚手の靴下と組み合わせれば、トゥカバーを付けなくても指先は冷えません。
自転車で気になる重量増加については、金具を含めたビンディングシューズとたいして変わらないかもしれません。
ただ靴のボリュームが大きくなるので、フレームやチェーンとこすれやすくなります。
当時は自転車で峠に行って、そのまま山に登るような複合トレーニングを試していました。
フラットペダルとトレッキングシューズを組み合わせれば、活動の幅が広がります。
普段使いのデメリット
汎用性が高いとはいえ、山登りのあとは泥やほこりで汚れるため、こまめな掃除が必要になります。
毎回ブラシやウェットティッシュで拭いて、革靴並みにメンテする習慣が身に付きました。
そのおかげか、MT620はだいぶ長持ちしたと思います。
つま先からソールがはがれ、アッパーもライニングもボロボロにまるまで履き込みました。
町でも履けるとはいえ、アスファルトの上を歩くとソールがすぐに擦り減ります。
ゴアテックスシューズを山以外で履くのは、寿命が縮んでもったいない気もしました。
最後のほうは靴裏の突起がだいぶ減って、砂利の浮いた斜面で滑るようになってしまいました。
ソールがここまで傷むと、さすがに登山靴として使うのは厳しいです。
アッパーのメッシュが破け、防水性も失われてしまいました。
寿命をまっとうしたMT620は、しばらく晴天ハイキングに活用したのち、アディダスのゴアテックスシューズに買い替えました。
ゴアテックスの汎用性
最近は登山靴以外でも、ゴアテックスを搭載したスニーカーや革靴が出ています。
しかしハイキングの分野はニーズに対してシューズの供給量が多いせいか、ほかより価格が安いように感じられます。
たとえ街履きでソールの摩耗が早まったとしても、トレッキングシューズを普段の雨靴として活用するのは経済的かもしれません。
ソール摩耗のジレンマ
KEENのピレニーズやニューバランスMT620は、利用シーンを選ばない汎用性の高さが特徴です。
ただし舗装された路面を歩くと、目に見えてソールが擦り減ります。
やはり山歩きを前提としたトレッキングシューズらしく、ソールの摩耗性よりもグリップ力を重視して設計されているようです。
雨靴と登山靴を兼ねれば、お金がかからず持ち物も減らせて合理的です。
ただし使用時間が長くなり、雨ばかりの過酷なコンディションにさらされて、靴の寿命は短くなります。
トレッキングシューズを街中で履くのは、もったいないことかもしれません。
比較的安いとはいえ1万円はするので、普段履きには別のシューズを用意したほうが効率的といえます。
とはいえ一足で済ますのも二足をローテーションして寿命を延ばすのも、金額的には変わらない可能性があります。
シューズの保管場所を減らせるという意味では、使い勝手のよい一足を履き込んで、こまめに買い替えるほうが有利と考えることもできます。
ランニングシューズの共用化
ジョギング用のランニングシューズを普段履きする場合も、同じジレンマがあります。
マラソン本番用の高価な勝負シューズは、さすがに温存したい気持ちがあります。
しかし練習用の安いシューズなら、近所の散歩や買い物に使いまわしても差し支えなさそうです。
地方に行くと、仕事用のスーツにランニンググシューズを合わせているおじさんをたまに見かけます。
自分と同じ発想で、「一足を使いまわせば合理的」という発想から、外見を気にしなくなったのかもしれません。
さすがに「よそいき」の用事には革靴を履いていきたいと思いますが、「シューズを共用して楽にすませたい」という誘惑はつねに感じます。
一般靴のゴアテックスは高い
雨天時の散歩や買物用に、カジュアルシューズのゴアテックス化も考えてみたのですが、価格が案外高いと気づきました。
たとえば有名どころでコンバースのオールスター、ゴアテックスモデルはローカットでも1.5万円くらいします。
もとが安めのキャンバスシューズなので、価格が3倍以上になっているのは衝撃的です。
VANSのゴアテックス版も、似たような価格帯です。
国内メーカーの製品では、アシックスのペダラやランウォーク、ミズノのME-05 GTX(最近IIも出た)、OD100GTX 7など、ゴアテックス仕様のカジュアルシューズがごくわずかに存在します。
ただし定価はいずれも1万円以上します。
また日本企業のウォーキングシューズは、靴紐の横にファスナーが付いたシニア向けで、人によってはダサく見える製品が多いのも残念です。
予算が合えば、スピングルやアシックス・ランウォークの本革製といった、ハイエンドな防水シューズも手に入ります。
カジュアルシューズの分野はゴアテックスの需要が少ないのか、商品数が限られ、価格も高止まりしている印象です。
機能性がすぐれたトレッキングシューズのほうが、ウォーキングシューズより安いという逆転現象が生じているようです。
それならば廉価なゴアテックス登山靴を使いまわして、短期間で交換していくのも合理的と考えられます。
まとめ
エーグルのレインブーツとKEENのピレニーズ、ニューバランスのMT620というシューズをご紹介しました。
いずれも防水仕様の雨靴ですが、総合的な使いやすさはKEEN.DRYやゴアテックスが勝ります。
富士山の砂走りほど過酷なコースを歩くのでなければ、ローカットのトレッキングシューズで個人的には十分だと悟りました。
最近は革靴でもゴアテックスをそなえたビジネスシューズが出てきたので、あえてエーグルを選ぶ必要もないかと思います。
自分はスピングルのBiz-601というビジネスシューズを活用しています。
革靴ライクな外観とスニーカーのような履き心地で、さらにゴアテックスも搭載したすぐれものです。
デザイン志向の防水シューズ
見た目重視なミニマリストのかたには、サロモンやノースフェイスの渋いハイキングシューズが似合うかもしれません。
いずれも登山用ながら、並みのカジュアルシューズよりスリムで洗練されたデザインです。
ほかのブランドに比べて見た目がシンプルなので、普段履きと軽登山を兼ねられます。
予算が許すならば、アークテリクスの最高級シューズもミニマムでかっこいいと思います。
見た目よりもコスパ重視の堅実派には、ニューバランスやアディダスのような大手メーカーが出しているゴアテックスシューズがおすすめです。
実店舗で見かける機会が少なく、アウトドア分野での知名度も低いですが、意外と安くて性能が高いと感じています。
MT620の次に新しく購入したアディダスのTERREX AX4については、こちらで詳しくレビューしています。