2泊3日の能登観光最終日、羽咋の宿から帰る途中に岐阜県の白川郷(しらかわごう)に立ち寄りました。
一度は行ってみたかった世界遺産の古民家集落です。
短い滞在時間でしたが、主要な建物や展望台、はやりのスイーツ店も試してみることができました。
石川・富山と白川郷は意外と近いので、北陸応援割の旅行ついでに車でドライブしてみてはいかがでしょうか。
金沢から白川郷へ
白川村は岐阜県の最北部にあり、石川県・富山県の近くにあります。
金沢から車で向かう場合は、北陸自動車道を経由して約75キロ。1時間ちょっと運転すればたどりつけます。
富山側から来るコースとは、小矢部砺波(おやべとなみ)ジャンクションで合流します。
白川郷へは金沢・富山から行くほうが、名古屋から向かうよりもずっと近いです。
石川県から白川村までは、山道を抜ける国道360号線というルートもあります。
一部は「白山白川郷ホワイトロード」という有料道路ですが、標高1,000メートルを超える山道は運転しにくそうだったので、選びませんでした。
滝や展望台を見るのが目的でなければ、普通に高速道路を走ったほうが安全と思われます。
とはいえ高速の方も岐阜の山中は坂道が多く、レンタカーの軽自動車では運転に苦労しました。
富山にもある世界遺産
合掌造りの世界遺産といえば岐阜県白川郷のイメージですが、実は富山の五箇山(ごかやま)にも似たような場所があります。
世界文化遺産の正式名称は「白川郷・五箇山の合掌造り集落」で、白川村のほかに五箇山の相倉(あいのくら)地区、菅沼(すがぬま)地区を加えた3つが構成資産となっています。
富山から高速道路を南下する際、白川郷ICのひとつ手前に五箇山ICがあります。
菅沼集落はインターから1キロ、相倉集落は12キロなので、時間があれば寄ってもいいかなという感じがします。
ただし全国的な知名度や規模では、富山の合掌造りも白川郷にはかないません。
五箇山のほうも観光客が少なくて写真撮影しやすい、よりのどかな雰囲気を味わえるといった利点もあるかもしれませんが、今回は見学を省略しました。
個人的なイメージで合掌造りの各地区を沖縄にたとえると、以下のような感じです。
- 岐阜県:白川村荻町地区(合掌造り59棟)→沖縄本島
- 富山県:上平村菅沼地区(合掌造り9棟)→宮古島
- 富山県:平村相倉地区(合掌造り20棟)→石垣島
建物の数では白川郷がずば抜けています。
宮古島や石垣島も独特の魅力がありますが、はじめての沖縄旅行ならまずは本島を押さえておきたいという気持ちです。
時間的な制約でどれかひとつだけ見るとしたら、王道の白川郷が無難かと思います。
白川郷の駐車場
白川郷ICで高速を降りて下道を走ると、集落の入口にバスターミナルがあります。
マイカーで来た場合は交差点を左折し、トンネルを抜けたさきの「せせらぎ公園駐車場」に車をとめる必要があります。
集落に入る前から合掌造りの建物があちこちに見えてきて、気分が盛り上がります。
GWなどの繁忙期にはインターから渋滞するそうで、「寺尾」や「みだしま公園」という離れた場所の臨時駐車場に案内されることもあるようです。
今回は閑散期の平日だったので、せせらぎ駐車場を利用できました。
駐車場は8~17時オープンで、普通車は駐車時間に関わらず1,000円とられます。
合掌造りの町並み
せせらぎ駐車場から集落へは、「であい橋」という吊り橋を渡ってアプローチします。
まるで川を越えてディズニーランドに入っていくような、わくわくする素敵な演出です。
集落のなかは観光用に開放されている建物以外にも、多くの合掌造りが残っています。
どちらかというと大通りから外れた細い路地の奥に魅力的な古民家があり、田畑のなかを探検するのが楽しいです。
ちょっとした倉庫のような小屋や、防火用の放水銃まで勾配のきつい屋根がかけられ、見た目に配慮されています。
見栄えのする景色を撮影できるポイントは、たいてい行列ができています。
集落にあるお店
白川郷には、合掌造りのなかに入ったお店もいくつかあります。
売られているものも地元の名産品からアウトドアブランドのコピー品までさまざまです。
重要伝統的建造物群保存地区として町並みが保存されつつも、各建物の所有者はばらばらで、各自が好き勝手に商売をしているという印象を受けました。
いかにも白川郷といったブランディングに貢献している、渋い和風の喫茶店もあれば、観光客ウケを狙ったダサい土産屋も混在しています。
今のところ白川郷で、京都の嵐山にあるスヌーピー茶屋や、りらっくま茶房のようなキャラクターショップは見かけませんでした。
ただ客層はアジア系インバウンドが中心で、いつ伊勢や湯布院のように変貌してもおかしくない気がします。
訪れたのが平日ということもあり、観光客はほとんど外国人でした。
ぷりんの家
白川郷にいくつかある飲食店のなかで、いちばん人が並んでいた「ぷりんの家」に入ってみました。
普通のプリンだけでなく、プリン味のソフトクリームも販売されています。
プリンの瓶からそのままソフトクリームが生えているのがユニークです。
勝手な憶測ですが、合掌造りの三角屋根を模した縦長プロポーションなのかもしれません。
有料施設リスト
集落にはいくつか有料で見学できる大型の建物があります。
それぞれの入館料を整理すると、以下のようになります(2024年4月時点)。
- 和田家(国指定重要文化財)…大人400円、小人200円
- 神田家…大人400円、小人200円
- 長瀬家…大人400円、小人200円
- 美然 ゆめろむ館…大人400円、小人200円
- 明善寺郷土館…大人400円、小人200円
- 合掌造り民家園…大人600円、小人400円
- 田島家養蚕展示館(2023年4月オープン)…大人400円、小人200円
このうち合掌造り民家園のみ、庄川を超えた駐車場側にあります。
25棟もの合掌造りが保存公開された屋外博物館なので、ほかより料金は高めです。
外から見てまわったところ、実際はどこも似たような造りの建物でした。
建築や古民家のマニアでなければ、このなかから1棟だけ見学すれば十分といえそうです。
ひとつだけ選ぶとしたら、後述の和田家がおすすめです。
それぞれ別々に入館料を取られるので、家族連れだと地味に費用がかさみます。
7つの建物をすべて見ると、大人ひとりの合計金額は3,000円です。
それなら建物見学よりも飲食、お土産にバランスよくお金を使ったほうが楽しめると思います。
周遊パスポートがほしい
自分と似たような考え方をする観光客は多いと思うので、白川郷では周遊パスポートや共通券を販売した方がよいのではないかと思いました。
神戸北野異人館のような感じで、7館や4館単位のパスチケットを売れば、支払いの手間が省け、何度も支出することにともなう心理的抵抗感も下げられます。
もっといえば、集落全体で入場料を5,000円くらい徴収するような、古民家テーマパークに変えてもよいのではないでしょうか。
繁忙期には追加料金を払って優先入場できる、ファストパスやエクスプレスパスを設定してもいいと思います。
さいわい川と山に囲まれた閉鎖的な地区なので、吊り橋とバスターミナルの入口に料金所を設ければ済むはずです。
もっとも土地の所有者がばらばらだと、地域全体の合意形成を図るのは難しいかもしれませんが…
国重文の和田家
いくつもある似たような有料施設のなかで、とりあえず入ってみたのは和田家です。
ひときわ大きな建物で、これだけ重要文化財に指定されています。
所有者のかたが今でも暮らされているようで、1階の一部は立入禁止になっています。
江戸時代には名主や番所の役人を勤めていた豪邸らしく、豪華な客間やふすま絵もあります。
火薬の材料になる焔硝(えんしょう)を製造していたそうで、当時のつくり方も説明されていました。
囲炉裏の床下に糞や尿を埋め込み、バクテリアに分解され焔硝土と灰汁を混ぜて精製すると結晶が手に入ります。
要するに火薬の原料である硝酸カリウムは、囲炉裏でおしっこを煮詰めてつくられるわけです。
2階は蚕の巣
合掌造りは茅葺屋根の勾配が大きいのが特徴になっています。
叉首状に組み合わされた屋根材が、人の手を組んだように頂部で噛み合わさっています。
和田家では勾配のきつい階段を上がって、屋根裏の2階も見学できます。
屋根を下から見上げると、囲炉裏の煙でいぶされた黒い木材と、そこに巻かれた白い縄の対比がおもしろいです。
上階はそこそこ高さもあり、窓からの眺めもよいです。
急勾配の屋根は雪下ろしの手間を省き、広い屋根裏を確保できるというメリットがあります。
この三角断面の屋根裏スペースは、蚕(かいこ)の飼育に使われていたようです。
養蚕業のデモンストレーションとしてか、実際に蚕が育てられていました。
当時の養蚕道具の展示もあります。
回転まぶしとは、蚕が繭をつくる際、蚕の自重で棚が回転して、スロットに自動的に振り分けられるという発明品です。
荻町城跡の展望台
和田家の近くにある坂道を上っていくと、萩町城跡の展望台に行くことができます。
集落から外れたところに向かう、結構きつい坂なのですが、ほかの観光客がどんどん歩いていくので試しに上ってみました。
坂の途中にある小屋も、しっかり合掌造りになっています。
苦労して登った展望台からは、荻町の集落を一望できます。
上から見下ろす古民家の群れも壮観です。
さらに戦国時代の城跡、荻町城跡(おぎまちじょうあと)も見学できます。
白川村の周辺は相当山深いエリアですが、中世には街道沿いの見晴らしがいい場所に、いくつか城郭が存在したようです。
城跡といっても建物や石垣の遺構は見かけませんでした。
16世紀ごろにつくられた実用本位の山城で、土塁や堀切などの地形が残っています。
城跡は、紅葉の落ち葉がきれいな公園になっています。
白川八幡神社
荻町城跡とは反対側、集落の南の端には白川八幡神社があります。
山を背景にして、うっそうとした森のなかに社殿や釈迦堂が建てられています。
神社は合掌造りではありませんが、苔むした境内や神木から厳かな気配を感じられます。
毎年10月に白川郷で行われる、どぶろく祭りの舞台になるそうです。
まとめ
今回の旅は能登観光が目的で、最終日の帰りに金沢から白川郷に寄りました。
白川郷ではトータル2時間くらいの滞在時間で、北から南までくまなく集落を探検できました。
もう少し時間があれば、カフェでお茶をしたり、合掌造り民家園を見学してもよかったかと思います。
建物の外観が保全されているため、外から様子がわかりにくいのですが、集落内には想像以上にお店がたくさんあります。
飲食店は30軒以上、民宿も20軒以上あるそうです。
日帰りでも十分満喫できる規模の観光地ですが、一泊して夜の雰囲気を味わってみるのも一興かと思います。
場所柄めったに訪れることがない僻地なので、せっかくなら富山の五箇山も含めて、合掌造りを網羅するのもありでしょう。
国内に数ある伝建地区のなかでも、白川郷はさすが世界遺産に選ばれただけあって、圧倒的な迫力を感じました。
日本人が思い描くふるさとの原風景、茅葺の巨大な合掌造りは、まさにキング・オブ・古民家です。
もしこれからインバウンドを対象に外貨獲得機能を高めるなら、古民家テーマパークとして統一感を高めてもよさそうに感じました。
似たような品ぞろえの土産物屋やゲストハウス、見学施設がカニバっていて、もったいない気もします。
せっかくなら合掌造りの家ごとにテーマ性のある展示を行ったり、宿も価格とサービスで差をつけた方が、お客さんから選ばれやすいと思います。
もっとも、商売っ気がありそうでも、そこまで徹底しないマイペースな経営スタイル。
田舎っぽいおおらかさこそが、白川郷の魅力なのかもしれません。