夜間券でも満喫できた大阪・関西万博レポート

大阪・関西万博を「夜間券」で訪れた体験レポートです。

最安に見えるナイトパスは実質的に割高ながら、20時以降は会場が空いてきて、人気パビリオンもいくつか見学できました。
予約なしでも見学できた各施設の見どころや、会場内で手に入る値段の安い飲食物などをご紹介します。

ミャクミャク

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万博FOMOで夜間券

始まるまでは、たいして行く気がなかった大阪・関西万博…
たまたま知り合いがはまって「もう5回も行った!」という話を聞いて、にわかに興味を持ちました。

さえない前評判と裏腹に、意外と盛り上がっているらしいという報道を聞くたび、万博に取り残される恐怖(FOMO:Fear Of Missing Out)をひしひし感じていたのも事実です。

ミャクミャク

わざわざお金を払って行列に並ぶのも嫌ですが、期間限定のイベントなので、行っておかないと後から後悔しそうな不安もあります。
万博自体たいして楽しめなかったとしても、後学のため、パビリオンや会場の様子は視察しておきたい気持ちもあります。

万博会場

とはいえ個人的な優先度は低いので、用事がひと段落してから万博に行こうと思っていたら会期も半分終わってしまいました。
今年は近畿地方が早めに梅雨明けして連日猛暑日ですが、涼しくなるのを待っていたら終盤の駆け込み需要と重なってしまいそうです。

天気予報を見ながら思い切って3日後の万博チケットを購入し、当日のホテルも大阪市内に予約しました。
2日目の予定はフリーとして、1泊2日で大阪万博をチラ見してくる弾丸ツアーで訪問してきました。

夢洲駅

夜間券は本当にお得なのか?

「昼間は暑そうだし、どうせ1日で全部は見切れないから、ナイトパスでいいか?」と考え、17時以降に入場できる夜間券(3,700円)を購入しました。

夜間券

あとから考えると、夜間券には平日/休日の区別がありません
フルタイムでいられる平日券(6,000円)に比べて、休日もOKな一日券は7,500円で、価格が25%もアップします。

夜間券

また開場時間9~22時(13時間)のうち、夜間券でいられるのは17~22時の5時間です。
しかもパビリオンや大屋根リングは21時で閉まるので、現地で遊べるのは実質4時間くらいということになります。
(実は後述のトワイライトキャンペーンで5時間いられます)

夜間券

一見、最安でお得そうに見える夜間券ですが、時間単価で見ると割高です。
しかも平日に使うのはもったいないとわかりました。

通期パスを買うか否か

当日の昼間は心斎橋で暇をつぶしてから万博に行ったのですが、時間に余裕があるならチケット代をケチらず平日券を買えばよかったと後悔しています。
話のネタの下見程度という気持ちだったので、料金最安を目指して初日は夜間パスを選んでしまいました。

夕方から行ってみて予想以上に万博がおもしろければ、翌日は一日券か通期パスを購入して再訪問する計画を立てました。
夜だけ見て十分満足したら、2日目は普通に大阪観光して帰る予定です。

夢洲駅

万博の評判はよさそうですが、さすがに3万円もする通期パスをいきなり買う度胸はありません。
元をとるには平日5回も行かなければならず、旅費や食費も馬鹿にならないです。

知られざるトワイライトキャンペーン

当日は地下鉄中央線の夢洲駅で降りて、東ゲートから万博会場に入りました。
電車はそこそこ混んでいて、駅にも人がたくさんいます。

夢洲駅

17時よりちょっと早めの15分前には東ゲートに到着したのですが、予想していた行列もなくがら空きで拍子抜けしました。
夜間券の入場時間まで、外で待っているのももったいないので、試しに荷物検査を受けてゲートをくぐってみました。

東ゲート

スマホ画面のQRコードはエラーで弾かれると思ったのですが、特に何事もなく通過できてしまいました。
不思議に思ってスタッフのかたに聞いてみたところ、今はナイトパスでも1時間早く、16時から入場できたとのことです。

あらためて調べてみると、万博公式ページに「トワイライトキャンペーン」のお知らせが出ていました。
だいぶ前の5月7日から、夜間券の入場時間が1時間前倒しされていたようです。

購入時に告知がない理由

チケット種類の説明画面や、夜間券の購入プロセスを振り返ると、トワイライトキャンペーンの情報はなかった気がします。
かなりお得なルールなのに、購入者に対して告知がないのは不親切に思います。

ただし、自分のようにキャンペーンの存在を知らないまま定時に来てしまう人もいることで、夜間組の入場時間がばらけるメリットはありそうです。

東ゲート

そもそもそれが運営側の狙いだったのかもしれません。
公表する情報を意図的にコントロールしている節もあり、万博を効率よく攻略するには運営の裏をかいた綿密なリサーチが必要そうです。

いずれにしても、ゲートでまったく並ばずに入れたのはラッキーでした。
時間延長キャンペーンを逃して悔しい反面、余裕をもってストレスなく入場できました。

東ゲート

パビリオン予約はほぼ不可能

ほとんど思いつきで入場チケットを直前購入したため、「パビリオンの予約」という難関ポイントに考えがおよびませんでした。

結論からいうと、公式混雑予想カレンダーで「余裕あり」表示の平日中日であっても、飛び入り参加でパビリオンの予約は不可能でした。

予約日時の3日前からオープンしていたらしい「空き枠先着予約」はすでに完売。
一縷の望みをかけてトライした「当日登録」という制度も、17時入場ではまったく使いものになりません。

当日登録

万博公式サイトも予約が殺到している時間帯は頻繁にフリーズします。
エラーが出てページが正しく表示されません。

万博公式サイト接続エラー

混雑時にうまくつながったとしても、サイトアクセスまで30分待ちという状況はざらです。

予約のプロではない一般人としては、おそらく前もって計画を立てて「2か月/7日前抽選」に参加しないと、パビリオンの予約は難しいと思います。
週間天気予報を見ながら、天気のよさそうな日を直前で選ぶとしたら、空き枠と当日登録は当てにならないと覚悟したほうがいいです。

当日登録も厳しい

無計画なひとでも万博を楽しめる救済措置とおぼしき当日登録は、入場10分後から操作可能になります。

当日登録

とりあえずゲートをくぐった17時前後にスマホで確認してみたところ、予約可能なパビリオンやイベントはゼロでした。
あまり噂を聞かないマイナーなパビリオンでさえ、すべての時間帯で予約不可の×マークがついています。

当日登録

しばらく間を置いて19時頃、当日登録の画面を見ると、「やや混雑」の△マークが出ているパビリオンが出現していました。
速攻で希望の時間帯を選んで申し込んでみたところ、「予約が確保できませんでした」画面が出ました。

当日登録

ほかのパビリオンや時間帯の△マークを選んで何度か繰り返しましたが、すべて同じエラーが表示されて、先に進めませんでした。

当日登録

しばらく観察していると、やや混雑の△マークは稀に出るものの、ページをリロードするとすぐ消えてしまうとわかりました。
つまり空き表示が画面に出た瞬間、おそらく数秒以内に、他の人が予約を押さえてしまうのではないかと推測されます。

空きが出てもすぐ埋まる

パビリオンの行列待ちや食事中に、何千人もの人が当日予約を狙ってページの再表示を繰り返している状況がイメージできます。
あるいは万博ヘビーユーザーで職人級の人がいたり、端末を何台も用意して予約枠を転売するようなプロもまぎれているのかもしれません。

平日夜7時以降の比較的空いている時間帯でもこれだったので、日中や休日の当日登録はさらにハードルが高いと思われます。
わざわざ万博会場に来て、スマホばかり見ているのももったいないので、パビリオンの予約は早々に諦めて会場散策に向かいました。

万博公式サイト接続待ち時間

どうしても中に入ってみたいパビリオンがあるなら、前もって抽選に申し込むか、当日行列枠があるなら素直に並ぶしかないと思います。
空き枠や当日登録の先着系で予約をゲットするのは、素人にはハードルが高すぎる気がします。

ちなみに自分のiPhone、Safariブラウザでは、個別パビリオンの予約画面を別タブで開けない仕様になっていました。
そのため前の画面に戻るたび、パビリオンの検索リストのトップに戻ってしまい、下にスクロールして項目を追加表示するのが面倒でした。

このあたりも慣れている人なら、もっとうまい検索・予約方法があったのかもしれません。

パビリオンの待ち時間目安

東ゲートを入ってすぐの人気パビリオン、たとえばパナソニックや電力館は予約でしか入れません。

当日予約終了

ためしに前を通ってみましたが、当日枠の案内はありませんでした。
入り口に並んでいたとしても、それはあらかじめ予約した時間を待っている人たちです。

null2は完全予約制

根性で並べば見られる

住友館や当日枠の行列もありましたが、すでに人が並びすぎているせいか新規参加をストップしていました。
近くにある日本館も予約なしで入れたものの、数百人待ちとおぼしき大行列だったのでスキップしました。

パビリオンの行列

およその待ち時間を表示してくれている親切なパビリオンもあります。
たとえば海外パビリオンのカナダ館で90分待ちでした。

カナダ館の待ち時間

万博リピーターで暇つぶしグッズも準備してあるなら、のんびり並んでみるのもありかと思います。
今回は夜間パスの突貫ツアーだったので、なるべく行列の少ないパビリオンに絞って見学しました。

夜8時以降は空く

日が沈んで暗くなると、徐々に会場内の人が減ってくる気配がしました。
帰りのゲートや電車混雑を避けて、早めに帰る人がいるのかもしれません。

パビリオンの予約

特に夜8時を過ぎると、先ほどまでかなり並んでいたオーストラリアやスペインのパビリオンが、がら空きになっていました。
この時間帯は大屋根リングの北側にいたので、モナコパビリオンや「夜の地球」もスムーズに入れました。

夜の万博会場

しっかり定点観測したわけではないですが、終了1時間前くらいになると海外パビリオンはかなり空いてくるようです。
本当に終わり間際になると、建物の前で海外スタッフの人が「すぐ見られるよ~」と日本語で呼び込みをやっている光景も見られました。

下調べしていない未知のパビリオンは、展示に当たり外れがあります。
せっかく長時間並んだのに、展示があっけなかった…という失敗を避けるため、海外系のパビリオンは夜間のボーナスタイムにまとめて見るのが効率よいと思います。

パビリオンの待ち時間

企業系もチャンスあり

今回見たかったパビリオンのひとつ、飯田グループ×大阪公立大学は18時の時点で20分待ちでした。
ほかに比べればマシとはいえ、まだ会場内で未踏破のエリアがたくさんあったので一旦スキップしました。

飯田グループ×大阪公立大学パビリオン

その後、大屋根リングの下をぐるぐる回りながら再訪すると、20:30には「待ち時間1分」の表示に変わっていました。

たまたま入れ替えのタイミングに出くわしたのかわかりません。
競争率の高い企業パビリオンで、ほとんど待たずに入れたのはラッキーでした。

見学できたパビリオン紹介

夜間チケットの短い時間で、予約もなく体験できたパビリオンをご紹介します。
海外パビリオンや企業パビリオンも、短縮ルートや閉館間際ならスムーズに入れたところがありました。

行列のないコモンズ館もすべては行けなかったので、夜間券の持ち時間であれば「見られるパビリオンがひとつもない!」という事態には陥らないと思われます。

UAE(アラブ首長国連邦)

東ゲートにほど近く、日本館の大屋根リングを挟んで向かいにある海外パビリオンです。
隣のカタールやカナダが激込みで行列しているなか、17時台にさくっと入館できました。

建物は単純な形状で、ガラスの箱のなかに天然素材で覆われた柱がランダムに林立しています。
天井は高く、太い柱が冗長に配置されているので、シンプルな構成ながら新鮮味があります。

UAEパビリオン

万博ゲートの建築のように、「いかに柱を少なくして、屋根を薄く見せるか」というチャレンジの逆で、UAEパビリオンは宗教的な静謐さを感じさせるような空間でした。
エジプトの神殿や、イスタンブールの地下貯水池と似ているかもしれません。

柱は葦のような植物か細い木材で覆われて、金具で締められています。

UAEパビリオン

カーペットもアースカラーで、刺激の多い万博会場のなかではめずらしく落ち着いてくつろげる場所です。
地べたに座って映像を見ながら、チルアウトしている人々がたくさんいました。

UAEパビリオン

レストランもあるのですが、入口はパビリオンの外で別になっており、こちらは行列ができていました。

お土産ショップはスムーズに入れます。
現地のスカーフや置物など、そこそこいい値段で販売されていました。

UAEパビリオン

モナコ

日が暮れた19:30頃の時間帯に、モナコ館はかなり空いていました。

メインの円筒形タワーのほか、敷地内に分散された展示スペースがあり、そちらは並ばず自由に入れます。
メインタワーから各展示スペースを巡回する一方通行の見学ルートになっていますが、ルートの途中から乱入できる変則ルールになっています。

モナコパビリオン

先に見学した屋外展示スペースのひとつ、「海を守る」というテーマの建物です。

モナコパビリオン

リサイクルされたプラスチックで、海のなかの様子が抽象的に表現されています。
照明やBGMが穏やかで、瞑想的な空間でした。
冷房も効いているので気持ちよく、つい長居してしまいます。

モナコパビリオン

ほかにも敷地内の小展示スペースには、ミツバチの効用を説明するパネルや木の模型、映像がインタラクティブに動く本などがありました。

モナコパビリオン

ただし海中スペース以外の屋外ゾーンは空調が効いていないので、日中の暑い時間帯に見学するのは厳しいと思います。

モナコ館のメイン建物は少し並んでいましたが、2分待ちくらいですぐ入れました。

モナコパビリオン

建物は4階建てになっていて、3階のワインバーと4階展望ラウンジは入口が分けられています。
夜は展示スペースより、ワインバーのほうに長い行列ができていました。

モナコパビリオン

1階の体験型展示は触覚を重視したインタラクティブな仕掛けがあり、かなりおもしろかったです。

モナコパビリオン

ワイヤーが刺さった揺れる石ころを触ると、触った場所に応じて目の前の映像が変化します。

モナコパビリオン

ほかにもざらざらしたサンゴのようなテクスチャー、回せる球体、空気の出る穴、金属板などがあり、手で触れるとそれぞれ映像が反応します。

モナコパビリオン

映像自体は抽象的で意味がよくわかりませんでしたが、「自然に触れてみよう」的なコンセプトは実感できました。

モナコパビリオン

大人数をさばく必要のある万博パビリオンとしては、大画面のシアターやジオラマのほうが観客の回転効率を上げられると思います。

モナコ館はあえて狭い空間で、パーソナルな親密さを感じさせる触覚展示で勝負しているところが印象的でした。
全体的にデザイン性や展示物のクオリティーが高いと感じます。

モナコパビリオン

ただし2階の「ディスカバー・モナコ」は、望遠鏡型のデバイスでモナコのパノラマ映像が見られるだけです。
ポイントを注視すると場面が切り替わる機能はありますが、見ためのわりに退屈なので、並んでいたらスキップしてもよいかと思います。

モナコパビリオン

モナコ館の入口には高そうなロードバイクも展示されています。

モナコパビリオン

スペイン

スペイン館はライトアップされた巨大な階段に、沈む太陽のような円形の開口部が設けられた建築です。
思わず階段を上って穴に入ってみたくなるような魅力があります。

スペインパビリオン

入口ステージで行われていたフラメンコショーは満員で、通りがかりの観客は滞留・撮影も禁止でした。
ちょうど夜8時でしたが、フラメンコを見なければほぼ待たずに入れます。

スペインパビリオン

スペイン館の内部は前半が黒潮に関連する海の映像展示です。

スペインパビリオン

発電や材料工学?に関した細かい展示もあり、じっくり見ればそれなりに時間がかかります。

スペインパビリオン

後半は一転してオレンジ色の空間になり、スペインの魅力や観光地を紹介する映像、ポストカードが展示されています。

スペインパビリオン

展示内容は凡庸なのですが、床から天井までビビッドな橙色というのが刺激的です。
人によっては強迫的で気分が悪くなりそうな不安もあり、日本ではまず見かけないような空間といえます。

スペインパビリオン

こうした海外の常識(日本の非常識)や美的センスを垣間見れるのが、万博のおもしろいところでもあります。

スペイン館の最後にあるショップでは、高級なオリーブオイルや現地のミネラルウォーター、ビールやワインを購入できます。
ちょうど上階のフラメンコショーが終わったタイミングで、どっと人が押し寄せてきました。

ここの缶ビールは500円と案外安くておいしいのでおすすめです。

スペインパビリオン

併設の飲食スペースで頼むと、コーラやウーロン茶が660円もしてビールより高いです。
ドリンクは隣の売店でテイクアウトしたほうが、だいぶ安くあがります。

スペインパビリオン

スペイン館のレストランは夕方かなり並んでいましたが、20時過ぎはほぼ空いていました。
ほかのフードコートに比べると、料理のお値段は少々高いです。

万博グルメ

オーストラリア

夜8:30、スペイン館の2軒となりにあるオーストリア館も並ばずに入れました。

オーストラリアパビリオン

内部はまず木がニョキニョキ生えた森のようなスペースがあります。
壁が鏡張りになっているので、実際より広く大森林のなかにいるような雰囲気を味わえます。

オーストラリアパビリオン

後半はパネル上のディスプレイをいくつも組み合わせた、没入型のシアターです。
内容は宇宙や空、海の中などをCGで表現したパノラマ映像でした。

オーストラリアパビリオン

スクリーンに隙間も多く、臨場感満点というわけではないのですが、CGのクオリティーは高く、それなりに楽しめます。

オーストラリアパビリオン

スペイン館の展示はたったこれだけで、映像を全部見ても10分くらいで完了します。
必死に予約して見学するよりも、閉館間際にやってきてざっと見てまわれば十分かと思います。

オーストラリアパビリオン

ちなみにオーストラリア館もカフェスペースがあり、1,650円もしますが「ワニの切り身」などめずらしい料理を食べられます。
さすがにコアラやカンガルーの肉は販売されていませんでした。

オーストラリアパビリオン

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

飯田館は見た目の派手さで、一二を争うパビリオンと思われます。
花柄模様の西陣織で全体を包んでおり、日本館よりもダイレクトに「和」の要素を感じられる建物です。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

エントランスのひさしが巨大な扇子の形になっていて、建物本体と同じくギネス世界記録に認定されたそうです。
おそらく空からの撮影と映えを意識した造形のため、地上からは扇子がどれなのかよくわかりません。

18時の時点ではまだ20分待ちだったのでスキップしました。
ほかと比べて行列も短く、予約なしでも比較的入りやすい企業パビリオンです。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

万博敷地内を一巡してきて、20:30に再訪すると「予約なし待ち時間:1分」と表示されていました。
ちょうど観客入れ替えのタイミングに重なったのか、本当に1分程度で中に入れました。

館内では最初に大型スクリーンによる全体説明があり、扉を抜けるとあとは自由行動です。
館内体験時間20~45分とされていますが、ざっと見てまわるだけなら10分もかかりません。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

飯田パビリオンの特筆すべき点は、建物の設計から内部の展示まで、かなり建築色が強いということです。
スポンサーの飯田グループが「戸建て分譲住宅が得意な不動産会社」という背景もあると思います。

奇抜な外観はもとより、展示内容も未来の都市空間や住宅などで、「いかにも万博パビリオン」という王道の構成です。

外観デザインについて、コンセプトや設計者のメッセージが丁寧に展示されているパビリオンは初めて見ました。
ミスタードーナツのフレンチクルーラーのような形状ですが、中身は複雑な鉄骨構造になっています。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

パビリオンの外装に張られているのは特殊加工された西陣織で、生地のサンプルも展示されています。
西陣織は総延長5kmもあり、特殊コーティングされているそうです。

外観はあまり布っぽくなくて、普通のテント生地に模様をプリントしたように見えました。
仮設とはいえ十分な耐久性・耐候性をもたせるため、フッ素やシリコンでぶ厚く樹脂コーティングされているのかもしれません。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

室内中央に位置する未来都市ウエルネススマートシティのジオラマは、メビウス形状の空中庭園のまわりに高層ビルや住宅が配置されています。
コンセプトがWellness(広義の健康)であるせいか、革新的な新技術や交通・インフラといった印象は受けませんでした。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

パンフレットの説明を読むと、メガ人工光合成の施設と水素ショップが隣接していて、ここで各種のエネルギーを製造しているのかと思います。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

ジオラマ内の高層建築やホテル・スタジアムなどをよく見ると、パビリオン設計者の過去作品が登場しています。
外観デザインだけでなく展示物まで監修されていたのか、建築業界の詳しい人向けトリビアが散りばめられています。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

ジオラマは見ごたえあるのですが、外周部に配置されたスマートハウスが普通の家っぽいのは少々興ざめでした。
「これだけ技術の進んだ未来でも、庶民は今と変わらない庭付き一戸建てに住んでいるのか…」と、急に現実に引き戻される感覚です。

実際、100年後になっても都市景観は今とたいして変わらないのかもしれません。
インフラ更新の過程で電線が地中化されたりする可能性はありますが、土地所有の概念や不動産ビジネスが健在なら、戸建て住宅も似たようなものでしょう。

せっかくなら業界最大手の飯田グループとして、分譲住宅の進化系といったビジョンも提示してほしかったです。

個々の住宅の内容については、ジオラマと別に「ウエルネス・スマートハウス」の展示で説明されています。
パビリオン内にある実寸大の住宅模型で、キッチンや寝室もついています。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

とはいえインテリアに目新しさはなく、家具の提供元もカンディハウスでした。
広告とQRコードも添えられています。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

ソファやチェアは実際に座れるので、ほかの人の迷惑にならない範囲で多少は休憩できます。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

スマートハウスの目玉はメディカルトイレです。
糞便を採取して腸内細菌を分析し、未病の改善などに役立ててくれるそうです。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

便器に座ってモニターを操作すると、「採便システムの準備が整いました」と表示され、丸見えのトイレで本当に用を足すのかと一瞬焦りました。
さすがに映像とパネルの説明だけで、観客の便を採取するデモは行われていませんでした。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

体重や血圧などは今でも自分で測れますが、検尿・検便まで自宅のトイレで済ませられるのは便利かもしれません。
見た目の派手さはありませんが、こうした地道なところから住宅設備・サービスの改善が進んでいくのかと学べました。

パビリオンの内壁には超大型の16Kワイドスクリーンがあり、ジオラマの説明映像やAI美女を拝めます。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

出口付近に西陣織のギフトショップと、2階にはレストランもあります。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

カレーが2,800円、パスタは2,400円とフードはかなり高価ですが、コーヒーは600円でいただけます。
パビリオン内は特に時間制限もなさそうなので、日中の営業時間に空いていれば、落ち着いてくつろげる穴場といえそうです。

飯田グループ×大阪公立大学共同出展館

大阪ヘルスケア

人気のありそうなパビリオンながら、意外とすんなり入れたのがNest for Rebornの大阪ヘルスケアです。

大阪ヘルスケアパビリオン

入口の左側に、行列を避けて短縮ルートで見学できるファストパスがあります。

大阪ヘルスケアパビリオン

リボーン体験やモンスターハンターは体験できないものの、館内中央のアトリウム空間でiPS細胞や人間洗濯機を見られます。
最後に協賛企業の飲食ブースも通過できて、ここにあるMetro KITCHENは価格が安いのでおすすめです。

大阪ヘルスケアパビリオン

iPS細胞からつくられた心筋シートは、本万博における主要展示物のひとつです。
まさか予約もなしであっさり見学できるとは思いませんでした。

大阪ヘルスケアパビリオン

心筋シートは3つ展示されているので、ある程度人がばらけてゆっくり見ることができます。
写真撮影も自由です。

大阪ヘルスケアパビリオン

直径3cmくらいの薄い膜がピクピク動いているのは、なかなか衝撃的な光景でした。
電気信号は外部から流しているのかと思いきや、培養液の糖分・酸素を消費することで、自律的に脈動しているそうです。

大阪ヘルスケアパビリオン

本来、心臓で電気信号を発生させている洞結節を置き換えるのか、心臓のどこにでも貼って使えるシートなのはわかりませんでした。

自分は洞性徐脈で精密検査を受けたこともあり、不整脈の持病を抱えています。
従来のペースメーカーでなく心筋シートを移植してもらえれば、電池交換の手間もなく便利そうです。

心筋シートの実用化は意外と早そうなので、自分が生きているうちにお世話になるかもしれないと思うとありがたく感じました。

運よくパソナ館のほうにも入れれば、さらに高度なiPSミニ心臓の展示も見られます。
こちらは予約か行列必至なので、サクッと見たいならヘルスケア館の心筋シートで十分かと思います。

パソナパビリオン

ヘルスケア館のショートコースでは、もうひとつの目玉展示物、人間洗濯機も見学できます。

大阪ヘルスケアパビリオン

あいにくデモ時間は終了していたので、実際に人が入る様子は見られませんでした。
観客がなかに入ることもできません。

大阪ヘルスケアパビリオン

「人間洗濯機」というネーミングからは、何となく人権侵害や虐待のようなイメージを連想します。
前回1970年の大阪万博にも登場した有名展示のひとつで、おじさんの万博ノスタルジーに訴えかける定番ネタといえます。

新型洗濯機の機能については、株式会社サイエンスのウェブページに詳しく記載されています。

装置の外観は55年前のオリジナルとそう変わっていないように見えますが、マイクロバブルによって洗浄力や温浴効果が向上しているそうです。
既存のバスタブに後付けするタイプなら、30万円台から導入できます。

石鹸不要で体がきれいになり、風呂掃除も不要になるとしたら、見た目は地味ながら画期的な技術といえるかもしれません。

1970年万博の人間洗濯機は、あくまで「未来感の演出」というエンターテイメントでしたが、今回の新型は介護や医療の現場で省力化に役立ちそうな実用性を感じさせます。
映画『老人Z』で描かれたような、全自動介護の要素技術として役立ちそうです。

コモンズD~E

万博予約難民の救いがコモンズ館です。
夜間券の持ち時間なら、コモンズをすべて見るだけでも終わってしまうくらい、展示のボリュームがあります。

コモンズパビリオン

AからDまで4棟ある詰め合わせ展示で、独立パビリオンを持たない国が共同でブースを構えています。

コモンズパビリオン

アフリカや中東の小国が多いようです、どういう基準でA~Dに分けられているのかわかりません。
自分が見学したのはコモンズD館だけですが、A~C館も似たような内容のようです。

コモンズパビリオン

コモンズE館だけは規模が小さく、よくわからない神輿やマンガの原画が展示されていました。

コモンズパビリオン

海外コモンズの中身はよくある展示会形式で、国ごとに展示区画が割り当てられています。
パキスタンのように、まわりを壁で覆って凝った展示を行っているブースは、コモンズ内でも行列ができていました。

コモンズパビリオン

大半の国はオープンなセットで、写真や映像を交えて民芸品や特産品を紹介しています。

コモンズパビリオン

観光誘致が目的と思いきや、コンゴのように鉱物資源を展示して投資や開発をアピールしている国もあります。

コモンズパビリオン

マリ、スーダンなど完全にお土産屋さんに振り切ったブースもあり、めずらしい民芸品やパワーストーンなどが販売されていました。
とはいえアフリカの現地価格ということはなく、革製品やアクセサリーなど、そこそこいい値段がつけられています。

コモンズパビリオン

スーダンの動物型ポーチなどは、日本国内であまり見たことのないデザインです。
普段は輸入販売されていないようなレア商品も見られるので、エスニック雑貨が好きな人は盛り上がると思います。

トルコ石やラピスラズリの販売コーナーには、人だかりができていて近づけませんでした。

コモンズパビリオン

夜の地球

モナコ館の隣にあり、ふらっと入れたのが「夜の地球 Earth at Night」です。
建物の周囲に大漁旗が掲げられていて、海鮮丼でも振る舞ってくれそうな雰囲気です。

夜の地球パビリオン

名前からして謎のパビリオンですが、輪島塗の巨大地球儀を中心に、能登半島地震の復興に向けて現地の伝統工芸を紹介するコーナーになっています。

夜の地球パビリオン

メインの地球儀は直径1m、重さ215kgもあり、黒い漆のうえに金で陸地が表現されています。

夜の地球パビリオン

同じ製法でつくられたと思しき、有名都市の地図パネルも展示されています。

夜の地球パビリオン

漆の地球儀は万博のために作られたのではなく、2017年に制作され、石川県の輪島漆芸美術館で展示されていたようです。
もともとこのパビリオンはイランが使う予定で建物も完成していたところ、途中で撤退したので、能登復興に転用されたとわかりました。

夜の地球パビリオン

せっかくなら伝統工芸だけでなく、北陸のグルメも楽しめる飲食コーナーがあればよかったと思います。

大屋根リング

とりあえず万博に来てよかったなと思えるのは、大屋根リングを見られたことです。

半径2km、世界最大の木造建築物としてギネスにも認定された代物で、間近で見ると想像以上に迫力がありました。
万博会場が広いので、それほど巨大には見えないですが、人の大きさと比べるとスケールを実感できます。

大屋根リング

高さは12~20mあり、4~5階建てのビルに相当します。

ちなみに『進撃の巨人』に出てくる壁は高さ50mで大屋根の2倍以上あります。
アニメやマンガのなかでしか見ないような超構造体といえます。

圧倒的な虚無空間

リングの内部は木の骨組みがあるだけで、圧倒的な虚無…
雨風しのぐ機能と歩行路・展望台、万博を象徴する円環シンボルである以外、ほとんど機能がない「無の空間」というのがとても日本的に思われます。

大屋根リング

1970年大阪万博におけるトラス構造の大屋根と同じく、「万博=巨大な屋根」というわかりやすいランドマークが求められたのかもしれません。
必要な機能に対して明らかにオーバースペックな印象を受けますが、広い会場ではこのくらいのスケール感がないと目立たなかったのでしょう。

大屋根リング

前万博を経験したシニア層がターゲットとして、方形を円形リングに、太陽の塔モニュメントを森に置き換えて中心性・象徴性をぼかしたのが、21世紀版大屋根のコンセプトと推測されます。

大屋根リング

構造はシンプルに柱と貫だけで合理的につくられており、挿肘木を多用した大仏様(天竺様)の木造建築をイメージさせます。
3次元グリッドのマトリックス空間は、東大寺南大門を下から見上げたかのようです。
少々コストをかけて肘木の木鼻に繰形を施せば、さらに和風なお寺感を演出できたかもしれません。

大屋根リング

万博が終わったあとの大屋根リングは、現状のまま、もしくは部分的なモニュメントとして保存が検討されているそうです。
個人的なアイデアとして、うめきたエリアの再開発に合わせ大阪駅を取り囲むようにリングを再配置したら、ユニークな都市景観になると思います。

リングの上は撮影スポット

会場に到着してすぐ、雷雲が接近しているとのことで、大屋根リングの上層部は立入禁止になってしまいました。
エスカレーターは下りだけ動いていて、警備員さんが見張っているので勝手に上ることもできません。

大屋根リング


天候状況によって大屋根は閉鎖されることも多いようです。
開いていたら早めに上ってみることをおすすめします。

1時間ほど経って立入制限解除のアナウンスが流れると、人々がエスカレーターに殺到しました。
この日は平日で問題ありませんでしたが、1.5万人くらい上がると安全のため入場制限が行われるそうです。

大屋根リング

屋根のうえは途中からスロープになって分岐するルートがあります。
スロープを上ると外周部まで歩ける芝生広場があり、撮影スポットとして人気でした。

大屋根リング

ちょうど夕日が沈む時間帯、大屋根リングの一番高い位置から写真を撮るときれいです。
がんばって海側まで歩けば、海までさえぎるもののない絶景を拝めたかもしれません。

大屋根リング

時間があればリングを1周してみたかったですが、人混みのなか撮影しながら2kmも歩くと30分くらいかかりそうです。
いくつかあるエスカレーターの間で、ひとまず1/3周歩いたところでやめておきました。

大屋根リング

大屋根リングのエレベーターは、順番待ちでかなり並ぶときがあります。

体力に余裕があれば、外周部に設置されている階段で上り下りするのもおすすめです。
木造構造体の中心付近からのぞきこめて、おもしろい写真も撮影できます。

大屋根リング

夜景も映える

日が沈んでから夜景を見るため、また大屋根リングのうえに上がってみました。
ライトアップされたリングや、各国パビリオンがきれいです。

大屋根リング

夜は日差しもなく涼しいので、パビリオン見学で疲れたらビールを片手にリング上の芝生で休むのもいいと思います。
みんな同じことを考えているのか、夜になっても大屋根は混雑していました。

大屋根リング

夜景スポットとして最高の大屋根リングですが、閉館はほかのパビリオンと同じ21時なのは残念です。
その時間を過ぎるとエスカレーターも下り一方通行になり、屋根上のスロープ通路も閉鎖されます。

しばらくうろうろしていても、警備員さんに早く降りるよう促されます。
閉館後の観客誘導は人力なので、毎日大変そうだなと思いました。

万博の名物建築

万博ではパビリオンの展示内容に加えて、建築のデザインにも見どころがあります。
大屋根リングのほかに、気になった建物やトイレ・休憩所をご紹介します。

ポーランドパビリオン

カーサ ブルータスで予習

万博建築の予習としては、カーサ ブルータスの6月号「万博と建築」特集が参考になりました。

建築・デザインの観点から各種パビリオン・付属施設を紹介している書籍として、ほかの一般的なガイド本より内容が充実しています。

抽選でも空き枠でもパビリオンに失敗した時点で、夜間券の滞在時間はとにかく会場を歩いて建築を見てまわろうと思いました。

ヌルヌルの謎

落合陽一とNOIZが手がけるパビリオン「null2」は、シグネチャーゾーンの海側に位置しています。

null2

建物の形状はわりと単純で、ヴォクセルをイメージした立方体の集積になっています。
しかし壁面が鏡面反射するステンレスのような材質で、かすかに振動することによって複雑な模様を映し出しています。

null2

壁面に触れることは禁止されていたのですが、見たところアルミホイルを強化したような膜で覆われている感じでした。

null2

こんな柔らかい素材を外壁に使って破れないのか心配ですが、独自開発とのことで強度や対候性は担保されていそうです。
飯田パビリオンの西陣織のように、樹脂やなにかで裏打ちして補強されているのかもしれません。

ヌルヌルの写真を見ると、外壁全体がディスプレイで映像が投影されていると勘違いしそうです。
実物を見ると丸い穴のなかにモニターがあって、ほかの壁面は鏡になっているだけだと気づきます。

null2

建物のどこかから重低音のBGMと連動した振動が発生していて、鏡面膜が微妙に揺れることによって反射した風景も動いているように見えるというトリックです。

音響も含めた建築の異質さとしては、万博でもトップレベルのインパクトがありました。

残念石トイレ

パビリオン以外にも、若手建築家20組が設計を担当したトイレや休憩所が会場内に散りばめられています。
いずれも小規模で予約も不要なため、待ち時間にふらっと訪れて暇つぶしや休憩に使えます。

トイレのなかで印象に残ったのは「残念石」です。
大阪城再建のために切り出されながら使われなかった巨石で、トイレの屋根を支えています。

残念石トイレ

5個ある石は1個1トン近くするらしく、京都の木津川から夢洲まで運んでくるのは大変だったのではないかと思います。
会期終了後はまた元の場所に石を戻すそうです。

残念石トイレ

短期間の展示ということで解体・撤収が容易な仮設構造物が多いなか、リアルな石材(しかも城の石垣に使われるような巨石)を採用しているのは異様です。
一般の人が見たら、ディズニーランドにあるようなフェイクの石と思われてしまうかもしれません。

残念石トイレ

経済的合理性を無視したアートのパフォーマンスとも言えそうな残念石は、万博終了後もレガシーとして夢洲に残せばいいのではないかと思います。

残念石トイレ

ただしトイレのなかは空調がないので、夏場は蒸し暑くて地獄でした。
残念石は眺めるだけにして、トイレは別の涼しいところを利用するのがおすすめです。

ナンセンスな石屋根

残念石と並ぶもうひとつの「リアルな石建築」が、宴外食パビリオンの隣にある休憩所です。
こちらは巨石ではないものの、そこそこ重量のありそうな石材にワイヤーを通して上から吊っています。

石屋根休憩所

石の間に隙間が多いので、テントのように雨風をしのげるわけでもありません。
ほんの気持ち程度の日よけにしかならないので、何のために苦労して石を浮かせているのか、理解に苦しむ建築といえます。

石屋根休憩所

残念石トイレが意味不明な巨石を持ち込んで話題性を狙ったとすれば、石吊り休憩所は非合理な素材と工法で用途不明な建築物を表現した感じです。
ナンセンス勝負としては後者のほうが上といえそうです。

石屋根休憩所

常識にとらわれないアートとして意味はあるかもしれませんが、少なからぬ公金が投じられている施設としては、倫理性が疑われる作品です。
そういうモヤモヤした気持ちも含めて、来場者の感情を逆なでするのが目的なのかもしれません。

石屋根休憩所

万博の食料事情

なんとなく予想はしていましたが、万博会場内のレストランはどこも高いです。
フードコートのような庶民向け飲食店でも、大阪の物価に比べて2倍くらいはかかります。

海鮮丼やラーメンなど、海外からの観光客にも人気がありそうなメニューは2,000円くらい。
定食やパスタは1,500円程度で、具なしのプレーンカレーならようやく1,000円切る価格帯です。

万博グルメ

なかには7,000円の伊勢海老うどんなど、インバウン丼みたいな超豪華メニューもあります。

万博グルメ

スパイ×ファミリーバーガー

万博とは関係ないですが、スパイファミリーのおまけ付き2,000円ハンバーガーも販売されています。

スパイ×ファミリー

ノベルティーとして、万博限定バッジとステッカーが付いてきます。

スパイ×ファミリー

シグネチャーゾーンのキッチンカーと、大阪ヘルスケアパビリオンのなかなど、複数の場所でスパイファミリーメニューを見かけました。

スパイ×ファミリー

ヘルスケアのフードコーナーでは、アニメのお皿がついてくるオムライスなども食べられます。

スパイ×ファミリー

西ゲートの果てに…

21時の閉館後に西ゲートの先のフューチャーライフゾーンまで歩いてみたところ、会場内で最安と思われるフードコートを見かけました。
海鮮丼880円~、たこ焼き900円~と、ほかに比べればだいぶ良心的な価格設定に思われます。

万博グルメ

ただし格安フードコートがあるのは、大屋根リングからもっとも離れた西側エリアなので、地下鉄&東ゲートから歩くには30分以上かかると思われます。
西ゲートから見てもメインエリアとは逆方向なので、食事のために行って帰ってくるだけでかなりの時間をロスします。

すでに閉まっていましたが、巨大なくら寿司パビリオンもあります。

万博グルメ

夜間券では持ち時間が貴重なので、少しでも食費を安くあげるためにフューチャーライフゾーンに向かうのは非合理です。
会場内の飲食店をまわって価格相場を調べると、中心に近い便利な立地ほど値段も高くなっているように感じました。

フューチャーライフゾーン

夢洲駅のローソン自販機

時間を優先して効率よくパビリオンを見てまわりたいなら、グルメの楽しみはあきらめてもよいと思います。

万博に飲食物の持ち込みは制限されておらず、ゲートでもボトルの中身くらいしかチェックされません。
事前にコンビニでおにぎりなど買っておいて、行列待ちのあいだにむしゃむしゃ立ち食いするのが早いです。

無印良品の不揃いバウム

その点で利用価値が高いのは、地下鉄夢洲駅の構内にあるローソンの自販機です。
ここではメロンパン140円、ランチパック150円~とまだ良心的な値段で菓子パンやエナジージェル、カロリーメイトを購入することができます。

自販機

隣にある実店舗はたいてい並んでいるので、入場前に自販機で非常食を買っておくのがおすすめです。

フードコートのパン屋

コンビニ以外で、さほど並ばずに買える安めの飲食店としては、リングサイドマーケットプレイス西にあるパン屋さんが挙げられます。

万博のパン

豪華なメロンパンやプレッツェルは480円もしますが、地味なパンなら1個200円台から手に入ります。
金額あたりの満足度、食べごたえというコスパを考えると、ここで菓子パンをいくつか買って食事を済ませるのもありです。

万博のパン

パン屋には巨大なフードコートが併設されていて、平日夜なら予約指定席でなくても普通に座れました。

万博のフードコート

海外レストランの相場

もしランチ2,000円~の予算を許せるなら、法外に高価なうどんやラーメンを食べるよりも海外レストランがおすすめです。
大屋根リング北側のリングサイドマーケットプライス(東西)には、韓国やインド料理に特化したレストランがいくつかあります。

万博グルメ

いずれも「日本で食べられない」ということはないですが、せっかくなら万博らしく多国籍料理を試してみたいです。

さらに時間とお金に余裕があるなら、海外パビリオン内の本格レストランという手もあります。
時間帯によってはかなり並ぶうえ、セットやコース料理は5,000円くらいかかります。

万博グルメ

自分が見たなかでは、スペイン館のピンチョス&タパスセット5,500円、ポーランドのテイスティングセット4,900円などがおいしそうでした。

水分補給のコツ

真夏の万博会場で水分補給は死活問題です。

マイボトルに水を入れられる給水機があるのですが、リング下のスポットは行列ができていました。
水をくむのに並ぶ時間も惜しいというかたは、給水をあてにせず、ペットボトル数本かついで持ち込むのがベターです。

万博の給水所

せっかくマイボトルを持ってきたのですが、「自販機でペットボトルを買ったほうが早い」という状況は本末転倒に思われました。

もし海外旅行気分を味わいたいなら、パビリオン内のショップでドリンクを買うのもありです。

スペイン館では、めずらしい硬水のミネラルウォーター「ソラン・デ・カプラス」が販売されていました。
330mlで300円近くしますが、変わった味でおもしろいです。

スペインのミネラルウォーター

ペットボトルの蓋が取れないので邪魔に感じましたが、よく見ると「わざと」分離できないデザインになっていました。

スペインのミネラルウォーター

缶ジュースのプルタブが一体型に変わったように、ヨーロッパではペットボトルの蓋もゴミにならないよう、外せない構造がスタンダードなのかもしれません。
こういう風習・文化の違いを体感できるのも、万博ならではの楽しみです。

スペインのミネラルウォーター

水分以外に糖分も補給したいと思ったら、アイスやスムージーも会場内で買うことができます。
値段が控えめでわりと満足度が高かったのは、、大阪ヘルスケアパビリオン内のメトロ・キッチンにあるフローズンスムージー(400円)です。

メトロキッチンのフローズンスムージー

お酒入りのフローズンスムージーカクテルでも600円、アサヒのスーパードライ生ビールは500円でした。
メトロ・キッチンは万博内の他の飲食店よりちょっと安いように感じます。

メトロキッチンのメニュー

アルコールはどこで?

せっかくなら海外のお酒も飲んでみたいと思いついたのがベルギービール。
パビリオンでも販売されていますが、ステラアルトワ、リーフマンスで1,200円~となかなか高価でした。

ベルギービール

マルタのラガービールも1,300円はします。

マルタパビリオンのレストランメニュー

運よく並ばず入れたモナコ館も、上階のワインバー「オテル・ド・パリ・モンテカルロ」には行列ができていました。

いろいろ探して見つけたのが、スペイン館の缶ビール「マオウ」です。

スペインのビール

330ml缶のセッションIPAだと500円、瓶入りだと600円でした。
冷蔵庫で冷やしたビールも手に入ります。

スペインのビール

スペインのビールはポップなデザインで、見た目も楽しませてくれます。
大屋根リングの下で、休憩を兼ねてビール休憩をとりました。

スペインのビール

会場内やフードコートでも、飲酒禁止の表示は特に見かけませんでした。
スペイン館のショップは穴場なのか、まわりで同じ缶ビールを飲んでいる人も数名いました。

万博の人間模様

万博会場をくまなく歩いて気づいたのは、大阪らしい(?)変な人がそこそこいるという事実です。
ともかく会場が広いので、通期パス利用者のなかにはウォーキングやエクササイズ目的で連訪れている人もいるかもしれません。

大屋根リング

変なおじさんに注意

ひたすらお酒を飲んでいる臭いおじさん。
ベンチを占有して寝ている迷惑おじさん。
パビリオンの映像からスタッフの説明まで、ずっと動画で撮影しているYouTuberおじさん…

万博おじさん

怪しい行動をしているのはたいてい40~50代くらいの中年男性で、何のために万博に来ているのか…もはや会場に住んでいるのか、というレベルの常連リラックス感をただよわせています。

普通の商業施設でGoPro・ジンバル撮影していたら注意されそうですが、万博では制御不能なのか無礼講となっているようです。
スマホ撮影で顔が写るのはお互い様という感じですが、動画撮影している人からはなるべく距離をおいて自分が写らないように気をつけました。

折りたたみ椅子

少しでも万博を快適に過ごすため、いろんな便利グッズを持ち込んでいる人がいて参考になります。

飯田パビリオン冒頭の映像コーナーで、折りたたみ式のスツールを使っている老夫婦を見かけました。
円筒形の脚部分が伸縮する構造で、収納時はかなりコンパクトになり、重さも1kgを切るようです。

折りたたみ椅子

見学したパビリオンのいくつかでは、椅子がなく地面に座って映像を眺めるコーナーがありました。
衛生上心配ということもありますが、膝や腰が悪くて地べたに座れない、足腰の負担が大きいというかたには、持ち運びできる軽量チェアが有効かもしれません。

安いプラスチック製のものなら、2,000円以下で手に入るようです。

閉館後の楽しみ方

万博全体の開場時間は夜10時までですが、パビリオンは夜9時でいっせいに閉まります。
ゲート前オフィシャルストアも最終入店時間が21:20までと早めに設定されているのでご注意ください。

住友館パビリオン

21時にパビリオンの営業時間が終わった直後、人々がいっせいに帰るため、東ゲートの地下鉄乗り場は混雑が予想されます。
せっかくあと1時間いられるので、会場内をぶらぶら歩いてタイミングをずらすことにしました。

ウズベキスタン館など、外から見るだけでも構造や照明の工夫を楽しめるパビリオンがあります。

ウズベキスタンパビリオン

リング内は立入禁止

最後に大屋根リングの上にのぼって夜景を撮影していたのですが、屋根上の遊歩道も21時で閉鎖され、警備員の人に下りるよう促されます。
エスカレーターも下り方向にしか動かなくなります。

大屋根リング

夜間ライトアップされたパビリオンも撮影したかったのですが、大屋根リングの内側も21時を過ぎると関係者以外立ち入り禁止になってしまうようです。
一般人が通過しようとすると、見張っている警備員に呼び止められます。

パビリオン閉鎖後に西ゲートから東ゲートに向かうには、若干遠まわりして大屋根リングの下をぐるぐる歩かなければならなくなります。

大屋根リング

パビリオンが屋外シアターに

さいわいリングに近いパビリオンの外観は見られるため、韓国パビリオンの大型ディスプレイなど鑑賞して時間を過ごすことができます。
営業時間が終わっても、外壁の照明や映像はついたままになっているところが多いです。

韓国パビリオン

壁面ディスプレイの巨大さは韓国が群を抜いていて、夜はさながら野外シアターのような雰囲気になっています。

韓国パビリオン

自分と同じく、凝ったCG映像をずっと眺めている人が数名いました。

韓国パビリオン

ただパビリオンの夜景を撮影したり、壁の映像を眺めていると、警備員の人から「早く帰れ」とプレッシャーをかけられるときもあります。
やはり22時の閉場までには、全員ゲートを出ないといけなそうな雰囲気です。

パビリオンの夜景

21:30は地下鉄がら空き

夜10時近くになってもリングのベンチでくつろいでいた人々は、本当に万博会場に住んでいて、空港のトランジット移民みたいな存在なのかもしれません。
最後までいなかったので未検証ですが、どこかに隠れて一夜を明かせば、翌日も入場料を払わず万博を楽しめるのかもしれません。

東ゲート

21:30を過ぎたあとの東ゲートはがらがらで、まったく並ぶことなく地下鉄に乗れました。

夢洲駅

人が少ないとはいえ、ゲートから地下鉄駅まで広大な空き地を迂回誘導させられるので疲れます。
夜はまだ涼しいのでましですが、最後まで歩きまくってへとへとになった今回の万博でした。

夢洲駅

まとめ、うめきた観光

滞在時間の限られた夜間チケットでも、平日ならそこそこ楽しめた印象です。
事前にパビリオンの予約が取れていればもっとよかったですが、予約なしの無計画訪問でも入れる施設はたくさんあります。

ミャクミャク

プチ海外旅行体験

万博の魅力のひとつは、今まで行ったこともない国の文化や食べ物に触れられることではないでしょうか。

海外パビリオンのスタッフのかたは基本的に現地人(留学生のアルバイトなど)なので、ちょっとした会話もできて、風習の違いを実感できます。
たとえばインドネシアなど、やけになれなれしく話しかけてくる外国人もいておもしろいです。

万博会場

パビリオン内の売店でも、商売っ気のあるなしにお国柄があらわれてのは興味深いです。
積極的に売り込んでくる人もいれば、やる気がない店番だけのスタッフもいます。

日本人も外国人も関係者の方々は総じて対応がフレンドリーなので、ディズニーランドのように完全なお客様気分を味わえました。
パビリオンの展示や建築以外にも、スタッフのサービス精神やおもてなしサプライズが好評で、万博の評判が上がってきているのかもしれません。

万博バス

今回はコスパ重視で地味な菓子パンを食べてしまいましたが、せっかくならある程度の予算を確保して海外料理も楽しんでみたかったです。
特にクオリティーの高そうな海外レストランをはしごすれば、軽くヨーロッパ周遊旅行したような気分を味わえるかと思います。

万博の旗

価格は決して安くないですが、大豆と米からできた、めずらしい「かるカツバーガー」も食べられます。
場所はパソナ館の前のキッチンカーです。

かるカツバーガー

話しネタに万博詣で

意外と話題になっている大阪万博が気になっているかたは、関西への出張ついでなど短時間でも入場してみてはいかがでしょうか。

行列の人気パビリオンには入れなくても、多国籍コモン棟やトイレ・休憩所、そして大屋根リングをぐるっと回るだけでも、雰囲気はつかめます。

万博の休憩所

特に予約や行列不要で、ガンダムの撮影もできます。

ガンダム

ご当地料理とお酒を楽しむだけのグルメツアーでも構わないと思います。
炎天下で長距離歩くのは確実なので、ダイエットと運動不足の解消にも役立ちます。

万博会場

泣いても笑ってもあと数十日しか体験できない大阪万博…
子孫への土産話や、取引先との雑談ネタとして、一度は訪れておく価値があるといえます。

うめきた見学もおすすめ

1泊2日の大阪ツアー、万博は夜間券でだいぶ楽しめたので、2日目のチケットは買いませんでした。
翌日は万博に行く代わりに、梅田駅周辺の再開発エリアを見学して帰りました。

大阪駅の北側では、SANAA設計のロートハートスクエアうめきた、安藤忠雄設計のギャラリーVS.など、有名建築家の作品を見られます。

ロートハートスクエアうめきた

パビリオン建築の見学目当てで万博を訪れるかたには、梅田の最新スポットを散策するのもおすすめです。

ミャクミャク