スピングルのビジネス向け革靴、Biz-601を購入しました。
履き始めてから3年経ったので、使用感をレビューしてみようと思います。
Biz-601はGORE-TEX搭載の完全防水モデルで、出張先でも天候を気にせずガンガン履けます。
仕事用からきれいめカジュアルまで通用するシックな見た目で、一足あると重宝するシューズです。
スピングルは日本製の高品質な革靴で、ほかの人とはかぶりにくいブランドを探している人におすすめです。
スピングルを選んだ理由
冠婚葬祭や仕事の打ち合わせ、よそいきのファッション用に革靴が一足あると便利です。
普段は手入れが楽なスニーカーやサンダルで過ごしていますが、引退後もときどき革靴が必要な場面は出てきます。
長年使っていたパラブーツのスリッポンが擦り切れてきたので、新しいビジネスシューズを買い替えることにしました。
最初にリーガルのアウトレット店で安価な人工皮革のローファーを買ってみたのですが、足に合わず履き続けるのはあきらめました。
やはりシューズの品質は、ある程度価格に比例するという勉強になりました。
自分は膝に故障を抱えているので、もっと予算をかけていい製品を選んだほうがよいのではと考えていたところ、目に留まったのがスピングルです。
Bizシリーズに注目
今までスピングルといえば「コンバースやヴァンズに似たスニーカーで、やけに高い国産品」という認識しかありませんでした。
ものは良さそうですが、カジュアルなシューズは他にたくさん持っているので、強いて買い増す必要はありません。
しかしスピングルのなかに、革製のビジネス向けシリーズがあることを知りました。
見た目は革靴でもソールはゴム製で、スニーカーらしい要素が取り入れられています。
リーガルやアシックスウォーキングの類似品と比べても、スペックは悪くなさそうです。
スニーカーとしては高いですが、ビジネスシューズというカテゴリーであれば、2~3万円という価格も違和感はありません。
むしろブランド物の革靴に比べれば安いくらいです。
超撥水かゴアテックスか
スピングルのBizシリーズには、超撥水やGORE-TEX搭載の防水モデルもラインナップされています。
撥水タイプのほうがバリエーションは豊富で、ローファーやチャッカブーツ、ストレートチップなども選べます。
またゴアテックスより価格は数千円安くなります。
ただし今回は防水性に万全を期したかったので、予算アップして定評あるゴアテックスを選びました。
選んだのは靴紐付き、内羽根式のプレーントゥ、Biz-601というモデルです。
類似品でスニーカーに近いBiz-602もありましたが、フォーマル用途も想定して今回はシンプルなBiz-601のほうにしました。
京都東山店で購入
3万円近い高級シューズなので、フィッティングに失敗したくはありません。
スピングルについては通販を利用せず、実店舗でじっくり相談して購入しました。
訪れたのは京都の清水寺近くにある東山店です。
東大路通りのバス停から、法観寺・八坂の塔に向かう路地にあります。
購入時はコロナ禍でほとんど人がいませんでしたが、普段は観光客でごった返すエリアです。
スピングルは京都の寺町にも出店していますが、東山店のほうはインバウンド向けの広告宣伝も兼ねているように思われます。
男性用だけでなく女性用のシューズもそろっているので、京都デートのついでに立ち寄るのもおすすめです。
近くには清水寺や高台寺といった名所だけでなく、スタバの京都二寧坂ヤサカ茶屋店、八坂庚申堂といった有名な映えスポットもあります。
Biz-601の購入価格は、税込27,500円でした。
オンラインショップを見ると、現在は多少値上がりしたようですが、まだ2万円台で買えるようです。
京都東山店に並んでいたカンガルーレザーのモデルも手触りがよくて迷ったのですが、今回はゴアテックスのBizモデルを優先しました。
いま持っているシューズが壊れたら、スピングルのスニーカーモデルも検討してみたいと思います。
Lサイズ=26.5cm
スピングルのサイズ構成は、通常のセンチやインチではなくS・M・L・LLとなっています。
自分の足は26.5~27センチくらいで(左右で大きさが違う)、Biz-601の場合はLサイズがフィットしました。
オンラインショップの説明ではLサイズ=26.5センチとなっています。
Biz-601はスピングル定番のスニーカー、SP-110より大きめのサイズ感で設計されているそうです。
ジャストサイズでもつま先が当たったり、かかとが靴擦れすることはありませんでした。
またこのモデルは本革製なので、アッパーが多少伸縮してフィットしているように思います。
サイズ表記の謎
洋服のようなサイズ表記に最初は面食らったのですが、あえて1センチ刻みの品ぞろえにして製造の無駄を省いているようです。
スピングルのシューズはつま先の捨て寸が大きく、やや縦長の設計になっているので、靴ひもで調整できる余地が大きいのかもしれません。
大手メーカーのように0.5センチ刻みでサイズを用意すると、在庫や製造コストがふくらみ、品種やカラバリを広げにくくなるのでしょう。
カンガルーレザーやビビッドなバイカラーなど、スピングルの売りである多様なデザインを実現するため、あえてサイズ幅を抑えたと推測されます。
新興メーカーらしい、ユニークな発想です。
洗練されたデザイン
Biz-601はシンプルな内羽根式ですが、シューレースの下側がスニーカーのように広く開いています。
丸みを帯びたフォルムは、女性用バレエシューズのようにエレガントです。
革靴のフォーマルさと、スニーカーのカジュアル感を融合した、ユニークなデザインといえます。
イメージ的に、建築家やクリエイティブ職のかたには似合いそうです。
細すぎず太すぎない
Biz-601の外観は、キメすぎでもなく、オッサン臭くもない、絶妙なバランスを保っています。
捨て寸が大きく、つま先はすこし長くなっていますが、ロングノーズのスクエアトゥほど尖った外観ではありません。
甲の部分は薄く、かかとは小さめにつくられているそうで、全体的に丸みを帯びすぎず、シャープな形状になっています。
Biz-601はデザイン重視の個性派シューズほど目立たず、快適性重視のシニア向けシューズほど野暮ったくないのが売りです。
あくまで普通に「品のいい革靴」という見た目で、合わせる服やシチュエーションを選びません。
スーツにもジーンズにも似合う、懐の広いシューズといえます。
ソールの露出が控えめ
スピングルといえば、外側に大きく張り出したボリュームのあるソールを連想します。
一目でブランド品とわかって自慢できる側面もありますが、ビジネス用としては主張が強すぎるように感じます。
Biz-601はソールの巻き上げがおとなしいので、人目を気にせず履きこなせます。
よく見るとソールに刻まれた波状のグリップパターンが見えてきて、知っている人にはスピングルとわかる、にくい仕掛けになっています。
見た目が地味といっても、ソールの接着方法はスピングルお得意のバルカナイズ製法です。
靴底のゴムとアッパーを高温で圧着しているため、ソールが分離しにくくなっています。
履き始めて3年経ちますが、安いスニーカーのようにソールがはがれてくる気配はまったくありません。
スピングルの履き心地
スピングル製品は初体験ですが、実際に履いてみるとクオリティーの高さに納得しました。
日本の職人が手作業でつくっているというとおり、内張やインソールといった見えないところまで快適性が追求されています。
内張りも柔らかく快適
シューズの裏地(ライニング)とベロの裏側は、フェルト生地のような柔らかい化学繊維が張られています。
足を出し入れする際のすべりがよく、長く使ってみたところ摩耗にも強いようです。
自分の場合、2~3年履くとかかとの裏地が擦り切れて穴が開くのですが、スピングルはまだ無傷です。
足にフィットしていて、かかとのブレやぐらつきが少ないせいかもしれません。
履き心地の柔らかさと耐久性は相反しそうなものですが、ライニングが意外と長持ちしているのは不思議です。
革靴の固い履き心地は好みでなく、今までは仕事用に仕方なく履くというイメージでした。
スピングルのBiz-601を買ってからは、むしろ革靴を履くのが楽しくなったというのも驚きです。
履き口に若干の伸縮性もあり、横着して靴ベラを使わなくても、指を差し込んで履けるのは便利です。
お座敷での会食後などに、わざわざ靴ベラを借りるか、携帯用のシューホーンを持参しなくても済みます。
高品質のインソール
インソールは元から入っていたものをそのまま使っています。
たいていの安売りスニーカーは中敷きがペラペラで、別売りの高機能インソールに差し替えるのですが、スピングルの場合はその必要性を感じません。
カップインソールはまわりがせり上がっていて、かかとをしっかり支えるかたちになっています。
中央部に微妙な突起があり、アーチサポートの役割を果たしています。
スピングルの中敷きに、ゲルや人工筋肉といった特殊な衝撃吸収素材は含まれていなそうです。
しかしインソール全体に適度なクッション性と反発力があり、長い距離を歩いても足が痛くなることはありません。
地味に品質の高いインソールだと思います。
シンプルな高耐久ソール
スピングルの特徴であるバルカナイズド製法のせいか、つま先とかかとの高低差(ドロップ)は低く抑えられています。
そのため、ベアフットシューズのように自然な感覚で歩けるのもメリットといえます。
Biz-601は普通の革靴のようにコツコツ鳴る感じもなく、歩く際の音は静かです。
まさにきっちりした革靴の見た目と、スニーカーの快適さを兼ね備えたハイブリッドなシューズといえます。
ソールは全体に波状のパターンが刻まれていて、高級ランニングシューズのような特殊素材やギミックはありません。
ただグリップの溝はそこそこ深いので、雨の日でも滑りやすいと不安に感じたこともありません。
ワークマンの作業靴ほどではありませんが、上部に反る屈曲性もある程度そなえています。
数年履いてソールのかかとは若干削れてきましたが、中央部はまだ溝が保たれています。
耐久性はそこそこ高いほうではないかと思われます。
防水性は完璧
Biz-601の防水性能は期待どおりでした。
かなり雨の強い日に外出しても、シューズのなかはまったく濡れません。
普通の革靴のように、ソールに縫い目がないのも安心材料です。
バルカナイズド製法でソールと本体の密着性が増しているということは、靴底の防水性も強化されていると考えられます。
履き口が高くなっているため、ズボンの裾あたりから浸水することもありません。
スニーカーのように靴紐の下が大きく見えているデザインですが、ベロとアッパーの間から水が入ってこないのも不思議です。
スピングルの撥水タイプは試していませんが、念のためゴアテックスを選んでおいてよかったと思います。
防水メンブレンに透湿性もあり、革自体も吸湿してくれるせいか、足が蒸れると感じたこともありません。
レザーも撥水加工
Biz-601のアッパーは牛革ですが、ウェブの説明によるとレザーにも撥水加工が施されていたようです。
多少濡れても、革が水を吸っている様子はありません。
ゴアテックス層にたどりつく前に、ほとんどの水分は撥水レザーで弾かれているようにも感じます。
アッパーの牛革は水に強いだけでなく、傷が目立ちにくいという特徴があります。
私は革靴を履いて自転車によく乗るので、ペダルや縁石につま先をぶつけてしまうことがよくあります。
3年履いてスピングルのアッパーも多少傷んでしまったのですが、靴墨を塗ってメンテすると擦り傷は目立たなくなります。
この点はナイロン製のスニーカーより革靴が有利な点です。
シュークリームは油分とロウ分が多めに含まれた、M.モウブレイのブラックを使用しています。
モウブレイのクリームはかれこれ20年くらい使っていますが、いまだに劣化せず機能しています。
ひとつ持っておけば、一生分の革靴をメンテナンスできると思います。
普通の革靴と同じく、使用後はシューツリーを入れて丁寧に保管しています。
きめ細やかな修理対応
スピングルといえば、高級メーカーらしくソールの張替えにも対応してもらえるのが売りです。
公式ページに修理方法と価格が詳しく書かれていて、画像を送って修理の可否を診断してもらうこともできます。
販売側としては修理するより新品を売りつけたほうが利益は上がると思うのですが、ソールだけでなく、内張りやサイドゴアのゴムまで交換してくれるのは親切です。
正直、ここまで誠実に修理対応をうたっている靴メーカーは、ほかに見たことがありません。
高級革靴に比べて廉価なシューズながら、オールソール交換できるのもスピングルの強みです。
ソール修理の費用
Biz-601のアウトソールはNo.19という型番で、修理可能なタイプに該当します。
自分の場合、そろそろソールの修理を相談してもいい頃合いかもしれません。
ウェブ上の価格表では、「かかとのみ」修理で両足5,500円~となっています。
高価なゴアテックスモデルなので、防水性が保たれているうちはソール交換で持たせられるのがありがたいです。
グッドイヤー製法の革靴は販売価格も高いですし、ソール交換も1万円は超えるのが相場です。
それに比べれば、スピングルのアウトソール修理(つま先~かかとまで7,700円~)はリーズナブルに思われます。
先述の高機能インソールも交換価格が4,950円~となっているので、やはりもともと品質が高いのだろうと推測されます。
量販店で売られている1,000~2,000円の安いインソールに比べれば、明らかに快適です。
スピングルが向いている人
スピングルがターゲットとする客層が見えてきたので、何となく整理してみました。
- 量販店で売られているようなスニーカーは嫌(コンバースやナイキなど)
- かといってハイブランドに興味はない。ブランドよりも品質にお金をかけたい
- 国内メーカーの質実剛健な製品が好き(時計はセイコー、鞄はポーターなど)
- とはいえ5万円以上の高級革靴を選ぶこだわりはない(Shetland Fox、三陽山町など)
- 人とかぶらないシューズで、歴史や製法のうんちくを語れる製品が好き
- 古典的な定番革靴ではなく、色や素材、デザインに遊び心がほしい
品質のよいシューズをメンテしながら長く履きたい、でもブランド代や広告料に余計なお金は払いたくない…
スピングルはそういった賢い消費者に愛されるメーカーだと思います。
ブランド名が変わった
ちなみに最近、スピングルのブランド名称とロゴマークが変更されました。
以前はSPINGLE MOVE(スピングルムーヴ)という長い名前で、しかも末尾は「ブ」でなく「ヴ」と読ませるこだわりがありました。
スナック菓子のプリングルズと区別するため、あえて「ムーヴ」と付けていたのかもしれません。
ロゴマークも「回転する矢印」のような不思議なパターンで、この垢抜けなさが日本の会社っぽいとひそかに感じていました。
新名称はシンプルに「スピングル」となり、ビズシリーズもなくなって統合されるようです。
ロゴマークも矢印の線が細くなり、洗練された印象になっています。
色もオレンジからモノトーンに変わっています。
新しいスピングルは、英語表記でSPINGLE。
真ん中のGの文字が、実は回転矢印のロゴになっているという、細かい工夫も見られます。
そして新しいロゴは、反時計回りに90度回転したGの文字になっています。
よく見ると気づいて納得感が出る、すぐれたデザインだと思います。
福山ゴム工業との違い
スピングルは広島県府中市を拠点とするメーカーで、シューズは職人の手作業でつくられています。
広島の東にある府中~福山は、昔からものづくりの盛んなエリアで、作業靴や長靴をつくっている福山ゴム工業のような会社もあります。
福山ゴムの親方寅さんやラスティングブルというシューズは、スピングルと同じバルカナイズ製法でつくられていて、非常にコスパのよい製品です。
私も野良作業や山登りで親方寅さんも愛用していますが、福山ゴムの廉価製品は中国製になります。
日本製のスピングルと比べてみると、インソールの質、ライニングの素材など、さまざまな面で違いがあります。
見えない部分のこだわりが、履き心地のよさにつながっているように思われます。
話のネタとしては作業靴の寅さんもおもしろいですが、さすがに仕事やデートで使える外見ではありません。
身だしなみに気をつかう大人のかたなら、スピングルも一足持っておくと便利です。
日本製・本革製・ゴアテックス・バルカナイズドソールといった特徴をすべてそなえているのは、今のところスピングルのBizシリーズだけではないかと思われます。
まとめ
スピングルは高嶺の花という憧れのブランドでしたが、実際に買って使ってみたら品質の良さを体感できました。
ソールだけでなくライニングも有償修理してもらえるので、大事に使えばかなり長持ちしそうです。
履き心地のよい靴で寿命も長いとすれば、案外コスパの高い製品かもしれません。
国産でこのクオリティーにも関わらず、ゴアテックス搭載の革靴が2万円台で買えるのは、お得とも考えられます。
ほかの革靴は捨てた
Biz-601の使い勝手が期待以上によかったので、今まで持っていたパラブーツやロイドフットウェアの革靴は断捨離しました。
仕事やお出かけも革靴が必要なときは、これ一足で済ませています。
ゴアテックスの防水機能も強力なので、近所の用事でも雨天時はスピングルも履くことがあります。
内部のライニングやメンブレンだけでなく、外側の牛革も撥水性が強いのか、雨の日にがんがん履いても劣化することはありません。
今まで革靴は天候を気にしながら履いていましたが、Biz-601なら出先で突然雨に降られても安心です。
取引先との打ち合わせや、親戚との会食をともなうような旅行にも、気軽に革靴を履いて行けるようになりました。
メンテも楽しめる
最近、廉価な防水トレッキングシューズを買ったので、スピングルはなるべく温存しています。
今では家に一足しかない貴重な革靴なので、できるだけ長く使いたいと思っています。
たまにシュークリームで栄養を与えたり、シューキーパーを入れて保管しているのも、長持ちしている理由かもしれません。
スピングルは元のつくりが良いので、日ごろのメンテナンスも愛着をもって楽しめます。
コスパの高い国産靴
Biz-601は総じて満足度の高い買い物でした。
その前に買ったアウトレットのリーガルに比べると、値段相応に品質や履き心地がすぐれていると感じました。
オフィスカジュアルに向いた革靴ライクなスニーカーは多く販売されていますが、Biz-601なら普通の革靴としても通用します。
そこまでマナーにこだわらなければ、冠婚葬祭にも履いて行けると思います。
質実剛健な国産シューズを求めているかたに、スピングルはおすすめできます。
少々割高でもゴアテックス搭載のモデルを選べば、雨の日にも履けて便利です。